元はビットコインを扱うベンチャー向け技術の一つである「ブロックチェーン」金融機関をはじめ世界中から注目が集まり、インターネットの登場に匹敵する影響を及ぼすかもしれない「ブロックチェーン」の仕組みと活用方法について。
インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。 その技術的な基盤となっているのが、「ブロックチェーン(Block Chain)」です。
仮想通貨にとどまらず、金融や公共サービスなど多方面で既存のシステムを根本から変革する可能性を秘めるブロックチェーン。 その仕組みをご紹介します。
ブロックチェーンがあれば当事者同士の取引が可能に
ブロックチェーンとは、世界中にデータを分散させることで、中央集権を置かずにデータの改ざんなどを困難にさせるネットワークを作る仕組みです。
中央集権とは、カード取引でいえば「クレジットカード会社」のことを指します。これまでは、こういった中央集権を通してしか取引ができませんでしたが、ブロックチェーンではそのネットワークの参加者に対し、取引内容や各々が利用可能な金額が公開されているため、相互に取引を監視し合うことで信頼性が担保されています。
つまり買い手と売り手が直接取引できるようになります。
影響力はインターネットの登場に匹敵! 一体なぜ?
ブロックチェーンの大きな特徴として、「改ざんすることがむしろ『損』になる仕組み」ということが挙げられます。
相互監視の仕組みを欺いて情報を改ざんするためには、高速のコンピューターを駆使して膨大な量の計算をすることが必要です。しかし、この作業を実施するためには膨大なコストがかかるため、不正が行われる可能性は極めて低いとされています。
また、取引データは世界中のコンピューターに分散されているため、国の力をもってしても、排除することは困難です。インターネットをイメージすると分かりやすいですが、例えばある国がインターネットにフィルターをかけたり停止措置をとったりしても、別の国に行けばアクセスが可能、ということに近しいです。
こうした特徴から、ブロックチェーンは「インターネットの登場に匹敵する革新」ともいわれています。
大手金融機関をはじめ、各業界が研究開発を加速
ブロックチェーンは当初、ビットコインを扱うベンチャー向けの技術だと認識され、そこまで注目されていたわけではありません。 しかし、2015年夏頃からアメリカのシティグループやドイツ銀行、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループなどが、アメリカのベンチャー企業と共同でブロックチェーン技術や法規制などの研究に乗り出し、急速に注目度は高まっていきました。
このように、欧米の大手金融機関はブロックチェーンを基にしたシステムの革新を進めています。日本でも、2015年末には日銀が「『デジタル通貨』の特徴と国際的な議論」のリポートにおいてブロックチェーンを詳細に説明するなど、いまや知らないとは言えないほどのキーワードとなっています。
これと平行して、個人レベルでもブロックチェーン技術の恩恵を受けられるような開発が進んできています。代表的なのは、国際的な送金システムです。仮想通貨を利用すれば、為替変動の影響を受けずに「価値そのもの」を送ることができ、そのため各国の銀行を介する必要が無くなり、コスト削減効果が大きいとされています。
さらに仮想通貨をそのまま保有できれば、ブロックチェーン上で取引が完了させることも可能となります。 現状では仮想通貨を法定通貨に交換しなければならないため、大幅なコスト削減にまで至っていませんが、今後仮想通貨が各国で普及すれば、送金にあたり「国境」を気にする必要がなくなるという見方もあります。
また、音楽業界でも新たな仕組みの構築が始まっています。例えば海外ではブロックチェーンを基盤とした音楽プラットフォームが誕生しました。ここでは、ユーザーが支払いをすると同時にスマートコントラクト(契約の条件確認や履行までを自動的に強制させられる通信システム)が実行されます。これにより、楽曲の不正なダウンロードや権利侵害は困難になります。これは、音楽の著作権者や関係者の権利侵害を防ぎ正当な報酬を得られるようにするため、ブロックチェーンを活用する試みであり、すでに購入できる楽曲も公開され始めています。
まとめ
このように、金融機関をはじめブロックチェーンには世界中から注目が集まっています。ブロックチェーン関連のベンチャー投資の金額は2015年には10億ドルを超したとされており、これは1996年のネットブームを超える勢いとなっています。 これからブロックチェーンは、インターネットの登場に匹敵する影響を及ぼすかもしれません。今後の動向にも注目です。