Google Cloud 『Gemini』から学ぶ~生成AIの実践事例とコーポレート業務の活用可能性とは~

リクルートダイレクトスカウトは、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 執行役員 AI事業本部 本部長の橋口 剛さんによるセミナーを開催しました。
2024年は生成AI元年とも呼ばれ、注目を集めています。Google Cloudでは『Gemini』という生成AIのモデルを使って、コーポレート業務を効率化させる活動が行われています。現在の生成AIの活用状況から、Geminiを使ってコーポレート業務を効率化させた事例、活用方法などについて語っていただきました。

登壇者

橋口 剛氏

大学卒業後システム会社の営業、ベンチャーでのプログラマー、コンサルティング会社、データ分析ソフトウェア ベンダーでの営業を経て 2011 年にグーグル・クラウド・ジャパン合同会社(入社時はグーグル合同会社)に技術営業職として入社。 2015 年社内にて営業職へ職種変更を行い現職。現在 AI 事業の営業責任者として日本の DX に貢献すべく尽力している。

Googleイベント風景

グローバルにおけるイノベーター企業の生成AIの適用状況

まず、現在の生成AIの活用状況についてご紹介しましょう。以下のスライドは、Google Cloudのユーザーである約200社の企業を対象に行ったアンケートになります。

青は、生成AIによって収益アップを行った企業の86%が、6%以上の収益増加を記録したことを示しています。緑はユーザーエクスペリエンスが向上したと報告した組織の85%がユーザーエンゲージメントも測定可能な改善が見られたと報告しています。

一番わかりやすいところでいうと、黄色の生成AIの利用結果として、従業員の生産性が200%以上向上したというデータですね。

ここで一つ注目すべきは、青のデータです。イノベーター・アーリーアダプター企業の86%が早くから生成AIを活用しており、6%もの収益増加がすでに認められています。これがグローバルの生成AIの活用状況です。

しかし、日本の生成AIの活用状況は、2023年は「試す」フェーズ、2024年は、「AI推進組織の立ち上げ」「プラットフォームやポリシーの整備」など、社内業務の改善や業務に適用するフェーズです。

今回のテーマであるコーポレート職の方々が、社内で試してみて、どんなところで使えるか、PoC技術実験の検証をしているフェーズなのです。

Googleの生成AIに関しては、AIと生成AIの関係について簡単に説明すると、まず広義でのAIですね。昔から人工知能AIみたいな一般用語として使われているAIがあります。

その中に様々な生成AIの実装の仕方があり、その1ジャンルである機械学習の方法論のアーキテクチャの一つとして、ディープラーニングという技術を用いたモデルが生成AIです。テキストを生成したり、画像を生成したりすることができます。

生成AIこの2~3年くらいで、急速に性能が伸びてきて利用者も増えている状況になりました。『Gemini』もその生成AIモデルの1つです。

生成AIの特徴は、莫大なデータを与えて学習することで、あたかも人間と会話しているかのような高度な知能を持つようになります。例えば、文章を作成したり、その続きの推測を繰り返したりするなどです。

一方で、注意点もあります。論理的な問題であったり、文章を推測することは得意なのですが、数値比較など、得意ではない側面もあったりします。

モデルやバージョンによっても異なりますが、例えば、「9.9と9.10どちらが大きい?」と聞くと、「9.9と9.10としたときに、整数部分は同じ9です。小数部分を比較したときに9と10なので、10の方が大きいです。だから、9.9より9.10の方が大きいです」などと生成AIが答えることがあります。

ですので、得意なところ、苦手なところを適切に知った上でご利用いただくのが非常に大事なんじゃないかなと思います。

Googleイベント風景

Gemini 1.5 Proで何ができるのか、特徴を紹介

続いては、Google Cloudが提供しているGeminiの特徴をご紹介します。
まず一つ目が、大量のデータを読み込めることを活用した事例です。アポロ11号の着陸、月面着陸の音声記録ですね。

