
「ライバー」や「投げ銭」といった言葉が定着し、ライブ配信市場が盛り上がりを見せる中、2022年に後発プロダクトとして登場したのが、コミュニティ型ライブ配信プラットフォーム『Palmu(パルム)』です。ブロックチェーン技術を活用したWeb3型サービスとして注目を集め、設立3年で累計9億円以上の資金調達を達成しています。その立役者が、株式会社Lightの代表取締役・金 靖征氏です。東京大学在学中に起業した会社を12.5億円で売却したという経歴を持つ若手起業家が、次なる挑戦の舞台としてライブ配信市場を選んだのはなぜなのか。自身の歩んだ道のりや、株式会社Lightの展望について話を伺いました。
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| 年収 | 600~1000 万 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社Light |
| 勤務地 | 東京都 |
| 職種 | プロダクトマネージャー |
目次
起業は手段か?目的か?成功の先に生まれた問い
── 金さんは、大学在学中に起業し、1社目の事業を12.5億円で売却したのち、2社目となるLightを立ち上げられています。学生起業に至るまでのことを教えてください。
1社目を起業したのは、大学3年生の時でした。株式会社Candleという会社で、月間2000万ユーザーほどの女性向けWebメディアを運営していました。もともと家族や親族の影響でビジネスの世界には興味を抱いていたものの、起業家を志していたわけではありません。田舎で生まれ育ち、バスケ漬けの毎日を送る少年時代でした。本格的に行動を起こすきっかけになったのは、大学1年で入った起業サークルです。
そこで私は、「起業」と「経営」は全く異なるものだと学ぶことになります。経営は、いわゆる経営学のことです。組織をマネジメントし、市場での競争力の維持していくことですが、その一方で、起業とは「ゼロからイチを生み出していく」ことなのだと学びました。
この経験は起業からでしか得られないと思い、1日でも早く実践するべく、株式会社Candleを立ち上げることにしました。当時、業界の第一線で活躍するような経営者や投資家、今では名の知れた同世代の若手起業家たちが多く出入りしていた、渋谷のベンチャーキャピタルにお世話になりました。そこでの経験が、自身の世界を大きく広げてくれたと思います。
Candleは順調に成長し、確かな手応えを感じていました。そして、立ち上げから2年後、株式会社Croozへの事業売却という決断をします。キュレーションメディアは不特定多数のユーザーに役立つ情報を届けられる事業。しかし、このサイトがなくなっても、ユーザーの人生に大きな影響はないかもしれないーーこのビジネスの持つ影響力に疑問を感じはじめていました。
── そこからLightの立ち上げまでを教えてください。
1社目の売却が、自分のキャリアを棚卸しする良い機会になりました。起業家たちがよく口にする言葉に「起業とは、手段なのか目的なのか」というものがあります。もちろん手段に過ぎないのですが、当時の私は “一旗あげてやろう”という気持ちの方が強く、起業を目的にしてしまっていたのだと思います。とはいえ、売却額の大きさも相まって業界から注目されるようになり、初めて「何者か」になれたかもしれない、という手応えはありました。だとしたらこれから先の人生で、この影響力を使って、自分が心からやりたいことは何か。どういう自分でありたいのか、見つめ直したのです。
何歳までに何を達成するのか、具体的なプランを立てていく中で、最終的に大きく2つのテーマを設定しました。1つ目は、「人や社会にポジティブな影響を与えること」です。目の前の人を笑顔にできるような仕事がしたい。すごくシンプルなことですが、自分がビジネスをする理由はこれに尽きると思いました。自己満足かもしれませんが、誰かを幸せにできた、という実感を持てる人生にしたいと思ったのです。
2つ目は、「グローバル市場を目指すこと」です。自分が生み出した価値を、1人でも多くの人に届ける。社会をポジティブに変えていくためには、影響力が必要です。なにより、そこまでの意欲と覚悟がなくては、本当に誰かを幸せにできるプロダクトなどつくれないと思います。
1社目を手放したおかげで自分と向き合え、「起業」の先にある本当にやりたいことを見つけられました。Candleという1本に過ぎない〝灯火〟から、もっと広い世界を幸せに照らせる〝光〟になれるようにーー。そんな想いを胸に、株式会社Lightを立ち上げたのです。

