候補者ファーストを貫く。「この人と話してよかった」その一言のために。

株式会社ターミナルバリュー代表取締役COO・西田真士さんは、これまで人材紹介業務や採用コンサルティング、中国全土でのコスメブランド事業の立ち上げ・推進など、多彩な業務・事業に携わってきました。2019年に前身となる法人を創業し、2022年にターミナルバリュー社を設立。企業と候補者の双方に、深く寄り添う支援スタイルで高い実績を上げ『RECRUIT DIRECT SCOUT HEADHUNTER AWARD 2025』では「コンサル部門」「営業部門」の両部門で第1位に輝いています。今回は、そんな西田さんにヘッドハンターとしての信念や支援スタイル、求職者へのアドバイスを伺いました。 

西田真士

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経営者としての合理性×個人の多様な価値観。両面を知るからこそ、届けられる支援がある。

── まずは、人材業界に進まれたきっかけと、これまでのキャリアについてお伺いします。

学生時代に明確な将来像があったわけではありませんが、人と深く関わる仕事がしたいという想いを持っていました。多様な業界や人に触れられる点に魅力を感じ、人材業界に進むことを決意。新卒でインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社し、最初の2年間は国内で人材紹介業務に携わりました。1年目には新人賞をいただき、「この分野で力を発揮できるかもしれない」という自信にもつながりました。 

その後、中国法人(日中合弁企業)の経営企画・事業企画責任者として出向し、拠点展開や業務改善、新規事業の企画に携わりました。文化や言語の違いに戸惑いながらも、現地の方々と信頼関係を築きながら事業を進めた経験は、今でも自分の財産です。2011年に、同期入社の友人が設立した会社に転じ、本社COO・中国での共同経営者の立場から経営に携わり、中国全土への展開や台湾・香港への進出を実現しました。価値観の多様性を肌で感じながら経営する難しさは、大変貴重な機会となりました。 

そして2019年、中国事業を大手企業に売却するとともに日本に戻り、人材紹介会社の起業支援や採用コンサルティングを展開する事業を開始し、2022年、人材紹介サービスを基軸とした株式会社ターミナルバリューを設立しました。少し特殊な経歴かもしれませんが、人材というフィールドを中心に歩みながら、経営者としての合理的な視点と、多様な価値観を持った個人の視点の両方を培ってきた自負があります。 

── ターミナルバリュー社の特徴について教えてください。

社名の「ターミナルバリュー」は、“永続的な価値”を意味する言葉です。企業にとっても個人にとっても、目先の成果だけではなく、長く意味を持つ選択や出会いをつくりたい。そんな想いからこの社名をつけました。企業のビジネス、そして誰かのキャリアに深く関わる仕事だからこそ、出会う人が何を大切にしていて、どんな未来を目指しているのか。そこにしっかりと寄り添うことを、創業以来ずっと大切にしてきました。ヘッドハンターの役割は、「キャリアカウンセリング」「求人案件の紹介」「選考サポート」の3つに分かれると考えています。当社は、「キャリアカウンセリング」と「選考サポート」を重要視しています。 

「キャリアカウンセリング」では、その人の大切にしている「価値観(過去)」と、これからどうありたいのかの「Will(未来)」を見つけていくことを大切にしています。そこが言語化されていない、見えていない場合、転職が短期的な問題解決にしかつながらず、結果的に短期離職に繋がってしまうリスクを高めてしまうからです。そのようなリスクもしっかりお伝えし、現職での異動も視野に入れてキャリアを一緒に考えています。また「選考サポート」では、企業目線での書類添削や面接対策に加えて、ご本人がこれまで努力してきたことや工夫してきたこと、応募企業から見て魅力と映る経験やスキルを、きちんと伝えられるようサポートしています。ご自身では当たり前に感じていることや、うまく言葉にできていない強みが、選考で伝わりきっていないことも多いため、それらを整理し、しっかり伝えられるようにサポートすることを大切にしています。 

── 西田さん個人の得意とする分野・業界はありますか?

