「イノベーション・パートナー」として革新的医療を支え、世界の健康と福祉に貢献する。

テクニプラスト・ジャパン株式会社は、イタリア・ミラノに本社を持つテクニプラストグループの日本法人。ライフサイエンス発展のインフラともいえる、実験動物用ケージシステムや関連設備の製造・販売・サポートを行う。動物福祉と研究者の安全性を両立する革新的な製品を提供し、国内の大学・研究機関・製薬企業などで高い信頼を得てきた。世界的なネットワークと技術力を活かし、研究環境の改善と科学の発展に貢献している。

2025年7月に就任した新社長のもと、さまざまな改革や新たな挑戦の真っ只中にある同社。会社をどう変えていこうとしているのか。なににチャレンジしていくのか。どんなビジョンを描き、どんな人材を求めているのか。長瀬勝敏社長に話を聴いた。

長瀬 勝敏

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マエストロの手で生み出される、ライフサイエンスのインフラ

── 主力製品である「実験動物用ケージシステム」というのは、一般的にはなじみの薄いものだと思います。その役割についてあらためて教えてください。

長瀬:実験動物用ケージシステム(Laboratory Animal Cage System)は、マウス、ラット、ウサギなどの研究用動物を飼育・管理するための器材です。ヒトの臨床試験へと進める前に、候補化合物の有効性と安全性を評価する「非臨床研究」の段階に使われます。創薬研究・医薬品開発・再生医療といったライフサイエンスの発展に不可欠な、インフラの一部として位置付けられる製品です。

ケージといっても、ただの箱状の囲いではありません。適切な温度・湿度・換気・照明条件のもと健康を維持させながら、感染症・アレルゲンの拡散を防止することで、環境変動による実験動物のストレスを最小化する機能も備わっています。実験データの信頼性や再現性を向上させるために、欠かせないものです。

── 業界内における御社の位置づけや、強みはどんなところにあるのでしょう?

長瀬:テクニプラストは、実験動物ケージおよび施設システムの世界最大手メーカーの一つです。母体であるイタリア・Tecniplast S.p.A.は80年近くの歴史を持ち、世界60か国以上に拠点展開しています。イタリアには、いわゆるマエストロによって伝承されてきた工芸品の卓越した技術や経験がありますが、テクニプラストもまた、プラスチックやステンレスの成形というコア技術において、極めて高い技術を有しているのです。

私自身、社長就任前に訪ねていますが、約3万平方メートルの敷地を持つミラノ郊外の工場では、金型を自社で製作できる最新の射出成型設備や金属加工設備を有しています。ここを拠点として高品質の商品を生産するとともに、専門家や研究者の先生たちとのネットワークを活かし、新しい実験動物施設建設時や施設改修時におけるご提案を行ってきました。そうして、高品質・高信頼性・高統合性のブランドイメージを世界的に確立しています。

単なるケージ製造ではなく、施設設計からレイアウト・物流・洗浄・廃棄まで一括サポートしていることも大きな強みです。最たるものが、2015年頃から展開しているDVC™(Digital Ventilated Cage Management)、AI搭載個別換気ケージシステムになります。これにより、ケージ内の温度や湿度・気流・フィルター状態のリアルタイム監視が可能となり、AI解析との連携は、行動データや飼育パラメータの自動記録を実現させました。以前は数十・数百のケージを一つ一つ目視しながらチェックしていましたから、研究者たちの負担も大幅に軽減されることになったのです。

── その日本法人である御社は、どんな役割を担っているのでしょうか?

