業界の期待に応え続ける自動車部品メーカーのあくなき探求

自動車業界が大きな転換期を迎えるなか、独立系部品メーカーとして独自の存在感を放つのが、サカエ理研工業株式会社です。プラスチック外装部品と表面処理技術を軸に、設計から量産、市場での性能保証までを一貫して担う同社は、世界各地の過酷な環境条件に対応する品質力で信頼を築いてきました。本記事では、常務執行役員の落合氏をはじめ、開発・設計の中核を担う大屋氏と武田氏への取材を通じて、サカエ理研工業が注力する最先端技術、技術開発を支える思想、そして技術者として働く魅力に迫ります。

落合 恵介(オチアイ ケイスケ)

1988年入社、開発・設計業務に携わり、品質保証責任者業務を経て、
2011年に役員/技術センター長に就任

大屋 一範(オオヤ カズノリ)

1996年入社、プラスチック材料・表面処理開発業務に携わり、
2021年に開発部部長に就任
2026年にR&Dセンター センター長に就任

武田 有司(タケダ ユウジ)

1999年入社、ドアミラー・ドアハンドル等の設計業務に携わり、
2019年に設計部部長に就任
2026年にデザインセンター センター長に就任

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図面通り制作して終わりではない。課題にトコトン向き合い続ける

── 貴社の事業・技術領域について教えてください。

落合:サカエ理研工業のものづくりの原点は、現在主力としている自動車外装部品とは異なる領域にあります。創業当初は、航空機などを製造するメーカーの下請として金属のダイキャストや金属メッキといった工法に携わってきました。溶かした金属を型に流し込み、精度高く形をつくる。その後、表面に処理や防錆処理を施し、過酷な使用環境でも性能を維持するための技術を一つひとつ積み重ねていったことが、企業としての出発点です。素材の特性を深く理解し、劣化や腐食といったリスクと向き合い続けてきた姿勢は、事業領域が自動車部品へと移行した現在も、技術思想の根幹として息づいています。

現在の主力事業は、自動車のプラスチック外装部品です。当社の特長は、単に部品を製造するのではなく、受注後の量産部品設計から製品実現化、さらには市場に出た後の性能確立までを一貫して担っている点にあります。図面どおりに形をつくることをゴールとせず、実際に車が使われる地域や環境を想定し、長期にわたって性能が維持される状態をつくり上げるところまでを、自らの仕事の範囲として捉えています。

── 他の部品メーカーとの違いについて教えてください。

落合:独立系メーカーである当社にとって、価格面でも品質面でも「他社に劣らない」ことは大前提です。そのうえで重視しているのが、要求仕様を満たした先まで目を向ける姿勢にあります。車は世界中のさまざまな地域で使用され、設計段階では想定しきれなかった要因によって、市場で初めて課題が顕在化することも少なくありません。そうした場面で、多くのメーカーが「仕様は満たしている」という事実をもって一定の区切りをつける中、当社はなぜその現象が起きたのかを突き詰め、次はどうすればより良い状態で応えられるのかを考え続けてきました。この姿勢こそが、他の部品メーカーとの明確な違いといえるでしょう。

この姿勢のもとで磨かれてきた代表的な技術が、プラスチックに金属膜を形成するメッキ技術です。本来、密着しにくく、剥がれや腐食といったリスクを伴うこの領域に、当社は長年にわたり正面から向き合ってきました。例えばロシアでは、マイナス35度を下回る厳寒と融雪剤による強い腐食環境が重なり、多くの金属部品が短期間で劣化します。当社はそこで得られた結果を一度きりで終わらせることなく、世代ごとに対策を積み重ね、最終的にはほとんどさびが発生しない水準へと引き上げてきました。

中東においても同様です。サウジアラビアやアブダビといった地域で発生したさびの要因を、現地から取り寄せた部品を用いて分析。砂に含まれるカルシウムやマグネシウムといった成分に着目し、過去にロシア向けとして開発した技術を応用することで、地域特有の課題に対応しました。環境ごとの条件を徹底的に研究し、蓄積した知見を横断的に活かしていく点も、当社の強みの一つです。

市場で課題が見つかると、自動車メーカーからは早い段階で相談が寄せられます。その際、当社は「問題はない」と線を引くのではなく、材料、工程、使用環境を一つひとつ検証し、原因を明らかにしたうえで、より完成度の高い製品として提案し直す。この積み重ねが、「最後まで向き合ってくれるメーカー」という評価につながってきました。課題を単なるトラブルとしてではなく、次の開発につなげる研究対象としてとらえる姿勢こそが、サカエ理研工業の技術領域と事業を支えてきた、ゆるぎない特長といえるでしょう。

装飾から機能へ──外装部品の価値を再定義する挑戦

── 先端技術に取り組む背景について教えてください。

大屋:「飾りはなくても車は走る。いつか外装は不要になるかもしれない」という危機感を創業当初からもって事業と向き合ってきました。だからこそ当社は、1990年代半ばから外装に“機能”を持たせる方向へ舵を切りました。単なる意匠部品にとどまらず、動きや機構を持つ部品、法規対応が求められる部品、さらには構造強度に関わる部品へと領域を拡張してきたのです。外装が得意な会社と機能部品が得意な会社が分かれがちな中で、その両方を自社の強みとして磨いてきた点が、現在の技術戦略の土台となっています。

