求職者の立場になり切り、その方の人生を考える。一方で、プロとして集めた情報を元に客観的にアドバイスする。この二軸の徹底でより良いマッチングを目指しています

大手総合商社の「商社マン」から、人材紹介の道に飛び込む

大学卒業後、新卒で総合商社の伊藤忠商事に就職。不動産開発部門とIT部門を経験しました。いずれのビジネスも、業界そのものが上り調子にある時代に携わることができ、成長産業ならではのスピード感を味わうことができました。

ただ、30代半ばになり、「自分の軸は何だろう?」と考えるようになったのです。総合商社は異動が多く、刺激的ではありますが、自分の軸は築きにくいと感じていました。このタイミングで全く新しい分野で一から勝負し、そこでじっくり腰を据えて長く働きたいと思うようになったのです。

そこで、グループ会社だった総合人材企業に注目しました。ちょうどネットの普及期に当たり、人材ビジネスもネット化に進もうとしていました。これから人材ビジネスの形は大きく変わる、その中に身を置いてみたいと考え、自ら出向を志願したのです。

伊藤紳さん

初めの1年は、ITビジネスの経験を活かして求人サイトの立ち上げに関わり、2年目から人材紹介コンサルタントに転身しましたが、初年度から売り上げ、成約件数ともナンバーワンの実績を収めることができました。

その後に、エグゼクティブ・サーチ会社であるサーチファーム・ジャパンの創業期に参画し、エグセクティブ・サーチ(いわゆるヘッドハンティング)業務に7年間携わりました。転職希望者に対してアドバイスを行う人材紹介型のコンサルタントに対し、エグゼクティブ・サーチの仕事は、企業からの依頼をもとに転職の意思の有る無しにかかわらず、該当する候補者を探し出しアプローチを行います。

「引きぬき」ではなく「適材適所」を念頭にその人がより実力を発揮できる環境として「次のカード」をご紹介していくには、相手の人生や価値観にどっぷり浸かり、理解する必要があります。非常に難易度は高かったですが、最先端の技術に関わっている技術者、誰もが知っている新規ビジネスを立ち上げた人、成長企業の経営者…など、たくさんの優秀な方に出会うことができ、日々刺激を受けることができましたね。

伊藤紳さん

個人の人生をも預かるのが、人材コンサルタントの仕事

この仕事を通じて痛感したのは、「個人のキャリアだけでなく、人生をも預かる仕事なのだ」ということ。絶対に失敗が許されないというプレッシャーを感じましたね。

そのためにも、「ご登録者一人ひとりに、親身になること」を徹底しています。やりがいを第一に考える人、給与を重視する人、ワークライフバランスにこだわる人…人によって、転職先に求めるものは千差万別です。一人ひとりの「なりたい未来」をじっくりヒアリングし、相手の立場になりかわって次のキャリアを考えることが大切だと考えたからです。

もちろん、相手の立場を考える一方で、「人材紹介のプロ」としてのアドバイスもしっかり行います。あなたのキャリアは他社でどう評価されるのか、どういう会社であればキャリアが広がるのか、客観的な視点をご提供します。この“二軸”を大事にすることが、プロの仕事であると考えています。

「客観的な視点を提供する」には、企業に関する情報収集も欠かせません。ホームページからでは分からない、社風や雰囲気、仕事の醍醐味ややりがいをつかむには、会社に入り込み、人事担当者、採用部門のマネージャーやメンバーなど、できるだけ多くの社員と会って話すしかありません。

私はその会社の人事部の一員となれるぐらい、その会社のことを調べることを徹底し、そのうえで、メリットとデメリットを洗い出して求職者に伝えています。「デメリット」は企業側として言いたくないことですが、それを正確に伝えるのは我々の立場ならでは。入念なリサーチの結果、「こういうデメリットはあるけれど、こういう面であなたの今後のキャリアにプラスになる会社ですよ」と客観的にお伝えすることが、より良いマッチングにつながると信じています。

