30倍成長の鍵を握るのは、お客様視点の独自システム。

「すき家」に「はま寿司」「ココス」「なか卯」。多くの方が一度は利用したことがあるであろう飲食チェーン店を運営するのが、ゼンショーホールディングス。外食企業として国内1位、世界で見てもトップ10に入る売り上げを誇る国内最大手外食チェーンです。そんなゼンショーホールディングスの躍進を支えてきたのは、内製によって生み出された独自システムの数々。今回は長年にわたりIT部門のトップとしてゼンショーの技術革新を進めてきた野々下さんをはじめ、エンジニアの皆さんにお話を伺っていきます。

野々下 信也

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藤家 空太郎

2023年入社。学生時代は、はま寿司でアルバイトとして勤務。新卒採用で正社員として入社し、現在は海外店舗のシステム開発を担当している。

江川 桃香

2020年入社。新卒で入社したのち、文系出身ながらIT部門に配属され、現在は社内のワークフロー改善を任されている。

島本 道夫

2022年入社。前職のSIerを定年退職し、現在はIT部門の人事担当として主にIT人財の増強と育成を推進している。

そのブランドらしいシステムを、お客様起点で生み出していく。

── 野々下さんはゼンショーホールディングスのIT部門立ち上げからご参加されていたと伺っています。IT部門発足の背景とともに、貴グループにおけるIT部門の役割について教えていただけますでしょうか?

野々下:ゼンショーがここまで事業を拡大できた要因の一つはM&Aです。IT部門がまだなかった当時は、各社各ブランドで業務プロセスがバラバラでした。そのため、それらを標準化して統一し、さらに競争力を高めることがIT部門の急務でした。具体的には、ゼンショーの特徴のひとつであるMMD(マス・マーチャンダイジング・システム:原材料の調達から製造・加工、物流、販売までを一貫して企画・設計、運営するゼンショー独自の仕組み)のうち、全ブランドに共通する上流から徐々にシステムを統合していきました。バックオフィスではERP(個別の業務システムを統合的に管理する基幹システム)のパッケージソフトを採用していますが、MMDという独自の仕組みに対応しうるシステムは、オリジナルで内製することが必要でした。現在も、上流のシステムはもちろん、店舗でのオーダーシステムなどを含めて内製で開発しています。

── 貴グループは飲食ブランド数が多いからこそ、統合にも相当なご苦労があったように思います。一方で、内製されているからこそ感じられる開発の魅力もありそうですね。

野々下:そうですね。業態ごとで全く異なるシステムの開発に、要件定義から携われるので面白いと思いますよ。例えば、すき家でもココスでも、各席にセルフオーダー端末を設置していますが、入力方法には大きな違いがあります。おひとり様が多いすき家ではメニューブックは置かず、端末で画像を見て注文が完結する仕組みをとっています。一方、家族連れや学生などグループでのご利用が多いココスでは、タブレットの情報からメニューを選ぶ仕様にすると、全員が注文を終えるまでにどうしても時間がかかってしまいます。さらにココスはレストランなので、見た目をより重視したいという思いもありました。そこで、メニュー選びは写真の映えるメニューブックに任せて、タブレットは番号入力方式を採用して注文のみに役割を限定させました。

中には、ブランドにあわせて新しいシステムを開発することもあります。はま寿司の「レーンオーダーシステム」がその一つです。注文用のタブレットとは別に、横長のタブレットをレーンの上部に設置して、画面上にお寿司の画像を流したんです。最近はお寿司が回っている風景を見なくなりましたよね。かつての楽しさや、流れてくるお寿司との偶発的な出会いが作れないかということで生まれたシステムです。気になるお寿司があれば、クリックしてその画面上からも注文ができます。既製品のタブレットでは操作のパターンなどの縛りがありますが、内製してオリジナルで開発するからこそ「これでもか」というくらいに現場を考えた仕様が実現できるんです。まさに、ゼンショーだから作れた特注のシステムですね。

エンドユーザーとの近さが、システムの質を上げる。

── IT部門で活躍するメンバーの皆さんにとって、ゼンショーでエンジニアとして働く魅力をお伺いできますでしょうか。

藤家:大きく二つありまして、ひとつはエンドユーザーとの距離の近さです。少し前まで勤務していた事務所の近くには、すき家もはま寿司もあったので、よく昼食で利用していました。自分自身がお客様としてシステムに触れ、周りのお客様がどのように操作しているのかを間近で見られるのはシステム開発に携わる上ですごくありがたい環境だと思います。やりがいにもつながりますし、さらなる改善のヒントをつねに探っています。新規システムを担当した場合には、店舗の厨房に入ってオペレーションを体験したり、従業員の皆さんに話を聞いたりすることも多いです。現場現物を確認することで、新しい課題を発見することにつながります。

もうひとつ魅力として感じているのは、システムを入れることでお店の業務自体を変えられることです。外注では現行の業務ありきで、システムが合わせにいく必要があります。ですが、内製だからこそ「こういうシステムを作ったら業務をこう改善できるのではないか」という全体最適を考えた提案ができるのです。だからこそ、ゼンショーは独自性のあるシステムが生まれているのかもしれません。

江川:私は店舗ではなく社内のシステムを担当していますが、同じくエンドユーザーからの声を拾いやすい環境を実感しています。社員が実際に使用しているシーンも目にしますし、本当に役に立っているのか、さらに改善できる点はどこかなど、気付きやすい環境だと思います。導入後に実際何%の人が利用しているのかなども社内だからこそ把握できるので、改善につながりやすいと思っています。

