生成AI時代の半導体を切り拓く「モールディング革命」。TOWAが挑む技術革新。

世界の半導体市場が生成AIの台頭により激変しています。NVIDIAを筆頭とする巨人の背後で、その進化を物理的に支えているのが、日本が誇るモールディング技術のリーディングカンパニー、TOWA株式会社です。1996年の入社以来、マレーシアでの拠点立ち上げ、そして装置設計の最前線を歩んできた執行役員 開発本部長の高田直毅氏。現場を知り尽くしたリーダーに、技術の変遷と、求めるエンジニア像、そして同社が掲げる2032年売上高1,000億円へのロードマップを伺いました。

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樹脂は「流す」から「撒く」時代へ

── Q:貴社のメイン事業である「モールディング」について、改めてその役割とこれまでの歩みを教えてください。

高田:モールディングとは、基板上の半導体チップやワイヤーを、衝撃やホコリ、湿気から守るために樹脂で封止する工程のことです。非常に地味な工程に見えるかもしれませんが、これがないと半導体は製品として成立しません。私たちはこの分野のリーディングカンパニーとして長く歩んできましたが、その歴史の中には、私たちが「モールディング革命」と呼んでいる大きな転機が何度かありました。

第一次革命は、私たちが開発した「マルチプランジャ方式」です。古い技術は樹脂を真ん中に一つだけセットし、長い道(ランナー)を通って流し込んでいました。しかし、樹脂は熱によって刻々と性質が変わるデリケートな物質です。長い距離を流すと、場所によって圧力や温度がまちまちになり、品質が担保できませんでした。そこで、小さな樹脂をたくさん並べて最短距離で均一に注入できるようにしたのがマルチプランジャ方式。この技術は急速に市場に広がり、当社の事業基盤をつくるとともに、業界のディファクトスタンダードとして定着していきました。

第二次革命は1994年、モジュールシステム「Yシリーズ」の開発です。当時の装置は一つの大きな「塊」として設計された一体型が主流で、生産量を増やすには装置を丸ごと一台買い足すしかありませんでした。そこで私たちは、装置を機能ごとのユニットに分解し、生産量に直結するプレス部分を増減できる構造にしました。これにより、生産量の変化に柔軟に対応できるようにしました。この背景には、当時の業界構造の大きな変化がありました。1990年代に入ると設計から製造までを自前で行う「垂直統合型(IDM)」から、設計に特化したファブレスや製造を受託する「OSAT」へと分業化が急速に広がっていきました。そうした環境下で、「生産量を容易に調整できる」というこのモジュールシステムは、組み立てメーカーのニーズに合致し驚異的なヒットにつながったのです。

── Q:現在は「第三次モールディング革命」の技術が主軸だそうですが、従来と何が違うのでしょうか。

高田:現在の主軸は「コンプレッション成型方式」です。これまでのトランスファー成型方式との決定的な違いは、樹脂を「流す」のではなく、粉状の樹脂を金型に直接「撒く」点にあります。この方式には二つの大きなメリットがあります。一つは「サイズの制約からの解放」です。樹脂を流し込むトランスファー成型方式では、製品が大型化するほど樹脂の流動距離が長くなり、どうしても成型に限界がありました。一方、最初から樹脂を均一かつフラットに配置するコンプレッション成型方式では、そうした制約がなくなり、理論上はサイズの上限がなくなります。

もう一つは「環境性能」です。従来のトランスファー成型方式では、製品以外に「樹脂が通る道(ランナー)」が必要となり、その部分はすべて廃材になります。実際、投入した樹脂の約半分を捨てている状態でした。しかしコンプレッション成型方式ではランナーが不要ですから、材料をほぼ100%使い切ることができます。まさに今の時代のニーズに合致した技術なのです。

生成AIとHBMが牽引する市場動向。後工程の価値が今大きく変わりつつある

── Q:現在の半導体マーケットの動向を、高田さんはどう分析されていますか?

