専門コンサルティングファームの部長職から事業企画職へ【転職事例Vol.03】半藤剛

想いが漠然としていて方向性が定まらぬまま、相談に訪れたAさん。みっちり時間をかけた話し合いで志向と強みを明確にし、想いに沿った1社を見つける

「経験はないが、新規事業の立ち上げなどビジネスを動かしてみたい」

専門コンサルティングファームにお勤めのAさんに出会ったのは、2014年の夏。キャリアカーバーにご登録いただいたレジュメを拝見し、お声掛けしたのがきっかけでした。
Aさんはコンサルタントとして活躍しながらも、29歳という若さで部長職を任されていました。短期間で高いコンサルティング実績を積み上げ、責任ある立場に就いている彼がどんな方なのか、詳しく知りたいと思ったのです。私は主にITやコンサルティング業界を担当していますが、コンサルティングファーム経験者を管理部門や幹部候補として求めるケースが増えていたこともあり、すぐにアプローチしました。

ご相談者にお会いする時、私が真っ先に伺うのは、「なぜ転職したいのか」。その方の今の仕事に対する想い、キャリアに対する考え、その先のビジョンがつかめる質問だからです。
Aさんとお会いした時も、まずこの質問をぶつけました。
すると、新卒で入った今の会社で順調にステップアップし、やりがいも満足感もあるものの、経営の中の一分野だけに特化したコンサルティングに徐々に物足りなさを感じ始めてきたこと、全社的な視点でビジネスを回す経験がしてみたいという思いを持っていること、などが分かりました。ただ、具体的にどういう会社で、どんな職種に就きたいのかまでは定まっておらず、想いが未だ漠としている状態でした。

役職者であるAさんはいくつものプロジェクトを担当しており、休みを取るのもままならない状況。今日のこのチャンスを逃したら、次はいつお会いできるかわからない。そこで、Aさんの了承も得てその場でじっくり時間をかけて話し合い、Aさんの頭の中にある漠としたキャリアイメージを明確化することにしました。

その結果、いろいろなものが具体的に見えてきました。
Aさんは専門コンサルタントとして、経営数字の分析に強みを持っていましたが、「企業の内側を見るのではなく、マーケットの方向を向いて、ビジネスそのものを生み出し事業化する経験をしてみたい」という意向が強いことがわかりました。また、「魅力的な人たちと一緒に働きたい」という欲求も強かった。入社以来、尊敬しロールモデルとしていた何人かの先輩が、ここにきて相次いで退職したことも、キャリアを再考するきっかけになったようでした。

半藤剛さん

また、Aさんの「強み」も具体化できました。今までに挙げてきた実績の背景や具体的なフローを伺う中で、顧客の課題をつかむ力や目標達成意欲が秀でて強いことに加え、コミットメントの強さ、タフな環境下での突破力の強さなどが洗い出されたのです。これらはAさん自身もつかみ切れていなかった強みだったようです。
気づけば、2時間以上も話しこんでいましたが、この場で想いと強みが明確化され、それを2人で共有できたことが、後のマッチング成功につながりました。

戦略系コンサルでビジネス領域の経験を積むか、事業会社に飛び込むか

Aさんの話を伺って、2つの方向性が見えてきました。戦略系コンサルティングファームでクライアント企業のビジネスの現場に入り込み、経験を積む方向か、もしくは事業会社の事業企画職となり、既存ビジネスを回しながら新規事業を企画し立ち上げる経験を積む方向か。

Aさんの視野を広げるため、この2つの方向性に合う求人を通常より少し多めの8件ほどピックアップし、あとはAさんの目で見極めてもらうことにしました。プロジェクトまっただ中の忙しい時期ではありましたが、どうにか時間の調整をしてもらい、8社すべての面談を受けていただきました。

その結果、候補は3つに絞られました。事業再生系のコンサルティングファームA、事業改革に強みを持つベンチャー系コンサルティングファームB、そして情報サービス会社Cの事業企画職です。前者2つは、コンサルタントとして今までの経験を活かしつつ、さらにビジネス領域にも活躍の範囲を広げられる、後者は今までの経験で得た強みを新しい領域で発揮できるという評価でした。それぞれに異なる魅力があり、Aさんは大いに悩んだようです。

