工作機械の未来を、仲間とともに切り拓く──オークマ取締役常務・千田治光氏が語る「チャレンジングな土壌」

日本で深刻化する少子化と熟練工の引退により、製造現場では技術継承と人手確保が大きな課題となっています。そのような社会課題に立ち向かっているのが、AI・IoTと融合し、技術を“継承”だけではなく“再構築”する存在となりつつある、進化した工作機械です。かつては“ものをつくる機械”だった工作機械が、今では“人の代わりにものづくりを担う存在”へと変貌を遂げています。そのような工作機械業界で日本を代表するリーディングカンパニーがオークマ株式会社です。

工作機械の提供のみならず、総合一貫した「ものづくりサービスの提供」を目指している同社では、変革を支える人材の採用を積極的に進めています。今回は、取締役常務執行役員の千田治光氏に、変革・成長フェーズにある今、「人と組織づくり」にどのような想いをもって取り組んでいるのか、どのような人材を求めているのかなどについて伺いました。

千田治光

1987年入社。神戸大学大学院自然科学研究科卒業、博士(工学)。オークマ入社後、要素技術の開発者として超精密加工技術を担当。熱変位の研究を志願し、主軸の熱変位補償システムを開発。これを発展させた工作機械の熱変位補償システムで、2002年度「日本機械学会賞」受賞。その後もグループリーダーとして熱変位制御の研究開発をはじめ、知能化技術開発を推進。研究開発部長、執行役員技術本部副本部長兼可児技術部長、執行役員技術本部長兼研究開発部長などを経て現職。

オークマ株式会社が募集している求人はこちら

120年超の革新を支える、オークマの“創る力”と技術力

──オークマは、国内トップシェアを誇る工作機械のリーディングカンパニーですが、120年超の歴史の中でさまざまな事業変革を繰り返してきたと伺っています。これまでの歴史や現在の事業内容について、簡単にお聞かせいただけますか?

1898年の創業時は、製麺機の製造会社でした。麺の食感を向上させるべく、刃の精度を高めるために、自社内で旋盤を作り始めたのがきっかけとなり、工作機械の製造をスタート。機械技術、電気技術、情報技術を組み合わせ、昨今では知能化技術を組み合わせた新たなものづくりに挑戦しています。

そして、工作機械の“頭脳”である制御装置を自社で開発している点も特徴です。一般的には外部調達をすることがほとんどですが、1963年から独自に制御装置を開発し、部品加工の効率化や品質向上に貢献してきました。制御装置を自社で内製できることは、機械の性能・進化・自由度をすべて自分たちの手でコントロールできる、世界でも極めて稀な競争優位性だと言えます。

創業時からの「あるべきもので、ないものは創る」との精神のもと、必要なものを自分たちの手で生み出し続けてきたという歴史があるため、技術力には絶対の自信を持っています。

お客様のニーズに応えるためには、事業変革も重要です。当初は、部品を加工する機械(工作機械)の提供に注力していましたが、より幅広いニーズに応えるため、現在では部品加工に関するソリューション全般を提供するものづくりサービス企業へと変化してきました。

実用化CNCを世界で初めて市場投入したほか、加工状況を画面上でグラフィカルに確認できる技術をいち早く導入するなど、お客様の使いやすさを常に念頭に置いています。

ものづくり企業から「ものづくりを支えるコンサルティング企業」へ

現在のオークマは、工場全体のリプレイスからライン設計、製造現場の技術伝承、DX支援など、お客様の経営に直結する課題に踏み込み、ものづくりの現場をより良くするための、コンサルティング的な立場にシフトしつつあります。 単なる“工作機械の提供”にとどまらず、工場全体のデザイン、省人化などお客様のものづくりを共に考える経営パートナーへと進化を続けています。

実際、ある大手メーカーからは「工場の中身を丸ごと最新のものに入れ替えたいので、一からものづくりの環境や考え方を構築してほしい」、中小企業の経営者からは「世代交代にあたり、先端技術を取り入れたスマートファクトリーを実践したいので、コーディネートしてほしい」といった要望も寄せられています。こうした声を受け、現場のニーズをヒアリングして話し合いながら、各社に合った自動化ラインへの入れ替えを実現した事例があります。

当社のお客様は、業界を問わず幅広く、同じ業界内で競合となる企業ともそれぞれ取引関係にあります。そして、企業規模も超大手から中小企業までさまざまです。したがって、あらゆる業界・企業規模に対応したものづくりに関するノウハウが蓄積されている点が、当社の強みの一つと言えます。お客様に合わせて、保有するノウハウを組み合わせることで、ご要望に的確にお応えできる点が強みです。

顧客が抱えるさまざまな課題の解決に動く

── ものづくり全般のサポートに加え、労働力人口や技術の伝承など、社会課題も踏まえた解決策を提案している点も特徴的ですね。

企業が抱える社会的な課題は、労働力の問題や環境問題、DX、情報セキュリティなどさまざまなものがあり、実に多岐にわたります。これらのあらゆる課題に網羅的に対応しようとすると、我々が提供するサービスもどんどん複雑化してしまうと考えられます。