高田:キーワードは間違いなく「生成AI」です。今、投資の視点はここに一点集中していると言っても過言ではありません。NVIDIAを起点に、製造を担うTSMC、そして私たち装置メーカーまで、AIを頂点とした巨大な裾野が広がっています。中でも変化が激しいのがメモリの領域です。メモリには一般的に「メモリサイクル」と呼ばれる約4年周期の波がありますが、今回は「HBM(高帯域幅メモリ)」というハイエンド製品の登場がその流れを塗り替えました。メーカー各社が高い利益率を見込めるHBM生産へとシフトした結果、汎用メモリが不足し、数年ぶりに市場が活況を呈しています。今年から来年にかけて、メモリ市場はHBMを中心に生成AIを追い風として成長局面に入っていくと見ています。

── Q:その中で、モールディングに求められる役割も変わってきているのですね。

高田:その通りです。これまでのモールディングは、チップを保護するための「皮」のような存在でした。しかし今は、ウェハ完成後から実装に至るプロセスの中で、複数のチップをどう積層・配置し、パッケージとしてまとめ上げるかが最終的な性能を大きく左右する領域になっています。従来の後工程に留まらず、チップを集約し、ひとつのシステムパッケージとして価値を最大化する、その核心部分に私たちの技術が使われているというわけです。組み立てプロセスは年単位で様変わりするほど変化が激しい領域ですが、だからこそ私たちは材料メーカーやお客さまと垣根を越え、連携しながら仕様を一気に決めるような共同開発を日常的に行っています。

グローバル戦略とBCP:実体験から語る「マレー半島ハブ」の重要性

── Q:地政学リスクへの対応や、グローバル展開についても伺わせてください。

高田:米中の覇権争いによって、かつての「グローバル化」一辺倒の時代から、各国・各地域でサプライチェーンを完結させる「ローカライズ」へと潮流が大きく変わりました。特に中国の半導体国産化への投資は国策として桁違いの勢いがあります。私たちは25年前から中国に進出し、現在では開発から製造までワンストップの体制を築いています。日系企業の撤退も目立ちますが、私たちは中国を単なる「世界の工場」ではなく「巨大なマーケット」と捉え、攻めの姿勢を崩していません。

── Q:高田さんご自身も、若手時代に海外拠点の立ち上げを経験されていますね。

高田:はい。入社3年目でマレーシア新工場の立ち上げに参画しました。当時は何もないところから現地スタッフと一緒に環境を整えましたが、その経験が今でも私の原点になっています。現在はBCP(事業継続計画)の観点から、日本、韓国、中国、マレーシアへと拠点を分散させ、どの拠点でも同じ品質の装置を作れる体制を整えています。次に注目しているのはインドです。すでに10社ほどの半導体メーカーが立ち上がっており、装置の導入も進んでいます。幸い、私たちのマレーシア拠点からならインドまで約5時間という地理的な近さです。この「マレー半島ハブ」を起点に、アジア全体を機動的にカバーする体制を活かしながら、急ピッチで現地対応を強化しています。

「何でもやる」が成長の糧。若手とキャリア採用が混ざり合う、TOWA流プロジェクト開発

── Q:貴社の開発組織はどのような体制になっているのでしょうか。

高田:私たちは本社で800名規模の中堅企業です。大手企業のように細かく分業化されているわけではありません。技術者一人ひとりの裁量は非常に大きく、言い換えれば「何でもやる」必要があります。もちろんメカ、ソフト、金型といった専門分野はあります。ただし、開発は基本的にプロジェクト制で進めており、各分野からメンバーを選抜して同じ目標に向かって一体となって進むスタイルです。各プロジェクトには、20代や30歳前後の若手も積極的にアサインします。台湾などの海外拠点でお客さまと直接やり取りし、時には社運をかけたプロジェクトを動かしているのも、実は若手エンジニアです。もちろんマネージャーが伴走しながらサポートはします。ただ、自分で考えて行動し、修正しながら前進したい人には、これほど面白い環境はないはずです。

── Q:キャリア採用の方々の活躍についてはいかがですか?

