答えのない事業を、自分たちで定義していく。障害福祉SaaSで広がる、セールスのキャリア

人口減少・少子高齢化に伴う複雑な社会課題の解決に向け、「医療」「介護 / 障害福祉」「ヘルスケア」「シニアライフ」の領域で連鎖的な事業開発に挑む株式会社エス・エム・エス。2025年、同社が新たに提供を開始したのが、障害福祉事業所向けSaaS「かべなしクラウド」だ。立ち上げからまだ1年半。正解のない市場で、セールスの「型」をゼロからつくってきたのが、セールス・カスタマーサクセス(以下、CS)責任者としてプロダクトマーケティングマネージャー(以下、PMM)も兼任する横枕あかり氏と、2025年4月に入社したインサイドセールスの清元勇志郎氏である。前職では見えなかった「事業をつくる面白さ」を、二人はどう体験してきたのか。

横枕 あかり(2018年入社)

清元 勇志郎(2025年入社)

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障害福祉事業所とは ─ 「かべなしクラウド」が解決する課題

── まず、「かべなしクラウド」がどのようなサービスなのか教えてください。

横枕:その前に少し前提からお話しさせてください。障害福祉事業所というのは、障害のある方の就労支援や生活介護、児童の発達支援など、日常生活や社会参加を支えるサービスを提供する事業所のことです。障害のある方の数は年々増えていて、それに伴ってこうした事業所の数も増えています。

ただ、現場は深刻な人手不足に加えて、3年に1度の制度改正への対応にも追われています。しかも半数以上の事業所が、今も紙やExcelで「記録」や「請求」の業務を回しているのが実情です。

『記録』は利用者一人ひとりに今日どんな支援を行ったかを残す業務、『請求』はその支援内容をもとに国や自治体へ費用を申請する業務で、どちらも制度上必須かつミスが許されません。専門性が求められるこうした業務を紙とExcelだけで正確に回すのは、職員の方にとって大きな負担になっています。

これらの負担を減らし、本来の支援業務に集中できる時間を増やす。それが「かべなしクラウド」の一番の役割です。ただ、記録や請求を楽にするだけの単一のソフトウェアにはしたくなくて、お客様の経営課題を起点に、事業所の経営そのものをまるごと支えるプラットフォームに育てていきたいと考えています。

清元:記録や請求の作業自体が日常になってしまっていて、負担だと自覚しにくいのも事実です。実際にお客様と話していても、最初から「困っています」とは言われないことが多いのです。詳しく聞いていくと、管理者の方が記録の内容を確認していたり、紙で残した記録をあとから探していたり、請求前に何度もチェックしていたり。だからこそ、目に見える『困りごと』だけでなく、そうした潜在的な課題まで拾いに行くことを意識してお客様と向き合っています。

── 「かべなし」という名前にも、そうした思いが込められているのでしょうか。

横枕:はい。障害は個人ではなく社会の側にあるとする『障害の社会モデル』という考え方に立脚しています。社会に存在するさまざまな社会的障壁(かべ)をなくしていきたい。 そこから「かべなしクラウド」という名前がついています。

清元:「かべなし」という名前は入社してから知ったのですが、その背景にある考え方自体には、入社前から共感していました。 ただ、障害福祉の現場で実際に何が起きているかは、入社してから知ったことのほうが圧倒的に多いです。お客様と話す中で、業務の負担が減ることが、そこで働く職員の方や、支援を受ける方自身の時間にもつながっていく感覚がありました。

── プロダクトの成り立ちについても教えてください。

横枕:もとは、福岡の障害福祉事業所「りんぱれっと」の切実な課題から生まれたソフトです。日々の記録や請求といった間接業務に追われて、本来大切にしたい利用者支援の時間が十分に取れない。そんな現場の思いから、運営元でもある株式会社エヌ・ゲートが「ならば自分たちで作ろう」と、前身となる「プロジェクトRIN」を5年ほどかけて自社開発しました。 私たちは介護事業所向けSaaS「カイポケ」を通じて多くのお客様と接点を持つ中で、この障害福祉領域の優れたプロダクトの存在を知り、合弁会社という形で協力体制をつくりました。事業として立ち上がったのは2024年11月、実際にお客様へのサービス提供を始めたのは2025年1〜2月なので、まだ始まって1年半ほどの事業です。

