人生100年時代における、キャリア棚卸し方法

経験値を細分化し、使えるキャリア資産を見つけ出す

ある情報系企業で営業として勤めてきたAさん(41歳)は、初めての転職活動で面接に行った会社で、これまでの会社で評価されてきた経験や成果をアピールしたものの、全く評価されないことに気づいて愕然としたと言います。

まず認識すべきことは、そもそも多くの人は、他業界や他職種のことは深く知らないということです。私自身は社会人のスタートが就職情報誌の仕事でしたので、多くの業界や職種の存在を知ることができましたが、そういう経験をする人はむしろ珍しいケースです。さらにAさんがアピールした表彰や成果はその会社独自のものが多いため、そのまま伝えても評価してもらうのは難しい。これは異性にモテたいけれど、どうやったらモテるのかわからないと嘆くのに近いかもしれません。まずはどんな人が、なぜモテるのかを知り、異性のニーズを知ることから始めなければいけません。これは転職市場も同様。市場で評価されている人や要素を知ることは、自らの市場価値を高めるヒントになります。

また一方で、自分自身のキャリアについても、どんな要素で経験が構成されているのかを整理しておくことも重要です。キャリアの分解の仕方としてわかりやすいのが、職務経歴書です。職務経歴書の書き方として、時系列で業務内容をまとめていく「編年体式」での作成がオーソドックスですが、法人営業、マーケティングなど、職務分野別にまとめていく「キャリア式」を使って経験を分解してみるのもお勧め。自分が最もアピールしたい職務経験を強調しやすい書き方なので、そのまま転職活動に使用することもできます。

キャリアを分解する際のポイントは、「誰に」「どんな提供価値を」「どのような方法で」提供する仕事なのかを明確にすることです。例えば営業と一口にいっても大手企業向けの直販営業、中小企業向け新規開拓営業、代理店渉外では、折衝相手も提供価値も営業方法も全く異なりますので、分けて整理することが大事です。経験を分解したら、その仕事の中で創意工夫して取り組んだこと、その成果によるビフォア・アフターの変化なども合わせて整理しておきましょう。また、業務を単独で行う場合と、チームで行う場合がありますので、自身の関与度も明確に。「本当に一人で全てを担当したのか?」と面接官に問われる前に書いておく。ここまで細かく整理しておくと、面接での切り返しや会話の深さまでかなり変わってきます。

転職支援をしていると、自分のキャリアを抽象度高くまとめてしまっている方が多い印象ですが、これでは面接官からすれば相手が何者なのかが見えなくなってしまう。面接では相手に評価を委ねる以上、自身のキャリア資産を明確にして、相手に評価してもらえる状態にしておくことは基本です。キャリアの棚卸しによって、面接の場もより有意義なものになるはずです。

後半のキャリアは、「人生二毛作」という選択もあり

キャリアの分解が終わったら、経験の要素ごとに市場ニーズと照らし合わせてみましょう。例えば営業を10年、人事を3年、広報を1年経験しているとします。経験年数の長い営業がメインのキャリアと言えますが、自身の一番の成功体験が人事、好きな仕事が広報だったとしたら、人事や広報を希望する方もいるかもしれません。いちど転職サイトなどを検索してみてください。営業は募集が多く、次が人事、広報という件数順になることが予想されます。市場であなたの経験に需要があるとは言えません。

もちろん需要が多いからその仕事をするべきとは言えませんが、大前提として市場のニーズを理解しておくことはとても大事です。どんなに自分が好きでやりたい仕事だったとしても、求めている会社がなければ転職はできないわけですから。特に転職が迫っている方は、需要を理解して転職活動をしなければタイムリミットに間に合わないリスクがあります。

今の需要だけでなく、この先の需要を考えることも忘れてはいけません。人生100年時代において、このままいくと定年が70歳になることも考えられる。そうなると40歳の方は、あと30年働くことになります。果たして、今いる業界はあと30年続くものなのか。自分の仕事は50代、60代も必要とされるのか。後半のキャリアをどう作っていくのか、戦略的に考えていく必要があります。

別のキャリアを踏んだほうが生き延びやすくなると考えたら、棚卸しした経験の中から売りやすいものを考えてみましょう。後半のキャリアは「人生二毛作」の考え方で、セカンドキャリアを視野に入れたり、副業などを活用して複数の仕事をしていくという選択もあります。先ほどお伝えしたように自身のキャリアを分解しておくことで、新しいキャリアの種を見つけるヒントにもなります。

もちろんキャリアチェンジをするなら若いに越したことはありませんが、多くの人は脂ののっている30代・40代は仕事も面白く、そこまで考えていない人がほとんどです。けれど実際はキャリアの棚卸しをして早く将来を見据えている人ほど、別のキャリアにも踏み出しやすくなる。今すぐに転職を考えていないという方も、人生後半のキャリアの可能性を広げるためにも、まずが棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。

黒田真行氏

ルーセントドアーズ株式会社代表取締役

黒田 真行(くろだ まさゆき)

日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に「転職に向いている人 転職してはいけない人」など。2019年、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を開始。
「CanWill」https://canwill.jp/
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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