人生を懸けて、人と人を繋いできた。ヘッドハンターが大切にする、橋渡しの流儀。

約12,500名のヘッドハンターのなかから、最も高い介在価値を発揮された方を表彰する『RECRUIT DIRECT SCOUT HEADHUNTER AWARAD 2025』。本記事の主役は、そのヘルスケア部門で頂点に立った川畑摩記さん(Future Opportunity Resource〈F.O.R〉)です。彼女の武器は、企業の展望と、社会情勢の行方と、候補者の進みたいキャリアが本当にマッチしているかを考え抜き、最適な一手を導き出す力。そして、ヘッドハンターになる前から、目の前の人の人生をいい方向へと導きながら培ってきた橋渡し力です。今回はヘッドハンターになるまでに辿られた異色のライフストーリー・キャリアから、日々のスカウティングで大切にされている流儀についてお話いただきました。 

川畑 摩記

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人と人を繋いで、人生を良い方向に変えていく。それを自分の価値とする。

── ヘッドハンターになる前から「橋渡し」をされてきたと伺いました。 

大学生の頃、「いつか国連に入って貧困問題を解決する」という夢を持っていました。しかし、1996年当時の日本は就職氷河期の真っ只中。新卒が簡単に入れる世界ではありませんでした。卒業した私は、まず国際感覚を養いながら、当時国内で需要のあったタガログ語を磨くために単身でフィリピンに渡ったのです。マニラ郊外の日系建設会社に就職し、“日本企業と現地企業を繋ぐ”通訳の仕事をはじめました。一方、週末は貧困地区の子どもを支援するNGO活動に参加し、“バラックに住む人々と日本からスタディツアーに来た学生を繋ぐ“案内役を担いました。食糧や教育に恵まれず、盗みやドラッグに走る子どもたちの様子をありのまま伝えて、問題意識を持ってもらおうと思っていました。後日、スタディツアーに参加した学生から 

「活動を機に価値観が変わって不登校から復帰できた」と電話をいただいたのです。「人と人を繋いで、人生を良い方向に変えていく。それを自分の価値としたい」。20年以上持ち続けている、私の仕事観が決定づけられた瞬間でした。 

── そのままNGOや国連の道に進まれなかったのでしょうか?

本格的に貧困問題や国際政策を学ぶためにピッツバーグにある大学院に進みました。国連や国際NGOへのキャリアが少しずつ見えてきた矢先、9.11同時多発テロが起こったのです。ピッツバーグ近郊にも飛行機が堕ち、キャンパスは混乱を極めました。「明日の保証なんてない」「家族を安心させたい」と、悔しさを残しながら帰国を決意。就職が決まらなかったこともありますが(笑)、今振り返ると、それが転機だったのかもしれません。 

 ── どのような“転機”になったのですか? 

今の会社の設立に携わり、思い描きもしなかったライフサイエンス専門のヘッドハンターになるきっかけとなったからです。帰国してからは、フィリピン時代に知り合った友人が立ち上げようとしていたバイオベンチャーの創業支援をしていました。そのバイオベンチャーの米国展示会で出会ったドイツ系CRO(※)の代表から「日本に進出したい。日本法人の代表になってくれないか?」とスカウトされたのです。 

魅力的な話だと思いながらも私は文系出身なので、臨床開発の専門知識が乏しいままトップに座るのは組織のためにならないと判断しました。ただ、支援したい気持ちはあったので、一時的に事務局長を担当し、事業開発業務を引き受けながら、適任者を探していました。そこで出会ったのが、当時は中外製薬に勤めていた弊社の代表です。事情を説明すると、「ライフサイエンス領域の人材紹介会社を興すから、そこに入って一緒に探さないか?」と逆スカウトされたのです。適任者探しも続けながら、人と人を繋ぐことに専念できる仕事に魅力を感じて、思わぬ形でヘッドハンターのキャリアがはじまります。ドイツ系CROの件は、私がお繋ぎした日系CROと業務提携をする形に落ち着きました。 

※CRO:「Contract Research Organization〈医薬品開発受託機関〉」の略。医薬品・医療機器の開発における臨床試験を受託する企業の総称。 

候補者の志だけでは、転職は成立しない。企業の展望、社会情勢の行方までを考え抜く、三位一体の提案。

── 人材紹介において、大切にされていることを教えてください。 

「候補者の志・企業の展望・社会情勢の行方」。この3つの軸が重なり合ってこそ、真に意義ある転職になる。だからこそ、三位一体の提案をしなくてはいけない。日々大切にしている私の信条です。それを持つきっかけとなったのは、ヘッドハンターとして最初に臨んだ案件でした。 