長瀬:テクニプラスト・ジャパンは、アジア市場における特に重要なハブであり、日本の製薬・CRO・大学・公的研究機関を対象に、先端的な飼育システムや自動化ソリューションを提供しています。国内にサポート・保守要員が常駐しているため、スムースにオペレーションを始められ、なにかトラブルがあっても研究を止めるようなことはありません。長期運用を見据えたメンテナンス体制を構築している点は、顧客からの支持を特に高めていると感じています。

イノベーション・パートナーという原点に立ち返って

── 2025年7月にテクニプラスト・ジャパンの社長に就任され、真っ先に取り組んだのが新規事業の活性化だと伺っています。

長瀬:テクニプラストのミッションは、“ライフサイエンスの未来を切り拓くイノベーション・パートナー”として、常にお客様とともに新しい価値を創り出すことです。当社はこれまでも、他社に先駆けて0→1でモノを創り出してきたのですが、この原点にまずは立ち返りたいと考えました。

ですから、新規事業の活性化と言っても単なる事業拡張でなく、「共創型のイノベーション文化」を育てる取り組みだと位置づけています。組織面においても、営業・サービス・管理部門などの枠を超えたクロスファンクショナルチーム体制を敷き、現場発の課題提起から企画検討、仮説検証までを短いサイクルで進めるアジャイル的アプローチを採用しています。「やってみたい」を起点に、小さく試し、仲間を巻き込みながら形にしていくといった、挑戦と協働を後押しする風土を強化しているのです。

── たとえば、どんな新規事業に取り組んでいるのでしょうか?

長瀬:代表的な新規事業の一つが、先ほども紹介した「AI搭載個別換気ケージシステム」による自動化・効率化ソリューションです。機材そのものは、世界マーケットでは10年前から展開していましたが、日本国内の納入実績はわずか1台でした。

日本の研究現場における現状課題は、人材不足や働き方改革の影響もあり、効率化と安全性の両立でした。そこで、飼育器材と運用ノウハウを組み合わせたトータルソリューション型ビジネスを新たに立ち上げたのです。欧米各国での成功事例を参考にしながら、日本の現場ニーズを深く理解する営業と、技術的知見を持つエンジニアが一体となって、試行錯誤を重ねていきました。グローバル標準とのすり合わせやリスク管理など、現場から聞こえてくる多くの課題に粘り強く対応した結果、数か月後には1件目の採用が決定したのです。

「信頼の積み重ね」がイノベーションを持続させる鍵となることを、強く確信しました。パイロット導入の成果を踏まえ、さらなる展開と事業拡大を見据えているところです。5年後までに20件の納入を目指し、メンバーたちと戦略を練っています。

── そのような新たな展開は、組織や一人一人の社員にとっても、好影響をもたらしそうですね。

長瀬:新規事業への挑戦は、企業文化にポジティブな波及効果をもたらしました。部門間の壁が低くなり、社員同士が課題を共有し、一緒に考える姿勢が浸透していったのです。これにより、組織全体の一体感とスピード感も高まりました。

また、イタリア本社との連携もより密になり、日本での成果がグループ全体のベストプラクティスとして共有され始めました。テクニプラストグループ全体の「双方向型イノベーション」を体現する好例となっています。

社員にとっても、新規事業への関わりによって、自らの専門領域を超え、経営や事業開発の視点を身につけることができます。「自分の力で会社を変え、未来を創り出せる」実感は、何より本人の成長機会になりますし、当社で働く最大の魅力になるといっても過言ではありません。行動指針に掲げている“グローバルな視野と日本に根差した実践力を両立し、情熱と専門性をもって長期的な信頼に応える”姿勢にも、社員一人ひとりのキャリア形成を促す思いが込められています。

難病の治療を身近に。機器の向こう側にいる人に思いを寄せて

── 変革を進める新社長の、人となりもイメージできればと思います。経営者としての、原体験のようなことはありますか?

