法務は、顧客と伴走するパートナーへ AI時代に求められる“予防法務”のこれから

世界49か国・200都市以上に拠点を持ち、コンサルティング事業を展開するアクセンチュア株式会社。企業や行政機関など、多様なお客様を支援する同社には、一般的な企業法務とは異なる「コントラクトマネジメント」という独自の法務ポジションがあります。契約の締結にとどまらず、プロジェクトの運営にも深く関わり、法務の視点からお客様のビジネス成長を支える──。米国発の新しい企業法務のかたちとして、近年注目を集めているコントラクトマネジメント。その仕事の魅力について、同社で活躍する3名と共に対談形式で掘り下げていきます。

(写真左)

増渕正樹 Masaki Masubuchi

大学卒業後、電機メーカーに入社。その後、大学院で法務を学び直し、ITベンチャーや繊維メーカーなど複数社で契約管理や総務法務を経験。2018年にアクセンチュア株式会社へ中途入社し、おもに製造・流通業界のお客様を支援する、コントラクト マネジメント部に所属。2024年からは製造・流通グループをサポートするチームのリードとして、JV案件などの大規模契約を担当している。

(写真中央)

岩田知子 Tomoko Iwata

大学卒業後、重工メーカーに入社。航空機関連の事業部門にて工場営業職と法務職を経験した後、2018年アクセンチュア株式会社に中途入社。おもに素材・エネルギー系のお客様向けのプロジェクトを担当し、担当プロジェクトのコントラクトマネジメントメンバーをまとめるリードとして、プロジェクト管理や契約管理・交渉支援を担当している。

(写真右)

福味宏紀 Hiroki Fukumi

2016年に弁護士資格を取得後、法律事務所で企業法務や知的財産法務に従事。その後、再生可能エネルギー系や製造業など複数の事業会社の法務部を経験したのち、2020年から法律事務所でベンチャー・IPO支援、訴訟対応に携わる。2022年にアクセンチュア株式会社に入社し、官公庁および通信業界向けの契約管理・交渉支援を担当している。

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裏方として“支える”法務から、ビジネスの最前線を“動かす”法務へ。

── そもそも「コントラクトマネジメント」という言葉を聞いたことがないという人も多いと思います。よくある法務と何が違うのでしょうか?

増渕: 日本で「コントラクトマネジメント」専門の部署をもつ会社はあまり見たことがないため、かなり珍しいポジションですよね。一般的に法務といえば、締結時の契約書のチェックやリスク管理を担当し、会社の裏方として現場を支えるイメージがあると思います。しかし、コントラクトマネジメントは違います。私たちは最初からプロジェクトの一員として最前線に立ち、契約締結後こそが本格的な業務のスタートになります。

たとえば、契約後の各種ドキュメント管理や期日管理はもちろん、契約条件の変更や再委託に伴う適時適切な調整、さらには、想定外の事態が発生したときも最適な対応策を検討します。あらゆる法的な知識を活かして、プロジェクトをサポートし、お客様により良いサービスを提供するために伴走し、双方にとって機会損失が起こらないように注視しながら、プロジェクトを成功に導いていくのが私たちの役割です。

岩田:私もこれまでは一般的な法務しか経験がなかったので、このポジションを知った時はとても新鮮でした。もともと大手製造業にいて、営業としてキャリアをスタートしたのですが、法務に相談する場は「契約を結ぶとき」か「トラブルが起こったとき」だけ。営業としては「なるべく現場だけでなんとかしよう」と無理をしてしまうことも少なくなかったです。でも、法務部からすると「もっと早く声をかけてもらえたら未然に防げたのに」というケースが多いです。

福味:すごくよくわかります。特に私が担当している官公庁系のプロジェクトや長期間にわたる大型プロジェクトでは、契約内容が複雑化することがよくあります。契約締結時の条件がそのまま維持されるとは限らず、実際の業務とズレが生じることも少なくありません。そのまま放置すると、結果的に利益を損なってしまうこともあります。

そうしたリスクを防ぐために、私たちはプロジェクトの一員として、現場の進行状況や最新の要件を常に把握し、お客様との密なコミュニケーションを大切にしています。また自社の利益はもちろん、お客様にとっても不利益が生じないよう、注視していくことも大事な仕事です。

岩田:トラブルや損失を未然に防ぐ、“予防法務”としてコントラクトマネジメントを持つことが企業としてのメリットだと思います。

契約対応だけではない、AI時代に求められる法務とは?

