人がやるからこそ価値が残る。AI時代に圧倒的な市場価値を誇る「ロボット・フィールドエンジニア」

あらゆる産業で省力化・省人化投資が加速し、産業用ロボットの需要が世界規模で拡大を続けている現在。なかでも、日本のものづくりを支える自動車産業や半導体産業において、圧倒的なシェアを誇るのが、川崎重工業製のロボットです。そのロボットの安定稼働を支え、お客さまの生産ラインを進化させているのが、メンテナンスやシステムビルドを一手に担う「カワサキロボットサービス株式会社」に他なりません。世の中が生成AI(人工知能)の台頭やデジタル化に沸くなか、同社を率いる寺沢晋哉社長は「デスクワークの一部がAIに代替される時代だからこそ、現場で知恵を絞るフィールドエンジニアの価値は高まり続ける」と指摘します。未経験からでも世界に通用するマルチな技術者に育つ環境と、2030年に売上倍増を目指す同社の成長戦略、そしてロボットビジネスの未来について話を聞きました。

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故障修理から「予知保全」へ。高度化するお客さまニーズと、進化するサービス戦略

── 今回の採用では、全国エリアを問わず「フィールドエンジニア」を重点的に募集されるとのことですが、まずは御社の事業形態と近年の変化について教えてください。

寺沢:我々のメインミッションは、自動車工場や半導体工場などで稼働する産業用アームロボットの導入支援からアフターセールスサービスまでを一貫して担うことです。実は、この「サービス」の在り方自体が、リーマンショック前後を境に大きく変化しています。それ以前のサービスといえば、現場でロボットが故障したという連絡を受けてから駆けつける「故障修理」が中心でした。しかし、ロボット自体の信頼性が向上し、故障そのものが減ったことに加え、簡単な修理はお客さま自身で内製化されるようになりました。そこで我々が現在メインで展開しているのが、ロボット設備の導入前検討・テストを行う「ビフォアサービス」や故障を未然に防ぐ「予知保全(CBM:コンディションベースメンテナンス)」です。

── 故障してから直すのではなく、壊れない仕組みを作るわけですね。具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。

寺沢:象徴的なのが、当社のサービスポリシーでもある『K-COMMIT』という年間保守契約サービスです。この契約のもと、常時監視システムである『TREND Manager』を活用し、ロボット設備の状態をデータで正確に把握します。そして、そのデータ分析に基づいて最適なメンテナンススケジュールを決めていきます。もちろん、ただ画面のデータだけを見るのではありません。現場のスタッフが実際にロボットに触れ、点検を行いながらデータを集める。この現場での精度の高いデータ収集と、デジタルな解析の組み合わせによって高度な予知保全が成り立っています。お客さまが自前で強固な保全部門を持つ大企業だけでなく、設備保全を内製化することが難しいお客さまにも非常に多くご利用いただいています。最近では、この合理的な仕組みが欧米のお客さまからも高く評価され、受け入れられています。

密集配置、回転霧化……。最先端の生産ラインを形にする「現場の職人技」

── 主要なお客さまである自動車工場や半導体工場における、近年の技術トレンドについて教えてください。

寺沢:自動車のボデー工場(溶接工程)を例に挙げると、現在のトレンドはいかにロボット設備を密集配置するかにあります。これが韓国系や中国系、欧米系のメーカーとは一線を画す、日本の自動車メーカーの強固なノウハウになっています。狭いスペースに何百台ものロボットを詰め込んで密集稼働させるため、ロボット自体のフットプリント(設置面積)やアームを極限まで小さくする必要があります。さらに、アームが干渉し合わないよう、従来は外に出ていたホースやケーブル類をすべてアーム内に内蔵する構造へと進化しています。

