転職は、自分らしく生きるための手段。心から納得できる道を、ともに見つけるパートナーであり続けたい。

株式会社リーベル 代表取締役の田中祐介さんは、これまでSE、ITコンサルタント、そして転職エージェントとして、多様な立場からIT業界に携わってきました。開発現場での実務経験に加え、アビームコンサルティングでは大手企業の業務改革やIT戦略のプロジェクトに従事。リーベル参画後は、業界知見と丁寧な対話力を武器に、一人ひとりの本質的な価値に向き合う支援スタイルを確立。『RECRUIT DIRECT SCOUT HEADHUNTER AWARD 2025』では「IT部門」と「決定率部門」の両部門で1位に輝きました。目先の条件ではなく「自分らしく働ける場所」をともに探す姿勢が多くの求職者から信頼を集める田中さん。今回、同氏にキャリア支援への思いや、良いエージェントの見極め方、転職活動において大切にすべき視点などについてお話を伺いました。 

田中祐介

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転職活動で感じた違和感。ある出会いから生まれた決意。

── はじめに、田中さんのご経歴を教えてください。 

大学では化学を専攻し、研究職を目指して大学院にも進学しました。ただ、ちょうどその頃はIT黎明期。「これからはどんな分野でも、ITの力が不可欠になる」── 

そんな思いから、まったくの未経験でIT業界へ飛び込みました。 

最初に入社した会社では、アプリケーションエンジニアとしてJavaを用いた開発に従事。開発から設計、要件定義、チームリード、さらには採用担当まで、5年超の在籍中に幅広い業務を経験しました。 

次第に「お客様の潜在的な課題を見つけ出し、ゼロから解決策を生み出すような仕事がしたい」と感じるようになり、アビームコンサルティングへ転職。ITコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせました。そこで5年弱勤務したのち、リーベルに入社し、現在に至ります。

── エンジニア、ITコンサルタントと進まれた先で、エージェントに転身したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。 

きっかけは、2度目の転職活動をしていたタイミングで、とあるスカウトサービスを通じて届いた一通のメールでした。それは明らかに私の経歴を読み込んだ上で書かれた丁寧なスカウト文で、その送り主が当時のリーベルの社長だったんです。最初は、事業会社の社内SEポジションや外資系企業のアーキテクトなどを紹介してもらっていたのですが、これだ!と思えるものがなかなかなく……。「エージェントをやってみるのはどうか?」という社長の誘いを受けて、人材業界に飛び込む形になりました。 

しかし正直なところ、当初は人材業界のことがあまり好きではありませんでした(笑)。エージェント=「求職者を案件に当て込む」という印象があったんです。実際、1度目の転職活動のときには、エージェントから、とある会社の内定を承諾するようゴリ押しされたり、内定辞退の電話をしたらガチャ切りされたりと、いい思い出がありませんでした。 

そのため最初は人材業界なんて考えてなかったのですが、社長と面談を重ねていくうちに、テンプレじゃない、本質を捉えた支援がしたいという思いが伝わってきたんです。この会社でなら、自分が感じていたエージェントに対する違和感を変えていけるかもしれない。出会えて良かったと思われるエージェントに、自らがなりたい。そんな想いから、大変悩みはしましたが、思い切って入社を決めました。 

企業を探す前に、まずは、自分の内面を見つめることから。

── リーベルはIT業界の転職支援を得意としていると伺っています。IT業界における転職のコツを教えてください。

IT業界って、一口で言ってもすごく幅広いんですよね。職種もいろいろあって、アプリケーションエンジニア、インフラエンジニア、アーキテクト、プロジェクトマネージャ、ITコンサルタント……。一見似ているような職種であっても、実際に求められるスキルやマインドがまったく違うことも。だからこそ、「どこに転職するか」以上に、「自分がどんな仕事を通じて、どんな価値を出したいのか」をまずは整理することが重要だと思っています。 

ただ、それは決して簡単なことではないんです。実際に私自身もそうでした。エンジニアからスタートして、コンサルを経て現在はエージェントをしていますが、転職を考えるたびに「本当にこれでいいのか?」と、自問自答していました。 

転職のコツと言われると、つい「面接対策」や「年収交渉術」など、テクニック的な話を期待されますが、根っこにあるのは“自己理解”だと思うのです。自分の過去のキャリアを時系列で、できるだけ細かく振り返る。何が楽しくて、何が苦しかったのか。成果を出せたのは、どんな時だったのか。そうやって点を打っていくと、だんだんと「自分らしいキャリアの輪郭」が浮かび上がってきます。 

もちろん、技術トレンドを追うのも大切です。ですが、どんなに流行りのスキルを身につけても、自分の中に軸がなかったら、結局また転職を繰り返すことになる。まずは、自分の過去を丁寧に読み解くこと。そこからこそ、自分に合った未来が描けると思っています。

── 転職活動を進める上で注意するべき点はありますか?