病院にも整形外科・眼科・内科、など複数の診療科があるように、障害福祉サービスにも、就労継続支援、生活介護、児童発達支援など15以上のサービス種別があり、それぞれ現場の動き方も、記録の取り方も、請求の考え方も違います。だからこそ、「かべなしクラウド」という一つのプロダクトであっても、同じ売り方・機能で広げることはできません。2030年までのビジョン・事業目標(導入のシェア率等)を描いて進めていますが、そこまでの道のりは、種別ごとに丁寧に合わせていく積み重ねになります。

「正解のない事業」を面白がれるか

── 横枕さんは、セールス・CSの責任者に加えてPMMも兼任されています。管掌範囲や役割の具体を教えてください。

横枕:セールス・CS領域のプロセス、組織運営をひと通り見ています。また、PMMとして「どのお客様に、どの価値を、どう届けるか」というプロダクト改善や市場開拓戦略(GTM戦略)も担当していて、現場で拾った顧客の解像度をプロダクトに還元する役割も兼ねています。両方の視点を行き来しながら意思決定しているのが今の立場です。

清元:私たちインサイドセールスが商談の中で聞いたことも、横枕さんはかなり細かく検討してくれていますよね。

横枕:現場の声は、たとえ一社からのものでも大事にしています。声の大きさや数の多さで判断するのではなく、それが本質的な課題かどうかを見極めることを意識しています。 セールスが商談で聞いた一次情報や、CSが導入後に受けた相談を突き合わせて、「これは本質的な課題だ」となれば、プロダクト改善の論点になります。一方で、機能を変える前に、伝え方はこちらの工夫次第で変えられる部分なので、まずはお客様の状況をどれだけ解像度高く理解できているかを問い直すようにしています。

清元:機能を増やす話だけじゃないんですよね。同じサービスでも、どう説明するかを変えるだけでお客様の反応がガラッと変わることがあります。

横枕:そうですね。同じ課題でも、プロダクトを変えるべきときと、伝え方を変えるだけで解決するときがあって、そこを見極めるのがPMMとしての難しさでもあり、面白さでもあります。 障害福祉領域は、業務や運営のあり方自体がまだ現場ごとにばらついています。だから、システムを導入してもらうだけでなく、「こういう運営の仕方が現場にとって一番やりやすい」という業界の標準そのものを、私たちがつくっていける余地があるんです。

エス・エム・エスはこれまで、介護事業者の経営支援プラットフォーム「カイポケ」を提供してきており、そこで培った事業者支援の知見は生かせますが、そのまま持ち込めばいいわけでもありません。障害福祉には障害福祉特有の制度や事情があるので、一つひとつ理解しながら勝ち筋を探っている感覚です。

── まさに正解を作っている段階なんですね。

横枕:おっしゃる通り、正解も、決まった「型」もない中で、1つずつ作っているフェーズです。そういう状況を楽しめるかどうかは、個人の資質によるところが大きいと思っていて、この「まだ何も定まっていない」フェーズを面白いと思って飛び込み、営業として結果を出しながら、仮説検証を当事者として進めてきてくれている一人が清元さんです。

再現性ある営業力を身に付け、事業の”上流”に関わりたい

── エス・エム・エスの入社前は、清元さんは前職でどんな仕事をされていたのでしょうか。

清元:前職は化粧品メーカーで、美容室向けのシャンプーやトリートメントなどを扱う法人営業をしていました。商品を卸すだけでなく、美容室の売上向上や集客まで一緒に考えるコンサルティング営業でした。

── そこから転職を考えた理由は何だったのでしょうか。

清元:成長スピードをもっと高めたいという思いです。前職では、成果を出している人に話を聞いても「運とタイミングが良かった」という答えが多くて。行動量が大事なのはわかっていますが、「なぜうまくいったのか」「次に再現するには何を変えればいいのか」が言語化されないまま終わってしまう環境でした。営業をもっと構造的に学びたい、再現性のあるスキルを身につけたい、そして事業の上流から体制づくりに関わりたい。そう考えて転職を決めました。

