
寿司に刺身、焼きに煮つけ、多彩な魚料理は、日本の食卓を豊かにしてくれます。しかし、私たちがいつまで美味しい魚を当たり前に食べられるかを、想像したことはあるでしょうか?
近年、海洋資源の減少や、地球温暖化の影響などにより、「以前は網にかかった魚が今は姿を消してしまった」といった、嘆きにも似た声が全国の漁港から聞こえてくるようになりました。
魚の漁獲量が減少し、輸入依存が常態化した結果、漁業者をはじめ、水産加工業や小売業などの関連産業にも深刻な影響が広がっています。かつて世界一を誇った日本の水産生産量と従事者数は、1980年代のピークと比較して約3分の1にまで縮小しているのです。こうした国内水産業の衰退は、単なる経済的な問題にとどまらず、日本社会全体が向き合うべき重要な課題となっています。
そうした状況のなか、限りある資源を守りながら、日本の水産業を再び活気あるものにしようと誕生した集団が、京都大学発のディープテックスタートアップ、リージョナルフィッシュ株式会社です。本社と研究機関を京都大学内に置き、自然界で起こる進化を先取る『欠失型ゲノム編集』と、AI/IoTを駆使した『スマート陸上養殖』という二つのコア技術を携え、水産業の常識を覆そうとしています。さらに、世界人口が100億人に到達する2050年には、人々が美味しいものを求めるなかでタンパク質の需要が供給を上回る“タンパク質クライシス”が起きると懸念されるなかで、リージョナルフィッシュは数々の大企業やアカデミアと手を組み、この人類規模の食料危機にも真っ向から挑みはじめました。
『いま地球に、いま人類に、必要な魚を。』
というミッションを掲げるリージョナルフィッシュの果たすべき役割とはなにか。どんな仲間とどんな未来を描いていきたいか。代表の梅川さんとマネジャーの松原さんに語っていただきました。
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| 年収 | 500~900 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都千代田区 |
| 職種 | 新規事業企画/開発 |
| 年収 | 640~820 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都 |
| 職種 | 財務会計 管理会計 |
| 年収 | 500~800 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都千代田区, 鹿児島県阿久根市, 愛知県田原市 |
| 職種 | プラント構造設計 |
目次
世界と渡り合える技術を創り、日本経済を再興させるため、脱サラを決意。
── どのような想いでリージョナルフィッシュを創業されたのですか?
梅川:根底には日本経済の再興に貢献したいという志があります。学生時代に「日本企業は技術で勝っているが経営で負けている」という通説を信じて、就職では経営支援の道に進みました。コンサルタントや投資ファンドにて、名だたる企業のM&Aや投資に奔走するなか、その内幕を覗くたびに悔しい現実を目の当たりにしたのです。「技術は諸外国に追い付かれている」。そうであれば、依然として世界に負けていない分野で事業を起こし、そこで得た資金を次なる技術に投資していけば、日本経済を盛り上げていけるのではないか——。4年半務めた会社を辞めて、起業することを決めました。
── どういった分野に目をつけられたのでしょう。
梅川:日本が世界と勝負できる分野のひとつに、「食」があるのではないかと考えました。とりわけポテンシャルを感じたのは「魚」です。なぜなら、世界で一番、日本の魚が美味いからです。日本は全方位が海に囲まれた島国であることから広大な領海と排他的経済水域(EEZ)を有し、親潮と黒潮に育まれた漁場によって水産資源に恵まれています。そのなかで、脈々と受け継がれてきた神経締めや血抜きという技など、天然物を美味しく食べる加工技術が優れていることは他国にはない強みとなっています。
しかし、近頃は過剰漁獲や海水温の上昇といった環境変化、担い手不足に拍車がかかっており、漁獲量も従事者数も年々痩せ細っているのが実情です。地域の水産業が衰退すると、それを支えてきた地域経済が衰退していってしまう、そんな未来を迎えないために、なんとかしなくてはいけない。それが、リージョナルフィッシュの出発点です。
── なんとかしなくてはいけない。その打開策となるアイデアはあったのでしょうか?