これは、アポロ11号の音声記録402ページのPDFをGeminiにインプットして、そのインプットしたPDFに対して、「このシーンはどこだい?」と聞くと、ちゃんとPDFの意味をわかった上で、どういうシーンかというのを的確に回答しています。

また、Geminiには非常に大量のデータをインプットできるとともに、インプットできるフォーマットも非常に多様になっています。

別の事例にはなりますが、約1時間の無音動画をGeminiにインプットをして、それを理解させた上で、「どんなシーンだったか」を聞いてみると、これは「○○なシーンです」と説明してくれます。ちゃんと意味をわかった上で回答してくれるところが、Geminiの大きな特徴だと考えています。

Geminiが読み込めるフォーマットとデータについては、動画だと大体2時間ぐらい、音声だとほぼ丸一日ぐらいですね。ソースコードを理解することもできますし、当然画像も入れてあげることもできます。

コーポレート職に限らず、社内の膨大なアセット資料をインプットして利用することができるというのが大きな特徴になっております。

ルールをインプットしてGeminiに学習させることが大切

実際どういうふうに学習させるかというイメージが、以下のスライドになります。これはあくまでイメージですが、文章のチェックさせたいことやマーケティングのルールを学習させます。

例えば弊社の場合、アルファベットに関して「半角でインプットしてください。前後には必ずスペースを入れてください」というルールを学習させ、良い例、悪い例みたいなものを列挙してあげて、ベースを作ってあげることで、チェックしてくれます。

場合によってはその法務のルールや人事のルールなどもインプット、学習させることが可能となるのが、Geminiの特徴です。

小売り・医療・金融サービス・メディア・製造・公共などでユースケースも

活用事例はすでにたくさんあります。例えば、金融サービスであれば、アンチマネーロンダリング、小売りであれば、eコマースの商品データの自動生成サポートなどがあります。また、コールセンターでの問い合わせをチャットボット回答するなど、オペレーターをサポートするアプリケーションなどにも活用されています。

今回はコーポレート職を中心に、社内の生産性向上にどのように活用できるのかについてお話しましたが、2024年からは本格的に業務への適用が始まっています。来年からは、生成AIの活用もメールやスプレッドシートなど、一般的なコモディティツールなどのように広がっていくでしょう。

「自分に使えるのかわからない」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そこは安心してください。ツールに組み込まれた形で自然と使えるようになってくると思います。

生成AIが向かう未来。Google Cloud 『Gemini』が目指す姿と生成AI活用の捉え方

最後のテーマは、「生成AIが向かう未来、Google Cloud Geminiが目指す姿と生成AI活用の捉え方」です。こちらのテーマでは、生成AIの未来についてお話しします。

Geminiはいろいろなフォーマットや大量のデータも取り扱えますが、どのように活用していくのかは、まだまだこれからの段階です。今回紹介した動画ビジネスなど、様々な領域で活用できるように、強化していきたいと考えています。

「ロングコンテキスト」については大量のデータをインプットできるので、可能性としてどんどん広がっていくと思います。「AIエージェント」とモデルの「領域特化型」は、生成AI全体としてのトレンドですね。昨年は「試す」で、今年は「実装する」というところから、来年は「生成AIに何かを実行させる」というところが伸びていくでしょう。

生成AIが入ることで働く人たちの働き方みたいなところに変化が生まれてきたり、不安を感じたりする方もいるかもしれません。

しかし、先述の通り、生成AI自体はすごいAI知能を持っているみたいに見えて、ある意味単なる分類機であり、言うなればアルゴリズムでしかないんです。それに対して確実に企業として、過去の事例やフォーマットなどのデータを学習させるためのデータを準備する必要があります。

ルーチンでできるものは、形式知化して文章化し、生成AIに任せる。問い合わせ対応などの単純業務は生成AIにやってもらい、よりクリエイティブなところに人の力が使えるようになるといいのではないでしょうか。特にこれから先、労働力人口が減っていく可能性を考えると、生成AIと人とが力を合わせる世界となるんではないかと思います。

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