現場を知る技術者が、DX・AIで生産設備の未来を拓く

コマツNTC株式会社は、富山を拠点に自動車産業をはじめとするものづくりの現場を支え、生産設備や生産ラインを提供してきたエンジニアリングメーカーです。部品そのものではなく、部品をつくる機械を開発する立場から、日本の自動車産業の品質と量産を支えてきました。2008年にコマツグループの一員となり、エンジン加工設備で培った技術を、車載電池の生産設備や半導体向けワイヤーソー装置へ広げています。人手不足などの社会課題、AI・DXの進展により、ものづくりの現場は大きな転換点にあります。開発本部で技術開発をけん引する谷崎啓さんに、コマツNTCならではのエンジニアリング力、先端技術の取り込み方、変革期に求める人材像を伺いました。

谷崎 啓

1999年4月、株式会社日平トヤマ(現・コマツNTC株式会社)に入社。富山工場開発部、SC事業部営業企画部、開発本部GR設計部、プロダクトマネジメント室などを経て、2020年7月にNIPPEI TOYAMA(THAILAND)CO., LTD.社長として海外赴任。2023年4月より開発本部商品開発部 部長、2025年4月より開発本部開発推進部 部長。2026年4月より現職。

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現場を知る開発力で、自動車メーカーのものづくりを支え続ける

── 自動車産業を支える工作機械メーカーとして、コマツNTCの事業の特徴をどう捉えていますか。

当社は自動車の部品をつくる会社ではなく、「部品をつくる機械」をつくる会社です。例えば、自動車の心臓部であるエンジンの中でも最も加工難度が高いシリンダーヘッドを加工する専用機や、生産ライン全体の構築に携わってきました。私たちの強みは、単に機械を設計・製造できることではありません。お客様の生産工程全体を理解し、設備・ラインの構成から量産時の運用までまとめて提供できることです。そのためには、自動車メーカーの生産技術者の方々と同じ視点に立ち、設備やラインの仕様を、品質、工程、量産性まで踏み込んで議論し、まとめる必要があります。20年、30年とお客様の生産技術の方々と向き合い、安定した生産を実現するための技術改善を積み重ねる中で培ってきた共通体験が、設計部門だけでなく、調達、製造、サービス、経営層にまで広く深く浸透している。それが、エンジニアリングメーカーとしてのコマツNTCの大きな財産です。

規模や独自性を考えたとき、私たちが最も価値を発揮できるのは、お客様ごとの生産課題に深く関わる専用機の領域だと考えています。世の中の生産設備の進化やAI・DXなどの新しい技術を見極めながら、自動車メーカーの実際の生産現場で本当に使える形に落とし込んでいく。そこで得られた技術を、現在は従来のエンジン関連設備だけではなく、車載電池の生産設備、半導体向けワイヤーソー装置にも広げています。現場を知り、量産を知り、お客様の期待を具体的な設備に変える力。それが、コマツNTCらしい競争力だと考えています。

人手不足という現場課題に、技術の進化で応える

── 自動車業界の変革は、開発テーマにどのような影響を与えていますか。

自動車業界では「100年に一度の変革」と言われるほど、電動化や生産方式の見直しが進んでいます。そうした変化の中で、技術テーマの根底にある大きな課題は人手不足だと考えています。ベテランの保全担当者が、機械の音や振動から不調を察知する。そうした現場の肌感覚を持つ人材が少なくなる中で、お客様から「コマツNTCさんは、この問題の解決策をどうお考えですか」と相談をいただく機会が増えました。お客様の工場では、過去の技術標準をつくってきたベテラン世代が引退し、技術の継承そのものが課題になっています。だからこそ、現場を理解するエンジニアリングメーカーの役割は重くなっています。

人手不足という問題に対し、最新のAIやDX、データ活用をどのように設備や生産ラインに取り込んでいくのか。そこに、私たちが取り組むべき課題があります。具体的には、ナレッジベースやログを整備し、ベテランが経験で判断してきた兆候を、機械側からアドバイスできるようにする取り組みです。例えば、予知保全や遠隔支援のように、設備が人を補完し、現場の品質を守る仕組みをつくることも重要になります。変革期の開発は、単に新しい装置をつくるだけではありません。人が減っても高い品質を維持できる生産現場を構築し、お客様を支えることが私たちの役割だと考えています。

AIで、現場の判断をより確かなものにする

── AIやDX技術は、専用機の開発にどう活かされているのでしょうか。

AIやDXは、突然始まった技術テーマではありません。2014年ごろのIndustry 4.0の流れから、当社ではIoT技術の活用に取り組んできました。コマツグループが建設機械で蓄積してきたデータ収集技術を生産設備や工作機械にも取り込み、機械の状態を可視化する。3D-CADモデルを使い、ライン設計やシミュレーションへ展開する。それらの技術をベースに、AIを本格的に活用できる環境が整いつつあります。

データを集めるだけでは価値になりません。モーターの電流値に異常が出たとき、それが機械のどの部位や動きと結びつくのか。過去の立ち上げ、調整、トラブル対応の記録や、ベテランが感覚的に見抜いてきた兆候を、いかに設備側の判断につなげていくかが重要です。AIは現場を置き換えるものではなく、現場に蓄積された知見を誰もが活用できる形に広げるためのツールです。設備、データ、システムをつなぎ、人が判断してきたことをより早く、より確かな形で支える。そこに、コマツNTCらしい先端Techの活かし方があると考えています。