梅川:研究機関が開発した品種改良技術と、品種改良をした魚を育てる養殖技術を水産業の現場に提供し、日本の優れた加工技術へのつなげ、新しいバリューチェーンを構築する。そうすると、衰退する水産業を高付加価値と持続可能性を兼ねた成長産業へと変えていける。このビジョンに可能性を見出しました。
というのも、肉や野菜は古くから品種改良が行われてきましたが、魚はほとんどなされていません。背景の一つは、卵から親に育てて、また卵を産ませるという完全養殖が最近まで難しかったためです。もう一つ、水産業・養殖業は個人事業者が多く、業界全体として革新をもたらすような、研究開発投資は他の業界に比べて行われてこなかったからです。
とはいえ、私自身は文系で研究者ではないので、ビジョン実現のために必要とされる技術を持っていません。そこで、京都大学のベンチャーキャピタルや産官学連携本部の方々から、ゲノム編集の第一人者である木下政人准教授をご紹介いただいたのです。水産業と地域経済の再興への強い想いに意気投合し、2019年にリージョナルフィッシュを共同創業しました。まずは、クロマグロの完全養殖で世界有数の技術を有する近畿大学との共同研究成果を活用し、本格的に事業のスタートを切りました。
── 品種改良に着目されて、なぜ『ゲノム編集』という選択をされたのですか?
梅川:品種改良とは、生物が持つ「設計図」であるゲノム(遺伝情報)を変化させて、有用な品種を作ることです。品種改良の歴史を紐解くと、私たちの食卓にのぼる肉や野菜は人間が1万年くらいの長い年月をかけて、自然界で起こる突然変異でゲノムが変化したものを選抜し、交配を繰り返すことで品種改良を進めてきました。これにより例えば、野生のケールからブロッコリーやキャベツ、イノシシから豚を作り出すことに成功しています。
一方、魚の完全養殖の歴史は50年ほどしかありません。品種改良には1品種につき約30年かかります。漁獲量の減少や環境変化、人口増による魚不足・タンパク質不足問題を回避できない世界情勢において、変化を自然界に委ねている猶予はありません。その突破口となるのが、私たちの『欠失型ゲノム編集』なのです。自然界で起きる進化を人為的に先取り、何世代も重ねて行われる品種改良を飛躍的に短縮させられます。

30年かかる品種改良を3年にする『欠失型ゲノム編集』
── 『欠失型ゲノム編集』とは、どういった技術なのかを教えてください。
梅川:『欠失型ゲノム編集』は、狙った遺伝子をピンポイントに“取り除く”ことでゲノム(遺伝情報)を変化させ、自然界で起こる突然変異を再現できる技術です。昔はゲノムを読むこともできなかったのですが、今は簡単に読むことができ、それを欠失型ゲノム編集によって変えられるようになったため、今まで30年以上かかっていた魚の品種改良を、2~3年に短縮することもできるということです。それにより、スピーディーに環境に対応した魚を誕生させるなど、未来の水産業をつくる技術として期待されています。
例えば、私たちの開発した「22世紀ふぐ」は、従来よりも1.9倍のスピードで育つようになったことで 1尾に対するエサの量も減り、養殖による環境への負荷を軽減できます。ぷりぷりした食感と、凝縮された旨みが特徴です。また「22世紀鯛」は、筋肉量が増えたことで、頭部が小さく全体的に丸みを帯び、食べられる部分が1.2〜1.6倍に増加しました。旨味があり食べ応えのある肉厚な身は、生だとやわらかくもっちり、火を通すとふわっとした食感です。
── 遺伝子組換えとよく混同されるとお聞きしました
梅川:遺伝子組換えと欠失型ゲノム編集は異なる技術です。遺伝子組換えは、他の生物の遺伝子を組み込み、通常、自然には獲得しえないような特性を持たせることができます。一方で、欠失型ゲノム編集は、あくまで「自然界でも起こり得る進化」を人為的に早く起こす品種改良技術です。
しかしながら、「ゲノム」や「編集」と聞くと不安がられることは事実で、認識のギャップは確かにあります。事業を伸ばしていくには、とくに水産業の方々の理解を得ることが欠かせません。全国各地の漁港に何度も足を運び、それぞれの組合にしっかりと説明しています。
