印刷を超え、価値をつなぐ。小林クリエイトの新規事業開発と進化の本質

小林クリエイト株式会社は、1937年の創業以来、心電図や地震計などの計測機器向け記録紙の国産化から事業をスタートし、時代の変化に応じて提供価値を広げてきた企業です。現在は、RFID応用製品やシステムの提供、郵便・発送業務のBPOサービスなどへと領域を拡大し、印刷の枠を超えた価値創造に挑み続けています。その根底にあるのは、「情報を正確に記録し、安全に保存し、確実に伝える」という一貫した思想です。今回は、そうした本質を起点に新規事業や新たなソリューションを生み出し続ける同社の挑戦について伺いました。

原田 諭

1993年に小林クリエイト株式会社へ入社。システム開発を皮切りに、ソリューション開発、BPO営業支援、社内インフラ、人事、経営企画と、事業と組織の両面にわたる幅広い領域を経験してきた。経営企画部長を経て現職。長年にわたり同社の変革を最前線で推進し、印刷技術とIT技術の融合による新たな価値創出や、新規事業開発をリードしている。顧客のニーズを起点に、現場と技術をつなぎながら実装まで導く調整力に強みを持つ。

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変化に適応し続ける、本質起点の事業進化

── 創業から現在に至るまで、御社はどのように事業を発展させてこられたのでしょうか。

当社は1937年、計測機器向け記録紙の国産化を起点に創業いたしました。当時、心電図や地震計などに用いられる記録紙は海外製品が中心であり、正確な記録を残すためには極めて高精度な印刷技術が求められていました。そうした領域で品質を磨いてきたことが、現在に至るまでの技術基盤になっています。その後、1960年代から70年代にかけてコンピュータが普及すると、仕様の近いコンピュータ用紙へと展開し、社会の変化に合わせて事業を拡張してきました。

大きな転機となったのは、1990年代のペーパーレス化の潮流です。このとき当社は、「紙をつくる会社」であり続けるのではなく、「情報を正確に伝達し、記録し、保存する存在である」という本質に立ち返りました。その結果として、1980年代後半からBPO事業へと踏み出し、企業からエンドユーザーへ情報を届ける仕組みそのものを担うようになっています。具体的には、電力会社様の通知や各種案内の封入・発送、宛名ラベルの作成など、個別最適化された情報伝達を高い精度で実現してきました。

このように当社は、時代の変化を受け身で捉えるのではなく、事業の定義そのものを見直しながら進化してきた企業です。現在の多角的な事業展開も、その延長線上にあるものだと考えています。

リアルとデジタルを接続する、情報の最前線

── 現在、御社が特に注力されている領域について教えてください。

現在、当社が特に力を入れているのがRFID技術を活用したソリューションです。当社では一貫して「情報を正確に記録し、安全に保存し、確実に伝える」という価値に向き合ってきました。デジタル化が進む一方で、現場では“実物と情報を一致させる”ことの重要性がむしろ高まっています。その接点に位置する技術として、RFIDは非常に親和性が高いと捉えています。印刷物にICチップを組み合わせることで、手に取れる媒体でありながら、情報の更新・追跡・連携が可能になる。リアルとデジタルを分断せず、つなぐための手段として取り組んでいます。

代表的な事例が、自動車検査証です。従来の紙の証明書にICチップを組み込むことで、情報の電子化と実物確認の両立を実現しており、当社が製造を担い国土交通省へ納めています。また、大手自動車会社との協業においては、完成車物流工程で使用されていた物流管理票を、ICチップを搭載した媒体へと進化させました。電波通信の特性を活かすことで、より自動化・省人化を実現しやすい輸送工程の管理を実現したのです。情報を「書いて終わり」にするのではなく、「運用の中で生き続ける状態」へと転換する取り組みといえます。

