世界の最前線で選ばれ続ける理由。FUJIの技術を支える開発力の源泉とは

スマートフォン、AIサーバー、自動車など、最先端デバイスの製造を支える電子部品実装ロボット。その分野で世界トップクラスのシェアを誇る株式会社FUJIは、海外売上比率約9割という圧倒的なグローバル展開を実現している企業です。世界中の電子部品実装ラインを支える高度な技術力と、変化を先取りする開発力。その背景には、どのような戦略と組織があるのでしょうか。本記事では、代表取締役社長 五十棲丈二氏へのインタビューをもとに、同社の競争力の源泉、エンジニアにとっての成長環境について紐解いていきます。

五十棲 丈二

1996年、富士機械製造株式会社(現株式会社FUJI)に制御エンジニアとして入社。工作機械の制御システム開発に携わった後、開発センターなど技術開発部門を歴任。事業企画部長などを経て、2017年には米国シリコンバレーにFUJI Innovation Lab.を設立し、ディレクターとして現地の最先端技術の探索やスタートアップとのネットワーク構築を推進。

2021年に執行役員としてロボットソリューション事業本部の技術開発およびイノベーション推進を統括し、2022年には取締役執行役員として同事業本部長に就任。開発と事業の両面から会社の成長を牽引してきた。

2023年より代表取締役社長に就任。グローバル市場を前提とした経営戦略のもと、既存事業の高度化と新規事業創出の両立を推進し、将来に向けた成長戦略を指揮している。

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流動性の高い市場に適応するグローバルな事業モデル

── 海外売上比率9割という事業構造をどのように捉えていますか。また、その背景にある戦略について教えてください。

当社は、電子部品をプリント基板へ高速かつ高精度に配置する「電子部品実装ロボット(マウンター)」を主力とし、スマートフォン、AIサーバー、自動車など、最先端デバイスの製造を支える企業です。電子機器の製造の中核を担う電子部品実装工程において、世界中の生産ラインに不可欠な役割を果たしています。

こうした事業特性を背景に、当社は早くからグローバル展開を進めてきました。電子部品実装業界は、地域や産業ごとに成長の波が大きく変化する市場であり、特定領域への依存はリスクとなり得ます。そのため当社では、世界中のどこで需要が生まれても即座に提案・対応できる体制を構築しています。

この戦略の原点には、顧客企業のグローバル展開に伴い、各地域へと事業を広げてきた歴史があります。例えば、市場規模が小さいことを理由にその地域への進出を見送るのではなく、将来の可能性を見据えて網羅的に事業を展開してきた点に当社の姿勢が表れています。どこで次の需要が立ち上がるか分からないからこそ、全方位で備える――その思想こそが、現在の高い海外売上比率と世界トップクラスのシェアを支える基盤となっています。

技術・ネットワーク・知財で築く、揺るがない優位性

── 競争力の源泉について教えてください。

当社の競争力の中核にあるのは、世界中どこでも同一水準の価値を提供できるネットワークです。電子部品の実装に求められる性能は地域によって大きく変わるものではなく、むしろグローバルで標準化されています。その前提に立ち、当社は世界最高水準の技術を、提案・導入・アフターサポートまで一貫して提供できる体制を構築してきました。

もともとは地域ごとに産業特性の違いがあり、当社の営業・サービス体制も各地域に最適化していました。しかし、市場の流動性が高まり、生産や需要が地域を超えて変化する中で、拠点間の連携を強化。グローバルでの営業・サービス会議を通じて知見を共有し、どの地域でも同品質の提案・サービスができる仕組みへと進化させています。結果として、需要がどこへ移動しても対応できる柔軟性を獲得し、持続的な競争優位につなげています。

── 世界最高性能を実現している背景と、顧客に選ばれる理由は何でしょうか。

当社が向き合っているのは、スマートフォン、AIサーバー、自動車などの最高精度が求められるハイエンド領域です。この分野において、電子部品実装で世界トップレベルの精度を実現できる企業はごくわずかであり、その一角を担っている点に大きな価値があります。

象徴的なのが、0.16mm×0.08mmという極小チップの実装技術です。現時点で、このサイズの電子部品を実用レベルで実装できているのは当社のみであり、このような高精度実装への対応力が、ハイエンドメーカーから選ばれている理由の一つです。

さらに、累計13万台以上を販売した「NXTシリーズ」の後継となる最新主力製品であるNXTRも、業界の標準となるマウンターの一つとして世界中の生産現場で広く採用されています。高精度・高速性の両立に加え、顧客ニーズの変化に応じて進化し続けることで、業界の技術進化を牽引する存在であり続けています。