── 具体的にはどのような開発を進めているのでしょうか。

大屋:現在進行中の代表的なテーマが、レーダー透過技術です。自動車には前方監視用のレーダーが搭載され、かつては高級車のみに限られていた装備が、今では多くの車種に広がっています。レーダーは車両の中央付近に配置されることが多く、そこにはメーカーエンブレムが存在します。金属調の外観を保ちながら、電波を透過させる。この相反する要件を満たす技術は、日本でも数社、世界でも限られた企業しか手がけていません。

さらに近年は、レーダーの小型化・低価格化が進み、フロントだけでなくリアを含め複数搭載されるケースも増えています。その結果、エンブレムに限らず、ボディのさまざまな位置で「どんな色・どんな表面処理でも電波が通る」ことが求められるようになりました。塗装や表面処理の開発では、主要メーカーと秘密保持のもとでノウハウを出し合いながら、極めて難度の高い領域に挑んでいます。

ライティング技術も当社の重要な取り組みの一つです。例えばドアミラーのウインカーでは、後方の視認性や照射角度などが法規で細かく定められています。ただ光ればよいわけではなく、精緻な調整が欠かせません。近年では法規対応にとどまらず、外装とライティングを組み合わせたデザイン性の高いイルミネーションや、光でメッセージ性を持たせるコンセプト開発にも取り組んでいます。

── 顧客にあたる、自動車メーカーからはどのような期待がありますか。

大屋:EV化やカーボンニュートラルといったテーマが注目される一方で、日本市場では依然として「安全性」が最重要課題です。高齢化が進む中、ドライバーの負担を軽減する技術へのニーズは年々高まっています。その文脈で、レーダーやカメラといったセンサーをどこに、どのように搭載するかは重要なテーマです。

フロントフェイスガーニッシュやドアミラー、ドアハンドル、リア周りの大型ガーニッシュなど、当社が手がける外装部品は、機能を収める“器”として最適な位置づけにあります。安全性を確保しながら、外観としての完成度も損なわない。その両立こそが求められています。

さらには、AI技術を活用した開発にも期待を寄せられています。当社では、トラック向けに、ルームミラーを液晶モニターに置き換える電子ミラーを開発し、将来的には映像から人や自転車を判別し、ブレーキ制御につなげるソフトウェアの組み込みの開発もスタートしています。実際の走行環境でデータを収集し、ディープラーニングを用いて検知精度を高めるなど、外装部品メーカーの枠を超えた取り組みが進行中です。

こうした先端技術への挑戦が可能になっている背景には、当社が長年にわたり品質と真摯に向き合い続ける中で築いてきた信頼があります。仕様や要求に応えるだけで終わらせない。その姿勢で顧客と向き合ってきたからこそ、国内の主要自動車メーカーと、単なる受発注を超えた技術的な対話が成立している。先端技術への取り組みは、その信頼の延長線上にある挑戦だといえるでしょう。

挑戦を日常にする開発環境

── 働く環境や風土について教えてください。

武田:サカエ理研工業では、新しい技術に挑戦することが特別な決断ではなく、日常の延長線上にあります。自社にない技術をゼロから学び、自分たちの強みに変えていくことや、既存技術を世界水準まで引き上げることに対して、会社として真正面から向き合ってきました。文献の購入や外部セミナー、展示会への参加、外部企業との連携に加え、実験設備や設計ツールへの投資も含め、「必要かどうか」を本気で議論しアップデートを続けてきました。

例えば、約4,000万円を投じて導入したドイツ製の電波透過性試験機です。空港のセキュリティ技術を応用し、電波の通り方を可視化できるこの装置は、日本国内でも2〜3台しか確認されておらず、大手メーカーでさえ保有していないケースが少なくありません。またライティング開発では、約1,000万円のレーザーエッチングマシンを導入し、0.7ミリ程度の微細な穴加工によって光を制御する技術を追求してきました。色や材料による特性差が明らかになると、追加で別のレーザー設備を導入するなど、挑戦を止めない姿勢が投資判断にも表れています。

開発体制も、大手メーカーとは一線を画します。一般的な分業制では、見積、設計、金型、生産技術、品質がそれぞれ独立し、工程を越えた関与は限定的になりがちです。一方、当社では量産品の開発であっても、受注から量産立ち上げまでを部門横断のチームで進めます。設計段階から営業、金型技術、品質、生産技術が同じテーブルにつき、議論を重ねることで、後工程での手戻りを最小限に抑え、スピードと完成度を両立させています。