英語が話せないまま、サンフランシスコへ。起業家としての“修行旅”
── Lightの起業にあたり、苦労したことを教えてください。
“グローバル市場を目指す”と掲げたのは良いものの、とても現実的とは言えない状況でした。実は、ほとんど英語が話せなかったのです(笑)。ならば、「嫌でも話さなければならない環境に身を置いてしまえ」と、サンフランシスコに旅立ちました。語学力の向上はもちろん、ゆくゆくは海外の投資家や企業とのリレーションも必要になりますから。起業家としての、いわゆる修行旅です。
しかし、22歳の日本人起業家が、突然サンフランシスコに行っても相手にされるはずがありません。あれこれと考えを巡らせ、日本で起業しているアメリカ人の知り合いに連絡をとりました。「日本の人脈を紹介するので、現地のコミュニティに入れてもらえれないでしょうか?」と。その方のご厚意があり、サンフランシスコの若手起業家が集まるシェアハウスに入居できたのです。
── シェアハウスでの経験はどうでしたか?
史上最年少でユニコーン企業をつくった起業家や、すでに数億ドル規模のビジネスを動かしている同世代との共同生活は、忘れられない経験になりました。語学力の低さのために彼らの議論についていけず、悔しい思いをした場面は数えきれません。それでも、語学学校の勉強の合間をぬっては、彼らと遊びに出かけたり、食事をとるようにしていました。吸収できることはすべて吸収しようと必死でした。
1年半が経った頃に帰国を決めましたが、羽田に向かう機内ではずっと、頭の中にひとつの考えが巡っていました。自分がグローバル市場に挑戦できない理由なんてない。たしかに彼らは優秀だし、挑んでいる市場規模が桁違いなのも確か。とはいえ、同じ20代でただ何かを成し遂げたいという強い志は、自分とまったく同じではないか。「世界を変えているのは、特別な天才なんかじゃない!」と気付けたのが、渡米のいちばんの収穫でした。
── そして帰国後、本格的に株式会社Lightを始動したということですね。
サンフランシスコ滞在中に、シード投資で4億円の資金調達を達成していました。当時、投資家に見せた事業計画書はわずか8ページで、しかも、ライブ配信ではなく“マッチングアプリ”の事業です。コロナ禍で外出自粛が増え、オンラインサービスのニーズは急激に高まっていました。しかも、結婚は誰にとっても大切な転機ですから、そのきっかけづくりという社会的意義があるのは間違いありません。ところが、日本においては“出会い系の延長”という印象が強く、CMや屋外広告を打つのもグレーな空気があったのです。本当は価値あるサービスなのに、過小評価されているのではないか。価値を伝え続けることを諦めなければ、世間の評価は後からついてくると確信しました。

とあるサービスに見た“帰属欲求”がヒントに
── その後、ライブ配信サービスへと事業転換されたのはなぜでしょうか?
帰国後、起業メンバーの2人と合流して市場調査を進める中で、中国のとある婚活マッチングサービスに出会います。“仲人”を中心とした小規模コミュニティがオンライン上で形成され、彼ら彼女らを慕うファン同士が紹介されて出会うという仕組みでした。男女として出会うというより、コミュニティの一員としてつながる感覚です。このサービスの盛り上がりを分析するうちに、あることに気づきました。人は「恋愛したい」「結婚したい」という思いのもっと前に、「他者から受け入れられたい」という帰属欲求があるのではないか。結婚や恋愛は、その欲求を満たすための手段のひとつに過ぎず、本質的には「自分の居場所がある」と感じられることが重要なのではないか。その仮説のもと、オンラインで気軽に心を満たせるコミュニティがあれば、社会はもっとポジティブになると考え、目をつけたのがライブ配信でした。
すでにライブ配信市場は成長しはじめていましたが、その多くはエンタメ要素が強かったと思います。TikTokやYoutubeに比べるとコミュニティ感は強くありましたが、人気ライバーが中心にいてリスナーが応援するような構造で、たとえるなら、人気アイドルとファンクラブのようなものです。しかし、それでは帰属欲求を満たすには不十分だと思いました。私たちが目指すのは、学校のクラスのような小規模なコミュニティです。全員が互いを認識し、「自分はこのクラスの一員だ」「ここにいてもいい」と感じられる。リスナーも含めた“みんなが主役”になれる場所をつくりたいと考えました。そして、“心をつなぐライブ配信プラットフォーム”と名づけて、2022年にα版をローンチしたのが『Palmu(パルム)』なのです。