高田:開発本部の約30%がキャリア採用ですが、今のTOWAは彼らなしでは語れません。私の直下の部長もキャリア入社です。昇進や評価において入社時期や出自による差は一切ありません。実力と熱意があれば、これまでの経歴に関係なく、いくらでも上を目指せる組織だと思っています。

メカ設計エンジニアへの切実な期待。好奇心が技術の枯渇を救う

── Q:今、特に求めている人材や、課題に感じていることはありますか?

高田:本音を言えば、国内で「メカ設計」のスキルを持った人材が減っていることに危機感を持っています。ソフトやエレキ分野は人気がありますが、機械系に強い好奇心を持つ人の母集団が明らかに小さくなっていると感じます。私が思うに、昔は子どもの頃に機械をいじってワクワクする、そういう原体験が当たり前にありました。最近は「大学で専攻したから設計をしたい」という動機の方が多い印象ですが、私たちが本当に求めているのは、もっと根源的な「強い好奇心」です。なぜ動くのか、どうすればもっと良くなるのか。そうした探究心こそが、前例のない装置を生み出す原動力になります。

当社ではキャリアデザインの仕組みとして、本人が将来どの部署でどんなスキルを身につけどんなふうに活躍したいかという希望を毎年申告する制度があります。ソフトからメカへ、あるいはその逆といったマルチスキルへの挑戦も、私たちは前向きに応援しています。

2032年、売上1,000億円へ。けいはんなR&Dセンターと「TOWAアカデミー」に込めた野心

── Q:「TOWAビジョン2032」で売上高1,000億円を掲げていらっしゃいますね。

高田:現在の売上高500億円強から倍増させる、非常にチャレンジングな目標です。これを達成するには、組織のあり方そのものを変えていく必要があります。その一環として、けいはんなに新たなR&Dセンターを設立し、そこに「TOWAアカデミー」を併設する計画を進めています。これまでの技術継承は、どうしても現場での「口伝」に頼る部分が大きかった。しかし、超精密金型の仕上げといった職人技は、属人的なものに終わらせず、きちんとした仕組の中で次の世代に受け継いでいく必要があります。最近の工作機械は自動化が進んでいますが、最初から自動化された機械しか触ったことがない若手エンジニアは、本来必要な「自分の手でつくる感覚」を身につけにくい。だからこそ、実際に手を動かしながらその感覚を学べる場を作ることが、私たちの将来への投資だと考えています。

ベテランを大切にする社風。65歳まで現役を保証する「技術への敬意」

── Q:最後に、TOWAへの転職を考えている方や、若手エンジニアへメッセージをお願いします。

高田:私たちは若手を育てるのと同時に、ベテランの技術と経験も非常に大切にしています。2022年に再雇用制度を変更し、60歳の定年後も現役時代と変わらない処遇で65歳まで働けるようにしました。評価が良ければ昇給もありますし、多くのベテランが残ってくれています。40歳以上の中途採用も珍しくありません。半導体市場は今、歴史的な転換点の真っ只中にあります。後工程がクローズアップされ、毎年のように新しい技術が生まれるこの業界は、変化を「ストレス」と感じる人には厳しいかもしれませんが、変化を「刺激」として楽しめる人にとっては、これほど面白い環境はないと思います。

私自身、1996年に入社して以来、マレーシアでの工場立ち上げをはじめ、何度も壁にぶつかりながら乗り越えることで、次の景色が見えてきました。失敗を恐れず、世界にまだないものを生み出す現場に飛び込む人を私たちは全力でバックアップします。モールディングという技術がAIの進化を支え、世界を変えていく。その「歴史の当事者」として、私たちと一緒にチャレンジしてみませんか。皆さんとお会いできる日を、心から楽しみにしています。

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