データで医療を変える。実装まで担う、新時代のメディカルマーケティング

医療のデジタル化が進み、製薬企業のマーケティングは大きな転換点を迎えています。その中心にあるのが、エムスリーマーケティングが展開する“メディカルマーケター(MM)/eプロジェクトマネージャー(ePM)”という新しい専門職です。医師の行動ログやアンケート、医師向けプラットフォーム「m3.com」のデータ、電子カルテ由来のリアルワールドデータを武器に、医薬営業のあり方を再設計していく。コンサルティングの思考を生かしつつ、提案で終わらず実装まで担う――そんなハイブリッドなキャリアの実像を、同社代表の増田英宣氏に語っていただきました。

増田 英宣

1975年静岡県生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー、リクルートを経て、2012年にエムスリー株式会社に入社。2015年よりエムスリーマーケティング株式会社代表取締役社長。

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MRだけでは届かない領域へ。メディカルマーケター誕生の背景

── まず、メディカルマーケター事業の概要を教えてください。

私たちが取り組んでいることを一言で説明するなら、MRがこれまで病院や診療所を訪問して担ってきた情報提供活動を、ウェブを起点に、より効率的かつ高度なものへと変えていく挑戦だと言えます。かつてのMR活動は、医師に対面で情報を届けることが基本であり、それは当時の医療環境においては間違いなく最適解でした。ただ、近年の薬剤開発の方向性が大きく変わり、状況も変化しています。

── 従来とどんな変化があるのでしょうか?

従来は、糖尿病や高血圧といった患者数が多いプライマリー領域を中心に、万人に向けた情報をなるべく均質に届けることが重要視されていました。しかし現在は、がんや希少疾患など専門性の高いスペシャリティ領域が急速に伸びています。この領域では、医師ごとに求める情報が大きく異なり、同じ資料を一斉に配布するだけでは十分な価値を提供できません。医師が診ている患者の背景、診療科、経験値、関心の方向性など、多様な要素に合わせて情報を最適化して伝える必要があるのです。

── その中で、エムスリーマーケティングは具体的にどのような活動をしているのでしょうか

当社のメディカルマーケターは、医師の行動ログ、アンケート回答、過去の反応などを踏まえて、情報の中身も出し方も細かく調整します。ここで欠かせないのが、エムスリーが運営する医師向け専門プラットフォーム「m3.com」です。医師の9割以上が登録し、診療に関する最新情報を得るために日常的に利用しているサイトで、製薬企業からの発信や医療業界の最新ニュースなど、さまざまな情報が蓄積されています。この“医療情報のハブ”を起点に、私たちはデータを活用した新しい情報提供の仕組みをつくっているのです。コンテンツをパーソナライズし、医師とのやり取りを双方向的に設計する。さらに、ウェブ面談や電話面談を通じて理解度を確認し、次の打ち手を考える。これは、MRが経験や勘を頼りに行っていた活動を、データの力でスケールさせた取り組みであり、医薬品の情報提供の形そのものを新しい形へと変えていく試みです。

── この事業が生まれた背景を教えてください。

この事業の出発点には二つの大きな背景があります。一つは、開発される薬剤のトレンドが変わったこと。もう一つは、エムスリーという会社が元々持っていた“医療情報の非効率性を変えたい”という想いです。

まず前者についてですが、薬剤の専門性が高まるにつれて、医師が必要とする情報もより複雑になりました。たとえば希少疾患領域では、患者数は非常に少ないものの、診断や治療に関する情報は高度で、医師も深い理解を求めています。そのため、単なる一方向の情報提供では不十分で、医師のニーズを汲み取って適切な内容を届ける必要がある。この“個別化ニーズ”が強まったことが、メディカルマーケター誕生の大きな要因です。

そしてもう一つの背景が、エムスリーの“原点回帰”です。『m3.com』は、MRから医師への情報提供を効率化したいという構想から始まりましたが、当時は通信環境も整っておらず、MRのITリテラシーも十分ではなかったため、実現しきれなかった部分がありました。それが今は大きく変わりました。デジタル化が当たり前となり、医師もオンラインで情報を積極的に受け取るようになりました。AIを使った推計も実用化され、以前は把握できなかった患者数や診療傾向まで予測できるようになりました。こうした環境の整備が、エムスリーが“本当にやりたかった医療情報提供のデジタル化”を可能にしたのです。

コンサルティング思考 × データ × 実行力。ePMが担うプロジェクトの本質

── 「メディカルマーケター(MM)」と「eプロジェクトマネージャー(ePM)」、2つの職種があるそうですが、それぞれの役割を教えてください。

メディカルマーケターは、医師とのコミュニケーションを立体的に設計する存在です。医師の反応や行動データを読み取りながら、情報の中身を更新し、医師の興味・理解度に合わせて調整していく。時には面談を行い、医師が実際に抱えている課題を探り、それを踏まえて新しいコミュニケーションプランを提案することもあります。MRとの大きな違いは、扱う医師の人数です。MRは多くても数十人単位ですが、メディカルマーケターは千人、場合によっては一万人以上の医師を対象にします。個々の経験ではなく、データを武器に立体的にマーケティングを組み立てる必要があるという点で、求められるスキルがまったく異なります。