── 開発した魚を最適な環境で育てる仕組みまで、自社で構築されていると聞きました。
梅川:それがもう一つのコア技術『スマート陸上養殖』です。陸上養殖プラントの設計と運用を専門とする松原から詳しくご説明します。
松原:開発した魚の効率的な生産を加速させるため、海面に比べて飼育環境を最適化しやすい陸上での養殖を推進しています。パートナー企業とも連携して、AIやIoTを活用した水温、光、溶存酸素や成長度合いのモニタリング&コントロールなどを導入し、開発した魚の特性との相乗効果で従来よりも高い収益性を実現するスマート陸上養殖を目指しています。陸上養殖と一言でいっても、かけ流し式、半循環式、閉鎖循環式など様々な方式があります。近年「場所を選ばない」「環境負荷が少ない」といった理由から注目されているのは半循環式や閉鎖循環式で、RAS(Recirculating Aquaculture System)とも言われていますが、RASのように外的影響から切り離された設備であるほど初期投資と運用にかかるエネルギーコストは高額となり、簡単には導入できないのが現状です。
そこで私たちは、プラント構築の上で、地域の特性を最大限に活かせる方式はなにかという視点も大切にしています。地下海水や温泉が豊富であるか、太陽光等の再生可能エネルギーが向いている地域であるかなど、土地の特性を活かすことで長期的にコストを削減できる方法も合わせて考えるようにしています。AIやIoTを駆使すべきところと、機械化・自動化せずとも地の利を活かすべきところ、両者を上手く取り入れたスマート陸上養殖によって、地域ならではの地魚を生み出す次世代型プラントを日本各地に増やしている最中です。

ALL JAPANで大義を成す。
── 日本を代表する企業とプロジェクトを共にしているそうですね。
松原:日本の水産業を再興し、世界規模の食料危機を防ぐ——。当然ながら、スタートアップ1社だけで解決できる問題ではありません。『いま地球に、いま人類に、必要な魚を。』というミッションに共感いただいた力強いパートナーと共に、オープンイノベーションの実現を目指しています。NTTグループをはじめ、90 を超える企業・自治体・組合・大学が参画する協業ネットワークを形成しています。2024年に静岡県磐田市に完成したエビの養殖プラントも、NTTグループとの協業により実現しました。通信大手のIoTプラットフォームを養殖モニタリングに、建設大手の土木技術をプラント設計に、ガス大手のノウハウをエネルギー運用に活用する。まさに、ALL JAPANで大義を成し遂げていきたいと考えています。
── 参画企業の側には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
松原:各社が本業で培ったコア技術を水産業に転用して新領域でのビジネスチャンスを開拓できる。社会課題の解決につながり、参画者の企業価値が向上する。これらがリターンだと考えています。私たちも、必要とする資本と技術を集めることができ、社会的な信用を得て事業を加速できるので、まさにWin-Winの関係です。

コンサルタントから博士まで?異能が結集する革命家集団。
── 起業の成り立ちからして、リージョナルフィッシュにはアカデミックなバックグラウンドを持つ社員が多いのでしょうか?でしょうか?
松原:全員が研究者というわけではありません。100名の社員のうち博士号を取得している研究員は25名で、そのほかの75名のなかにはパートナー企業からの出向者も多数います。それぞれの持つ専門性を結集させ、イノベーションを起こそうとしています。実際に、代表の梅川は元コンサルタントですし、私自身も前職は建設会社で設計をしていました。研究者、養殖員、エンジニア、企画、営業……とさまざまですが、全員に共通するものは「自分はこの領域のプロとして期待されている」という当事者意識が強いことです。
── なぜ皆さんに当事者意識が生まれるのでしょうか?
