出雲から世界最先端を。地域に根ざし、電子産業の未来を支える

島根県出雲市に拠点を構える株式会社出雲村田製作所は、村田製作所グループにおける積層セラミックコンデンサの基幹拠点として、世界のエレクトロニクス産業を支えています。AIサーバー、自動車、ロボティクスなど、先端技術の進化に欠かせない製品を山陰の地から届ける同社。今回は、代表取締役社長の谷口育男氏に、出雲村田製作所の役割や今後の戦略、UIターン人材にとっての魅力、そして地域に根ざして働く意義について伺いました。

谷口 育男 氏

村田製作所グループの中核拠点である出雲村田製作所にて、積層セラミックコンデンサの開発・生産を牽引。島根県内でも有数の規模を誇る事業所として、世界最先端のものづくりと地域への貢献を両立しながら、出雲・山陰からグローバル市場へ価値を届けている。

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村田製作所グループの中核として、世界のエレクトロニクス産業を支える

── 出雲村田製作所は、村田製作所グループの中でどのような役割を担っているのでしょうか。

村田製作所全体の中でも、積層セラミックコンデンサは売上高の約半分を占める主力製品です。出雲村田製作所は、その積層セラミックコンデンサの国内生産を担う基幹拠点として、グループ内でも非常に重要な役割を果たしています。海外にも生産拠点はありますが、村田製作所の事業を支える重要製品を出雲の地でつくり、世界中のお客様へ届けている。地方に拠点を置きながら、世界の電子産業と直接つながっていることが、出雲村田製作所の大きな特徴です。

では、なぜ積層セラミックコンデンサがこれほど重要な製品なのか。それは、電子機器の進化に欠かせない受動部品だからです。スマートフォンやパソコンはもちろん、自動車の電装化が進むなかでも、その重要性はさらに高まっています。ADASや自動運転、安全装置など、カメラやミリ波を活用する先進的なアプリケーションでは、電気を安定的に制御し、電子回路を正確に機能させることが欠かせません。積層セラミックコンデンサは、目立つ部品ではありませんが、最先端の製品やシステムを内側から支える重要な存在です。出雲でつくっている製品は、世界中の技術革新を支える基盤になっているのです。

── 出雲村田製作所ならではの技術的な強みは、どこにありますか。

強みは大きく二つあります。一つは製品そのものの開発力、もう一つは材料からの一貫生産体制です。積層セラミックコンデンサにおいて、セラミック材料は製品の大部分を占める非常に重要な要素になります。その材料を滋賀県や岡山県などのグループ拠点で製造し、電極材料についても自社グループ内でつくり込んでいます。重要な品質を生み出す拠点をグループ内に持ち、それぞれが連携しながら競争力を高めている点は、村田製作所グループならではの強みです。

さらに、生産設備についても、主要プロセスに関わる部分はすべて自社で開発しています。外部の設備をそのまま導入するのではなく、自分たちで工程を設計し、技術を磨き込む。そうして製造に関わる技術やノウハウを自社内に蓄積し続けてきたことが、高い品質と競争力につながっています。

── 出雲村田製作所で働く社員にとって、どのようなやりがいがありますか。

最先端の技術を学び、その技術を使って最先端の製品を開発し、お客様へ届けられることは、この仕事の大きなやりがいです。たとえば焼成工程では、ニッケルを金属の状態に保ちながら、チタン酸バリウムを酸化物として成立させる必要があります。そのためには、酸素濃度を極めて低い領域で精密に制御しながら焼き上げる高度な技術が欠かせません。

こうした難易度の高い技術を身につけ、お客様からの厳しい要求に応える製品を開発・製造し、世界中へ届けていく。さらに、自分たちがつくった製品が、自動車やスマートフォン、パソコンをはじめとするさまざまな製品の中で機能している。ものづくりの手応えと社会への貢献実感を同時に得られることが、出雲村田製作所で働く大きな魅力だと考えています。

変化する市場を先読みし、必要とされる製品を先手で開発する

── 注力領域や戦略について教えてください。

今後、AIの活用領域はさらに広がり、ロボティクスも重要な分野になっていくと考えています。私たちが大切にしているのは、お客様の製品が将来どのように使われ、その中で積層セラミックコンデンサにどのような性能が求められるのかを読み解くことです。変化が起きてから対応するのではなく、必要とされる製品を先手で開発していく姿勢が欠かせません。

たとえば自動車では、充電時間を短縮するために電圧を高めたいというニーズがあります。高電圧化は車体の軽量化にもつながるため、今後ますます重要なテーマになるはずです。そうした要求をいち早く捉え、より高い電圧に対応できる製品を開発していく。村田製作所グループでは、世界各地の営業組織や事業部がお客様の声を丁寧に拾い上げています。出雲村田製作所もその情報と連携しながら、製造拠点としての知見を製品開発へ反映しています。

