オーナー企業への転職を考えるなら、選考中にここを確認せよ

リクルートダイレクトスカウトユーザーの幹部の皆さんが転職先を選定される際に、応募先企業としてオーナー企業を選ぶケースが少なからずあると思います。
自ら望んで選んでいる場合、あるいは選んだ企業がたまたまオーナー企業であったという場合。いずれにしても、オーナー企業への転職を検討する際には、選考中に確認したいポイントがあります。ご紹介してみましょう。

応募先は「どのような」オーナーの企業か?

おそらくほとんどの方が気になると思いますが、まず押さえたいのは、応募先は「どのような」オーナー企業かということです。
創業者でしょうか?あるいは何代目かの社長でしょうか?スタートアップやベンチャー企業であればほとんどの場合、創業経営者でしょうし、中堅中小企業であれば2代目、3代目、4代目、あるいは老舗といわれる企業であればかなり多くの代を重ねられているでしょう。

創業者であれば、その社長自体がシンプルにその会社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の体現者であり、組織風土の源(みなもと)です。社長を見ることで、その会社をほぼそのままイメージできます。

一方、何代目かの社長の場合、その会社のファミリーとしての考え方や行動規範などがどう受け継がれているのかに着目しておいたほうがよいでしょう。脈々と家訓が受け継がれている会社もあれば、特にそうしたものはない(すでになくなっている)という会社もあります。
気をつけたいのは、ファミリーが社長以外に、他の役員や社員にいるかどうかです。いること自体が必ずしも悪いわけではありませんが、ファミリーが経営陣に複数存在しているときに念のため確認しておきたいこととして、2ボイス、3ボイスになっていないか(経営陣での意見が割れたり、ダブルスタンダードになるような状況がないか)です。経営の意思統一が難しい企業は、マネジメントとして職務に邁進しにくいことが多いのは事実です。

大事なことは、オーナー、あるいはオーナー家 としての<色>が、あなたの肌に合うかどうか。これはオーナー企業に入社する際の、極めて重要なチェックポイントであることを、ぜひご認識ください。仕事の進め方や判断の仕方として入社後にずっと付いて回る部分です。ここがずれていると、職務遂行以前に違和感や窮屈感をずっと持ち続けて働くことになりますので。

オーナー企業ならではのメリットとデメリットを認識する

上記の中でのどのオーナータイプの企業かにももちろんよりますが、オーナー企業に総じて共通して言えるのは、オーナーの意思決定や行動が及ぼす影響が大きいということでしょう。

そこでメリットと言えるのは、意思決定スピードの速さやダイナミックさであったり、昇進や抜擢のチャンスの大きさだと思います。
やる意味、価値ありとなれば、無用な稟議やコンセンサスゲームなどなしで即断即決して動くことができる。また、ここは彼彼女に任せることができるというオーナーの信頼を勝ち取れば、一気に経営陣や責任者に登用されることも、オーナー企業であれば日常茶飯事です。

積極果敢にチャレンジし、成果を上げ、役割や裁量をスピード感を持って拡大していきたいという志向を強く持つ人なら、オーナー企業を選択すべきでしょう。

一方、デメリットとしては、上記の裏返しですが、よくも悪くもオーナー社長の意思が全てになりがちであること。これまでの同社の意思決定や実行が、全て社長の独断専行であるような場合は、あなたご自身の志向やスタイルとよく相談して参画可否を決めましょう。

後継問題も概ねのオーナー企業の共通テーマです。オーナーの現在のご年齢なども鑑み、いつ頃、次期後継者の問題が喫緊となりそうかも確認しておくべきポイントです。オーナー会社でなくとも、トップの交代はマネジメント層の方々のキャリアにダイレクトに影響を及ぼすことが多くあります。

特に現在のトップの方向性に強く共鳴できていたり、トップとの相性が良くあなたが重責を任されていらっしゃったりする場合、トップ交代によってその良いコンディションが180度変わってしまう場面を私も嫌というほど多く見てきました。

ファミリーの存在有無や既存社員の中での後継者候補の有無によっては、もしあなたが後継のポストを狙う・期待するなら、逆にチャンスがあるとも言えますね。

オーナー企業での選考プロセスで、必ず留意したい点

さて、ではそんなオーナー企業での採用選考プロセスについて、どのようなことに注意すべきでしょうか。

オーナー企業の選考で必ず確認したい点として、採用の意思決定プロセス(どのように最終決定するのか)、幹部陣の動き方、入社後の配属や昇進の決定プロセスが挙げられます。

採用決定は、一定の経営陣や人事との合議で決められるのか、あるいは社長の一存が全てなのか。選考中の経営幹部陣の関与はどのようになっているか。入社後の配属や昇進についてオフィシャルなルールが存在しているのか、あるいは特にルールはなく、これも社長の一存なのか。
最初に挙げた<色>の相性、意思決定スタイル面での相性・価値観合わせを、できる限り選考中にしっかり行ってください。繰り返しになりますが、ここがずれていることは、あなたが働く上で無用のストレスを常時抱えることになりますので。

あなた自身の選考に臨む姿勢面での注意点は、あなた自身の意思決定スピード、社長との相性&幹部陣との相性、自身のキャリアビジョンとの合致度です。
あなたが応募先企業の意思決定スピードやスタイルに惚れ込んだとしても、あなたの意思決定スピードやスタイルが自社と同じ以上でなければ、先方には魅力なしと判断されてしまいます。会話のキャッチボールの気持ちよさ、共通の言語、判断のフレームを持ち合わせているか。そしてオーナー企業で最終的に最も問われるのは、その応募者が自分の転職先を決めるために必要な情報を効率的に収集し、自身で判断軸を作り、それに基づいてスピード感をもって明快な最終意思決定ができることです。

内定オファーが提示された段階で、この部分での明確なファイナルジャッジが(本人には明示されなくても)下されていることを、ぜひ認識いただければと思います。

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転職先としてオーナー企業を選択することは、あなたのキャリアにとって大きな武器となるケースもあれば、ハンデとなるケースもあります。どちらに転ぶ可能性が高いか、しっかり見極めながら選考を進めてください。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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