そこで出会った候補者は、当時外資系の製薬会社で新薬開発を担当されていた40代の男性。彼は長い間、アメリカでの駐在を経験していましたが、帰国してからは国内部門の保守的な考え方に物足りなさを感じていたのです。「定年を迎えるまで、攻めの20年にしたい」「良い薬を世に出し続けたい」と情熱を募らせながらも、新薬開発が停滞する組織で活躍の場を得られずにいました。私は彼の転職先に、3つの軸が重なり合った、当時はまだ無名のバイオベンチャーを提案しました。はじめに“社会情勢の行方”では、高分子医薬の領域で新規モダリティ(創薬基盤技術の方法や手段)の成果を出していて、その新薬は世の中のニーズが高かったこと。“企業の展望”としては長く研究開発投資が続いており、新薬をリリースできる環境であるため今後も成長を見込めること。何より本腰を入れて海外展開を進めていくフェーズだったので、彼のようにチャレンジ精神を持ち、かつ長期にわたる駐在経験を持つ人材が必要とされていました。「ここであれば志を叶えられる」。攻めの20年を歩みたい候補者にとって、ぴったりの環境だと確信したのです。喫茶店で何度も面談をして、「ここまで真剣に話を聞いてくれた人は川畑さんだけです」と信頼をいただいた結果、応募をご決断されました。入社後、臨床開発からグローバルマーケティングまで一気通貫で携わるポジションに就任。浅草の食堂でご飯を食べた時には、忘れられないくらい素敵な笑顔で「攻めの20年に踏み出せました」と言ってくれたのです。 

スカウトメールは、一通一通がLove Letter。

── 川畑さんは、かなり時間をかけてスカウトメールを書かれるそうですね。 

スカウトメールに心が動かなければ、何もはじまりません。もちろん、まずは目にとまって読んでもらう。それだけではなく、読んで喜んでもらえるかが勝負です。だからこそ、テンプレートや一斉送信は使わず、想いを詰め込んだラブレターのつもりで書いています(笑)。 

スカウトメールの平均800文字。そのなかで如何にオリジナリティを出せるかを意識しています。そのためには、キャリアシートを隅々まで読み込んで、その方の強みや適性を分析する必要があります。「このプロジェクトでは難易度の高いポジションを任されていたのではないか?」「職種としては〇〇だけど、実績を見る限り別領域のスキルや経験も豊富に積まれてきたのでは?」と、自分のなかにいくつもの仮説を立てて、実績や数字の裏にあるご苦労までを想像してから書きはじめます。紹介先に知人がいるときは、「現場でいきいきと働く姿を私が見ていますから、自信を持っておすすめできます」と添えることもあります。 

ただし、候補者に強い想いがあられても、それだけで転職は成立しません。希望するキャリアと、企業の展望と社会情勢の行方が重なっていなければ、「今の職場で経験を積んでから転職を狙いましょう」と現実的な道筋を示すこともあります。 

候補者が「自分に宛てて、自分を想って書いてくれている」と感じたときにこそ、信頼関係がはじまっていくと思うのです。ありがたいことに、初回に提案した企業に決まることが多いのは、一通目のラブレターでベストをお出ししているからだと自負しています。 

「求人票」に“書いていないこと”を伝える仕事。

── ハイクラス転職において、ヘッドハンターを使う利点を教えてください。

紹介先企業の内情まで知っている情報量だと考えます。求人票だけでは、どうしても組織の風土や現場の空気感、人間関係の雰囲気などは見えづらいものです。私は可能な限り紹介先企業の説明会に足を運び情報を集め、人脈を辿って内部の方や元々在籍されていた方に連絡を取ってリアルな声をキャッチしています。過去に転職に成功された方が弊社のオフィスに遊びに来られて、今現在その部署がどのような目標を掲げているか、どのような人材を欲しているかなどを共有してくれることもあります。求人票で読み取れない内容を伝えるのが、ヘッドハンターの介在価値ですから。

そして、ヘッドハンターを介せば、企業が面接で確かめたいポイントや期待値を事前に把握することができます。例えば、海外展開をビジョンに掲げる企業であれば、言語が話せるかはもちろん、海外市場に対しての理解度を厳しく見られます。その場の対応力を重視する企業では、面接途中に突然英語に切り替えるケースもありました。F.O.Rはライフサイエンスを専門領域としており、市場や情勢の動向にも常にアンテナを張っている分、お伝えできることは多いと思います。また、関係値の深い企業の社長さま、役員さまからご相談ベースで「こんな人材が欲しいと思っている」と言われることもあります。そうした非公開求人を提供できるのも、ヘッドハンターの価値ではないでしょうか。 

Message:転職をなんとなく考えている人こそ、面談を。「人生の棚卸し」をすれば、自ずと道筋が見えてくる。

── 最後に、川畑さまから候補者の皆さまへ、メッセージをお願いします。

「いますぐ動く気はないけれど、ぼんやり転職を考えている」。そんな方こそ、面談をさせていただきたいと思っています。候補者のなかには、相談内容が固まっていなかったり、履歴書が書けていないので、面談すること自体に申し訳なさを感じられる方もいらっしゃいます。事前情報があるに越したことはありませんが、全く準備できていなくても大丈夫です。なぜなら、ヘッドハンターの価値は右から左に求人を流すのではなく、一緒に頭のなかを整理したり、よりよい方向性を見つけていくことにあるからです。なぜ、その過去があり、現在があり、これからの未来を思い描いているのかを一つひとつ紐解いていくと、ご自身の培ってきたスキルや漠然とした悩みが浮かび上がり、進むべき道筋が自ずと見えてきます。そのため、私は初回の面談を「人生の棚卸し」と呼んでいます。多くの候補者がそこで気づきを得て新しいキャリアに進んでいます。スカウトメールが届いた人は、ぜひお気軽に面談してみませんか。叶えたい未来を言葉にしてみる、いい未来はそこからはじまります。お会いできる日を楽しみにしています。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。