AIを、机の上から社会の中へ。ラクスの“実装主義”が拓く道。

バックオフィスからフロントオフィスまで、企業のデジタル化を支えるクラウドサービス(SaaS)を展開するラクス。経費精算の「楽楽精算」、請求書発行の「楽楽明細」をはじめ、多様なサービスで業務の効率化を後押ししてきた。業務の複雑化や人手不足が進む中、サービスにAIを組み込むことで、より高度な自動化を実現することへの期待は高まっている。

ラクスのAI開発チームが取り組むのは、精度を競う研究ではなく、日々の業務の中で“実際に動くAI”を生み出すこと。請求書処理や経費精算、債権管理といったバックオフィス業務にAIを組み込み、数万社の働き方を変えていく。2024年に入社した宮城氏は、AIチームのマネージャーとして、AIモデルの開発から運用、そして社会実装までを一気通貫で担っています。地道な検証の先に、確かな成果を生み出す。その実装力こそが、ラクスの“AI×SaaS”を支えています。

宮城 周

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「もっと良い環境で、もっと良いAIをつくりたい」──ラクスを選んだ理由

── まず、ラクスに入社されるまでの経緯を教えてください。

以前はメーカーで、AIを搭載した製品の研究開発を担当していました。限られたメモリ環境でどう最適なモデルを動かすーー非常にやりがいのある仕事でしたが、月100時間を超える残業が続く日々でした。AIの進化スピードに負けないよう、夜中まで実験や検証を繰り返す。ただ、「この働き方は長くは続かない」と感じる瞬間があったんです。技術は好きなのに、疲弊してしまうのは本末転倒だなと感じて。もっと長く、もっと良い仕事を続けられる環境に身を置きたいと考えたのが転職のきっかけでした。

── そうした中で、ラクスに惹かれた理由は?

まず「働く環境」と「挑戦できる領域」の両立です。ラクスは「残業ゼロ前提で計画を立てる」文化があり、実際、私たちのチームは平均残業月10時間以下。仕事の時間と生活の時間、どちらも大切にできます。

一方で、扱うデータ量やプロダクトの規模は国内トップクラスです。私が入社した2024年当時、AIチームはわずか3名。その少人数でSaaSの根幹を変えるような開発を進めていた。“無理をしないのに、挑戦ができる”。そんな環境に惹かれました。

── 入社後、最初に任されたのはどんな仕事でしたか。

AI-OCR(文字認識)機能の内製化です。これまで外注していた部分を社内で開発しようという挑戦で、ラクスのAI開発課が立ち上がるきっかけにもなりました。数万枚の帳票を手作業でマーキングし、学習データを整えるという地道な作業の連続でした。

地道な作業の積み重ね、これが会社全体を変える大きな成果につながります。

最終的には年間約2億円のコスト削減を実現。AIを「試すもの」から「使うもの」へ。ラクスのAI活用が大きく前進するきっかけになった転換点となりました。

ラクスのAI開発は「実装主義」

── ラクスのAI開発の特徴はどんなところにありますか。

一言でいうと、「実装主義」です。
AIを研究することが目的ではなく、実際に動かして社会で使うことを目的にしています。
お客様の業務の中にAIを組み込み、リアルに価値を出す。それが前提にあるから、プロジェクトの進め方も実践的です。

それともう一つの特徴は、扱うデータの多様性です。ラクスには経費精算、勤怠管理、販売管理など複数のSaaSプロダクトがあり、それぞれのデータが有機的につながっている。たとえば経費データと勤怠データを組み合わせて、不正検出精度を高めるといったこともできる。これは他社にはない強みです。

── 開発環境や働く環境についても教えてください。

AI開発ではGPUリソースなどのIT投資が欠かせませんが、ラクスはその点でも非常に恵まれています。数日で数万円規模のGPUを使う検証も、止められたことはありません(笑)。ツール選定の自由度も高く、生成AIやLLMツールは自分の判断で導入できます。

働き方も整っていて、残業は月10時間以下。コアタイム外に会議を入れないルールがあり、集中と余白を両立できる環境です。“安心して挑戦できる場所”というのが、私の率直な印象です。