── どうして転職されたのでしょうか?この仕事を選んだきっかけを教えてください。

増渕:福味さんは3年前まで、法律事務所で弁護士をしていましたよね。どうしてコントラクトマネジメントの領域にキャリアチェンジしたのですか?

福味:これまでは法律事務所の弁護士や事業会社の社内法務など、法務関連の様々なポジションで経験を積んできました。その結果、「もっとビジネスの現場に近いところで働きたい」と思うようになりました。そんな時にアクセンチュアの求人を見つけて、コントラクトマネジメントという仕事を知って…。正直、最初はどんな法務なのかイメージが湧きにくかったのですが(笑) 話を聞いていくうちに「これこそ自分のやりたかったことだ!」と思い、入社を決めました。

岩田:どうして現場に近い法務になりたいと思ったのですか?

福味:法律事務所での仕事もやりがいがありましたが、その多くはすでに発生したトラブルを解決する業務でした。「もう少し早く注意喚起できていたら、力になれたかもしれない」という悔しさを感じる場面も少なくなかったです。一方で、事業会社の社内弁護士時代は、現場の当事者間にしか分からない事情や忖度が絡み、法的解決に十分にコミットできないことも多くありました。そういった過去の経験から、法務としてもっと積極的に現場に関与し、トラブルや損失を未然に防ぐ動きをしないと…と考えるようになりましたね。

岩田:それ、すごくよく分かります。コントラクトマネジメントへの中途入社者は、現場と法務との間にひろがる隔たりにモヤモヤとした気持ちを抱えてきた人が多いと思います。

増渕:ちなみに、私は少しだけ違う理由かもしれません。法務だからって契約審査だけをしていたら、いつかAIに仕事を奪われてしまうのでは、と危機感を感じていました。じゃあ、これからの法務はどうあるべきか…と考えたとき、法律の専門知識を活かしながら、より深くビジネスに関わり、現場の意思決定に責任を持つ役割が求められるのではないか、と思いました。コントラクトマネジメントはまさにその考えに合致していたから、迷わずアクセンチュアを選んだという感じですね。

岩田: AIには代替できない法務としての価値は、実際に入社後に見出せましたか?

増渕:まだまだ模索中だけれど、やはり現場の状況を加味した上での契約交渉サポートなどのコミュニケーションは容易に代替できないと思いますね。

たとえば、過去にあったとあるプロジェクトで、お客様と当社と第三者のベンダーを含めた3社契約を結ぶことになったのですが、意見が対立して交渉が難航してしまって…。ところが、何度もミーティングを設定してもらい、「相手が何を求めているのか?」「何が制約になっているのか?」を紐解いていくうちに、相互理解が深まったのか、うまく着地させることができました。信頼関係を築いて、交渉の落とし所を見つけていく絶妙なバランス感覚をつかむのは、まだAIには難しいのではないかな、と思います。

岩田:契約交渉は、人と人の信頼のもとに成り立つコミュニケーションですからね。

守備範囲が広い。だから、できることも多い。

── これまでの法務と比べて、やりがいや働き方の違いはありましたか?

岩田:一番の違いは、これまでの法務の枠を超えて、ビジネスの成果に深く寄与できることですね。実際の運用を見据えた提案ができる法務は、とても重要な役割であるということを肌で感じています。特にアクセンチュアの場合は、AI関連のサービスにまつわる開発支援など、前例のないプロジェクトも多いからこその難しさとやりがいを感じています。

たとえば、過去にAI関連のプロジェクトで、お客様も当社もまだ知的財産の取り扱い方針が具体的に定まっていないことがありました。お互いに手探りではありましたが、プロジェクトの当社担当者とお客様の間に立ち、対話によって双方が納得できる落としどころを見つけられたときは、社内外から感謝の声をいただきましたね。お客様のチームには専任の契約担当が置かれていない場合が多いですから、お客様から「どのように社内の法務に相談するとスムーズか?」と相談されることもありました。

増渕:今後どれだけ新しいテクノロジーが導入されても、私たちのやるべきことは変わらないですよね。現場の人たちが今どんな問題に直面しているのか、どこまでなら譲歩できて何が制約となりうるのか。対話をベースに1つずつ紐解いて、双方にとって適切で納得のいく落としどころを見つけることが重要ですね。

