いざ、転職で問われる「本当のリファーラル」

この5年くらいの間でしょうか、「リファーラル採用」という言葉が広まり定着した感があります。
人材業界プレイヤーの一部の意図(ビジネス的な思惑)もあって広まったリファーラル採用。もちろん直接の知り合い伝(つて)での採用、転職にはメリットもあります。が、一方でデメリットも。
今回は、このリファーラル採用手法のみならず、幹部の皆さんが採用選考の特に後半戦、終盤戦で参考情報として取られるリファレンスに関する話についてを主に置いています。キャリアカーバーユーザーの皆さんが転職で問われる「本当のリファーラル」について知っておきましょう。

問われるのは「SNSのリファレンス」ではなく、「直接業務利害関係のある・あった人のリファレンス」

若手エンジニア採用や新卒採用で広まったのが、応募者のSNSチェック。その発信内容も選考評価に加えていたりします。考え方や性格の一端、交友関係が垣間見えますので、人物レビューにはもってこいの側面があります。

幹部クラスの皆さんについても同様に思われるところがありますが、必ずしもそうではありません。
皆さんのような方の場合、SNSでレビューが良い人を幹部採用で採用するかといえば、しません。面白いもので、世代が上がり、責任ある立場の方々になればなるほど、SNSでの発信力はその人の本業の業務力やリーダーシップと必ずしも結びついていないことが多いのです。逆に反比例するとまで言えることも少なくありません。
これは、SNS上での発信で「いいね」やフォロワーを集めるのは、利害関係のない人たちがその人が発信するべき論や名言に条件反射していることが多いからです。<インフルエンサー>である当人も必ずしも発信していることを実践しているとは限らず、とまで言ってしまうと失礼かもしれませんが。

タレント・芸能人や講演家などは、総アクセス数自体が課金につながるわけですが、ビジネスパーソンはそれが目的ではありません。(※あるベストセラー編集者から伺いましたが、フォロワー数が多いことに期待してビジネス書を出版すると、思いのほか、その著者の本は売れないそうです。「いいね」してくれている人がその人の本当のファンや信奉者ではないことの象徴的な話ですね。)
皆さんのような方の場合に参考にするのは、あなたが業務で直接関係のあった元同僚や取引先のレビューです。遠くの人ではなく、身近な人たちからの信認・信望を得ている人なのか。選考の最終フェーズでリファレンスチェックが行われる際に挙げてくださいと言われるのもこのカテゴリーの方々について。
ですから「いいね」数やフォロワー数を集めることに時間を費やすよりも、身近な人たちとの良い関係をしっかり築き続けることに投資しましょう。
SNS上で持ち上げられている人ほど、実は直接面識ある人たちのレビューが悪いという傾向もあったりします。要は、実際にちゃんと成果を上げていたか。誠実に仕事をしていたかが問われるわけです。

問われるのは「SNSのリファレンス」ではなく、「直接業務利害関係のある・あった人のリファレンス」。優先順位をお間違えないように。

「友人・知人からリファーラルを受ける」より、「さほど近すぎない知り合いからリファーラルを受ける」

次に、紹介を受けるアクションについて。

縁故というのは昭和の時代からいまに到るまで、ある面、鉄板の転職/採用ルートです。お互い勝手知ったる仲であるため、「キミなら、あの会社が向いてるんじゃないか」「あの方面は、あなたには適さないと思うよ」というレビューを得ることができます。知り合いの知り合いということで、紹介される側も<ちゃんとした人・会社だろう>と信用・安心できるところがある。

しかし、近すぎる関係者からのリファーラルが正しいかといえば、必ずしもそうとは言えないのです。
いわゆるリファーラル採用の落とし穴としては、紹介する人の対象者の人物レビューが、付き合いが長い・深いがゆえに主観が強く入ってしまい、正しい人物レビューになっていないことも少なくないということです。
また近すぎる関係というのは逆に、正直に話しにくかったりいざという時に断りにくかったりします。「少し距離のある知り合い」=<弱い紐帯のつながり>の方が転職・採用という局面では信頼性と効果性が高いという心理学的実証もあるのです。

紹介を受けたり、応募中の企業についての客観的なレビューを貰うなら、近すぎる人ではなく、少し距離のある、ある面ビジネスライクなお付き合いをしている人に相談、アドバイスを受けるようにしてみてください。

「応募先企業、事業に関係ないリファーラル」より、「関係するリファーラル」

面接中に、事業や業務の進め方やこれまでの経験話になると思います。
その際、「あの時にご一緒させていただいた**さんが」「御社の○○事業で△△さんご活躍ですよね。私も前職のプロジェクトで接点がありお世話になりました」など、具体的な人脈つながりの話が出る、出来ることは、お互いの信頼度が段違いに増します。

よくお話しするのですが、皆さん、せっかくお持ちの人脈について、面接の過程でアウトプットしなさ過ぎだと感じます。
幹部クラスの方で求められる方の共通項のひとつに、「話が常に具体的でエピソード満載である」ことがあります。もちろん過剰に個人情報を開示するのはインサイド情報の漏洩に当たることもあり得ますし、くれぐれも慎重に情報管理すべきですが、幹部採用という機密情報をしっかり守った上でのプロセスの中において、皆さんの具体的な人間関係や皆さん側からの関係者の人物レビューについては、ぜひ応募先企業にしっかりお伝え頂ければと思います。それがあるとないとでは、あなたに対する信頼度は天と地です。
逆にそうした話が全くできないとすれば、あなたがその企業に移籍したとしても、大きな活躍ができるかどうかについて一抹の不安があると自己認識ください。

応募先企業側からあなたに対してのリファレンスを取られる前に、自らあなたのリファレンスにつながる具体的な人脈話をしましょう。

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特に幹部の皆さんが転職で問われるリファレンスとは、一般的に言われている「リファーラル」とは異なることを理解いただけたかと思います。
手法に惑わされて本質を見失わないよう、「本当のリファーラル」に意識を向け、応募先企業、経営者からの信頼を獲得してください。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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