梅川:職種・役職を問わず、社員が株主となる権利、ストックオプション制度を導入しているため、リージョナルフィッシュの成長を自分事として実感できるからではないでしょうか。現在は上場を見据え、成果や貢献の度合いに応じて最大限の株式報酬を得られるように設計しております。“水産革命”を社員全員の挑戦にしたいからこそ、人への投資を惜しむことはありません。肩書きの垣根を超え、対等のオーナーシップで議論し決断する。一人ひとりが当事者意識をもって、これまでにない価値を創出しているのです。
── 他にもリージョナルフィッシュ独自の制度や、ユニークな福利厚生もあるとお聞きしています。
梅川:経営層に対して匿名でフィードバックができる制度を導入し、直属の上司や経営陣に対しても、メンバーが忌憚なく意見を言える機会を設けています。そのたびに私もドキドキしますが(笑)、現場のリアルな声を経営改善につなげられています。
松原:遺伝子検査を無料で受けられる福利厚生があることもリージョナルフィッシュらしいですね! 普通はなかなか体験できませんし、せっかく自社の事業領域でもあるので、「自分たちも楽しまなくちゃ」という思いで利用させてもらいました。この検査で自分では気が付かなかった体質や、祖先がどの大陸から日本に渡って来たのかも判明しました。そうした結果をネタに、同僚たちと盛り上がっています(笑)
梅川:他にも、全社交流会など「開発した魚を美味しく食べるイベント」を開催しています。刺身や煮付け、鯛めし、フライ、スープなど、自分たちが開発している魚介類をさまざまな料理にして皆で食べ、フィードバックしあうことで研究や商品開発などに生かしています。この試食会も、松原から紹介した遺伝子検査も、社員がワクワクしながら体験できるようにという思いで導入しました。そうすることで、自分たちが日々向き合っている仕事に、より誇りを持てると思うのです。

Message:尊敬できる仲間とブルーオーシャンへ。
── これからのリージョナルフィッシュに、どのようなメンバーを迎えていきたいですか?
梅川:国内外に研究開発拠点と事業拠点を増やしていくため、現場を主体的に動かせる即戦力のプロを求めています。設備の立ち上げと保守点検を担うエンジニア、電気技術系のエンジニア、拡大戦略を描く営業企画、経理マネジャーを各1名ずつ、少数精鋭で迎える予定です。
いまリージョナルフィッシュでは、全員が自らの専門領域に誇りを抱きながら「日本の水産業を再興し、地球・人類規模の食料課題を解決する」という大義を成し遂げようとしています。大切にしているのは、リージョナルフィッシュのビジョンに心から共感してくれて、尊敬し合える人かどうか。「この領域では技術でも情熱でも敵わない!」と思わせてくれる仲間と働きたいです。
── 世界初・海が舞台というリージョナルフィッシュの挑戦は、まさに地図なきブルーオーシャンを拓く航海のようです。その仲間になるかもしれない求職者へ、最後にメッセージをお願いします。
松原:私がジョインしたいちばんの理由は、新しい技術によってイノベーションを起こす過程に立ち会える、その一端を担うことができるというワクワク感が⼤きかったからです。「水産業を蘇らせる」「最先端技術で地球・人類規模の課題に挑む」。このキーワードに心が高鳴る方がいらっしゃったら、リージョナルフィッシュという会社は、ぴったりの舞台だと思います。
梅川:創業した年に、10年後の2030年までに日本を代表する水産企業となるという目標を立てました。これまでの歩みは目まぐるしいものでしたが、現在は資金調達やパートナーの確保を達成し、順調に折り返し地点を迎えています。今後はさらなる拡充と、上場に向けた準備を本格的に進めていきます。通常なら十数年かかるスケールアップを、私たちは4〜5年でやり切るつもりです。メンバー一人ひとりには覚悟が求められますが、その渦中で得られる経験は、生涯の財産になるはずです。水産業の未来も、人類の未来さえも書き換える——。後世に語り継がれる挑戦をともにする仲間との出会いを、心から楽しみにしています。

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| 年収 | 500~900 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都千代田区 |
| 職種 | 新規事業企画/開発 |
| 年収 | 640~820 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都 |
| 職種 | 財務会計 管理会計 |
| 年収 | 500~800 万 |
|---|---|
| 会社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
| 勤務地 | 東京都千代田区, 鹿児島県阿久根市, 愛知県田原市 |
| 職種 | プラント構造設計 |
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