構造化面接

昨今、外資系企業が採用したことで注目を集めている「構造化面接」。あらかじめ設定した評価基準・質問項目に沿って面接を進める採用手法です。
構造化面接の特徴、メリット・デメリット、組み立てる手順、質問項目の例などについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します。 

構造化面接とは? 

まずは構造化面接の基本についてご紹介します。 

構造化面接の特徴 

「構造化面接」とは、面接担当者が事前に設定された質問項目に沿って行う面接手法を指します。自社の採用方針に基づいて評価基準・質問項目を決め、すべての応募者に対して同じ質問を、同じ順序で投げかけるのです。 

もともと臨床心理学分野で用いられていたデータ分析・検証手法ですが、面接に取り入れる企業が近年見られるようになりました。 

非構造化面接との違い 

「非構造化面接」の場合、面接担当者が主体となって質問の内容・順序を決めます。応募者の経歴に応じて質問を変えて、その場の話の流れによってどのような質問をするかを判断します。 

半構造化面接との違い 

「半構造化面接」は、ある程度は決められた質問項目に沿って進めますが、部分的には面接担当者の裁量で、応募者に合わせた質問をします。名称の通り、面接の半分は構造化されているケースを指します。 

構造化面接のメリット・デメリット

構造化面接には、メリットもデメリットもあります。それぞれを理解し、効果的に活用してください。 

メリット

構造化面接では、すべての応募者に対し、同じ質問を同じ順序で行うため、誰が面接を担当しても一定の基準に基づいて評価することができます。これにより、面接担当者の経験やスキルによって評価にバラつきが生じにくくなるのが大きなメリットです。評価軸の均一化すれば、採否判断の協議に費やす労力や時間を軽減でき、入社後のミスマッチ・離職の防止にもつながります。 

また、構造化面接を実施するためには、事前に社内で評価基準・質問内容をすり合わせ、設定することが必要となります。そのプロセスを踏むことで求める人材像が明確化し、マッチする人材を選びやすくなります。 

この面接手法は、面接経験がない社員・浅い社員でも行うことが可能です。より多くの社員が選考に関わることで、組織全体で「採用・人材育成」への意識が高まる効果も期待できるでしょう。 

デメリット

デメリットとしては、「本音を引き出しにくい」「入社意欲が高まりにくい」ことが挙げられます。構造化面接の手法では、決められた質問項目に沿って進むため、応募者にとっては「機械的」「マニュアル的」な印象となりがちです。また、対話の流れで自然に展開したり、その人にとって大切なポイントを深く掘り下げたりすることがしづらいため、本音を引き出せないまま終わってしまう可能性があります。応募者に「機械的に対応された」「十分に話せず、自分を理解してもらえなかった」と思われると、入社意欲が低下し、志望度が下がってしまうことも考えられます。 

構造化面接手法には、1次・2次・最終と、どの面接でも同じ質問項目を繰り返すやり方もあります。面接担当者の労力や時間を削減できるので良い面もありますが、応募者が面接対策をしやすくなるため、コミュニケーションにおける臨機応変な対応力や柔軟性を見極めにくくなることもあるでしょう。 

なお、構造化面接は、社内に浸透させるのに苦労を伴うケースも多いものです。人によってはやりにくさを感じるため、これまでの面接手法の継続を求める声も上がってくるでしょう。反対意見に対して、納得してもらうまでに時間がかかることもあります。 

構造化面接実現のステップ

構造化面接を実施するために、どのような手順を踏んで組み立てていけばよいかをお伝えします。 

1.採用基準を明確にして優先順位を決める 

 採用基準があいまいなままスタートすると、適切な質問項目を設定することができず、採否判断に必要な情報を応募者から引き出せなくなってしまいます。 

そこで、人事担当者・採用部門の責任者・経営陣で協議を行い、評価する基準を整理・言語化しましょう。まずは全ての採用職種・ポジションに共通する評価項目(自社で働くにあたってのスタンスやマインドなど)を設定し、採用職種・ポジションごとに必要な経験・スキルの評価項目を設定します。 