── そのような高密度な生産ラインを立ち上げる際、フィールドエンジニアはどのような役割を果たすのでしょうか。

寺沢:例えば、自動車メーカーがEV(電気自動車)専用の新しい工場ラインを立ち上げるプロジェクトがあるとします。カワサキ本体がライン全体のシミュレーションやロボットの設計を行いますが、我々フィールドエンジニアの仕事は、そこに付帯品を組み付け、ライン制御のシステムを現場に合わせて調整・デバッグすることです。スポット溶接を例に挙げると、サーボスポット溶接ガンの形状や大きさは、ドア用、アンダーボデー用など、ラインや部位によって数百種類に及びます。このガンをロボットに取り付け、垂直・水平などあらゆる角度で動作させたときに、適切な加圧力(押し付ける力)がかかるよう測定器を使って1台ずつデータをとり、調整していきます。3D CADのシミュレーション上で完璧に動いていても、現場でロボットを動かしてみるとズレが生じます。その実機での微調整や、ロボットに動きを覚え込ませる「ティーチング」こそが我々の腕の見せ所です。こうした地道な調整作業の多くは、お客さまの工場に密着したサービス工場内で、お客さまと一体となって進めています。1ラインに数百台のロボットが並ぶ現場ですから、膨大なノウハウと擦り合わせの技術が必要不可欠です。

── 塗装工場についてはいかがでしょうか。溶接工程とはまた違った難しさがありそうですが。

寺沢:塗装はさらに受け持つ範囲が広くなります。ボデーの種類や色に合わせたスプレー塗装の制御だけでなく、コンベアのライン制御全体まで我々が担当します。塗装工場の最大の課題は「無駄吹きをなくし、効率を上げること」と、自動車製造で最も電力を消費する「空調・ブースのエネルギー削減」です。現在主流になっているベルガンを使用した遠心力で塗料を霧化する「回転霧化方式」は、以前のようにエアーで塗料を吹き付けるスプレー方式に比較して塗着効率(狙った場所に塗料がつく割合)が格段に向上しています。また、回収・再利用が可能な「粉体塗装」もロボット塗装に使用するケースが増えています。いかにラインを短く、ブース面積を小さくするかという、お客さまの生産技術部隊のシビアな要求に、我々ロボット屋も応え続けなければなりません。このように仕事の難易度は年々上がっていますが、お客さまに深く入り込み、密着して共にノウハウを積み重ねていくプロセスは、非常にエキサイティングです。

「AIの活用範囲が広がる。だからこそ、現場のマルチエンジニアが生き残る」

── 自動化やAIの進化が進むなかで、これからのエンジニアに求められる資質や、キャリアとしての優位性はどこにあるとお考えですか。

寺沢:最近、採用面接で会った学生から非常に面白い言葉を聞きました。「デスクワークは、将来生成AIに取って代わられるかもしれない。計算やソフトウェアコーディングなどは生成AIが最も得意とする分野だからです。それよりも、現場で実機を扱い、臨機応変に対応するフィールドエンジニアの仕事のほうが、人間にしかできない仕事として最後まで残るのではないか」と。まさにその通りだと思います。ものづくりに関わるエンジニアは、特定の技術分野に携わる「深く狭い」専門職になりがちです。一方で、フィールドエンジニアは違います。機械(メカ)、電気、ハードウェア、ソフトウェア、プログラミング、そしてロボット設備をお客さまの生産活動で活用するための適応技術まで、一通りの知識が必要になります。

── 専門家を細分化して配置するのではなく、一人でマルチにこなす必要があるのですね。

寺沢:特に一般産業向け(食品工場や加工機械分野など)の現場では、導入されるロボットは数台規模です。大手自動車工場のようにチームで入る現場とは異なり、エンジニアが1人で現場に乗り込み、お客さまやSIer(システムインテグレーター)と直接話をしながら、裁量大きくシステムの立ち上げを任されます。現場で「ここをちょっと変えてほしい」と言われたら、その場で提案し、プログラムを書き換えて対応する。こうしたマルチな能力が身につく環境だからこそ、エンジニアとしての市場価値は圧倒的なものになります。もちろん、すべてを1人で抱え込む必要はありません。当社の社内教育の仕組みは非常にうまく回り出していますし、現場にいても、今はスマートフォンや映像を使って、リアルタイムで技術的な情報共有や先輩のサポートを受けられます。海外出張中の連絡手段がファックスだった昔とは大違いです(笑)。異なる工場で培った技術や知恵を応用し合いながら、チームワークで解決していく風土があります。