実績は幅広くありますが、特に得意としているのは、HR(人事)・コンサルティング・IT/SaaSといった業界です。そのほかにも、金融・サービス業、ブランドマーケティング、海外事業の立ち上げメンバーなど、さまざまな業界・ポジションでの支援を行ってきました。中でも、HRやコンサル領域については、自分自身が事業会社の立ち上げや組織づくり、経営に携わってきた経験があるからこそ、より解像度高く企業の課題や候補者の想いを捉えられると感じています。ただ“人を紹介する”のではなく、「この方が入社すると、会社はどんな未来を描けるか」「この方にとって、ここはどんな挑戦の場になるか」を、常に想像しながら向き合っています。 

もう一つ、人間くさい話をするなら、私自身これまでのキャリアの中で、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともたくさんありました。現場で壁にぶつかったことも、経営の立場で苦渋の判断を迫られたこともあります。だからこそ、順風満帆な人だけでなく、迷いや葛藤を抱えている方にも、自然と寄り添える部分があるはずだと思っています。きれいごとだけではないリアルな転職やキャリアの話を、きちんと一緒に考えられる存在でありたいですね。 

「感情のゆらぎ」に寄り添うのは、人にしかできない。

── 日々のご面談で、特に意識されていることはありますか? 

私がいちばん嬉しいのは、「今日は話せてよかったです」と言ってもらえる瞬間ですね。そのため誰かと向き合うときには、その人の想いや背景を丁寧に聴く姿勢を大切にしています。表面的なキャリアだけでなく、「どう生きたいのか」「何に悩んでいるのか」まで共有してもらえて、初めて本質的な支援ができると思っています。AIを活用しても、適切にその個人を把握するための問いができなければ意味が無いし、表情から本音なのか建て前なのかを判断することも重要です。人だからこそ持つ感情のゆらぎや迷い、そんな機微に寄り添ってこそ、自身の介在価値が生じると信じています。 

── 印象に残っている支援事例をご紹介いただけますか。 

30代後半・不動産業界で長年個人事業主として個人営業をされていた方の転職支援です。組織に属しての法人営業経験はほとんどなく、いわゆる「普通のエージェントならなかなか手を出さない」タイプの経歴だったと思います。ただ私は、その方が「もう一度、組織のなかで仲間と目標を追いたい」と話す姿に強い意志を感じました。学習意欲も高く、吸収力もある。経歴ではなく、「人と能力」に着目して支援を進めました。挑戦したのは、サービス理解の難しいスタートアップの法人営業職。ハードルの高いポジションでしたが、この方なら乗り越えられると確信し、企業にも「必ず活躍できる」と自信を持って推薦しました。 

結果、無事に入社が決まり、入社後すぐに頭角を現して、今ではチームの中核として活躍されています。年収面でも1000万円クラスのオファーとなり、ご本人にとっても大きな転機になったのではないかと思います。表面的な経歴だけでは測れない、想いや可能性に目を向けることの大切さを、私自身、改めて感じた支援でした。 

転職に、「塾」はない。でも、伴走者はいる。

── エージェントを活用する意義とは、何でしょうか?

転職活動において、候補者自身がまだ気づいていない視点に出合えることこそが、エージェントを活用する最大の価値だと思います。たとえば、求人票には記載されていない企業の事業に対する誇り、一緒に働くことになるであろう候補者に寄せる想いや組織カルチャーなど、私たちが企業との対話を通じて得た“生の情報”をお伝えすることにより、より納得感を持って意思決定できるようになるでしょう。また、そもそも世の中には「転職するための塾」のようなものがありません。だからこそ、基本的な転職の進め方や、業界・職種の可能性、選択肢の広げ方について相談できる存在がいることには、大きな意味があると思っています。「今は本当に動くべきか」「どんな選択肢があり得るか」といった問いに対して、冷静かつ柔軟な視点を提供することも、私たちの役割です。たとえば、「Will」がはっきりしている人には、価値観や強みを軸に進路を考えるキャリアアンカー理論が有効です。一方で、まだ方向性が定まっていない人には、偶然の出会いや経験をきっかけにキャリアを切り拓いていく計画的偶発性理論のほうが、しっくりくるはずです。一人では得づらい“他者視点”を取り入れると、キャリア選択の幅はぐっと広がっていきます。 