さらに、採用職種・ポジションそれぞれにおいて「優先する評価項目」を決めておきましょう。例えば、「○○職であれば、スキルより人柄重視」などが挙げられます。 

2.対応する質問案を作る 

評価項目に基づき、「これを聞けば、評価がしやすい回答を引き出せる」という質問項目を作成します。 

例えば「主体性があること」を重要な指標と設定した場合、「自ら率先して職場の課題を発見し、解決策の提案を行ったことはありますか」など、主体性を発揮した経験のエピソードを引き出す質問を用意します。 

3.質問のバランスを考える 

質問項目案を挙げたら、評価項目によって質問のバラつきがないかを確認し、全体のバランスをとりましょう。しっかりと確認したいからと深く掘り下げすぎてしまうと、時間が足りなくなる可能性があるため、評価項目ごとに適切な質問の数を見極めることが大切です。 

構造化面接の質問例

構造化面接で使用する質問項目は、「行動」「状況」に注目したものが望ましいとされています。 

質問項目の一例をご紹介します。 

行動に関する質問例

これまでの職務経歴での「行動」を問う際には、「STAR」のフレームを活用するといいでしょう。STARとは、「S(Situation)=状況」、「T(Task)=課題」、「A(Action)=行動」、「R(Result)=成果」の頭文字を取った言葉です。 

●Situation(状況)……行動したときの状況や背景 

  • どのようなチーム体制で仕事をしていましたか 
  • チームおよび個人でどのような目標を掲げていましたか 
  • 他社との競合は、どのような状況でしたか 

●Task(課題)……抱えていた課題 

  • どのような背景から課題が発生したのですか 
  • 目標達成に向け、どのような問題点や障壁がありましたか 
  • チーム内でどのような役割を担っていましたか 

●Action(行動)……課題に対しての行動や工夫 

  • 課題に対し、どのように向き合いましたか 
  • 目標を達成するために、どのような工夫をしましたか 
  • 周囲の人とどのように協力、連携しましたか 
  • 壁にぶつかったとき、どのように乗り越えましたか 

●Result(結果)……行動した結果・成果 

  • どのような成果を挙げましたか 
  • 同様のプロジェクトを手がけることになったら、改善すべきことはありますか 
  • その経験を通じて、学んだことはありますか 

職務や状況に関する質問例 

職務ごとの質問、より詳しい状況を問う質問例としては、以下を参考にしてみてください。 

  • ○○業界の△△職として、面白みを感じる部分、つらさを感じる部分を教えてください 
  • 顧客とのコミュニケーションにおいて、心がけていることは何ですか 
  • 新たなプロジェクトに取り組む際、大切にしていることはありますか 
  • 顧客からクレームを受けたとき、どのように対応してきましたか 
  • モチベーションが下がっている後輩(部下)がいたとき、どのように接してきましたか 
  • 苦手なタイプの人物と協業することになった場合、どのように対応してきましたか 
  • 上司の方針や指示に納得がいかないとき、どのように対応してきましたか 
  • リモートワーク環境下、チームのコミュニケーションで工夫していたことはありますか 

構造化面接はバランスよく取り入れよう 

面接を100%構造化してしまうと、自由度が失われ、「本音を引き出せない」「機械的な印象を持たれて入社意欲が下がる」といったデメリットをもたらす可能性もあります。 

そこで、構造化・非構造化をバランスよく取り入れることをお勧めします。例えば、「1次面接を構造化にし、2次面接は構造化を一部のみにとどめる」「1次・2次の構造化面接の間に、カジュアル面談を1回はさむ」などの方法が考えられます。 

また、1時間の面接のうち、構造化面接を45分行った後、最後の15分は自由な質疑応答にあてる方法もあるでしょう。この時間を設けることで、構造化面接では引き出せなかった(確認できなかった)ポイントに言及することができます。 

他社でうまく運用されている構造化面接の事例を見て、自社に取り入れたいと思うこともあるかもしれません。しかし、自社の状況に照らし合わせてアレンジする工夫や、自社に合う活用法を検討することも大切です。 

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。