“Web3×ライブ配信”で実現する、誰もが居場所を持てる世界とは?
── 『Palmu(パルム)』の特徴について教えてください。
大きな特徴は、「Web3の思想を取り入れた“分散型”プラットフォーム」というコンセプトです。従来のSNSやライブ配信は、すべてのデータやルール・取引を運営会社が管理する、Web2型が主流でした。ライバーやインフルエンサーがどれだけ頑張っても、結局はプラットフォームの運営会社が最も大きな利益を得る構造です。一方、Palmuではブロックチェーン技術の活用より、ライバーやリスナーが自在に経済的インセンティブを共有できる仕組みにしたいと考えています。というのも、従来も「投げ銭」という仕組みはありましたが、リスナーからライバーへの一方的な支援に過ぎません。アプリ内で独自のトークン(暗号資産)を発行できるWeb3型なら、コミュニティを盛り上げてくれたリスナーにも収益を還元できます。応援するライバーが活躍し、所属するコミュニティが活性化されるほど、全員が豊かになっていく。リスナーは“プロデューサー”のような立場で、ライバーとコミュニティの成長を楽しむことができるわけです。この仕組みは、現在はまだ開発途中となりますが、これから本格的に導入を進めていきます。
── Palmuとしての、直近の目標を教えてください。
α版をローンチして2年。現時点では、本来のコンセプトである“みんなが主役”の配信プラットフォームとしては道半ばです。オリジナリティと競争力をさらに高めるべく、導入準備を進めている仕組みが、大きく2つあります。
1つは、「コミュニティランク制」の導入です。従来のライブ配信サービスでは、ライバーを順位づけし、そのランクに応じて利益還元するのが主流でした。その評価対象の範囲を、ライバーだけでなくコミュニティまで広げてみようというわけです。一人ひとりのコミュニティへの貢献度が、ランキングという形で目に見えるのは非常に面白いのではないかと考えています。
もう1つが、コミュニティの活性化をサポートするような「AI機能」の実装です。Palmuの配信者は、インフルエンサーやアイドルなど、発信力がある人ばかりではありません。普通の主婦や学生、サラリーマンなど、初めて配信に挑戦するすべての人が、安心して成長できるように仕掛けが必要なのです。
この2つは、数ある構想のうちの一片に過ぎません。こうしたPalmuならではの技術を開発し、ゆくゆく他領域に応用するかたちで、グローバル市場へ事業展開を目指したいと考えています。

ユーザーにとっての本質とは何か?を追求し、成長を続ける企業へ
── 今後、どのような組織を目指していきたいですか?
組織としては、Palmuという独自プロダクトを世間に広め、成長させていくフェーズにあります。2022年にわずか3人でスタートしたチームも、今では40名を超えました。この短期間で多くの仲間がLightの価値観に共感し、参画してくれています。
私がメンバーによく伝えているのは、「ユーザーにとって本当に価値のあるサービスとは何か?」を常に優先して考えてほしいということです。他社との競争や目先の利益を追うのではなく、人や社会にとって本質的に意味のあるサービスを生み出せる会社でありたいと考えています。
たとえば、有名なライバーや芸能人を起用したり、登録プロセスを簡易化して、配信者やリスナーを急増させることは容易です。しかし、私たちのユーザーが求めている本当の価値は「心のつながり」にあると考えたとき、それでは本質を見失ってしまいます。そのため、Palmuではローンチ後の1年間、あえて運営の審査を厳格にし、一定水準以上のライバーのみが配信できる仕組みにしていました。その結果、誰もが安心して参加できる“治安の良い”ライブ配信プラットフォームとして、一定の評価を得ています。ユーザーにとっての本質を貫く姿勢が成長につながり、さらには市場を育てることにもつながる。この考え方に共感できる方であれば、長く働いていただけると思います。
加えて、これは個人的な目標になってしまいますが、1社目ではプロダクト開発や起業について学ばせてもらったので、そこは継続して知験を活かしつつ、この先は“強い組織”を育てる経営にも注力していきたいと考えています。プロダクトは時代や市場の変化とともにいつか限界が訪れるものですが、企業というのは時代を超えて、成長を続けていけますから。Lightがどこまで強いチームになれるか、世界に通用する企業になれるのか、見てみたいのです。もし今「100億円で売却しないか」と持ちかけられても、迷わず断ると思います(笑)
── 最後に、読者に一言をお願いします。
Lightはまだまだ、これからの会社です。事業をスケールさせる過程では、きっとたくさんの困難や障壁に直面するでしょう。実際、今も仲間たちと「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤を重ねながら、手探りで進んでいる最中です。でも、1社目での経験を振り返ってみると、この成功への道のりこそが、最も楽しい時間だったと思います。誰もが居場所を持てる世界――そんな心からワクワクできる未来に向かって、時間とお金を惜しみなく投じ、仲間とともに進んでいく。この1日1日が、私にとっての幸せであり、人生を照らす “Light”です。この先どれくらいの時間がかかるかは分かりませんが、この道のりを共に楽しんでくれるという方がいたら、ぜひお会いしましょう。

株式会社Lightが募集している求人はこちら
| 年収 | 600~1000 万 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社Light |
| 勤務地 | 東京都 |
| 職種 | プロダクトマネージャー |
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。