【有名スタートアップ40代執行役員(CXO)→ファンド傘下の老舗企業の経営幹部】プロ経営者への切符も手に入れた

きっかけはコロナ。某有名スタートアップ企業と言えど、収益源の事業が直撃を受け、執行役員X氏の新規事業開発もストップ。それどころか、真っ先に社員のリストラに手を付けようと動き出す経営陣を見て、心は離れた。ここで身を縮めているのはキャリアの停滞だ。メガベンチャーからの魅力的なオファーを断り、X氏が選んだのはスタートアップ村とは別世界の、ファンド傘下の老舗企業の経営幹部のポジションだった。GOOD AGENT AWARD 2021 特別賞を受賞したマッチングを紹介したい。

スタートアップ村から飛び出し、プロ経営者へと繋がる一歩を提案

芹澤佳子氏

創業50年近い老舗企業S社は数年前に事業承継の文脈でファンドに経営権を譲っていた。生え抜きを二代目社長に抜擢し、その社長(50代)を中心に、第二創業期を標榜し組織改革と事業拡大を進めようとしていた。

ファンドの思惑もあり、狙うのは最速のIPO。その為にも、事業責任者の右腕として、主に数値管理面から戦略をリードする人材を求めていた。ただし、カリスマ創業者の指示通りに仕事をしてきた社員の目を覚ますような、まったく違ったタイプの人材であること、が条件だった。

芹澤氏にはピンとくる人物が1人いた。某有名スタートアップ企業の執行役員である、40代のX氏である。数社のスタートアップを渡り歩いてきた優秀人材だ。ダメ元で連絡したつもりだったが、意外にもX氏には転職意向があった。コロナの影響で主な収益源だったメイン事業が伸び悩み、新規事業開発担当のX氏の仕事はストップ。それどころか、真っ先に社員のリストラに手を付けようと動き出す経営陣を見て心が離れた、という。

「お金よりやりがいや意義は大切」。そうX氏が最後に言ったのを芹澤氏は聞き逃さなかった。X氏は仲間やビジョン、価値観をとても大切にするタイプだ。であれば、二代目社長もビジョナリーで魅力的、かつファンド傘下となり短期間でバリューアップを図ろうと全社一丸となっているS社は、自信を持ってオススメできる企業だ。

芹澤氏はX氏に、住み慣れたスタートアップ村から飛び出し、プロ経営者へと繋がる老舗企業での第一歩を踏み出すことを提案した。

メガベンチャー子会社社長VSファンド傘下の老舗企業の経営幹部

芹澤佳子氏

順調に進み出したかに見えた選考プロセスだが、暗雲が垂れ込めた。S社から提示された職務内容の「数値管理面から戦略をリード」だけではX氏には物足りなかったのだ。「事業運営そのものにも携わりたい」というX氏の意向を受けて、芹澤氏は面接後も人事部門長にX氏の力量について、エビデンスを示しながら粘り強く訴えかけた。その甲斐あって、X氏の為の特別ポジションを検討してもらえることになった。

しかし、ホッとしたのも束の間、強力なライバルが登場した。実はX氏は同時並行で、今をときめく某メガベンチャー子会社社長のポジションの選考も進んでいたのだ。しかし、なぜか最終面接がなかなか組まれなかった。その間に、芹澤氏はたて続けに手を打った。社長面接、人事部門長とのフォローアップ面談、社長とのオファー面談、そしてオフィス見学。最終的に社長から改めて提示されたポジションは、X氏の希望通り、数値管理と事業推進両方を担うという理想的なものだった。それでも、X氏には迷いが感じられた。オフィス見学実施の前に、「今回が(X氏がS社に入社を決断する)最後のチャンスかもしれない」そう考えた芹澤氏は、S社を巻き込んでX氏の心を動かす方法を検討した。

X氏の心を動かすキモは現場で仲間と働いているイメージが持てるかどうかだ。そう考えた芹澤氏は、オフィス案内を人事部門長ではなく、X氏と一緒に働く中堅社員にお願いする事にした。その方に今の事業が抱えている課題、KPI、定性情報等をオープンに話してもらうよう、手はずを整えた。

ファンドと共にIPOを目指し、プロ経営者のロングリストへ

芹澤佳子氏

「やっぱりS社に決めます。メガベンチャーはお断りしました」。現場で働くイメージも湧き、心を動かされたのか、会社見学の数日後、X氏からそう連絡が来た。

その後のX氏の活躍にも触れたい。X氏がS社に入社してもうすぐ1年。当初はひとつの事業担当として入社したが、すぐにファンドも参加する役員会にも出席、得意のスキルを活かして、中期経営計画を自ら立案した。現在は担当事業部内にとどまらず、会社横断組織の本部長として活躍している。

ファンド案件で成果を出せば、次期経営者候補のロングリストに載り、次の投資先企業に送り込まれるプロ経営者人材として声が掛かるようになる。X氏はこの転職によって、あのままスタートアップ村に留まっていては決して掴めなかった「プロ経営者への切符」を手にしたのだ。また、S社もX氏という既存社員には居ないタイプの人材を社外から迎えることで、指示待ち体質の社員に刺激と気付きを与えることができた。

これからIPOのフェーズだが、企業体質を変化させたことで、S社はIPO後も持続的な成長を目指せるに違いない。IPOを実現すればX氏の取締役就任の道筋も見えてくる。芹澤氏は今からそれがとても楽しみだという。

転職者・企業へのメッセージ

【転職者の方へ】
企業に根掘り葉掘り質問し、事情を詳しく把握するのが私のやり方です。旬のCXO案件を最も詳しく説明できる自信があります。CXO案件をお探しの方、ぜひお声がけください。

【企業様へ】
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芹澤佳子氏

株式会社CXOサーチ

芹澤佳子氏

大学卒業後、2001年富士通に入社し、ITエンジニアとして働く。2004年にリクルートライフスタイルに入社し、その後入社した楽天を含め計15年以上ウェブプロデューサーとして新規事業開発に携わる。2020年、リクルートライフスタイルへ転職した際のエージェントだった今沢雄一郎が設立したCXOサーチに入社し、現在に至る。CXOサーチはCXO(CEO、COO、CFO等)クラスのエグゼクティブ層をメインとした人材サーチ会社で、芹澤は特にファンドやベンチャーキャピタルから依頼を頂いたCXO案件を得意としている。