「日本ガイシ」から「NGK」へ。多様な知や経験が、次の成長を切り拓く

1919年の設立以来、電力インフラを支えるがいしや自動車排ガス浄化用セラミックスなど、独自の材料技術を生かして事業領域を広げてきたNGK(旧 日本ガイシ)株式会社。2026年4月の社名変更を経て、半導体・電子デバイスをはじめとする成長分野への展開を加速させています。その中核を担うのがデジタルソサエティ事業です。AIの普及により、半導体の高性能化と安定供給が一層重要になる中、長年培った技術をどのように新たな価値へつなげるのか。事業の現在地や異業種の経験が活きる仕事、キャリア入社者への期待について、同事業本部長の藤田浩基氏に伺いました。

藤田 浩基氏(工学博士)

研究開発、製品開発、生産技術、事業運営、経営企画など幅広い領域を経験。主にセンサ事業において、生産技術を製品・量産・事業成長へつなげるプロセスを担う。現在は半導体・電子デバイス関連を中心とする成長領域で、新たな事業機会の創出と事業拡大をリード。

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100年超の材料技術を、デジタル社会の成長領域へつなぐ

── AIの急速な普及を背景に、半導体市場は大きな成長を続けています。デジタルソサエティ事業は、NGKの成長をどのように牽引していくのでしょうか。

デジタルソサエティ事業は、半導体・電子デバイスをはじめとするデジタル社会の領域で事業を拡大し、NGK全体の事業構成を転換していく役割を担っています。2026年5月に発表した長期経営計画では、NGKは2035年度までに2025年度比約2倍となる売上高1.3兆円を目指しており、その実現に向けて、デジタルソサエティ事業本部が牽引役の一つです。

現在、デジタルソサエティ事業では、半導体の製造に欠かせない主要なセラミック製品などを供給しています。生成AIの普及やデータセンターの拡張を背景に半導体市場が広がる中、当社製品への需要も今後一層高まると見ています。NGKが培ってきた材料技術やモノづくりの力を生かしながら、こうした市場のニーズにしっかりと応えていくことが、まず重要だと考えています。

私自身は入社以来、研究開発、製品開発、生産技術、事業運営、経営企画まで、技術と事業の両面に携わってきました。特にセンサの領域では、生産技術を起点に新たな価値を生み出し、それを製品として形にし、事業へとつなげていく一連のプロセスを経験しています。現在はデジタルソサエティ事業本部長として、これまでの経験も生かしながら、市場のニーズを事業へ反映することに取り組んでいます。

── 現在の市場機会を捉えながら、その先にデジタルソサエティ事業をどのように進化させていきたいと考えていますか。

重要なのは、拡大する需要に対応するだけで終わらないことです。既存の技術や事業をさらに磨く「深化」と、新たな用途や価値の創出に挑む「探索」を両立しながら、市場や顧客の変化を新しい製品、用途、事業機会へとつなげていきたいと考えています。現在の強みをより競争力のあるものへ高める一方で、これまでの延長線上だけにとらわれず、次に求められる価値を形にしていくことが必要です。

こうした考え方は、NGKにとって決して新しいものではありません。1919年の設立以来、私たちはセラミックスの材料技術とモノづくりの力を生かしながら、がいしや自動車関連製品などへ事業領域を広げてきました。2026年4月に社名を「日本ガイシ」から「NGK」へ変更したことも、これまで培ってきた強みを受け継ぎながら、よりグローバルな市場や新たな分野へ展開していく意思を表しています。

100年を超えて蓄積してきた技術やモノづくりの力を、次の時代に求められる価値へつなげていく。その実践の場の一つが、デジタルソサエティ事業です。これまでの強みを土台に、新たな市場や用途へ挑戦することで、NGKの事業ポートフォリオの進化をリードしていきたいと考えています。

AI・半導体需要の拡大を見据え、開発から量産までを一体で進化させる

── デジタルソサエティ事業の成長に向けて、どのような投資や組織づくりを進めていますか。

AIの普及を含むデジタル社会の進展によって、半導体や電子デバイスの重要性は一段と高まっています。デジタルソサエティ事業は、こうした需要拡大が見込まれる市場で、NGKの材料技術を生かした差別化を図れる分野です。中長期的な成長エンジンと位置づけ、事業規模の拡大と収益性の向上を目指しています。

その実現に向けて進めているのが、生産能力の増強です。4月に新工場の建設を発表しましたが、それ以外にも先端領域の技術開発など、将来の成長を見据えた段階的な成長投資を進めています。ただし、設備や開発テーマに投資するだけでは、持続的な競争力にはなりません。新たな材料や製品を開発し、量産工程を立ち上げ、必要な原料や部材を確保し、品質をつくり込みながら安定した供給へつなげて、初めて事業として成り立ちます。

そのため、開発や生産技術だけでなく、生産管理、購買、品質保証までを含めた組織能力を一体で強化していくことが重要です。それぞれの部門が個別に完成度を高めるだけではなく、早い段階から目的や課題を共有し、開発から量産、供給までを一つの流れとして捉える必要があります。

同時に進めているのが、既存の技術や事業をさらに磨く「深化」と、新たな用途や価値の創出に挑む「探索」です。これまで積み上げてきた品質やモノづくりの力を守りながらも、従来の方法を前提とせず、やめるべきものは見直し、続けるべきものは一層磨き込む。事業の成長に合わせて仕事の進め方や部門間の連携も進化させ、スピードと品質を両立できる体制を構築していきます。

