勉強好きこそ成功から遠い!? 2007年ベストセラー書籍『夢をかなえるゾウ』
累計発行部数300万部を突破し、ドラマ化や舞台化、果てはゲーム化など、ビジネス書の枠を飛び越えて輪を広げている『夢をかなえるゾウ』。まさに自己啓発小説の金字塔ともいうべき存在です。ごくごく普通の人生から脱却して成功を掴みたいと望む主人公の「僕」と、得体の知れない神様・ガネーシャとのコミカルなやりとりを通じて、今の自分を変え、理想を実現するための秘訣を学べます。
要約
みじめな自分を嘆く「僕」のもとに現れた、関西弁を操るゾウの姿をした神様・ガネーシャ。ニュートンやビル・ゲイツ、松下幸之助ら、誰もが知るような偉人達を成功に導いてきたというガネーシャと契約した「僕」は、変わるために1日1つの課題をこなすよう求められます。それは、「靴をみがく」「食事を腹八分に抑える」など、拍子抜けするほどささいなことばかりでした。
読み応えのあるポイント
「新しい自分に生まれ変わりたい!」と思ったことは、誰にでもあるはず。しかし、結果を出せた方はほんのわずかしかいないことでしょう。では、なぜほとんどの人が変われていないのか? 本書は、その答えを教えてくれます。
学んだことを実践し、行動していくことでしか自分を変えることはできない
「今日から○○をやろう!」と意識を変えるだけでは自分を変えることはできない。自分を変えるには、学んだことを実践し、行動していくしかない。それが、本書の最大のメッセージです。
『夢をかなえるゾウ』には27の課題が収録されていますが、そのどれもが本書を読了してすぐ行動に移せるようなことばかり。しかしどれも偉人達が実際に取り組み、成功に繋がった習慣なので説得力があります。主人公の「僕」自身も、半信半疑ながら課題に取り組むうち、少しずつ視点が変わってきていることに気づいていきます。
ビジネスパーソンの間でよく知られた名言に「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる」というものがありますが、まさにこれを地でいくやり方だといえるでしょう。
決めたことを続けるためには「環境を作る」ことがポイント
ガネーシャが「僕」に与えるアドバイスの中で、最も耳が痛いのは「決めたことを続けるための環境を作る」というもの。 夢をかなえる時間を確保するため、「1日何かをやめる」という課題に臨んだ「僕」は、仕事から帰宅した後にテレビをつける習慣をやめようとします。しかし、ガネーシャは「『やめる』と決めるだけではただの逃げであり、具体的な行動に移さなければ何も変わらない」と諭すのです。そして、「テレビを見ないための具体的な行動」としてテレビのコンセントを引っこ抜くという荒業に出ます。否応なしに変わらざるを得ないような環境を、自ら作ってしまうというわけです。
人の意志は想像以上に弱い
大概の人間は、自分で決めたことすらなかなか実行することができないものです。ガネーシャの言い放つ「人の意志なんて、めちゃくちゃ弱いんやで」という台詞は、書店に赴く度にビジネス書の新刊を山ほど購入し、一度は頑張る気になったものの、結局以前と何ら変わらない生活を続けてしまったという経験がある方にとってはグサリとくるのではないでしょうか。実際に、「片付けが苦手で整理整頓術に関する書籍を毎月読んでいるけれど、本棚の肥やしと化してしまって、ますます部屋が狭く汚くなるばかりだ」と嘆いている、というような“本末転倒”な人もいるでしょう。
だからこそ、本書を読了した後も、日をおいて何度も本棚から取り出し、「きちんと課題を実践できているか」を確認したくなるのです。『夢をかなえるゾウ』こそ、「ブームの頃にとっくに読んだよ」という方に、もう一度手に取っていただきたい本です。ビジネス書でありながら、エンターテイメント小説としても類を見ない本書のページをめくりつつ、今の自分が夢の実現に向けて本当に正しく行動できているかをチェックしてみてはいかがでしょう。
さもないと、「あんた、ホンマに変わる気ある?」と長い鼻を揺らしながら、ガネーシャが不意に尋ねてくるかもしれませんから。
こんな人に読んでもらいたい
自分を変えたくてビジネス書を読むけれど、結局変われなかった人
併せて読んでほしい本
『夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神』『夢をかなえるゾウ3 ブラックガネーシャの教え』といった同シリーズの書籍はもちろんのこと、「人間の変わろうという意志は案外弱い」「行動によって自分を変えられる」と説いている点では、『スタンフォードの自分を変える教室』もおすすめです。