── AIエンジニアとして、どんな魅力を感じていますか。

AIを「動かす」ところまで責任を持てることです。多くの企業では、AI開発が社内検証で終わってしまう。でもラクスでは、自分の書いたコードがプロダクトに組み込まれ、数万社のお客様に使っていただける。社会に影響を与えている実感があるんです。

さらに、AIモデル開発だけでなく、アプリ実装やインフラ構築にも関われます。“AIをつくる”だけではなく、“AIを届ける”までの全工程を担えるのは、エンジニアとして大きな成長機会だと思っています。

年間2億円コスト削減から始まった、少数精鋭の挑戦

── AI-OCRの開発で特に印象に残っている出来事はありますか。

地道なデータ整備もそうですが、終盤のトラブル対応ですね。リリース3〜4ヶ月前に、システム統合の影響で学習データの約1/5が消失したんです。普通ならプロジェクトが止まってもおかしくない規模の問題でしたが、インフラ部やAWSベンダーと連携して、短期間で復旧しました。

「何があっても最後までやり切る」。チーム全体にそういう空気があった出来事でした。

── 現場主導のスピード感があるのですね。

ロードマップを軸に開発を進めつつ、現場で急ぎの課題が生じたときは重要度を見極めて柔軟に対応しています。現場の課題を最優先に解き、お客様の困りごとに最速で応えるーーそれが、ラクスのAIチームの文化です。

── チーム体制について教えてください。

現在は7名体制で、3年後には15名規模を目指しています。ただ、少数精鋭という点は変わりません。人数が少ない分、一人が担当する領域が広く、AIモデル開発、データ整備、アプリ実装、インフラ調整まで幅広く関われます。「自分でつくって、自分で世に出す」まで一貫して携わることができる。その手応えは、他ではなかなか得られないと思います。

── ラクスのAI開発で大切にしている価値観は?

「技術のための技術にしないこと」です。
ラクス全体で“顧客志向”というスローガンを掲げていて、AIチームも同じ姿勢で開発に臨んでいます。最先端の技術を追うことが目的ではなく、お客様の課題をどう解決するかが中心にあります。

たとえば、OCRの精度向上にLLMを使う場合も、発想の起点は「AIを導入したい」ではなく、「お客様の負担を減らしたい」という視点からスタートします。それが結果的に技術を進化させ、価値につながっているんです。

「AI×SaaS」で“思考の自動化”へ

── 中長期的には、どのようなAI戦略を描いていますか。

ラクスでは今後、各プロダクトにおけるAIの活用範囲を着実に広げていく方針です。現在も複数のSaaSでAIが稼働しており、たとえば「楽楽精算」では経費内訳の自動分類や異常検出など、日常業務の精度と効率を高めています。これからは、より多くの業務にAIを組み込み、“働き方そのものを最適化する状態”を目指しています。

── 生成AIやLLMの取り組みも進んでいるそうですね。

はい。開発現場ではすでに生成AIを活用しています。コードの一次生成やレビューをAIに任せることで、人間は設計や検証に集中できるようになり、生産性が飛躍的に向上しました。

さらに、LLMを用いた「AIエージェント」の開発も進んでいます。 チャットで経費処理や勤怠入力が完結する──そんな“思考の自動化”を、実際の業務に落とし込もうとしています。AIは人の代わりではなく、判断を支える存在ーーラクスのAI開発は、まさにその思想に基づいています。

── ラクスで働くエンジニアに共通している特徴は?

不確実性の高いAI開発では、完璧を待つより、仮説を立てて試すスピードが重要です。失敗を恐れずに挑戦できる人が活躍しています。
同時に、“顧客のために”という姿勢も欠かせません。技術を磨くことは手段であり、目的はお客様に価値を生み出すこと。そのバランスを大切にできる人が、ラクスのカルチャーにフィットすると思います。

── 最後に、AIエンジニアとしてラクスで働く魅力をどう感じますか。

AIは、不確実で、明確な正解がない技術です。その不確実性を前提に、挑戦と改善を繰り返すのがラクスのAI開発。開発者に信頼と裁量があり、挑戦できる環境が整っています。

そして何より、「AIで人を幸せにする」という目的が全員で共有されています。AIは人の仕事を奪うのではなく、人の思考を拡張する存在。ラクスのAIチームは、その未来を現実にしようとしています。私自身も、AIが“働く”SaaSの時代を、自分たちの手でつくっていきたいと思っています。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。