専門性よりも「未知の技術への好奇心」を求めたい

── 未経験や理系以外の出身者でも、エンジニアとして活躍することは可能なのでしょうか。

寺沢:十分に可能です。必要な教育は入社後にイチからしっかりと行います。もちろん、学生時代にロボティクスを専門に学んできた人は立ち上がりこそ早いですが、数年も経てば、文理の壁や経験の差は関係なくなります。あえて専門性が活きる部分を挙げるなら、「2Dの図面を頭の中で立体的に展開できる」といった構造理解の早さくらいでしょうか。今の産業用ロボットはハードウェアの信頼性が非常に上がっているため、現場で半田付けをするような泥臭いハードトラブルはほとんどありません。むしろ、制御やラインシステムといったソフトウェア側の関わりのほうがメインです。

── では、採用において最も重視されているポイントはどこですか。

寺沢: 一番は「新しい技術を身に付けることに喜びを感じられるかどうか」です。技術の範囲が広く、次から次へと新しい要望やシステムが登場するため、知識を吸収しようとする「好奇心」がないと長続きしません。ただロボットを直すだけのメンテナンス屋ではなく、お客さまの生産性を高めるパートナーとして動く面白さを感じてほしいですね。また、将来的には大きなステップアップの機会も豊富にあります。技術を極めた先には、10人以上のプロジェクトを取りまとめるマネジメント職への道や、海外のサービス拠点への赴任(5年周期程度、現在は12名が派遣中)のチャンスがあります。海外拠点では、現地の法人社長に技術的助言をしながら、予算も人もすべてを自分で決めていく裁量が与えられます。プライドの高い海外のエンジニアたちと対等に渡り合い、信頼関係を築き上げていく経験は、ビジネスパーソンとして大きな財産になるはずです。

2030年に売上倍増へ。製造業のロボット活用による自動化拡大、そして医療・物流という新フロンティアへ

── 今後のさらなる成長に向けて、ロボット市場にはどのような可能性が残されているのでしょうか。

寺沢:現在、我々カワサキロボットサービス単体での国内売上高は約150億円ですが、2030年にはこれを2倍以上に拡大するという明確な目標を掲げています。ロボットの需要が増え続けている一方、ビジネスを大きくするために、現場でお客さま第一で動いてくれる仲間がどうしても足りません。今後の大きな成長の種は、ロボットの「適応分野の拡大」にあります。現在、製造業の現場でロボットにより自動化できている領域は、実はまだ全体のわずかに過ぎないというデータがあります。裏を返せば、残りの大部分がまだロボット化できる余地があるということです。これまでは自動車や半導体が中心でしたが、AIや画像認識技術(ビジョンシステム)の進化により、完全自動化が難しかった組み立て工程(シートやインパネの組み付けなど)や、箱の大きさがバラバラで摘み上げ(ピッキング)が難しかった物流倉庫の自動化も確実に進んでいきます。さらに、産業用にとどまらず、より人々の生活に近い領域への進出も始まっています。

── 最後に、御社が挑んでいる「ロボットの社会実装」の現在地と、これから参画する未来のエンジニアたちへのメッセージをお願いします。

寺沢:当社グループでは、医科大学様と共同で、病院内における検体や血液、薬品の自動搬送サービスの実証・導入を進めています。看護師の方々の業務をロボットが代替し、エレベーターと連動してフロアを移動する。こうした医療・介護・物流分野への広がりは、今後さらに加速していきます。私自身、このロボットの世界に40年以上身を置いていますが、本当にネタが尽きなくて飽きることがありません。現場に入れば、お客さまから厳しい言葉をいただくこともありますが、お互いに話し合いながら真摯にプロジェクトに取り組み、自分の携わったシステムで巨大な工場ラインが動き出したときの達成感は、何物にも代えがたいものです。仕事の成果がはっきりと形に残り、最先端の技術に囲まれて自分をアップデートし続けられる。そんな刺激的で、これからの時代に最も必要とされるマルチエンジニアへの挑戦を、心からお待ちしています。

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