そこで、社内での目線合わせの目的も踏まえ、社会課題の解決につながるものづくりのスマート化、DX化に向けた「成熟度モデル」を作成しました。

このモデルは、オークマがお客様に対して提供できるソリューションの深度を6段階で定義したもので、高精度・高生産性に加え、省エネ技術を兼ね備えた「スマートマシン=工作機械」の提供をレベル1として、最終的には“加工工場経営の最適化”という経営視点の支援まで見据えています。先ほどの事例は、レベル5~6の事例になります。

すなわち、お客様の工場経営まで入り込み、我々の強みを活かしながら、お客様とともにより良い方法を考え、実践していくことを目指しています。

社内ではこの図をもとに、現在どの領域を手掛けているのかを説明しながら、意識改革を行っています。そして、目指す方向性を指し示しながら、実現のための具体策を皆で考え、実行しています。

意見やアイディアを言いやすく、主体的に行動できる環境

──まさに大きな事業変革期にある中、オークマでは近年中途採用を積極化されていますね。

成熟度モデル図に沿って、全社一丸となってレベル1を基軸に、上位レベルへの展開を目指している最中ですが、その過程では社内にはないスキルや知見も必要となるため、さまざまなバックグラウンドを持つ中途入社者にジョインいただいています。彼らから新しい風を吹き込んでもらうことで、より変革が進むと考えています。

中途入社者には、「何か違うと感じたことは必ず言ってほしい」と伝えています。当社では常識だと思っていることが、実はそうではない…なんてことはよくあるものです。これまでの当たり前を見直し、原点を振り返る良いきっかけになりますし、次のレベルに進むための基礎固めにもなると考えています。

──中途入社者も活躍しやすい環境が整っているのでしょうか?

「創業120年超の工作機械メーカー」と聞くと、古くて固そうなイメージがあると思いますが、実際はかなり風通しがよく、柔軟な社風であると自負しています。年齢や社歴に関係なく意見やアイディアが言いやすいですし、困ったことやわからないことがあればサポートし合う風土もあります。実際、多くの中途入社者がら「周りの人が皆優しく教えてくれて、短期間で仕事をキャッチアップできた」との声があり、嬉しく思っています。

もちろん、トップが掲げる目標はあり、各自がその目標実現のために行動しますが、実現するための「方法」は一人ひとりが主体的に考えています。「このやり方が良いのではないか」などと皆が意見を出し合い、話し合いながらより良い方法を模索できる自由さがあります。

チャレンジしやすい環境づくりも重視しています。
もちろん、お客様のオーダー通りの製品を提供することは重要なのですが、「ここを変えれば、もっと良い製品になるのではないか」など改善できる点に気づいたら、自身のアイディアを自社工場内で試してみることが可能です。チャレンジに成功したら、今後の提案に活かしていけばお客様にも貢献できますし、ひいては自社への貢献、社会課題の解決にもつながります。中途採用の方には、ぜひ違った角度からものづくりの現場を見てもらい、現状改善や変革の芽を見つけ、どんどん実践してほしいと願っています。

「ものづくりが好き」という土台があれば活躍できる

── 中途採用では、どのような人に仲間に加わってほしいと考えていますか?

「ものづくりが好きな人」に、ぜひ来ていただきたいですね。
「好きこそものの上手なれ」という言葉のとおり、ものづくりが好きな人は、ものづくりの現場を熱心に観察したり、夢中で業務に取り組んだりできます。その結果、思いもよらない気づきや発見をもたらしてくれることがとても多いのです。

そして、「ものづくりが好き」という土台に、これまでのキャリアで培った得意分野や強みが加われば、あらゆる場面で活躍していただけると思います。どのようなバックグラウンドを持つ方も歓迎していますが、例えば機械設計や電気、制御、情報、AIなどの知識があれば、それを活かしてものづくりの現場でさまざまなチャレンジをしていただけると思います。これまでにない視点で周りに刺激を与えてもらうことで、新たな融合が生まれるとも期待しています。

人事制度も、時代の変化に合わせて変更しています。歴史が長い会社なので、少し前までは年功序列の体制が残っていましたが、現在はチャレンジやアウトプットを重視し、評価する体制へと変わっています。

ものづくり企業ではありますが、在宅勤務もできますし、有給休暇が時間単位で取れたり、始業時間を前倒しして早く帰宅したりすることも可能です。社員一人ひとりの状況に合わせ、柔軟な働き方ができる点が好評です。

人事制度は一度導入すれば終わりではなく、会社の変化や成長に合わせて進化させるものだと捉えています。さまざまなキャリアプランに対応できるようブラッシュアップし続け、皆さんが活躍しやすい環境を整えたいと考えていますので、ぜひ多くの「ものづくり好き」の方に仲間として加わっていただきたいですね。

オークマ株式会社が募集している求人はこちら

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。