── 良いエージェントの選び方について、アドバイスをお願いします。

まずは、「この人には本音を話せそうだ」と感じられるかどうかが大切です。転職の話には、他人には言いにくい悩みや、自分でもまだ言葉にできていないモヤモヤとした感情が含まれることも少なくありません。だからこそ、自分の言葉で安心して話せる相手かどうかは、とても重要なポイントになります。 

加えて、幅広い業界知識やこれまで多くの転職事例を見てきた経験があるかどうか。その上で、転職を前提とするのではなく、「現職での可能性」や「転職後のキャリア」まで視野に入れて話をしてくれるかどうかも見てほしい点です。目の前の求人に当てはめるのではなく、その人にとって何が最適かを一緒に考えてくれる姿勢があるかどうか――そこが、信頼できるエージェントかどうかの分かれ目になると思います。 

「自分の言葉で、自分を語れるようにする」まずは、そこから始めてほしい。

── 転職活動を始めるにあたって、何から始めるべきでしょうか? 

まずは、“自分の棚卸し”から始めてみてください。これまでのキャリアの中で何にやりがいを感じたのか、どんな瞬間にモチベーションが高まったのか、そしてこれからの人生で何を大切にしていきたいのか。そうした「自分の軸」を言語化しておくと、転職活動がぐっとスムーズになります。ただ、ひとりではなかなか整理しきれないことも多いと思います。そんなときにも、私たちエージェントを頼ってほしいですね。「いままでの仕事で一番印象に残っている出来事は?」「なぜその選択をしたのか?」といった問いを通じて、自分でも気づいていなかった価値観や大切にしてきた想いが、少しずつ見えてくることがあります。 

── エージェントを活用するうえで、大切なポイントは何でしょうか? 

ひとつ挙げるとすれば、自己開示です。悩んでいることや、本当に助けてほしいことを率直に共有していただければ、私たちの支援の質も格段に上がります。自分を深く知ってもらおうとする姿勢こそが、転職活動成功のポイントになるはずです。私自身、単なる職務経歴の羅列ではなく、その方の「人生」をきちんと見たいと思いながら向き合っています。そして、履歴書や職務経歴書に“魂が込められている”方――つまり、「私はこうありたい」という意思が言葉になっている方を、心から支援したいと感じるんです。そうした想いがあると、面談でも自然と深い対話が生まれます。完璧に仕上げる必要はありません。でも、自分らしさを伝える準備はしておいてほしい。そうすればきっと、あなたにしか描けないキャリアの道筋が見えてくるはずです。

転職は、よりよく生きるための選択肢。 

── 最後に、転職を考えている方へのメッセージをお願いします。 

転職を考える理由は人それぞれです。新しい環境に挑戦したいという前向きな方もいれば、現状への不満や違和感から転職を検討している方もいます。どちらの出発点でも構いませんし、どちらもとても自然なことだと思います。ただ一つお伝えしたいのは、転職先を考えるときに、今の環境との比較だけで判断してしまわないでほしい、ということです。「何を避けたいか」ではなく、「これからの人生で何を大切にしていきたいのか」「どんな未来を実現していきたいのか」。そこに立ち返って考えることで、選択肢の見え方も、意思決定の軸も、大きく変わってくるはずです。転職は、よりよく生きるための一つの手段です。だからこそ、自分の人生にとって本当に意味のある選択になるように、焦らず、丁寧に向き合ってみてほしいと思います。 

私は、単なるヘッドハンターではなく、“キャリアの伴走者”でありたいと思っています。今すぐの転職でなくても構いません。3年後、5年後のために、今の想いを整理する時間も、大切なキャリアの一部です。だからこそ、信頼できる相談相手を持ってほしい。私がそのひとりになれたら、これほど嬉しいことはありません。どんなに小さな悩みでも構いません。気軽に話を聞かせてください。「話ができてよかった」と思っていただける出会いとなるよう、これからも誠実に、真摯に向き合っていきます。 

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。