10年前に担当した求職者が、また自分を頼ってくれる喜び

2009年、勤務先のサーチファーム・ジャパンが登録型人材紹介の新会社を作ることになり、私が社長に就任しました。ただ、社長業だけでなく、現場でコンサルタントとして企業、個人とコミュニケーションを取り続けています。

先日、とても嬉しい出来事がありました。エグゼクティブ・サーチ会社時代に転職先をご紹介したAさんから、10年ぶりに連絡があり、「いい転職先がないか」と相談を受けたのです。

10年前の当時、Aさんは大手ハウスメーカーの設計者として活躍していましたが、若手の意見が通りにくい社風の中、アイディアを活かすことができずに悶々としていました。「もっと自分の思い通りに働きたい」と願う彼に、従業員数100人の不動産ベンチャーを紹介、設計部門のマネージャーとしての入社が決まりました。

伊藤紳さん

それから10年、そのベンチャーはどんどん成長し、とうとう東証一部に上場するまでに。そんな最中、Aさんは「小さな会社を大きくする過程を、また味わいたい。伊藤さんの“目利き”を信じたい」と連絡をくださったんです。私を覚えていてくれて、また信じて下さって、本当に嬉しかったですね。

希望に合いそうな案件を数社ご紹介したところ、Aさんは創業5年、社員数15名の不動産ベンチャーを選択。先ごろ、プロジェクトマネージャーとしてご入社されました。現在は、新しい環境でイキイキと活躍されている様子。我がことのように嬉しく思いますし、コンサルタントとしてこれ以上ない喜びを感じています。

これからも、求職者の方が新天地でイキイキと輝き、成長し続けて下さるようないいマッチングを手掛け続けたいと、想いを新たにした案件です。

不動産業界は総じて活況、経営者層は事業拡大を担える人材のニーズが増加

現在、私が主に担当しているのは、不動産業界全般の求人と、CEO、COO、CFOなどといった経営者層の求人案件です。

不動産業界の求人ニーズは極めて活況です。特に不動産金融や不動産投資の領域で、求人ニーズが拡大中。ファンドの組成から手掛けられる経験者、投資用不動産の用地仕入れ担当者などの案件が寄せられています。また、アジアを中心とする海外投資家向けの営業担当者のニーズも増えていますね。不動産の知識に加え、アジア系の言語ができる人材が高く評価される傾向にあります。

設計や施工監理といった「建設技術者」は引き続きニーズが旺盛。オリンピックを控え、インフラ整備の需要が拡大しています。特に施工監理は引く手あまたの状態が続いています。

経営者層の求人も、順調に増えています。景気が徐々に上向く中で、「業績拡大のため、経営陣として次の一手を打てる人」が求められています。例えば、新規事業の立ち上げを任せたい、M&Aで買収した会社に経営陣として送り込みたい、創業者の高齢化に伴い次世代へバトンタッチするまでの参謀役を任せたい…などの事例が目立ちます。

いま、転職を考えていないという人も、年に1回は、自身のキャリアを考えてみる機会を持った方がいいと思います。不況になり、会社が傾いてから焦って転職先を探しても、いいことはありません。仕事が順調な時こそ、自分のキャリアを落ち着いてじっくり考えられるし、より良い環境に出会える可能性も高まります。

そんなときに、人材紹介コンサルタントをぜひ活用して下さい。自分のキャリアを整理して、自社と他社とを比較するには、プロの客観的な目と情報力が役に立ちます。有事の時ではなく日常的に、我々を思い出してほしいと願っています。

伊藤紳さん

伊藤紳さん

麹町パートナーズ株式会社 代表取締役社長

伊藤 紳さん

新卒で伊藤忠商事に入社し、不動産開発やITビジネスを経験後、グループ会社だった総合人材企業に出向。人材紹介コンサルタントとしてNo.1の実績を上げる。その後、サーチファーム・ジャパンの創業期に加わり、エグゼクティブサーチエージェントとして活躍。2009年、登録型人材紹介事業の新会社として麹町パートナーズが設立し、社長に就任。マネジメントの傍ら、現在もコンサルタントとして活躍する。

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