日産自動車

日産自動車が今、人事メンバーを求めている。それはなぜなのか。どういった活躍を期待し、どのような人財を求めているのか。2016年に異なる業界から転職してきた水田真太郎氏(人事本部 グローバル人事企画部 主担)、高島俊喜氏(ダイバーシティディベロップメントオフィス 主担)にお話を伺った。

HRビジネスパートナー・アライアンス人事・ワークデイのグローバル導入…
ビジネスの拡大によりグローバル本社人事のミッションや業務が拡大・高度化している

なぜ今、日産自動車は多くの人事メンバーを求めているのでしょうか?

高島:2016年10月、三菱自動車が新たにルノーと日産のグローバルなアライアンスの一員となることが決まりました。これによって、私たちは業界世界トップを狙える事業規模のグループとなります。この「ビジネス拡大」が、人事メンバーを多く求めている第1の理由、最も大きな理由です。

2つ目に、自動車業界全体が「変革期」を迎えていることがあります。ご存じのように、自動運転技術やEVなど、自動車業界では今、大きなイノベーションが続々と生まれています。そのため今まで以上に様々なバックグラウンドをもった人財が必要とされており、採用や育成のニーズが非常に高まってきています。

水田:3つ目に、ビジネス拡大期・変革期ということもあり、HRの中でも各部門やリージョンの「ビジネスパートナー」としての役割が一層重要性を増してきています。最近の動きで言えば、コネクテッド・カーと次世代モビリティサービスの開発強化をサポートするため、アライアンス コネクテッド・カー&モビリティサービス事業部担当のHRビジネスパートナーが新設され、採用や育成、今後のタレントマネジメントにも力を注いでいます。こうしたHRビジネスパートナー機能の強化が求められています。

4つ目に、これは日産の大きな特徴ですが、「アライアンス人事」の存在があります。私たちは今、日産のグローバル本社人事として、ルノーの人事と協力し、様々な面で人事制度などを統一することでシナジーを図っています。たとえば私は現在、アライアンスC&Bマネジャーとして、日産とルノーの共通の制度設計に携わっています。当然、今後はここに三菱自動車も加わることになるでしょう。こうしたアライアンス人事の機能も重要性が高まってきています。

5つ目に、これはまさに私の今のミッションの1つですが、現在、私たちはクラウド型人事ソリューション「ワークデイ」のグローバルレベルでの導入を進めています。また、この導入に際して、グローバルで人事制度の統一なども行っています。こうした業務に関わっていただく可能性もあるでしょう。

以上をまとめると、ビジネスの拡大、変革に伴い、グローバル本社人事、アライアンス人事としてのミッションは増し、またHRビジネスパートナーとして、求められる機能も変わってきています。その一翼を担い、私たちと共に日産を支える人財を求めています。

日産自動車のロゴ

お二人とも2016年に入社したということですが、日産の社風はいかがですか?

高島:一言で言えば、想像以上にグローバルカルチャーが浸透しており、外資系企業と日系企業のミックスカルチャーができあがっている会社だと思います。たとえば、私は入社以来ダイバーシティ推進を担当していますが、全社的に外国人との協働は当たり前のように行われており、ルノーから来ている仲間もたくさんいます。中途入社者も多く、出身業界も自動車関連ばかりではありません。私や水田のような他業界のメーカー出身者、コンサルティングファーム出身者なども少なくありません。ダイバーシティ推進に早くから取り組んできた日産では、いろいろな考え方を持つ人たちが、多様な意見を出し合うことが奨励されているため、中途入社でも入りやすい空気があります。私自身、実にすんなりと溶け込むことができました。また、国内の女性管理職比率が目標としていた10%に達し、これは全女性従業員の約8人に1人が、管理職として活躍していることになり、女性が働きやすい職場としても自信を持ってお勧めできます。実際、人事部でも活躍する女性マネジャーは数多くいます。

水田:日産の特徴の一つに、「コミット&ターゲット」の文化が根づいていることがあります。コミットメントは必ず達成すべき目標で、ターゲットはさらに目指すべき高い目標です。いずれも定量的な数値に落とし込んでいるのが日産らしいところで、人事も例外ではありません。一般的に、人事は数値での評価をしないと思われがちですが、日産では人事部でも皆が明確なKPIを持っています。また社員全員がターゲットにチャレンジし、自身の能力やポテンシャルを主体的にストレッチすることが求められています。もちろん、実力を発揮して、ターゲットを達成すればしっかりと評価されます。こうした面はかなりグローバルカルチャーが強いと感じます。

高島:グローバルという意味では、日産は副社長以上で構成するエグゼクティブ・コミッティは6割が外国籍で、意思決定層にも外国籍のメンバーが多数いて、各リージョンのプレゼンスも非常に大きいです。海外法人の日本人役員比率も低く、日本や米国等の主要国を起点としない出向が男女ともに増加しており、他のグローバル企業とは異なる特徴と感じています。一方で、グローバル本社人事として各リージョンをまとめる力が求められます。