こうした体制の根底にあるのは、顧客の期待に応えるために技術とトコトン向き合うという共通認識です。そのため、現場では年次や役職が議論の壁になることはありません。若手社員が役員や部長に対しても、「これから試験を行うので、ぜひ見てください」と気軽に声をかけ、実験の場に招く光景が日常的に見られます。実際、EV化を見据えた高強度プラスチック部材の試験でも、若手が主体となって実験を進め、その場で結果を共有し、次の打ち手を皆で議論してきました。立場に関係なく同じ対象を見つめ、率直に意見を交わせる距離感が、組織全体に柔らかな雰囲気を生み出しています。こうした日常の積み重ねが、誰もが安心して一歩を踏み出せる土壌となり、挑戦することが当たり前の文化を形成しています。

基幹産業の顔を創る仕事

── はたらく面白さや、やりがいについて教えてください。

武田:サカエ理研工業で働くやりがいは、自分が関わった仕事が自動車として世に出て、社会の中で実際に機能していく点にあります。外装部品は、他の部品メーカーとは一味違い、車の印象や存在感を左右する重要な領域です。開発から数年を経て、自身が携わった部品が有名な車種として市場に投入される。その成果を確認できることは、この仕事ならではの醍醐味といえるでしょう。

当社は特定の一社に依存せず、国内の主要自動車メーカーと幅広く取引を重ねてきました。そのため、誰もが知るモデルや話題の新型車に関わる機会も少なくありません。日本の基幹産業である自動車産業の中で、技術力を武器に次の車づくりを考える。その一端を担っているという実感が、技術者としての誇りとモチベーションにつながっています。単なる部品開発にとどまらず、日本のものづくりを支える現場に身を置いているという手応えを得られる点も、大きな魅力です。

── 求める人物像について教えてください。

武田:求められる資質として大切にしているのは、仕事の中に楽しさややりがいを見つけ、探究心を持って向き合える姿勢です。コミュニケーション力やプレゼンテーション力も重要ですが、それ以上に、自分なりに考え、試行錯誤を重ねていけるかどうかを重視しています。与えられた条件を満たすだけで終わるのではなく、「なぜこうなるのか」「もう一歩良くできないか」と考え続ける。その積み重ねが、結果として独自の技術につながってきました。

新卒をはじめとした若手の採用では、専門知識や成績よりも、製品や技術に対する素直な関心を大切にしています。入社後にさまざまなテーマに触れながら、自分が面白いと感じる分野を見つけ、少しずつ経験を積んでいく。その過程を、会社として丁寧に支えていく考え方です。

一方で中途採用では、これまで培ってきた経験や強みを活かしながら、新しい領域にも前向きに取り組んでいただくことを期待しています。設計や金型、成形、表面処理といった自動車部品分野の経験をはじめ、材料や塗装、表面処理、CADを用いた機械設計など、これまでのバックグラウンドを活かせる場があります。家電や携帯電話など、プラスチック製品を扱ってきた異業界出身者や、建築業界出身の社員も活躍しています。分野はさまざまでも、「仕事を通じて学び続けたい」という気持ちが、この環境で成長していくための共通点だと考えています。

技術を磨き続ける環境があるから、没頭できる仕事が見つかる

── 今後の展望について教えてください。

落合:サカエ理研工業が目指しているのは、自動車の流行や一時的なトレンドに左右されない、技術的な「隙」のない会社です。どのような技術が主流になり、どのようなニーズが生まれても、必ず応えられる力を持つ。そのために、これまで強みとしてきた分野に安住することなく、次の技術を先回りして磨き続けています。

表面処理分野を例に挙げると、当社は長年メッキ技術を軸に、世界水準の評価を獲得してきました。一方で、EV化の進展により、塗装技術の重要性が急速に高まっています。こうした変化をとらえ、現在は各工場に最新の塗装設備を導入し、数年後には塗装分野においても世界トップクラスと呼ばれる水準に到達することを目標に、体制づくりを進めています。もちろん、その他の分野についても試行錯誤を続けていきます。特定の技術に依存せず、変化に強い技術基盤を築くこと。それが、当社の描く将来像です。

── この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

落合:これから仲間になる方に期待しているのは、何よりも「仕事を好きになれること」です。入社時点で完成された技術者である必要はありません。会社に入ってから、自分の得意分野や没頭できるテーマを見つけ、時間をかけて磨いていく。そのプロセスを、教育、設備投資、ツール導入、セミナー参加、産学連携といったあらゆる側面から、会社として本気で支えていきます。

部署や年齢の垣根が低く、チームで仕事に向き合う文化が根付いている点も、当社の大きな特長です。専門や立場を越えて意見を交わしながら、一つの技術、一つの製品に仲間と向き合っていく。その積み重ねが、個人の挑戦をチームの力へと変え、より大きな成果につながっていきます。私自身、長くこの仕事に携わってきましたが、仕事が嫌になったことは一度もありません。

技術に正解はなく、時代とともに求められるものは変わり続けます。だからこそ、自分の「好き」や「こだわり」を起点に、考え、試し、積み重ねていける人と共に歩みたい。目の前の一部品に本気で向き合うことが、やがて次の車づくりを形づくっていきます。その最前線で、日本のものづくりに関わり続けたいと考える方と、いつか同じチームで仕事ができる日を心から楽しみにしています。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。