今後さらに力を入れていきたいのが、AIを活用した品質向上と不良の未然防止です。製品の品質に影響を及ぼす因子をAIによって特定し、その変動を継続的にモニタリングする。変化の兆しを早く捉え、適切な対応を製造現場へタイムリーに反映できれば、ものづくりの精度はさらに高まります。将来的には、実際の製造現場で起きている現象をAI環境上で再現する「デジタルツイン」の構築も視野に入れています。現場で起こり得る変化を先に読み取り、品質づくりに生かしていくことが目標です。

生産体制の拡張も、出雲村田製作所にとって大きなテーマです。現在の工場から約1キロ南に新しい生産棟を建設しており、さらに2030年には安来市にも同規模の生産棟を建設する計画があります。村田製作所の国内事業所の中でも、これだけの規模で増産を計画している拠点は限られています。既存棟のリレイアウトも進めながら、より生産性の高い製造ラインへ置き換え、事業所全体のものづくり力を一段と高めていきます。

変化を捉え、自ら考え、チームで価値を生み出す人材へ

── これからの出雲村田製作所では、どのような人材が求められるのでしょうか。

これからの時代に求められるのは、自ら考え、新しい局面に適合していく力です。スマートフォンが登場する前に現在の社会を正確に予測できなかったように、今後も新しい製品やアプリケーションは次々に生まれていきます。その変化に対して、いかに早く対応し、自分たちのものづくりを進化させていくか。現状維持にとどまっていては、結果として後退につながりかねません。

ただし、変化を生み出す仕事は一人で完結するものではありません。出雲村田製作所には、原料、生産設備、製造、品質など、それぞれの領域に専門性を持つ仲間がいます。自社内に多様な技術基盤を持っているからこそ、部門や拠点を越えて知見を持ち寄り、チームとして成果を出すことができる。自分で考える力と、周囲と連携して形にする力。その両方を持つ人材に期待しています。

フラットな風土と学びの環境が、一人ひとりの挑戦を支える

── 社員が安心して意見を出し、成長していくために、どのような環境がありますか。

出雲村田製作所には、家族的でありながら、互いに率直に意見を交わせる風土があります。学閥や派閥はなく、分からないことがあれば先輩社員にも相談しやすい。助け合いながら仕事を進める雰囲気が、自然と根づいています。社長や役職者との距離も近く、役職にかかわらず「さん」付けで呼び合う文化があります。形式的な上下関係よりも、仕事に向き合う姿勢や意見の中身を大切にする。そのフラットさが、出雲村田製作所の風通しの良さにつながっています。

ものづくりにおいても、トップダウンで決められたことをこなすだけではありません。現場から意見を出し、周囲を納得させながら形にしていくスタイルを大切にしています。社員一人ひとりが考え、改善を重ねることで、独創的なアイデアが生まれ、最終的には技術力の向上にもつながっていく。こうしたボトムアップの文化は、出雲村田製作所の大きな強みです。

教育制度にも力を入れています。学生時代からセラミックコンデンサに関わってきた人は多くないため、文系出身者でも基礎知識を学べる社内講座を用意しています。階層別教育も整えており、キャリアの段階に応じて必要な知識や考え方を身につけることができます。さらに、英語講座なども業務時間内に受講でき、海外拠点との連携が多い環境の中で、実務に必要な力を働きながら伸ばせます。交代勤務の社員も利用できる食堂など、日々の働きやすさを支える仕組みも整っており、安心して成長を重ねられる環境があります。

出雲に根ざし、世界につながるものづくりへ

── 最後に、地方でのキャリアやUIターンを考えている方へメッセージをお願いします。

出雲で働く魅力は、地域に根ざした暮らしと、世界につながる仕事を両立できることにあります。自然環境が豊かで、満員電車での通勤もなく、家族や地域の温かさを感じながら生活できる。一方で、仕事では世界最先端のものづくりに関わり、出雲でつくった製品を世界中のお客様へ届けています。地方で働くことは、決してキャリアの可能性を狭める選択ではありません。むしろ、暮らしの基盤を大切にしながら、技術者として、あるいはものづくりに関わる一人として、大きな挑戦ができる環境だと考えています。

創業者が残した「村田があることが地域の喜びであるように」という言葉も、私たちが大切にしている考え方です。地域に雇用を生み出し、教育や交流を通じて次世代とも関わりながら、ものづくりを通じて世界の発展にも貢献していく。山陰の地で暮らし、地域に貢献しながら、世界最先端の技術に挑むことができる。その価値に共感してくださる方と、これからの出雲村田製作所を一緒につくっていきたいと考えています。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。