島本:システムを開発して終了ではなく、その後のさらなるアップデートも担当できるのは意外と大切です。社内ではなく、外注で案件を受けている立場だと、プロジェクトが終了したらその案件からは完全に離れてしまうので、その後を追うことはできません。自分の携わったシステムに責任を持って、大切に育てていけるのも、魅力のひとつだと思います。

食のインフラとしての、ゼンショーホールディングス。

── ゼンショーホールディングスでは、どのような人材を求めているのでしょうか。

野々下:スキル面でいえば、システム開発に必要な技術的な知見が求められます。私たちの主な仕事は要件定義です。日本で要件定義を行って、それを海外のメンバーに共有して実装してもらう。そのため、大手企業でベンダーコントロールに注力している方よりも、現場の人たちと一緒に要件定義からコーディングまで携わっているような人が向いていると思います。

マインドの面では、ゼンショーの掲げる「食を通じて、人類社会の安定と発展に責任をおい、世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念への共感を大切にしています。とても壮大な内容ではありますが、根本には協調の考え方があると思っています。どんな仕事でも本気でやっていると、対立することがありますよね。そうしたときに自己中心的な考えにならず、どうしたらお客様にとってより使いやすいシステムになるのか、どうしたら会社として良い方向に進めるのかを考えなければいけません。協調性は、良い仕事をするために欠かせないのです。

── 働かれているなかで、企業理念の実現に貢献できている実感はありますか?

藤家:私が企業理念を実感できたのは2024年1月に発生した能登半島地震の被災者支援に参加したときでした。私が被災地を訪れたのは、震災から約2週間後です。震災以降、断水が続いていることもあり、被災地に近づくにつれて、営業している飲食店もほとんどなくなっていきました。ただ、その中でもゼンショーグループのお店だけは営業を続けていました。食のインフラを提供するという覚悟を感じながら、目的地である避難所に到着。周辺では多くの建物が倒壊し、土砂崩れも起きていました。震災から2週間経って、やっと水道が復旧した頃だったそうです。かろうじて救援物資は届くものの、毎日の食事はパンやおにぎりばかり。到着したすき家のキッチンカーの周りには、すぐに人だかりができはじめました。「できたら中に持っていきますね」と声をかけながら急いで調理して、提供したのは、できたて熱々の牛丼。北陸の1月、雪の降る寒空にもかかわらず、「あったかいごはんが久しぶりに食べられて本当に嬉しかった」とわざわざキッチンカーまでお礼を言いにきてくださる方もいました。皆さんの「ありがとう」の一言一言が心に沁みました。人にとっての「食」が心を支えてくれるインフラでもあるんだという事実を目の当たりにした出来事でした。

正直なところ私自身も、初めてゼンショーの企業理念を知ったときは、規模が大きすぎないか?と思っていました。ただ、就職活動の中でよくよく話を聞いていくと、それを達成するまでのマイルストーンが全て具体的に組まれていました。壮大な企業理念はゼンショーにとって「手の届く未来」なんだと感じました。

オフラインのコミュニケーションで、30倍成長を掴み取る。

── 働き方についてもお伺いできればと思うのですが、特徴的な点や工夫されている点を教えてください。

野々下:システム系の職種では珍しいかもしれませんが、ゼンショーのIT部門の勤務形態は原則出社にしています。先ほども申し上げた通り我々の仕事は要件定義が主です。チームのみんなが本当に納得してくれているか、理解してくれているかを、表情から汲み取りながら丁寧に進めていく必要があります。もちろん海外メンバーとの打ち合わせはオンラインですが、要件定義はシステムの方向性をまさに定義するフェーズです。だからこそ、顔を合わせて本音で話し合うことを大切にしています。

藤家:ゼンショーのスピード感を維持・向上していくには、出社はマストだと私も思います。私の場合は海外との連携が多いポジションなので、各国から毎日のように課題や要望をいただきます。もしテレワークでプロジェクトメンバーが個別にそれらの連絡を受けると、共有だけで時間がかかり、対応が遅くなってしまいます。ですが、今は全員が出社しているからこそ、隣にいるメンバーに「この件なんだけど」とすぐに連携できるんです。本部には立ってミーティングを行うスペースもあって、相談した流れで短時間でミーティングをして、方向性を定めて、「じゃあこれで対応しましょう」と次のフェーズに移ることができる。このスピード感は、ゼンショーの強みにもなっていると思います。

江川:私はもともとIT関連の知識がなかったからこそ、対面で気軽に相談できるのがとてもありがたかったです。テレワークだと今相手が何をしているかがわからないから電話するにも少し抵抗があったんです。社内の連携のしやすさは、案件の推進力を高めるだけではなく、個人のスキルアップを早めることにもつながっていると思います。

── 最後に、野々下さんから読者の皆さまへメッセージをお願いできますか。

野々下:ゼンショーには「30倍成長」という合言葉があります。創業以来、約15年の周期で売上高を30倍成長させてきました。そして今は、売上高15兆円を目指しています。2025年の3月期で売上高1兆円には至りましたが、あと15倍をこれから作り出さなければいけない。そのためには、IT部門の飛躍が欠かせません。ひと通りのシステムは、確かに揃っています。ありがたいことにゼンショーのシステムは他社からも高い評価をいただいています。ですが、まだまだなんです。売上高15兆円を成し遂げるには、全く足りていません。BPOセンターの本格運用、対世界のセキュリティ構築……。他にもブランドごとの細かなアップデートも急がなければいけない。やるべきことは山ほどあります。つまりは、まだ何も完成してないんです。これからやれることがたくさんある。ゼンショーの30倍成長を、IT部門の力で一緒に成し遂げましょう。

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