「チェンジング」から新たなマーケットとブランドが生まれる

創業から48年の歴史を持ち、4代目社長への交代という大きな節目を迎えたプロトコーポレーション。同社は今年、東証プライム市場からの非上場化という大胆な決断を下し、さらに事業ポートフォリオを「経済的事業」と「社会的事業」に組み換えました。この大変革を、人事部門はどのように捉えて、今後の社員のキャリアと成長に何を求めているのか。同社管理部門執行役員の福本淳氏に、変革期の組織と人材戦略について伺いました。

福本 淳

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「変化への対応」から「場を作る」組織へ

── 本年4月にMBO(マネジメントバイアウト)を果たし、プロトコーポレーションは上場を廃止しました。6月には代表取締役社長が交代し、事業ポートフォリオの組み換えという、大きな経営戦略の転換を発表されました。人事部門として、この変革をどのように受け止めていますか。

まず大前提として、当社は2020年から「チェンジングカンパニー」~〝挑戦し続けることで変化(チェンジング)を生み出す〟という企業目標を掲げて事業を推進してきました。しかし、改めて足元を見つめ直してみると、「変化へ対応」しているうちは、変わり続けるマーケットに対して常に後手に回ってしまっているのではないか、という危機感を持つようになりました。私たちが掲げた企業目標を実践するには、環境変化に対応するのでは、すでに遅いということに気づいたのです。

GAFA(「Google」「Apple」「Facebook(現Meta)」「Amazon.com」)のような企業は、皆プラットフォーマーであり、「場」を作ったからこそ主導権を持って事業を推進しています。既存のマーケットでシェアを拡大し合うだけでは、大きな変化も成長もないでしょう。私たち自ら「チェンジング」を起こし、新しい変化を生み出す場を作ることが、今後の大きな流れになると考えています。

── 新たな事業への挑戦には、リスクも伴うのではないでしょうか。

自動車販売の国内マーケットは、この先厳しくなると誰もが思っています。先ほども申した通り、従来と同じビジネスモデルでマーケットシェアを拡大し続けるだけでは、大きな成長は見込めません。私たちは創業時に「グー」という、当時存在しなかった「クルマ探しの情報誌」というメディアを自ら生み出しました。同様に、もう一度原点に立ち戻って、まだ世の中にないもの、それがあったらたくさんのお客様に喜んでいただけるものを、新たな市場に投入していく考えです。世の中が変わったから自分たちも変わる、という受け身の姿勢ではなく、私たちが世の中に新しい場をつくる、つまりチェンジングを自ら起こすことが、会社の未来にとって不可欠だと認識しています。

非上場化がもたらす「社員の想いの実現」と「スピード感」

── その変革の核となるのが、東証プライム市場からの非上場化です。管理部門の責任者として、この決断の背景にあるメリットをどのようにお考えですか。

非上場化は、社員全員の想いを最速で、確実に実現する環境を作るという、非常に大きな目的がありました。東証プライム上場企業というブランドは確かに価値のあるものですが、その場所に居続けることが私たちらしい生き方か?と問われると、長い目で見たときにそうではなかった、と考えています。上場し続けることで得られるであろう当社のメリットとデメリットを考量したとき、東証ブランドに依存するよりも当社が主体的に新しいブランドをつくっていく方がメリットは大きいと考えたのです。

当社の想い、それは「創業時のようにユーザーや業界からプロトコーポレーションがいてくれてよかったと言われる企業でいること」です。この想いを、自由度が高く、最も速いスピード感で実現するには、非上場という環境に身を置くことが最適であるという経営判断に至ったわけです。これは、社員が思い描く新しいチャレンジを、制約なく実現できる場を提供することに直結します。

「地方創生と社会課題への布石」農業・養殖・旅行事業の広がり

── 既存のモビリティ領域を含む「経済的事業」に加え、新たに事業ポートフォリオに「社会的事業」としてスポーツ、農業・養殖、そして地域創生といった分野を組み込まれています。この社会的事業は、人事・採用戦略とどのように結びつくのでしょうか。

新しい事業ポートフォリオは単体ではなく、プロトグループの連結で組み換えています。「経済的事業」には、モビリティやリユースなどが含まれ、これらはプラットフォーム化していくことで利益をあげるフレームワークになっています。一方、「社会的事業」は、琉球ゴールデンキングスをはじめとしたスポーツや農業・養殖、地域創生などで構成しており、プラットフォーム化することで利益をあげるフレームワークと表現した経済的事業とは異なり、「社会的事業」の使命はブランドづくりにあります。

特に国内においては人口減少や温暖化等による環境変化が進み、現在の枠組みでは解決しえない社会的課題が山積しています。私たちはこうした難題に真摯に取り組み、プロトにおいてでしかできないやり方で、例えば、農業生産物や水産物の食料自給率を上げるとか、スポーツや観光を通じて地域の活性化を図るなど、社会課題の解決とともに新たなブランドづくりをしていきたいと考えています。

