図面をバラし、建設業を最適化 生産性と創造性の追求へ

世界で2,500兆円、GDPの実に10%を占める建設業界。しかし、同業界は長らく生産性の向上や人手不足など、様々な課題を抱えてきました。今、そんな建設業界の課題を解消する企業として期待されているのが株式会社BALLAS(バラス)です。建設部材の調達を最適化するプラットフォーム「BALLAS」を提供することで、業界全体の生産性と創造性を高め、建設業界から社会全体を幸せにしていく。大きな使命を追いかける同社の代表取締役、木村将之さんにこれまでの創業ストーリーと今後の展望を伺いました。

木村将之

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BALLAS創業につながる父の存在、建設業界への想い

── 起業されるまでのキャリアをお教えください。

最初に入社したのは、総合商社の双日です。2014年に新卒で入社して、金属・資源分野の輸出入、事業投資、事業会社の経営支援に従事し、金属3Dプリンター事業の海外展開のため、欧州へ赴任していました。

金属・資源分野では鉄やカーボンを扱い、基本的な輸出入業務から従事することができました。その後、新規事業だった金属3Dプリンターのビジネスを担当したことが大きな転機の一つです。 3Dプリンターの本質は、設計データを送れば材料と装置がある複数の場所で部材製造ができることと理解し、これを既存サプライチェーンの変革の一つだと捉えました。設計データの柔軟性によっては、カスタマイズしながらも大量生産と同じ生産性を追求できるのではないかと、これが現在のBALLASを考えるキッカケとなっています。

── もともと商社に興味があったのでしょうか?

就職を考えた時に心に浮かんだのは父親でした…。父は住宅メーカーの設計士でして、実家を建てる工事が特に記憶に残っています。 設計士である父が図面を引いて、現場監督さんが統率し、腕利き職人さんが家を建てていく。たくさんの人が関わって建設が進んでいく様を思い返して、あらためて父を誇らしく思うと同時に、こういったチームワークや仕組み自体をつくる仕事がしたいと思いました。商社、ゼネコン、鉄鋼メーカーなどを考えた経緯です。

── 建設業界への想いは、幼少期からのものだったと…。

はい。今思えば幼少期からの想いがあり、そこに、双日での経験が加わったと思っています。金属・資源分野の取引先は、7割が製造業界で、建設業界は3割で各々を比較した際の生産性に大きな違いがあることに気づきました。一品一様の多い建設業に、製造業の手法をアレンジして持ち込むことができれば持続可能な業界の発展に寄与できるのではと感じた次第です。

そんな時に出会ったのが、製造業向けに金属加工のマッチングプラットフォームや生産管理システムを手掛ける株式会社Catallaxy(カタラクシー)でした。

Catallaxyは、製造業向けではありましたが、建設業の顧客も一部いらっしゃり、バリューアップできる可能性が高いと考えたのです。一方、この事業を通じて解像度が上がったことで、それぞれの課題に起因するワークフローの違いに気づくことになりました。製造業においてはQCDの観点でベストな製作パートナーさんを探索することに大きな課題感があるのですが、建設業は作図が可能なパートナーさんを探すという異なる課題感だったんですね。なぜなら、製造業はお客様が図面を描き、それを製作工場に依頼しますが、建設業ではお客様がつくる図面は大まかなもので、それをもとに工場側で製作用の詳細な図面に描き直さないといけないんです。これを解決する方法も組織も別のものが必要になってくる…。

── そこでBALLASの創業につながるのですね。

はい。私の中では、建設業界への想いが強かった。何とかこの業界の持続可能な発展に寄与したいなと。Catallaxyの代表とは関係性も良かったですし、それをオープンにお話ししてご理解をいただきました。2022年2月に独立し、創業。スタートは私を含めて3人 の船出でした。

図面をバラし 、建設業を最適化する

── BALLASという社名の由来はなんでしょうか?

BALLASは、業界用語である 「図面バラシ」が由来です。お客様である建設工事会社様が作図した図面をもとに製作工場様が建設部材を作るための「図面をバラす」工程を最適化する、ということですね。シンプルなネーミングです。

BALLAS独自のプラットフォーム「BALLAS」を利用することで、一品一様と言われる建設部材の作図を標準化でき建設工事会社様は簡易に発注できるようになります。また、素材、加工にあわせた発注先の製作工場を探す必要もなくなります。完成物の品質管理もBALLASが行いますので仕上がりイメージが違うということも解消でき、自分たちの工事に集中できます。製作工場様にとっては詳細な作図が不要になるだけでなく、生産計画に基づく量産体制を構築することができるので工場の稼働率を安定させられる。あわせて、お客様獲得に使うリソースを削減もできることで、得意な製作に集中できるようになるというわけです。

国内の建設投資額は年60兆円規模と非常に大きな金額が動きますが、そのうちの約35兆円を占めるのが、この調達領域。この調達領域を最適化させることで、建設サプライチェーン全体に寄与していきたい。課題が深刻化していている建設業会は局所的な改善アプローチでは立ち行かなくなっている。全体最適を目指し、業界の方々と一緒に「バラしてアップデート」したい。そんな想いもこの社名に込めています。

── 起業から現在まで、事業面で大変だったことはありましたか?

