オフィスにて打ち合わせをしている人たち

近年、少子高齢化に伴う人材不足が進む中で、人材確保のために企業はさまざまな取り組みを行なっています。しかし、優秀な人材を採用するためには、具体的な採用活動の施策を決める前に、人材採用戦略を構築して採用方針を明確化することが欠かせません。
本記事では、優秀な人材を採用するための人材採用戦略の必要性や、戦略立案のポイントなどについて解説します。

人材採用戦略とは

人材採用戦略とは、自社にとって必要な人材を確実かつスムーズに採用するための戦略のことです。
経営戦略は自社の経営理念やビジョンを達成するために、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源の配分の大枠を決め、具体的な経営方針を定めます。例えば、「新規に事業を2つ立ち上げ、多角化戦略によって売上を倍増させる」などといったものがあります。
対して人材採用戦略は、「将来の経営を担うコア人材採用に特化する」といったように、人材採用の目標を達成するための具体的な方針を定めることです。
人材採用戦略を持つことで採用活動方針が明確に定まり、具体的な施策などの戦術策定はもちろん、中長期の採用計画にまで落とし込むことができます。

なぜ採用戦略が必要なのか

人材採用戦略は、自社に必要な人材を採用するためだけでなく、人と企業のミスマッチなどによる人材採用・育成コストの余計な負担を防ぐためにも欠かせません。
株式会社リクルートの『2022年度上半期 中途採用動向調査(※1)』によると、中途採用の採用計画がある9,195社のうち、計画通りの人数を採用できた企業は19.0%にとどまっています。また、採用人数の目標が未達だった81.0%の企業のうち、採用計画が50%に満たない企業は50.7%にのぼっており、転職市場での人手不足も常態化していることがわかります。
そもそもの労働力人口が減少して採用活動自体が難しくなっている中で、せっかく採用してもミスマッチなどが原因で離職者が出れば、採用活動のコストはもちろん人材育成のコストの負担も増えてしまいます。
そのため、人材採用戦略を立てて、自社の目的に合わせた計画的な採用活動を行うことが欠かせません。

(※1)参考:株式会社リクルート「2022年度上半期 中途採用動向調査」

人材採用における戦略の立て方

人材採用戦略は、採用計画や必要な予算・人員などのリソースを定めるための大きな指針となるので、具体性が重要になります。ここでは、人材採用戦略の立て方を紹介します。

過去の採用活動を振り返る

人材採用戦略の策定には、自社の現状把握が欠かせません。そのためには、過去の採用活動を振り返って人材採用についての課題を抽出しましょう。
採用活動を振り返る際には、以下のように採用計画に対しての結果を定量的に確認し、採用活動で具体的に行っている施策の内容やその効果検証を行いましょう。

<採用活動の結果の振り返り>
  • 採用計画に対して毎年どのくらいの達成率となっているか
  • 自社サイトや転職サービスでの募集など、求人媒体ごとにどのくらいの応募が来たのか
  • 求人への応募者の経験・スキルは毎年基準を満たしているか
  • 自社が求める人材像に該当する応募者は、どのくらいアプローチしてきているか など
<採用活動の施策内容の振り返り>
  • 求人広告の掲載先が固定化していないか
  • 求人は自社が求める人材の興味を引く内容になっているか
  • 会社説明会の開催数や転職フェアなどの利用状況はどの程度か
  • 自社サイトの採用ページの内容は随時更新されているか など

人材要件を明確にする

自社に必要な人材やその採用基準など、人材採用にあたっての人材要件を明確にすることも重要です。
人材を採用する目的は、自社事業の継続的な成長のための組織強化・拡大であり、単なる人員補充が目当てではありません。求人像が明確になっていなければ、経験やスキルはもちろん組織とのマッチ度が低い人材を採用することになりかねず、結果的に人材育成などの副次的なコストが増えてしまいます。
また、応募者を集めるための求人広告のターゲットが曖昧になり、採用面接で応募者を見極めるポイントが担当者によって異なってしまうと、効果的な採用活動ができなくなるでしょう。
自社の組織構成や各部署の人員数、業務内容を整理し、自社事業の将来的な方針を加味したうえで人材要件を定めましょう。人材要件は、具体的であるほど個人による解釈の違いが少なくなり、採用活動の費用対効果も高くなります。