一方のeプロジェクトマネージャーは、メディカルマーケターを束ね、プロジェクト全体を推進する役割です。製薬企業のマーケティング部門と対話・課題を特定し、プロジェクトの目的を整理・KGI/KPIを設定します。その上で、どのようなコンテンツをどのような医師にどのようなタイミングで届けるかといった「実行計画」を描き、進行をマネジメントします。いわば、コンサルタントの“問題解決力”と、実業における“実行責任”を同時に担う存在です。

── メディカルマーケターはMR出身者が多いようですが、eプロジェクトマネージャーにはどんなバックグラウンドの人が向いていますか?

医療の知識があるかどうかは、本質的には大きな問題ではありません。それよりも、プロジェクトマネージメントのスキルがあるか、クライアントとの折衝を丁寧に行えるか、データをもとに物事を考えられるかといった汎用的なスキルのほうがはるかに重要です。製薬企業向けのプロジェクトであるため医療の専門用語は確かに出てきますが、MR出身者が専門領域を支えてくれる体制が整っているため、eプロジェクトマネージャーがすべてを理解する必要はありません。

── スタンスとして求められるものはありますか?

求められるのは、自ら手を挙げて動く姿勢です。担当外の会議にも興味があれば参加してみる、部署の境界を越えて課題を探しにいく、必要な時には素直に助けを求める。そうした主体的でオープンなスタンスが、エムスリーグループの文化と非常に相性が良いのです。医療業界未経験のeプロジェクトマネージャーがすでに活躍していますし、コンサル出身者も入社を決めています。共通しているのは、医療に対して素直な興味があり、データを使って実業に価値を出したいという想いです。

── 仕事のやりがいはどこにありますか?

製薬企業のマーケティングを担うということは、単に企業の売上に貢献するというだけでなく、その薬を必要とする患者の人生にまで影響を与えるということです。新しい治療薬が広がれば、何万人という患者の症状が改善されたり、安全性への理解が広がることで副作用リスクが軽減されたりする。その意味で、この仕事は社会的な意義が非常に大きいと感じています。

また、マーケティング活動の施策実行までクライアントに伴走できることも大きな魅力です。コンサルティングのように戦略提案で終わるのではなく、自分たちの手で実行し、改善を繰り返しながら成果を出していく。私たちは「手触り感」と呼んでいますが、その過程で得られる学びや達成感は、他ではなかなか味わえないものだと思います。

医療の未来をつくる仲間へ。エムスリーが開くキャリアの可能性

── 評価制度はどのように設計されていますか?

評価は相対評価ではなく絶対評価です。事業が伸び続けているため、順位をつけて昇格を制限する必要がありません。むしろ、優秀な人材にはどんどん役割を広げていってほしいという考え方で評価制度が作られています。

── 具体的にはどう評価しているのでしょうか?

評価の柱は二つです。一つはプロジェクトの成果で、契約が継続・拡大したかどうか、設定したKPIを達成したかどうかといった観点を丁寧に見ていきます。もう一つは個人のスキル評価。メディカルマーケターやeプロジェクトマネージャーとして必要なスキルを定めています。その中で、どのスキルがどのレベルに達しているかを確認し、成長度合いを把握します。成果と能力の双方を適切に評価し、その結果が昇格や報酬に明確に反映されるよう設計されています。

── 組織カルチャーの面では、どのような特徴がありますか?

平均年齢は三十代前半くらいで、若すぎず、かといって硬直しているわけでもない、ちょうどいいバランスだと思います。「誰が言うかではなく、何を言うか」が重視される文化で、年次やポジションよりも、内容の妥当性が大事にされます。部署の境界もあまり強くなく、自分のやるべきことをきちんとやったうえであれば、どんどん守備範囲を広げていってほしいというスタンスです。

── 最後に、医療業界未経験の方々にメッセージをお願いします。

医療という領域は、社会性が高く、変革の余地も大きい分野です。そのなかで、エムスリーグループは膨大なデータ資産を持ち、それらを実際のプロジェクトで価値に変える力を持っています。m3.comの行動ログ、電子カルテのリアルワールドデータ、アンケートデータ、AIによる推計――こうしたデータは、他社では手に入りません。それを使いこなしながら、患者に薬が適切に届く世界をつくっていく仕事は、単なるビジネスの枠を超えた魅力があります。

コンサルティングのような論理的思考を活かしつつ、自らの手で実業を動かし、目に見える成果を出す。この二つを同時にできる環境は多くありません。もし、データを武器に医療の未来を変えるという挑戦に心が動くなら、ここは間違いなく面白い場所になると思います。

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