── 他社が追随できない理由と、開発力の源泉について教えてください。

当社の強さを支えるもう一つの要素が、特許を軸とした技術的優位性です。労働力不足という将来課題を見据え、完全自動化された生産ラインの必要性をいち早く捉えた当社は、フルオートメーションを前提とした開発を先行して推進してきました。関連する知的財産を戦略的に蓄積することで、他社が容易に参入できない領域を確立しています。

加えて、開発思想にも独自性があります。装置を構成するユニットを簡単に組み替えることができる「モジュールコンセプト」を採用しており、これにより装置1台でスマートフォンから大型AIサーバーまで幅広い製品に対応することが可能です。さらに、生産する製品に応じて最適な装着へッドへ交換できる柔軟な生産対応は特許によって守られており、差別化の本質的な要素となっています。

これらの技術を生み出しているのは、先行的な開発を可能にする組織と文化です。当社ではマーケティングを重視しながらも、「今何が必要か」を現場レベルで迅速に判断し、即座に形にしていく開発スピードを強みとしています。市場ニーズに加え、エンジニア自身の課題意識から生まれるテーマについても、プロトタイプの作成や検証がスピーディに進められています。

その背景にあるのが、風通しの良い組織体制と適切な規模感です。意思決定までの距離が近く、個人のアイデアが埋もれることなく、実際の開発へと反映される環境が整えられています。トップダウンとボトムアップが両立することで、開発には常に現場発の発想が反映される文化が根付いています。

こうした文化のもとで生まれた技術は特許として蓄積され、競争優位へと転化されていきます。スピードと独自性を両立する開発体制こそが、当社の開発力の源泉と言えるでしょう。

内製化と発想が生むオリジナリティ

── エンジニアにとって、電子部品実装ロボット開発のやりがいは何でしょうか。

当社のエンジニアが向き合うのは、スマートフォン、AIサーバー、自動車に加え、航空宇宙といった最先端領域です。いずれも高度な技術が求められる分野であり、顧客から寄せられるニーズも常に最先端です。

その中で求められるのは、既存技術の延長ではなく、前例のない課題に対する新しい技術開発です。宇宙通信機器や次世代モビリティなど、多様な分野の課題に対し、簡単に真似できない技術で応えていく。その過程で知的財産を積み重ねながら、新しい価値を生み出していける点に、エンジニアとしての醍醐味があります。

── オリジナリティを生み出すための仕組みについて教えてください。

当社の開発は、世の中の既存技術の組み合わせに依存しません。リニアモーターや画像処理カメラ、さらにはセンサー素子に至るまで、世の中にない技術は自ら設計・開発しています。その徹底した内製化によって、ミクロン単位の精度を実現しています。社内には「無いなら作ろう」という文化があり、それこそがオリジナリティの根底にあります。

性能を追求し、徹底した内製化で技術を洗練させていく一方で、現場の発想を技術の起点とすることもあります。例えば「人が部品供給を担う時代は続かない」「ロボットが動くなら非接触で電力供給すべき」といった着想は、エンジニア一人ひとりの問題意識から生まれています。思いついたアイデアをすぐに形にする文化が、独創的な技術を生み出す源となっています。

── アイデアを形にできる環境はどのように実現されているのでしょうか。

当社では、要素技術開発とイノベーション推進という役割の異なる組織が連携し、製品開発の初期段階からPoCやプロトタイプを高速に回す体制を整えています。

特徴的なのは、最終的な製品像が完全に固まっていない段階でも、個別テーマごとに検証を進められる点です。例えば、「どこまで高速なモーターを作れるか」「遠隔制御の土台を作れるか」といった要素単位でトライアルを重ね、それぞれの技術を磨きながら、最終的に製品として形にしていきます。

また当社では、「小さく早く失敗する」ことを重視しています。テーマを細かく分けて高速に試行錯誤を回すことで、問題点を明確にしながら何度でもやり直せる環境をつくっています。この考え方が、開発スピードを支える土台となっています。

── 技術者が感じる手応えと、それを支える企業風土について教えてください。

当社のエンジニアは、自らの技術が世界中の最先端製品を支えているという確かな手応えを実感できます。スマートフォン、AIサーバー、自動車など、グローバルに展開される製品の多くに当社の技術が関わっており、「この製品は自分たちが支えている」と語れる仕事のスケールは大きな魅力です。困難な技術課題を乗り越え、最終的に社会へ価値として実装された瞬間、その達成感は何ものにも代えがたいものとなります。