長瀬:私は京都で生まれ育ったのですが、父親は市内の学習塾、母親方の祖父は市内の呉服業、父親方の祖父は福井県の小さな町の織物製造業と、経営者に囲まれた環境で育ちました。幼少期の頃、夏休みになると京都駅から一人で電車に乗って、祖父のところに遊びにいくわけです。従業員30人ほどの町工場でしたが、皆さんに交代で面倒をみてもらいながら、1か月間を過ごしていました。

 印象に残っているのは、たとえば大手商社の重役を相手に、「この糸はすごくいいから、採用しなさい」と堂々と渡り合っていた祖父のことです。いま、私自身も経営者という立場になって、あらためて祖父の立ち居振る舞いに感じ入っています。

新卒で分析機器メーカーに入社しましたが、財務面やプロダクトのこと、お客さんの事情や商売のやり方などがよく学べるのではないかと考え、営業職を志望しました。幼少期の体験がそうさせたのだと思います。

── 大学では工学部に進んで、分析機器の研究をされたそうですが、どんな理由があったのでしょう?

長瀬:中学時代の数学の先生と相性が合い、教え方もとても分かりやすかったので、数学が好きになって、将来は理系に進もうと考えるようになりました。

なにより大きかったのが、母親方の祖母の存在です。膠原病を患っていて、大量の薬をいつも飲んでいました。若い頃は絶世の美女と言われたらしいのですが、薬の影響で顔がパンパンに腫れ上がっていたのです。泊まりに行った時に救急車が来たりして、「なんとかしてあげたい」「医療系に携われば変えられるかな」という思いが、医療分野に欠かせない分析機器への興味に繋がっていきました。

── そうした思いが、いまここに社長を導いたということですね。

長瀬:そうなのだと思います。先日、イタリアの技術を日本国内に広めるという目的のイベントを、イタリア大使館で開催しました。ゲストスピーカーとして来日いただいた先生のお話を聴きながら、「テクニプラストはもっと頑張らないといけないな」と再認識させられたのです。

その先生は難治疾患の研究と治療法を開発されているのですが、大きな研究棟の全体をクリーンルームにして研究開発と製造を行うと、どうしても膨大な経費がかかってしまうとおっしゃっていました。その額は治療費に跳ね返ってくるわけです。

実際、建屋の整備で数百億以上かかるところが、我々のプロダクトを使えば、同じ研究・製造が8畳ほどのスペースでできるうえ、費用も数億程度ですみます。

── 2桁も3桁も違います。

長瀬:はい。最終的に医療費の負担が大幅に軽減するため、治療自体を諦めていた患者さんも治療を受けやすくなる、という世界が開かれていきます。これこそ、イノベーションであり、我々の仕事の醍醐味です。もちろん、さまざまな:検討や準備を経て、実際のかたちに結びつけるまでの道のりは容易ではありませんが、それだけに達成感も大きいのです。

日本にも優れたメーカーがありますが、まだない機器があるのも確かです。それを導入することによって治る可能性が高まる患者さんが存在するのであれば、我々としては、いち早く届けるしかありません。「どうして祖母は治らないんだろう」と私が幼少の頃に抱いていたような感情を持つ人も減るでしょう。機器の向こうにいる人に思いを馳せる、このマインドを社内にも根付かせていきたいですね。

── 最後になりますが、どんな人材を新たな仲間に迎えたいですか?

長瀬:私が社長を任せていただいて半年ほどになりますが、イタリア本社との連携をより密にとりながら、事業についても組織運営についても新しいことをどんどん採り入れはじめています。さらに変化していくフェーズにあるので、柔軟性を持った人、自分の手で変化を起こしたいという人と一緒に仕事ができればと思います。専門知識のようなハードスキルを吸収できる環境は整っています。一方のソフトスキル、とくにコミュニケーションスキルの鍛錬には時間がかかりますから、採用において重視したいと考えています。

もう1点、最近の採用活動も含めて若返りを図っており、社員の平均年齢も以前の48歳から42歳に下がりましたが、これをより進めてきたいと考えています。ですから、経験豊富な即戦力人材でなくても構いません。時間がかかっても、それこそ3年後でも5年後でもいい。ライフサイエンスの未来を拓くという思いを共有しながら、お互いにパワーアップしている姿を目指したいのです。

※新体制のもと、広報活動の活性化や人事制度改革に取り組む、管理グループ・人事総務・広報マネージャーの田口友美氏と。

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