福味:だからこそ、ただ法律の専門知識があるだけでは難しいですよね。ビジネスへの理解、コミュニケーション能力、問題解決能力など、この仕事は本当に求められる要素が多いです。加えて、プロジェクトによって求められる業務範囲や役割も異なるため、自分の知識や経験を広げていくことができます。コントラクトマネジメントに所属する社員の多くは、コントラクトマネジメント分野は未経験で入社した人ばかり。法務経験者をはじめ、営業職、サービス業、航空系の専門職まで、様々な経歴の人が活躍しています。先輩たちの幅広い知見を借りながら、自分にできることを拡張していけるのは、大変ありがたいです。

増渕:入社後はコントラクトマネジメント独自の手厚い研修も2週間ほどあるし、半年間のバディ制度やトレーニング制度・フォロー体制も充実しているから、未経験でも挑戦しやすい職場ですね。

岩田:業務の守備範囲が広いのはこのポジションの難しさですが、同時に面白さでもあります。アクセンチュアの社員って、発想が豊かな人が多く、これまでにないことに挑戦しよう!という気概があります。だからこそプロジェクトごとに常に新しい発見があり、日々新鮮な気持ちで仕事ができています。さらには自分の提案次第で、プロジェクトの成果を最大化することができます。コントラクトマネジメントって、無限の可能性が広がる仕事だなと思います。

自由な働き方とフラットな組織が、個の挑戦を後押しする。

── 外資系企業としてのアクセンチュアの働き方には、どんな特徴がありますか?

福味: 想像以上にワークライフバランスが取りやすいと感じています。業務の進め方も個々の裁量に任されているので、プライベートと仕事を両立しやすい環境だと思います。男性の育休取得も推奨されているため、長期の育児休業が取得もできるのも良いですよね。私は最近1ヶ月弱の育休を取得したのですが、同僚や上司から「もっと長くとってもいいのに」と言われました(笑)

岩田: 社内のコミュニケーションも非常にオープンで、階層に関係なくフラットに意見を交換できるのが特徴です。たとえばオンラインで社内会議を行う際には、発言者だけでなくチャット欄で様々な意見が飛び交います。本当に1人1人の発信量が多いです(笑)

また法務と現場が分断されておらず、ビジネス側のチームとは日常的にチャットでやり取りをしつつ、プロジェクトの定例会にも参加して密にコミュニケーションしているので、部門の垣根を超えて距離が近いのは働きやすいと思いますね。

増渕: あとは、外資系ならではの成果主義的な文化が根づいているため、必要以上の長時間労働を良しとしない点も魅力です。効率的に仕事をこなし、自分の仕事が終わっていれば定時で気兼ねなく帰れますよ。また、自分の意志でいくらでもキャリアの選択肢も広げていけるので、希望すれば違うチームやプロジェクトにチャレンジすることもできます。上司はもちろんですが、人事本部の人たちも柔軟にキャリア相談に乗ってくれるので心強いです。

岩田: 意外だったのが、そこまで英語が得意な人ばかりでもないということですね。当社のお客様は日本企業も多いので、私も普段はほぼ日本語で業務をしています。とはいえ社内研修は英語だったり、会議も英語で行うグローバルプロジェクトもあったりと様々です。最低限の語学力は必要ですが、使う頻度は担当するプロジェクトで調整できます。私もグローバルプロジェクトでは頭を切り替えて対応しています。

増渕:アクセンチュアで求められるのは語学力よりも、挑戦志向・成長意欲かもしれないですね。というか、自由があると人は自然と自ら前に進みたくなるのかもしれません。自分なりのキャリアの目的意識を持って、挑戦している人が多いですよ。

── 最後に、読者に一言をお願いします。

福味:コントラクトマネジメントは、法務経験者に限らず、幅広いスキルを活かして成長できるチャンスに満ちた仕事だと思います。大手企業ならではのスケール感の中でありながら、外資企業らしく新しいことにはどんどん挑戦できる環境です。意欲のある方であれば、きっと刺激的な職場になると思います。

岩田:もっと日本にコントラクトマネジメントのような“予防法務”が実務レベルでできる人材が増えるといいなと思っています。当社での経験は、まちがいなくキャリアの財産になると思います。少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ検討してみて頂きたいです。

増渕:コントラクトマネジメントの仕事は、AIには代替できない、人間ならではの価値を提供できる仕事だと感じています。新しいテクノロジーを学びながら、一緒に変化を続けていける方と、一緒に働けるのを楽しみにしています。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。