こうした挑戦を支えているのが、結果だけでなくプロセスを重視する評価の考え方です。当社では、成功か失敗かという最終成果だけで判断するのではなく、その過程で何を学び、次にどう活かすかを重視しています。試行の途中で見えた課題や気づきこそが次の価値につながるという思想が根付いており、失敗を理由に挑戦が止まることはありません。むしろ、失敗から得られる知見を積極的に評価することで、エンジニアの挑戦意欲を引き出しています。

さらに、こうした文化を実践の場として支えるのが「マルチスキルプログラム」です。若手エンジニアが設計業務にとどまらず、顧客先での実機立ち上げやサービス対応、さらには海外拠点での業務まで経験できる仕組みとなっています。顧客の声を自らの手で受け取り、それを技術へと還元するプロセスを通じて、より高い視座で開発に向き合う力が養われます。

世界を相手に技術で応え続ける実感と、その挑戦を後押しする文化と仕組み。この両輪が揃っていることこそ、当社におけるエンジニアリングの本質と言えるでしょう。

世界の最前線から、次の成長を構想する

── FUJI Innovation Lab.をシリコンバレーに設置した背景を教えてください。

当社がシリコンバレーに拠点を構えた理由は、単なる情報収集ではありません。重要なのは、投資家やスタートアップが集まる現地のコアコミュニティなどの「インナーサークル」に入り込み、表には出てこない情報や市場の変化をいち早く捉える立ち位置を確保することにあります。外側からでは得られない情報の質と鮮度こそが、技術や事業の方向性を見極めるうえで決定的な差を生みます。

また、現地に拠点を持つことで、関心のあるテーマや関連技術を探索し、その場で検証しながら、適用可能性を迅速に見極めたうえで意思決定を行うことが可能になります。日本から遠隔で判断するのではなく、現地で迅速に判断できること。それがFUJI Innovation Lab.の大きな役割です。

── 社員のアイデアを事業化する仕組みについて教えてください。

当社では、社員が自由に事業アイデアを投稿できるプラットフォームを運用しています。一定数の支持を集めたアイデアには予算が付与され、イノベーション専任組織と伴走して検証を進めます。もちろん、すべてが事業化されるわけではありません。しかし当社では、通常、事業部だけでは進めにくいテーマであっても、まずは小さく試してみることを重視しています。イノベーションを推進する組織が予算を持つことで、アイデアを実際に形にする環境を整えています。

この取り組みの狙いは、新規事業の創出だけではありません。エンジニアが市場や事業の視点を持ち、多角的に物事を考えるきっかけにもなっています。

トップであり続けるか、次を創るか。FUJIはその両方を選ぶ

── 2035年に向けたビジョンについて教えてください。

2035年に売上3,000億円を目指すうえで、当社が重視しているのは「既存事業の深化」と「新規事業の創出」の両立です。電子部品実装(SMT)事業においてトップクラスの地位を維持することが前提であり、それがあってこそ次の挑戦が可能になります。

その前提のもと、当社は市場や産業構造の変化を先取りしながら、既存事業そのもののオーガニックな成長に加え、半導体などの隣接領域との融合や、様々なロボット分野など新たな領域への展開も視野に入れています。そして、既存事業・隣接領域・新規事業を組み合わせることで化学反応を起こし、新たな成長機会を生み出しながら、既存事業の延長線だけではない非連続な成長を実現していく考えです。

また、M&Aや資本政策を組み合わせながら、2035年の売上目標達成に向けた成長を実現していきます。

── 最後に、世界を舞台にFUJIで挑戦したい方々へのメッセージをお願いします。

FUJIの特徴は、一つの会社にいながら世界中の地域と多様な産業に関われる点にあります。アジア、米州、欧州といった地域を横断しながら、スマートフォン、AIサーバー、自動車などの幅広い分野に携わることで、他では得られないキャリアを築くことが可能です。

地域だけでなく、関われる業種の幅も広い。同じ企業に所属しながら、関わる市場や顧客を変えていくことで、視野と経験の両方を拡張できます。数年単位で異なる分野に挑戦できる環境は、エンジニアとしての成長を大きく加速させます。

世界を舞台に、自らの可能性を広げたい。そうした志を持つ方にとって、当社は多様な選択肢と挑戦機会を提供する場となるはずです。

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