転職で一番危ないのは、なんとなく「辞めたい」から動いてしまうことです。ストレスの原因があいまいなままだと、新しい環境に移ってもまた同じ壁にぶつかることがよくあるんですよね。「上司が嫌で辞めたい」とか「残業が多すぎて辞めたい」というのも、もちろん立派な理由です。でも、さらにもう一歩踏み込んで「なぜその上司とうまくいかなかったのか」「どんな環境だったら自分は健やかでいられるのか」を言語化しておくことが大事なんです。 

他にも、転職先を選ぶ際に「大手だから」「有名企業だから」という理由で決めてしまう人もいます。でも、実際に働いてみると「自分が求めていた環境と違った…」ということが、意外によくあります。表面的な条件ではなく、「どんなミッションを担うのか」「その会社はどんな価値観を大事にしているのか」という、本質を見極める必要がある。そのためには、イメージや求人票に書いてあることだけじゃなくて、ちゃんと私どもとの面談や企業との面接を通じて話を聞くことが大切ですね。 

一人ひとりが、自分らしく生きられるように。自身の経験を活かして、真正面から求職者と向き合う。

── エージェントを使うメリットはどんな点でしょうか。

当社のような、特定業界の出身者が集まるエージェントについての話にはなりますが、現場ならではの知識や経験をもとにした情報やアドバイスが得られる。これが一番のメリットだと思います。たとえば私の場合、エンジニアの方の話を聞いていけば、プロジェクトの情景やチーム内での立ち位置、技術的な難易度などがだいたい分かります。そして、それが職務経歴書の書き方や面接でのアピール方法のアドバイスへとつながるんです。 

加えて、たとえば「データベースのチューニングを担当して……」「実行計画を再作成して……」といった、より実務の深い話を掘ることもできます。そうして、本人が気づいていないだけで、実はとてもニーズのある経験やスキルを有していることが判明することも。たとえ、今すぐに転職を希望していなかったとしても、自分の現在地を確認するという点で、エージェントの活用は効果的だと思いますね。 

── 良いエージェントの見極め方を教えてください。

私自身が転職活動をした経験からも強く感じるのですが、本当に自分に向き合ってくれるエージェントって、実はそんなに多くないと思うのです。一見、親身に見えても、裏では「この人を、この求人に押し込めば高いフィーが入る」という収益重視のロジックで動いているケースも正直あると聞いています。 

だからこそ、「ちゃんと話を聞いてくれるか」「こちらの希望や葛藤を理解しようとしてくれるか」という観点でエージェントを見極めることが大切です。 

そして、見極める方法の一つとして、スカウトの文面が重要な要素だと考えています。私は1通のスカウトを書くのに1時間以上の時間をかけることもあります。なぜなら、ちゃんと経歴を読み込まないと、その人が抱えている課題や想いは見えてこないからです。逆に、テンプレのようなスカウトが来たら、それはその程度の“温度感”ということです。 

また、信頼できるエージェントは、話をじっくり聞いてくれます。面談が30分くらいでさらっとは終わらない。何よりも、「この人、自分のことを考えてくれているな」と感じられるかどうか。それが判断基準になると思います。 

── 転職支援をする上で、田中さんが心がけていること、大切にしていることを教えてください。

私の転職支援のスタイルは、“量より質”です。1日にスカウトを1通打てればいい方で、多い月でも20通程度。その人の経歴をじっくり読み込んで、「何を悩んでいるのか」「何に希望を持っているのか」を想像して、丁寧に文章を書いています。 

また面談も、基本は1〜2時間かけてしっかり行なっています。キャリアの棚卸しから、働く価値観、生活とのバランス、家族のことまで。時には2時間以上かけて話すこともあります。そうやって、転職理由の本質を一緒に掘り下げていくことで、自然とその人が“何に喜びを感じるか”が見えてくるんです。それが分かれば、あとはそれを叶えるための選択肢を一緒に考える。1人あたりに時間が掛かるため、効率とは真逆のやり方ですが、それが「人に向き合う」ことだと思っています。 

私はいつも、「この人の人生の3年後、5年後を見据えた提案ができているか」を自分に問うようにしています。目先の内定がゴールじゃない。その人が次の場所でちゃんと幸せに働けているか。やりがいを持って成長できているか。そこまで含めての“支援”だと思います。 

転職は、自分らしく生きるための一つの選択肢です。話を聞いてみて、転職しない方が幸せなのではと思った場合は、素直に辞めない方が良いと伝えることもあります。どのような選択であっても、最終的に本人が心の底から納得できる道を見つけて、サポートする。そんなパートナーであり続けたいと思っています。 

大切なのは、意志を持って臨むこと。自分の人生を自分で選ぶ転職を。

── 転職活動を始める際、どんなことから取り組むべきでしょうか

転職活動は、受け身でいると流されるものです。エージェントや企業の話を聞いて「そうなんだ」と思うだけだと、自分にとって本当に合っているかどうか分からないまま進んでしまう。だからこそ、まずは求職者側での“準備”が必要です。とくに大切なのは、職務経歴書に自分の意図や意志を反映させることです。 

最近はAIで職務経歴書を自動生成するツールも増えました。とても便利ですが、それだけだと“自分らしさ”があまり伝わりません。これまで何をして、何を考えて、次にどんなチャレンジをしたいのか。それは、自ら言葉にするしかない。AIを使っても良いですが、多少なりとも自分から生まれた言葉を加えることをお勧めします。 

その上で意識して欲しいのが、「自分がどう働きたいか」を言葉にすることです。「チームで動くのが好き」や「裁量がある方が燃える」や「手触りのあるプロダクトに携わりたい」など。そういった価値観を言語化しておくと、求人選びの軸になります。 

── 最後に、これから転職活動をされる方々へメッセージをお願いします。 

転職は、「自分の人生を、自分で選ぶ」というすごく前向きな行為です。少しでもモヤモヤしているなら、その感情を放置しないでください。私は転職しないという選択肢も立派な“キャリア戦略”だと思っています。その選択肢を“納得して選べるか”が大切です。 

もし今の会社で頑張り続けると決めるなら、それは素晴らしいことです。でも、「何か違う」と感じているなら、その違和感にフタをせず、一度じっくり向き合ってみてほしいんです。そして、「何がやりたいか分からない」「自分に何が向いているのか分からない」と思ったら、ぜひ相談してください。一緒に言語化して、一緒に考えましょう。 

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。