ご本人には話しませんでしたが、私自身は密かに情報サービス会社Cが、最もAさんの志向に合っているのではないかと思っていました。別のコンサルティング会社に移り、今までのリソースを活かしつつ自身の領域を広げるのは着実なステップアップの方法です。Aさんのようなスキル・実力や行動特性をお持ちの方であれば、すぐに実績を出し、責任ある役割に抜擢されるなど、確実にご活躍されるだろうと予想されました。しかし、「マーケットを向いてビジネスそのものを生み出したい」という思いを実現するためには、このタイミングで経験のない事業会社に移って現場で一から揉まれ、優秀な人たちと切磋琢磨しながら成長するほうが、彼の志に沿っていると思われたのです。

ただ、Aさんには事前に各社に対する情報をできる限り提供しており、かつ面接の場でAさん自身の目で各社を見ています。もちろん相談があれば助言はするつもりでしたが、ここから先は彼自身がじっくり考え、決断すべきことだと思い、私はそっと見守ることに徹しました。

果たして――Aさんはご自身で考え抜いた結果、C社への入社を決めました。ご自身が実現したい将来ビジョンに向けて、苦労はあっても「自ら新しい道を切り開く」方法を選んだのです。

C社の「人」も、決め手になったとのことでした。創業して10年超のC社は転職者が多く、大手メーカーやコンサルティングファーム出身者など頭が切れる優秀な人材が各方面から集まっているのが特徴。「C社ならば、刺激的な仲間に囲まれ、自分がさらに成長できそうだし、自分にない知識やスキルをキャッチアップする経験もできる」との言葉に、頼もしさを感じるとともに感心もさせられましたね。異業種からの転身でもあり、役職は外れますが、彼ならば新しい知識をすぐに自分のものにしてステップアップするだろうと確信しました。

半藤剛さん

そして、Aさんから「初めの面談で2時間以上みっちり時間を割き、私の志向や強みを紐解いてくれて、感謝しています。本当はすぐに転職するつもりはなく来年中にでもできればと思っていましたが、ここまで希望に合った企業に出会うことができ、満足しています」との言葉をいただくことができました。途中、コミュニケーションが満足に取れない中でも、初めに信頼関係を築けたことが満足のいく決断につながったのだと感じ、この上ない喜びを感じることができました。

キャリアについての想いや考えを整理したいときも、気軽に相談してほしい

現在の職場で将来を嘱望されていたAさんの退職申請は揉めに揉め、トップ直々に強く引き留められたそうですが、Aさんの決意は固く、このほどようやく年内での退職が決定。

来年1月より、C社でのキャリアがスタートします。
専門コンサルティングファームで、狭い領域ながら営業からサービスの立ち上げ、事業推進、マネジメントとさまざまな役割をこなしてきたAさん。これからは手掛ける領域がぐんと広がり、さらに広い視野が必要とされます。今までと同じように活躍するためには、さまざまなキャッチアップが必要になるでしょうが、彼ならばタフな環境などものともしないはず。新天地でも早く存在感を発揮して、やりたかった「自らビジネスを生み出し、事業化する」経験を積み上げてほしいと願っています。

Aさんのように、たとえ想いが漠然としていても、「今後のキャリアについてしっかり考えたい」と思ったら、その時点で気軽にキャリアコンサルタントに連絡してほしいですね。「今の環境が物足りない」というぐらいでももちろん大丈夫。キャリアについて話し合い、想いを整理する中で、目指す方向性が見えてくるはずです。また、「日々の業務に忙殺され、なかなかキャリアについて考える時間がない」という方も多いと思います。ただ、現在のように好景気・売り手市場に出てきたポジションの中には、ビジネスのトレンドから考えても、今後のキャリアを高めるうえで期待できるものが多くあります。

できれば日々の業務から少し離れて、ヘッドハンターとともにキャリアについて考える時間を作り、より良いポジションをつかんでほしいと思います。

半藤剛さん

半藤 剛

株式会社クライス&カンパニー グループマネージャー シニアコンサルタント

1970年生まれ。大学卒業後、教育関連企業において営業、マネジメントを約6年間経験した後、2000年にクライス&カンパニーに転職し人材紹介ビジネスの世界へ。IT業界、コンサルティング業界を中心に担当し、コンサルタント、プロジェクトマネージャーをはじめ、事業企画や営業、管理部門までマネジメントクラスを中心に幅広い実績を持つ。

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