こうしたソリューションを実現できる背景には、長年培ってきた印刷技術に加え、材料、デバイス、システム、さらには現場運用までを横断して設計できる体制があります。単一の技術ではなく、複数の要素を組み合わせながら最適解を導く点に特徴があり、この統合力こそが他社にはない強みだと考えています。現場で確実に機能するところまで落とし込むことで、はじめて価値が生まれる。その思想を軸に、今後も領域を広げていきたいと考えています。

見えないところで、社会の信頼を支える

── 御社の製品は日常生活の中でも多く使われていると伺いました。具体的にはどのような場面で社会に関わっているのでしょうか

当社の製品は、日常生活のさまざまな場面で使われています。たとえば、クレジットカード決済時に発行されるレシートの約8割、さらに駐車場の発券チケットにおいても約8割を当社が担っています。これらは一見すると単なる印刷物に見えるかもしれませんが、実際には「正しい情報を確実に伝える」という機能が求められる重要な媒体です。利用金額や入出庫時間といった情報を、誤りなく、誰にでも分かる形で届ける。その精度にこだわり続けてきたことが、社会インフラの一部としての役割につながっています。

加えて、安全性の観点からも価値を提供しています。たとえば、あるリゾート施設周辺を走る列車のチケットでは、QRコードを印字するだけでなく、単純なコピーでは利用できない偽造防止技術を組み込んでいます。読み取り機の性能と印刷の精度を掛け合わせることで成立する仕組みであり、その組み合わせ技術については特許も取得しています。素材単体ではなく、複数の技術を統合することで初めて実現できる領域であり、ここに当社ならではの強みがあります。

こうした価値の源泉は、長年にわたり現場に向き合い続けてきた姿勢にあります。印刷物は必ずお客様の業務の中で使われるため、当社は常に現場に足を運び、担当者の声を直接聞きながら最適な形をつくってきました。その結果として、表面的な要望ではなく、本質的な課題を捉える力が培われています。だからこそ、場合によっては「印刷をやめる」という選択肢も含めて提案を行うことができる。手段にとらわれず、顧客の業務価値を最大化することに向き合う姿勢こそが、当社の競争力だと考えています。

思いつきを終わらせず、事業に昇華する組織

── 新しい取り組みや技術への挑戦は、どのような体制で行われているのでしょうか。

当社における新規の取り組みは、特定の部門だけが担うものではありません。商品開発部が中心となる一方で、現場の営業や各部門からも広くアイデアが持ち込まれます。思いつきの段階であっても上司に相談し、所属本部で検討される仕組みが整っており、挑戦のハードルは高くありません。経営としてもチャレンジを重視しており、「まずやってみよう」という意思決定がなされる環境があります。実際、コロナ禍においては、マスク製造という新たな取り組みが現場発の発想から生まれました。印刷機と構造的に近い点に着目し、短期間で製造に踏み切った事例です。こうしたスピード感と柔軟性は、当社の大きな特徴だと感じています。

象徴的な事例として挙げられるのが、野菜栽培事業です。もともとはRFIDの技術検討の中で、生産管理や品質の安定化という視点を深めていく過程で、「この仕組みは農業にも応用できるのではないか」という発想からスタートしました。自動車産業の生産物流システムの考え方を取り入れながら、水やりや日照、温度、肥料といった要素を精緻にコントロールすることで、一定品質の野菜を安定的に生産する仕組みを構築しています。現在は静岡の工場で1日数千株規模の生産を行い、実際に市場へ供給しているほか、航空機の機内食として採用された実績もあります。

当社の特徴は、「あったらいい」という発想を実用レベルまで引き上げる力にあります。現場の知見や技術を掛け合わせながら、安定して運用できる品質まで仕上げることにこだわってきました。組織としてもフラットで意見を発信しやすく、挑戦を後押しする風土が根づいています。個々のアイデアを起点に、新たな価値を形にしていく。この循環こそが、当社の新規事業を支えていると考えています。