── 当時の転職活動の軸や、エス・エム・エスを選んだ理由を教えてください。

清元:社会貢献性も転職の軸のひとつでした。祖母が要介護状態だった経験もあって、高齢社会や障害福祉というエス・エム・エスが向き合う社会課題は、自分の実感ともつながるスケールの大きなテーマだと感じました。

また、転職活動で軸にしていたのは、営業のプロセスや組織貢献まで、定量と定性のバランスを見て評価してくれる環境かどうか。実績の大きさだけでなく、なぜ結果が出たのかを言語化できているかを重視している会社を探していました。

横枕:実際、清元さんは選考のときからそこをよく話していました。前職で何をしてきたかだけでなく、「なぜそうしたのか」「次にどう生かしたいのか」を自分の言葉で話していた印象があります。

── 選考時は、お互いにどんな印象を持たれましたか。

横枕:第一印象はとにかく好青年でしたね(笑)。面接で私が見ていたのは「素直さ」と「泥臭くやり切る力」。前職のお客様への向き合い方や思考の深さを感じましたし、小さな組織の中で責任感を持って事業を進めていけそうだなとも感じました。

それに、今できていることよりも、まだ伸びしろがある人だなと感じていました。変数をきちんと捉えて、自分なりの仮説を持てるタイプだなと。だから、職域にとらわれず自分から役割を広げていけるだろうな、という期待もありました。

清元:そう言ってもらえるのはうれしいです!逆に横枕さんへの印象としては、オファー面談の際に、フラットな関係性や「ワンチーム」という言葉を大事にしながら、一体感を持って組織をつくっていく熱量に強く惹かれました。

『個人の営業力』を『組織の力』に変える

── 2025年4月に入社されてから、具体的にどんなことに取り組んできたのでしょうか。

清元:入社した当時、かべなしクラウドの営業はまだ何も「型」がない状態でした。インサイドセールスとしてサービスの無料体験(ご契約前に「かべなしクラウド」を、実際の事業所業務の中で2ヶ月間無料で試用いただく)の案内をするにしても、話し方も資料も手探りです。最初は機能をきれいに説明しようとしていたんですが、あまり響きませんでした。お客様からすると「紙とExcelで一応できているから、今すぐ変えなくてもいい」となってしまうんです。

そこで、任されたのは「どんな事業所に・どんな価値を・どんな言葉で伝えれば無料体験まで進んでもらえるのか」という、営業として一番大きな問いに対する仮説検証そのものでした。お客様へのヒアリングを重ねて、「記録は誰がいつ入力しているか」「請求前にどこで確認作業が増えるか」「紙で残した情報をあとで探す場面はあるか」を細かく聞き、そこから見えた業務の負担を言葉にして伝える。資料も、機能一覧を並べる構成から、現場の業務の流れに沿って「どこで時間がかかっているのか」を一緒に確認できる構成へとつくり直しました。

結果として、個人の無料体験獲得数では自分の最高値を更新できました。ただ、それ以上に大きかったのは、それまで無料体験が獲得できていなかったお客様のセグメントに対しても、インタビューをもとに提案の切り口を再構築し、そのセグメントでの獲得数を大きく改善できたことです。自分ひとりの成果を積み上げるだけでなく、チーム全体の成果につながる「型」をつくれたという意味で、ここが一番の手応えでした。

横枕:清元さんは、商談で聞いた現場の一次情報を、感想で終わらせずに仕組みへ落とし込むのがうまいんです。「このセグメントにはこの伝え方が響かない」と気づいたら、自分のトークだけでなく、資料の構成やフィールドセールスに渡す情報まで作り変えてしまう。入社してまだ日が浅いのに、個人の数字を追うだけでなく、この事業のどこにお客様が反応するのかという一番大きな仮説検証を任せられるくらい、本質を掴む力があると思っています。