水田:私の仕事を実例に説明します。先ほどお話ししたワークデイの中で人事考課の機能があるのですが、それをグローバルレベルで導入するプロジェクトを推進しています。そこで私は、決定者ではなく、ファシリテーターの役割を果たしています。各リージョンの人事制度のサイクルや過去の背景、その礎にある哲学みたいなものを理解し、何とかソリューションを1つにまとめようと試みています。そして、トップダウンでもボトムアップでもなく、センターで意見を集約します。私たちグローバル本社だけでなく、各リージョンが納得した上で、新たな制度やそれを反映したシステムを導入することが重要だからです。各リージョンとも程よい緊張感と距離感を保ちつつ健全な議論を重ね、1つの方向に向かって進んでいきます。

高島:それから、ダイバーシティ推進の一つとして、「働き方改革」を積極的に進めています。一例を挙げると、日産では2006年とかなり早くから在宅勤務制度をスタートしました。2010年には対象を全社員に拡大。さらに、2014年からは在宅勤務の上限時間を拡大し、月40時間利用できるように制度を拡充しました。さらに、育児・介護両立者の上限は所定労働時間の50%です。その結果、2015年度には約4000名の社員が活用する制度となっています。私たちは、働き方の多様性も大事にしています。

水田 真太郎氏と高島 俊喜氏

社員を「大人扱い」する会社で、ストレッチできる案件を頻繁に渡される
「日産をどう変えたいか」「自分がどう成長したいか」が明確な方が活躍できる

新たに入社する方にはどのような活躍を求めていますか?

水田:私は2016年5月に転職してきたのですが、入社後1カ月で、先ほどからお話ししているワークデイを活用した新しい考課制度のグローバル導入プロジェクトや他国での持株制度の導入の仕事を任されました。プロジェクトの進め方も、かなりの自由度がありました。おそらくこれから入社する方も、大きな枠組みで仕事が任され、進め方は自由ですと言われるでしょう。言い換えれば、社員を「大人扱い」する会社で、チャンスは必ずもらえます。自身をストレッチできる案件を頻繁に渡されます。

高島:権限ということで言えば、私が所属する「ダイバーシティディベロップメントオフィス」はダイバーシティ推進の専門部署ですが、他社と大きく異なる点は人事部門と切り離された別組織で、経営層に直接提案することができる「ダイバーシティステアリングコミッティ」という会議体があるため、日本でも先進的なダイバーシティ推進が可能となっています。たとえば、社内託児所「まーちらんど」は従業員の声から生まれたものであり、2017年には初めて生産工場にも開設するのですが、こうしたスピーディーな施策も経営層と距離が近いからこそできることです。私もその組織で数少ない男性マネジャーとして、男性視点での全社的なダイバーシティ推進を行うことで貢献したいと考えており、一方でキャリアコンサルタントの資格を取得し、従業員一人ひとりの育成にも携わっています。

水田 真太郎氏と高島 俊喜氏

どのような方を求めていますか?

高島:日産が求めるのは「和魂多才型人財」です。和魂とは、日本の強みと言われる「主体性」「チームワーク」「実行力」を指し、柔軟な対応力をもって何ごとにも主体的に取り組み、高いチームワークで、確実に最後までやり切ることを意味します。多才とは、「グローバル」「ダイバーシティ」を指し、事実とデータに基づいたロジカルな思考で、多様性を尊重しながらもリーダーシップをもって、あらゆる環境において結果を出し続けることを意味しています。

水田:先ほどもお話ししたように、企画力と実行力が特に強く求められていると思います。また、ゴールにたどり着くまでのリーダーシップ、プロジェクトをしっかりと着地させる力も必要です。

また、それぞれの主張にも耳を傾けてくれる会社ですから、「中長期的に日産をどう変えていきたいか?」「自分はどのような成長カーブを描きたいか?」「どういった専門性を身につけたいか?」といったことを明確に持ち、自分の求める仕事を社内で探索し、積極的に獲得していけるタイプの方が活躍していますし、活躍できると思います。

大手電機メーカ―で海外営業&マーケティング、総合酒類食品メーカーにて事業開発、グローバル人事を経て、現職。

大手電機メーカー人事部にて制度企画、海外人事、ビジネス部門人事を経て、現職。

高橋 紀夫氏

担当ヘッドハンターの目線

株式会社リクルートキャリア ハイキャリア・グローバル コンサルティング 高橋 紀夫氏

大手人材エージェントにて、管理部門(人事、経理、総務)経験者に向けた、人材紹介事業の立ち上げ業務、部門マネジャーを経て現職。【人事、経理、総務、法務】領域のハイキャリア専任コンサルタント。薬剤師領域の新規人材紹介事業を立ち上げた経験もある。

30代前半をマネジャーとして採用する貴重な日系グローバル企業
ルノーの人事制度にも関われる環境もかなり特殊

水田様、高島様がお話しされている通り、日産自動車は今や完全な日系グローバル企業です。ですから、どの部門であっても、語学力・アウトプット能力など、グローバルで活躍するためのベースとなるスキルが求められます。ビジネスが拡大、変革している時期だからこそ、マネジメントが人事部にさまざまな課題を投げてくるそうです。そのなかから、自分が携わる課題を主体的に発見し、アジャストしていく能力が求められます。

採用面では、30代前半の方をマネジャーとして採用するケースもあります。これは日系企業ではかなり珍しいことで、私はこうしたところにも日産のグローバルカルチャーを感じます。また、日産が特殊なのは、アライアンス人事がルノーの人事制度にも関わっている点です。対等なパートナーとして、欧米の大企業の人事制度に直接タッチしている日系企業は、他にほとんどないのではないかと思います。

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