転職市場の動向・相場を把握する

自社の採用活動の現状分析が終わり、人材要件が定まったら、転職市場の動向や人材採用に必要なコストの相場を把握します。
採用活動では、事業と同様に競合他社が存在しています。そのため、他社との相対比較によって自社のポジションを明確化して強みを発揮するために、転職市場の業界動向を調査しましょう。さらに、自社と直接的な競合となる企業や組織の規模やフェーズが近い企業の採用活動の調査・分析も行いましょう。自社の採用活動の参考になるのはもちろん、差別化して他社とは異なるルートから人材採用をするなど、固定観念を取り除くことにも役立ちます。
また、採用活動に必要なコストの相場を確認することも重要です。自社サイトでの求人募集や会社説明会の実施といった自社リソースの活用だけでは、人材要件を満たした求職者にアプローチできない可能性があります。その場合は、外部のサービスの利用が必要になることもあるでしょう。
転職エージェントやスカウトサービスの利用料の相場はもちろん、転職サイトへの求人広告の出稿費なども確認しておくことで、人材採用戦略の実施に必要な予算の見積もりができます。

自社の強みを言語化する

人材要件を満たす求職者に自社について正しく理解してもらうために、自社の強みや独自の魅力を言語化することが大切です。
求職者に対しては、一般的に自社サイトでの求人募集や転職サービスなどを通じてアプローチしますが、どのような場合でも自社の魅力を言葉で伝えることになります。そのため、相手に伝える言葉が求める人材の共感を得られる内容でなければ、採用目標を達成することが難しくなるでしょう。
経営理念やビジョンといった概念はもちろん、事業方針や競合に対する優位性、社会貢献などの事業情報も重要です。しかしそれ以上に、社風や職場の雰囲気、業務に関する魅力など、求職者が働く上で求める具体的な魅力に着目し、言語化しましょう。

採用フローを見直す

自社に必要な人物像や採用基準が明確になり、過去の採用活動で予想していたほどの結果が得られていなければ、採用フロー自体を見直す必要もあります。
求人に対する応募者数が目標を達成したのにもかかわらず、満足のいく経験やスキルを持った人材を採用できていないならば、選考試験の内容はもちろん、そもそもの採用目標の見直しや再設定が必要になるかもしれません。
また、自社の人的リソース不足はもちろん、そもそも求職者にアプローチするノウハウの蓄積がないならば、転職エージェントやスカウトサービスなどの外部リソースを活用するのが効果的でしょう。
過去の採用活動の結果はもちろん、現状のリソースを考慮したうえで、採用フローの最適化を検討する必要があります。

採用戦略で押さえたいポイント

人材採用戦略の立案が終わって実行フェーズに移る際には、その効果を最大化して継続的に高めるために、2つのポイントを押さえておきましょう。

社内での採用戦略の共有

採用戦略を策定したら、採用活動に関わる社員はもちろんですが、関連部署の現場社員や管理職にも共有するようにしましょう。
人材採用は組織の強化を目的として行うものであり、その重要性や具体的な戦略は採用担当者だけでなく、採用予定先の部署の社員も認識しておかなければいけません。
例えば、リファラル採用を取り入れて社員の友人・知人などの中から自社にマッチする人材を探したい場合は、社員が自社の採用戦略を把握しておくことで、必要な経験やスキルを持つ人材にアプローチできるでしょう。
全社員に周知するのは難しいかもしれませんが、少なくとも採用活動に何らかの関わりを持つ社員に対しては、採用戦略を周知しましょう。

定期的なブラッシュアップ

人材採用戦略は、経営戦略と同じように時代や自社を取り巻く外部環境の変化に合わせて、定期的にブラッシュアップする必要があります。
策定した採用戦略が必ずしも実を結ぶとは限らないため、戦略に沿って実行した施策の結果を振り返りつつ、次の採用活動に向けて修正を行いましょう。
また、期待以上の成果が得られたとしても、その結果を持続的に得られるとは限りません。採用活動の競合増加や求人媒体の変化などの外部環境の変化はもちろん、求職者の仕事への価値観が時代とともに変わってしまうこともあります。
人材採用の将来的なリスクも考慮したうえで、採用戦略の実施結果の分析と改善は継続的に行いましょう。

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人材採用戦略が定まった企業の実行フェーズにおいて、外部リソースの利用は効果を最大限に高めるための助けとなるでしょう。

この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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