機械への理解とお客様との対話力が、活躍の土台になる

── 変革期に活躍する人材には、どのような力を求めていますか。

求めている力は、大きく2つあります。1つ目は、機械や生産現場に向き合ってきた経験です。工場で実際に設備を動かしていた方、機械の立ち上げや調整に関わった方、トラブル対応を経験してきた方には、開発職としての経験がなくても、機械の動きに対する感覚が備わっているはずです。CAE解析や最先端の設計に取り組んできた方も、当社の技術領域で力を発揮できます。私たちはコマツの開発部門や生産技術開発部門と連携する機会もあり、そこで磨かれている、過酷な状況で稼働し続ける建設機械の技術を、工作機械や自動車産業の現場へ橋渡ししていく役割も期待できます。

2つ目は、コミュニケーション力です。以前の上司が「対話力のある人がほしい」とよく言っていました。これは単に言葉遣いの話ではなく、自分の考えを相手に理解してもらい、相手の意図も正確に受け取る能力が大切だという意味です。お客様との仕様検討の打ち合わせ、社内の設計・製造・サービスとの連携、プロジェクトを前に進める場面でも、対話力が大切という本質は変わりません。

── 入社後には、どのような難しさと成長機会がありますか。

難しさの一つは、一般的な工作機械の経験とは異なり、お客様である自動車メーカー独自の専門用語や考え方を理解する必要があることです。また、電動車の電池分野では、従来の鉄やアルミのような硬い材料ではなく、アルミ箔や銅箔のような非常に薄い材料や、押すとへこむような柔らかいものを扱う難しさがあります。大量生産の中で品質を安定させる扱い方は、まだ技術進歩の余地が大きい領域です。だからこそ、エンジニアとして挑戦の余地がたくさんあります。

一方で、当社には過去の技術書や計算書、図面、実際に起きた機械の損傷や破壊の原因分析など、多くの知見が残っています。問題が起きたときに教科書や過去資料に立ち返り、なぜそうなったのかを考える文化があります。自動車メーカー特有の言葉や新領域ならではの難しさはありますが、蓄積されたノウハウを読み解きながら、自分の経験を重ねて生産設備や生産ラインづくりに取り組める環境です。

── 中途入社者にとって、どのような挑戦とキャリアが広がっていますか。

当社はオーナー企業ではなく、特定の誰かの考えだけで進む会社でもありません。社長も一定期間で交代していく中で、事業をどう受け継ぎ、次に何をつくるのかを全員で考える風土があります。「やりたい」と手を挙げた人の意思を受け止め、周囲が応援する風土は比較的強いと思います。実際に、10億円規模の生産ラインであっても、主任クラスの35歳前後のリーダーが現場から立ち上げまで担うことがあります。小さくない責任ですが、その分、経営に近い視点を若いうちから経験できる仕事です。

中途入社者の活躍例も生まれています。たとえば、40歳代でロボットメーカーでの開発経験を持って入社した社員は、制御設計を経験した後、現在は管理職としてロボットプロジェクトをリードしています。また、解析の専門性を持って30歳代で入社した社員は、個人のスキルとして蓄積してきた解析技術を、チーム全体の強みに広げてきました。現在は解析チームを率いる管理職として、チームビルディングとマネジメントを任されています。

中途採用の方には、まずは当社の考え方や自動車業界のものづくりを理解していただき、そのうえで自身の専門性を活かし、プロジェクトを動かす力へ広げていってほしいと考えています。将来的にはプロジェクトマネージャーや経営層に近い役割を担っていただくことを期待しています。

2008年にコマツグループとなってから入社した人も増え、旧NTC時代から在籍している社員、小松製作所出身の社員、中途入社者など、背景はさまざまです。過去を知らないことが不利になるより、それぞれの知見を持ち寄ることを強みとしている組織だと思います。コマツグループの管理職研修などを通じて視野を広げる機会もありますし、地元北陸出身で都市部から戻ってくる方も少なくありません。外で培った経験を、エンジニアリングメーカーとしての現場力と組み合わせることで、新しい挑戦が生まれる。自分の技術が10年以上にわたって量産現場で使われ続ける設備に活かされることは、コマツNTCならではのやりがいです。

設備とデータをつなぎ、工場に新しい価値を実装する

── 今後の展望と、転職を考える方へのメッセージをお聞かせください。

私が大学生だった頃、Windows95が登場し、パソコンが学生にも一気に普及していきました。Excelでデータをグラフ化し、PowerPointで発表するだけでも、当時は新しい価値がありました。私自身も入社後、CADやオフィス系ソフトを扱える若手として、20代のうちから多くの仕事を任せてもらったことを覚えています。

今、AIをめぐって、同じような変化が起きていると感じています。これから私たちが目指すのは、設備とデータとシステムがつながる工場の実現です。デジタル化と現場力を融合させ、人が少なくなっても高い品質を維持できる生産現場をどうつくるのか。これは、何十年に一度のやりがいのある大きなテーマだと思います。

答えは、これまでと同じ発想だけでは生まれません。違う分野で新しいツールを使ってきた方、別の業界でデータ活用やシステム連携を経験してきた方、やりたいことがあっても環境が整わず実現しきれなかった方にこそ、一緒に力を発揮していただきたいです。設備、データ、システムを一体で捉え、お客様のものづくりに応える工場を具体化していく。そこに、これからのコマツNTCの挑戦があります。自分の経験を次のものづくりの現場で活かしたい方と一緒に、新しいエンジニアリングメーカーとしてのコマツNTCの価値をつくっていきたいと考えています。

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