事業面では人に恵まれて致命的なトラブルはなく、ここまできました。2022年2月に3名で創業してからプラットフォーム「BALLAS」をフルスクラッチでゼロから開発し、2022年9月にリリース。「BALLAS」システムがリリースされる以前は、マンパワーで金属製品の加工・提供事業を同年3月からやってきましたが、当時はアナログでした 。一件一件お客様を訪問して新規に営業開拓し、こういう部材がほしいというオーダーをいただいたら図面を描いてパートナー工場様に依頼し、生産管理・受発注管理をしていました。営業面では苦労するかと想定していましたが、それ以上に困っていらっしゃるお客様が多かった、現場に需要があることを実感しました。

9月の正式リリースからはソフトウェアの力、テクノロジーを駆使して、お客様と工場をつなぎ、リアルでモノをお届けすることができるようになった。社員数は3名から100 名弱まで増え、製作・施工パートナーも約130社に。メンバーもそうですが、パートナーの皆様もそれぞれに強みが違う。保有する設備・機械も様々で、お客様である建設工事会社様からの様々な期待にお応えできる環境が整い非常に心強いです。

── 急拡大の中で組織づくりの面では苦労はありましたか?

たしかに組織面、人材面での苦労は大きかったですね。そもそも組織をつくるという難しさはどれだけやっても苦労するものでこれからも苦労すると思います。その中でも、全員で同じ方向へ向かって走るために何を示し、どのように捉えて、一緒にどう働いていくかの言語化を丁寧に重ねてきました。創業1日目にやったのがまさに、Mission、Vision、Valueをつくることでした。3人でそれぞれの意見を出し合って、共通認識をつくりました。そして、浸透させていく。今もその過程ですね。MVVの他にそれらを落とし込んだ行動指針、BALLAS信条というものがあり、評価制度への反映など制度面のブラッシュアップを現在進行形で進めています。

メンバーにも、得意分野に集中できる環境を

── これからBALLASをどんな組織にしたいですか?

私たちが価値を提供する建設業界は、市場規模が非常に大きいですが、今できているのはその中のほんの一部に過ぎません。目指す世界観に向けてビジネスをスケールアップしていく必要があります。それが実現できるかどうかは、人材次第であり 、たくさんの仲間が必要です。これは、規模の話ですね。

次は、質的な話。「建設業を最適化し、人々を幸せに。」をMissionに掲げるBALLASですが、その“人々”の中にはメンバーも含まれています。お客様である建設工事会社様が施工に集中でき、パートナー工場様が部材の製作に集中できるように、メンバーも自分の得意分野に集中できる、強みを活かせる状態をつくりたい。自分の価値を発揮できる仕事をすることで本人も、周囲も幸せになれますからね。

── メンバーが自身の得意分野に集中できるような制度はどんなものがありますか?

まず、働く場所はフルリモート前提で自分が働きやすい環境を選べるようにしています。当社は東京と大阪の2拠点がありオフィスで勤務してもいいし、自宅でもいい。コアタイムは10-14時に定めてはいますが、それ以外の時間はフレキシブルに使うことができます。BALLASには子育て世代も多く、ご家庭の事情は様々です。その上で、情報格差が生じないように社内MTGも録画や議事録を共有し、容易に会社全体の状況をキャッチアップをできるように整備しています。

当然ながら、育休、産休などの休暇制度も使っていただいています。今も育休・産休中2名、休暇を取得して復帰された方が4,5名います。自己投資という点では、専門書の購入補助など自己研鑽の支援も行っています。また、建設業は資格もたくさんあるので、資格取得の費用補助制度もありますね。ただし、ベースの考え方としては種々の制度や手当よりも、利益は給与に反映する思想です。そのほうがより各自の生き方に“最適化”できると考える次第です。

応募者に求めるものは基本姿勢と基本動作

── BALLASが必要とする人材はどんな方でしょうか?

BALLASでは仕事を進めるうえでの必要な能力として、基本姿勢、基本動作、スキルの3つを定義しています。基本姿勢はマインド面、基本動作は思考面、基本姿勢・基本動作をしっかり持っていればスキルの習得は後からでも出来ると考えています。
いかに高い基本姿勢、基本動作を持たれているかが採用基準です。
特にマインド面では、使命感は重視しています。なぜ、建設業界でこういうことがやりたいのか、そこが大切だと思っています。しかし、建設業界に携わってきた経験や建設業界だけの目線は必要ありません。業界構造/社会構造を進化させること、世の中のために貢献したいという想いがある人と働きたいですね。また、思考面ではゴール思考を持っている方、素養のある方が望ましい。単なる根性論でも、机上論でもなく、ゴールから逆算して考え、確実に行動できる方ですね。

── 現在の成長ステージでは特にどんな方を求めていますか?

もうすぐ、BALLASは100名を超える規模になります。今まではマネジメントによりスケールするフェーズでしたが、今後は一人ひとりが能動的に動ける必要があります。 また、周りを巻き込んで進められる方が重要なフェーズになってくる。建設事業者としてテクノロジーを通じて最適なサプライチェーンを再構築する、この新たなアプローチにおいて既成概念を取っ払い、本質を追求できる方と一緒に働いていきたいです。

建設業界だけでなく、社会構造を再定義する

── 最後に、今後実現したいこと、ビジョンをお願いします。

繰り返しにはなりますが、今後ますます業界の人手不足が深刻化していく中、私たちが最適なサプライチェーンを築くことで、業界を効率化していきたいと考えています。効率化することは生産性向上に直結しますが、それによって時間が生み出すことができる。つまり創造性を高める時間を生み出すこともできます。そんなプラットフォーム「BALLAS」のソフトウェア、ノウハウをもっとたくさんの方に使っていただけたらと思い、SaaS形式のサービスもクローズドで進め始めています。

建設業界は関わる企業や人も多く、巨額の投資が行われる業界です。そんな建設業界の最適化をすることは、この業界だけでなく、その他の産業や社会全体にも大きな影響があるでしょう。建設業界だけでなく、社会構造を再定義する。そんなビジネスに面白さややりがいを感じてもらえたら嬉しいですね。

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