── 入社半年でリーダーになられたそうですね。今の役割について教えてください。

清元:はい。今はプレイヤーとして実績を出すことに加えて、新しく入ってきたメンバーが再現性を持って成果を出せる仕組みづくりや、育成・研修・採用も担当しています。自分のやり方をそのまま押し付けても、メンバーによってタイプが違うので結果が出るとは限りません。ここが今一番苦労しているところで、横枕さんと壁打ちしながら試行錯誤しています。

営業という職種ではありますが、自分が聞いてきたお客様の声が資料やサービスに反映されたり、CRM/SFAのデータ分析をもとにチームの動き方が変わったりする。数字を追うだけでなく、サービスの届け方そのものに関われている実感があります。

もうひとつ変化があって、最初は成人領域を中心に担当していたのですが、今は児童領域にも少しずつ関わりを広げています。障害福祉は児童から成人まで幅広い領域があり、組織としてもその両方に価値を届けていく必要があるので、自分自身もそこに染み出しながら経験を広げている感覚です。

横枕:成人領域と児童領域では現場も課題感もまったく違います。一つの領域で通用したやり方がそのまま通用するとは限らないからこそ、ゼロから検証し直す力が問われます。清元さんに新しい領域を任せられるのは、特定のやり方に固執せず、その都度「型」をつくり直せる人だと思っているからです。

気づきが、その場で仕組みになる ─ かべなしクラウドのカルチャー

── かべなしクラウドのチームには、どんな特徴がありますか。

清元:年齢や役職に関係なく、フラットにコミュニケーションが取れる環境です。全員が中途入社で、それぞれ違うバックグラウンドを持っているので、お互いの強みを尊重し合う文化があります。商談で反応がよかった聞き方や、逆に伝わらなかった説明があれば、会議やチャットですぐに共有されて、次の商談やチーム全体のやり方にすぐ反映されていく。自分たちで事業をデザインしていくボトムアップな雰囲気で、想像以上に働きやすさを感じています。

横枕:私たちが大事にしているのは『コトに向き合う』『助け合いと高め合い』というカルチャーです。現場の一次情報を大事にし、お客様に向き合うからこそフラットな関係性が生まれますし、多様な背景を持つメンバーが強みを掛け合わせていく。まだ決まりきっていないことが多いからこそ、 現場から出てくる小さな気づきをかなり大事にしています。

セールスとしてのキャリアの広がり、そしてこれから

── これからの採用や、どんな方と働きたいかを教えてください。

横枕:セールス組織は、この1年でも着実に採用を進め、セールス・CS全体としても組織を拡大してきました。ただ、まだPMF(Product Market Fit)していないサービス領域も多く残っていて、組織を拡大・細分化しながら、あちこちで「0→1」を繰り返しているのが今のフェーズです。今後も採用は続けていきます。セールスは、お客様の変化を一番近くで見られる立場です。だからこそ、営業企画やプロダクト改善など、隣接領域へ越境しながら広げていけるキャリアの幅は大きい。 まずは自分の担当領域で成果を出すこと、そのうえで気づきを言葉にして周囲を巻き込める人には、自然と任せる範囲が広がっていきます。チームで貢献したいという情熱や素直さ、「自分が事業を動かしていく」という当事者意識を持っている方と一緒に、この領域のインフラをつくっていきたいです。

清元:今の業務に満足していない方、事業の中核に携わりたい方、成長意欲が高い方には間違いなくフィットする環境だと思います。営業として数字を追うだけでは物足りない、お客様の声を売り方やチームの仕組みにも生かしてみたい。そう思っている人には、かなり手応えのある環境です。

── 最後に、お二人ご自身の今後のキャリア展望を教えてください。

清元:今はまだ組織の限られた部分しか見えていないので、見る領域を広げて、多角的な視点でリーダーシップやマネジメント能力を高めていきたいです。自分が成長することで、まだPMFしていないサービスも含めて、事業全体の拡大に貢献していきたいと思っています。

横枕:不確実な状況の中でも仮説を持って意思決定できる領域を広げていくことが、今の自分に求められていることだと感じています。自分の領域を広げると同時に、意思決定するための組織・体制づくりにも引き続き取り組んでいきたいです。

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