異業種で磨いた経験が、半導体領域の新しい競争力になる

── 異業種のエンジニアが培ってきた技術や経験は、デジタルソサエティ事業でどのように生かされるのでしょうか。

市場成長の波を確実に事業成長につなげていくためには、自動車や精密機械といった異業種で培われた知見が欠かせないと私は考えています。デジタルソサエティ事業では、セラミックや材料の技術だけで製品や工程が完結するわけではありません。材料の性能を十分に引き出し、顧客が求める品質で量産し、安定供給へつなげるためには、設備設計、制御、データ解析、工程管理、品質保証、サプライチェーンなど、多様な専門性が必要です。異なる領域の知見を組み合わせることで、材料単体では生まれない付加価値をつくれることが、この事業の面白さです。

例えば、生産工程で得られるデータを活用すれば、製造条件と品質の関係を見える化し、歩留まりの改善や設備稼働の最適化につなげられます。電気・電子やソフトウエアの知見は、製品の高機能化や新たな用途の検討にも生かせます。また、機械設計や解析の経験と材料技術を組み合わせることで、高い精度と信頼性が求められる半導体関連部品の開発や量産を前へ進めることができます。新しい製品を量産へ移す場面では、試作品をつくる力だけでなく、設備、工程、品質、供給を全体で設計する力が不可欠です。

そのため、半導体業界での経験だけを求めているわけではありません。自動車、工作機械、精密機器などのメーカーで、生産管理、購買、生産技術、品質保証に携わってきた方は、量産立ち上げ、サプライチェーンの最適化、品質のつくり込みといった場面で、これまでの経験を直接生かせます。実際に、キャリア入社者が中心となって改善活動や新たな仕組みづくりを進めている例も生まれています。半導体・電子デバイス特有の知識は、入社後に実務を通じて身につけることができます。まず持ち込んでいただきたいのは、前職で磨いた専門性と、当たり前を問い直す視点です。異業種で培った経験は、NGKの技術者にとっても新しい気づきになります。互いの強みを持ち寄り、課題の設定から解決までを一緒に進めることで、従来の延長線上にはない競争力を生み出していきたいと考えています。

多様な専門性を受け入れ、長く挑戦できる組織をつくる

── キャリア入社者が新たな領域に挑戦し、長く成長するための環境を教えてください。

NGKが考える多様性は、単に属性の違いを受け入れることではありません。異なる専門性や経験、価値観を積極的に持ち寄り、新しい発想やイノベーションにつなげることを重視しています。

これまでNGKは、世界同一品質を実現するための標準化や、品質を徹底してつくり込む姿勢を強みとしてきました。これらは、今後も守り続けるべき大切な基盤です。一方で、成長領域で新たな価値を生み出すためには、異なる業界や職種で経験を積んだ方の視点も欠かせません。キャリア入社者には、前職で培った考え方や問題意識を持ち込み、既存の前提を捉え直すきっかけをつくってほしいと思います。

異業種から半導体・電子デバイスの領域へ移る際には、専門知識の違いに不安を感じる方もいるでしょう。入社後はOJTを中心に、実務を通じて製品や技術、業務への理解を深められるようにしています。専門教育や職場のサポートに加え、1万本以上のコンテンツを備えたeラーニングや、資格・学位の取得を支援する制度も整えています。

キャリアの選択肢についても、本人の志向を重視しています。高度な専門性を磨き、技術を究めていく道と、組織を率いるマネジメントに挑戦する道の双方があり、自らの意思に応じて成長を続けられる環境があります。

さらに、65歳定年制を導入し、一般職においては60歳以降も年収を維持しています。また、管理職においては役職定年や年齢要件を廃止しています。

年齢によって役割や挑戦の機会を一律に制限するのではなく、本人の意思と能力に応じて、長期にわたり価値を発揮してもらうための改革です。新しい領域へ踏み出せる成長機会と、腰を据えてキャリアを築ける安心感の両方を整えることで、一人ひとりが自分らしく活躍できる組織を目指しています。

成長事業をつくる当事者として、デジタル社会の未来に挑む

── デジタルソサエティ事業で働く面白さと、転職を検討する方へのメッセージをお願いします。

デジタルソサエティ事業は、すでに完成した仕組みの中で、決められた役割だけを担う段階ではありません。成長途上にあるからこそ、事業の拡大や組織の仕組みづくりに、当事者として関われる機会があります。

技術開発から量産化、事業化までを広く見渡し、自ら課題を設定して意思決定に関与できることは、この事業で働く大きな魅力です。担当する業務の範囲だけを見るのではなく、その仕事が製品や事業全体の中でどのような意味を持つのかを考えながら取り組めます。

さらに、自分たちが開発した製品が量産へ進み、改善した仕組みが成果となり、事業そのものが伸びていく過程を間近で経験できます。自らの仕事が事業の成長に結びつく手応えはもちろん、その変化を当事者としてつくる喜びややりがい、成長事業ならではの楽しさも感じていただけると思います。

これから加わる方には、専門性を軸にしながら、自ら課題を見つけて行動することを期待しています。現場で感じた違和感や非効率をそのままにせず、原因を深掘りし、関係部門を巻き込みながら改善を形にする。与えられたテーマに取り組むだけでなく、より大きな成果につながる課題を自ら設定し、周囲の知見も取り入れながら前へ進める姿勢が重要です。

変化の大きい領域では、あらかじめ正解が用意されているとは限りません。だからこそ、自ら学び、考え、提案し、実行する力を発揮できます。エンジニアとしての専門性を深めるだけでなく、事業を捉える視点や、周囲を動かして成果へつなげる実行力も磨ける環境です。

これまで培ってこられた経験は、デジタル社会を支える領域でも大きな価値を発揮します。異なる業界で得た経験や視点だからこそ、新たな可能性を切り拓く力になるはずです。これまでの強みを生かしながら新しい領域へ主体的に挑戦し、自らの可能性を広げていただきたいと思います。ともに、次の時代に求められる価値をつくっていきましょう。

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