現在、琉球ゴールデンキングスが「沖縄をもっと元気に」をキャッチフレーズに地域を盛り上げているように、地域とともに成長を果たすのは当社の伝統的なやり方でもあります。「グーネット」も、もともと地域別に発行するクルマ情報誌であって、それぞれの地域で読んでいる人がワクワクドキドキいただけるエンターテイメントを売る商品でした。農業・養殖やスポーツもその延長線上、同じ路線にあると位置づけています。

── スポーツや農業・養殖といった、自動車事業とは一見遠い事業に進出されたきっかけを教えてください。

端的に言えば、事業領域が偏重するリスクを低減する必要性が前提にあったことも事実です。その上で、単に得意領域を拡大するのではなく、未来社会にあって欲しいものや当社が持つ技術やノウハウを活かせる市場を検討する中で生まれた発想なんです。地方創生という側面で言えば、スポーツが地域を盛り上げているのと同じように、農業や養殖の事業も、地域を盛り上げるためのブランド作りであると位置づけています。

具体的には、愛知県の東郷町では水耕栽培のトマトブランド「Toma ROSSO(トマロッソ)」を、愛知県の知多半島にある美浜町で、ふぐ・うなぎの養殖(「知多ふぐ」「知多うなぎ」)に取り組んでいます。特にToma ROSSOは、生産が追いつかないほど人気商品に成長しました。名古屋市の覚王山にて店舗を持つ飲食事業の「BoostBurger(ブーストバーガー)」では、Toma ROSSOのトマトや地元食材を使ったオリジナルハンバーガーをご提供していますが、美浜町の地域イベントでもキッチンカーでふぐバーガーやうなぎバーガーを提供するなど、この地域とのシナジーを生んでいます。

これらの事業は、農業生産物や水産物の国内生産量が減っているという社会的な背景への布石でもあります。おいしい野菜や魚が手軽に食べられなくなるという未来に対し、今、対策を打っておきたいという考えです。

── 旅行事業も社会的事業に含まれるとのことですが、こちらはどのような狙いがありますか。

旅行事業である「グートラベル」は、新しい旅の在り方を提案する事業として立ち上げました。2024年からグループ入りをした「観光経済新聞社」が持つブランド「5つ星の宿」とのシナジーがある高付加価値な旅行商品を、例えば当社が持つモビリティ―市場に投入することで、クルマで出かける旅の新しい価値を生んでいます。

若い世代はその親世代に比較すると、車そのものを保有するステータス感が薄れ、モノより出来事(コト消費)を重視します。車はレンタカーでよく、車で旅行に出てどんな思い出を作るかに大きな価値を見出しています。私たちの旅行商品は、よりローカルな情報を生かし、地域に貢献していくための商品になっていくと考えています。

人事責任者が社員に求める「人生の物差し」の拡張

── 新しい事業が次々と立ち上がる中で、社員の皆様にはどのようなキャリアを描き、成長してほしいとお考えですか。

最近の働く人は、自分のスキルや経験値の目標を具体的に持っていて、「お金で買えるスキル」を欲しがる傾向があります。例えば、ビジネススクールでマーケティング知識を身につけ、それを次のステップへ利用する。それは悪いことではありませんが、計画的に描いたキャリアというのは、往々にして自分の「今の物差し」の範囲内に留まってしまいます。

地方で採用された社員が、ある機会を通じて突然、未経験の事業(スポーツや旅行、農業・養殖事業)に挑戦することになるかもしれません。それは、本人が入社時に描いていたキャリアではないでしょう。ですが、経験の浅い人が持つ短い物差しで描いたキャリアでは、人材として想定通りにしかいかないと思っています。

私たちが社員に提供したいのは、物差しそのものを伸ばすような経験です。新しい物差しを手に入れることで、それまで想像もしなかった新しいキャリアが開けます。新規事業に携わることがゴールではなく、既存のビジネスで満足することもゴールではありません。それは、新しいキャリアを自分で作るための途中経過なのです。

── 社員のみなさんには、広い視野を持ってキャリアアップしてほしいという想いがうかがえます。

まさしくその通りです。私も若い頃、急激な組織変更や新規事業の早期撤退などに数多く直面し、なぜこのような決断をするのだろうと、当時の経営判断が理解できない場面が多々ありました。

しかし、創業者の近くで働き、時間の経過とともにその経営判断の背景や人生観を知ることで、「当時はなぜそんな視点を持てなかったのか」と内省することが多く、新しいモノの見方や考え方を発見できました。ビジネスとしての事業観、経営観、そして人生観がガラガラと変わっていく感覚を持てたのです。経営ノウハウやスキルはお金で買えますが、経営者の意思決定の背景や人生観といったものは、ビジネススクールや教科書では学べません。長く当社にいる人は、そうした経営の視点を学べた人たちです。

社員には、目の前の仕事を言われた通りにこなすだけでなく、自分の想いを込めて取り組むことで、モノの見方や考え方を変えてほしい。仕事を自身の成長につなげてくれることを期待しています。何度も直面する壁を越えて、人生の物差しそのものを大きく長くできる人が、当社の新しい変化を生み出す場で、最高のパフォーマンスを発揮できると確信しています。

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