業界を横断し、価値を創出する成長フィールド

── 御社で働く上でのやりがいや、成長の機会について教えてください。

当社で働くやりがいは、お客様の課題に直接向き合い、その解決に深く関われる点にあると感じています。営業職の場合、最初は既存のお客様に既存の商材を届けるところからスタートしますが、その過程で次第に、お客様の持つ知見の深さに気づかされます。そこで得た学びを自分の中に取り込み、知識や技術を広げていくことが成長につながっていきます。

当社は約2万社のお客様とお取引があり、製造業や官公庁、医療、ヘルスケアなど多様な業界の情報に触れることができます。その中で、ある業界の成功事例を別の業界へ応用するなど、知見を横断的に活かしながら価値を生み出していく機会が豊富にあります。単一の領域に閉じるのではなく、複数の業界を横断しながら課題解決に関われる点は、大きな魅力の一つです。

キャリアの面でも、多様な選択肢が広がっています。中途入社の方が管理職として活躍している例も多く、入社形態による制約はありません。システム開発の専門性を高める道もあれば、マネジメントに挑戦する道もあります。さらに、社内には部門を越えてチャレンジできる仕組みがあり、自ら手を挙げることで新たな領域に関わることも可能です。印刷にとどまらず、システムや農業といった領域まで広がる事業基盤を背景に、自分自身の志向に応じたキャリアを描ける環境が整っています。

── 今後の貴社で必要とされる経験やスキルについて教えてください。

中途入社の方に対しては、特にシステムやIT領域のご経験をお持ちの方に期待を寄せています。現在は紙媒体であっても、その裏側ではQRコードやRFIDなどを通じてシステムと連携することが前提となっています。当社でもプログラム開発に取り組んでおり、アプリケーション開発を軸に、最終的には印刷物として形にするところまで関われる点が特徴です。デジタルとリアルの双方を扱いながら価値を生み出せる環境が広がっています。

今後、より重要になると考えているのは、AI時代における“考え方の力”です。プロンプトを設計できる力に象徴されるように、単に技術を扱うだけでなく、お客様の具体的なニーズから共通点を見出し、それを構造化できる力が求められます。抽象化と具体化を行き来しながら、本質的な課題を捉える。そのうえで、相手の意図を自分の言葉で言い換え、適切な形に変換できる人材が必要です。

当社ではこの力を「翻訳力」と捉えています。お客様の言葉をそのまま受け取るのではなく、自社の技術やリソースに置き換え、実装可能な形へと変換していく。そのプロセスを担える人材こそが、価値創出の中核を担います。ITや語学といったスキルはあくまで手段であり、後から身につけることも可能です。一方で、何を伝えるべきかを見極める力は、日々の対話や学びの積み重ねによって磨かれていくものだと考えています。

多様なプレーヤーと関わりながら、最終的に価値を形にして届ける。その過程に面白さを感じられる方にとって、当社は大きな成長機会を提供できる環境であると考えています。

必要とされ続けるために、伴走をやめない

── 会社としての今後の展望と、この記事を読む方へのメッセージをお聞かせください。

当社がこれからも目指していきたいのは、どこまでいっても必要とされる企業であり続けることです。そのために重視しているのは、お客様の業務や現場を深く理解し、困りごとに寄り添いながら共に解決していく姿勢です。単に新しい技術や製品を開発して提供するのではなく、実際の現場で使われ、価値として機能するところまで伴走する。そのプロセス全体に関わることこそが、当社の存在意義だと考えています。

また、こうした取り組みを支えているのは、人の挑戦を後押しする組織風土です。アイデアを起点に新しい価値を生み出したいと考える方に対しては、上司や組織全体で支援する土壌が整っています。安心して挑戦できる環境があるからこそ、次の事業や価値が生まれていく。そうした循環をこれからも大切にしていきたいと考えています。

変化の大きい時代においても、お客様とともに考え、形にし続ける。そのプロセスに面白さを感じ、自らのアイデアを実装まで導きたいと考える方と、ぜひご一緒できればと思います。

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