採用面接の風景

売り手市場といわれる昨今、企業から求職者に直接アプローチすることができる「スカウトサービス」が注目されています。スカウトサービスと他の転職サービスとの違いやスカウトサービスのメリット・デメリット、導入のポイントなどを組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏にお伺いしました。

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スカウトサービスとは

「スカウトサービス」とは、媒体のデータベースに登録してある求職者のスキルや経験などを見て、企業から求職者に直接アプローチができる転職サービスのことを言います。転職エージェントや転職サイトは、求職者からの応募を待ついわゆる「待ちの採用手法」であるのに対し、スカウトサービスは企業から求職者に働きかける「攻めの採用手法」と言われています。

それぞれのスカウトサービスによって得意領域が異なるので、利用する際は事前に特徴を調べることをおすすめします。スカウトサービスは次の3種類に大きくわかれます。自社の採用要件に合う人材を扱っているサービスを利用するといいでしょう。

  • 若手~ミドル向け総合型
  • ハイクラス向け総合型
  • 特化型(エンジニア系、スタートアップ系、年齢層特化型など)

スカウトサービスの特徴

スカウトサービスの特徴を解説します。

【1】企業がデータベース上でターゲットを検索する

スカウトサービスでは、企業自身で媒体のデータベースを使って、自社の採用要件に合った人材を検索します。

求職者はスカウトサービスに登録する際、応募書類に記載するような経歴やスキルなどの情報をサービスのデータベースに入力します。このような登録情報をもとに、企業は求職者のスキルや経験、保有資格などのさまざまな条件で絞り込み、自社で求める人材をピックアップしていきます。

【2】企業が欲しい人材を直接「スカウト」する

転職サイトや転職エージェントの場合は、求職者からの応募を待つのが通常です。企業からは求職者にコンタクトを取ることはできません。

一方で、スカウトサービスの場合は、興味のある人材に対して企業が直接コンタクトを取り、自社に興味を持ってもらえるようにアプローチします。スカウトサービスを介して、求職者に宛てたスカウトメールが送られ、求職者もスカウトサービス内で返事をするような仕組みになっていることが多いです。

スカウトサービスが注目されている理由

スカウトサービスが近年注目されている理由には、「高齢化に伴う労働力人口の減少」が大きく影響をしています。

総務省統計局の調査(※1)によると、2021年の平均労働力人口は6,860万人となり、前年に比べて8万人の減少となりました。下記のグラフからは、2016年から2019年の期間で労働力人口が増えているように見えますが、これは女性と高齢者の就業が増加したためです。

総務省統計局の調査による、平均労働人口の推移グラフ

(※1)労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果 総務省統計局

財務省の資料(※2)によると少子高齢化が進んでいる日本では、2060年の20~64歳人口は2023年現在の約6,768万人から約4,189万人に減少する見込みです。

このような労働力人口の減少によって、企業と求職者の関係は少しずつ変化しています。お互いに選び・選ばれるという関係になり、企業も求職者にしっかりと自社をアピールしないと興味を持ってもらえません。求人を掲載して求職者からの応募を待つだけではなく、企業自ら求職者とコンタクトが取れるようなスカウトサービスなどを利用して、自社に合う優秀な人材の採用を目指すことも重要です。

また高齢化は、人々のキャリア形成にも大きく影響をしています。高齢化によって、人々が生涯で仕事を続ける期間が長くなり、以前に比べると多くの人が自身のキャリアをより考えるようになりました。そのため、「今すぐの転職は考えていないけれど、自身に合う企業があれば転職も視野に入れたい」と考えるいわゆる「転職潜在層」も最近は多く見られます。「転職潜在層」のほとんどは積極的に転職活動を行わない傾向にあり、企業から声がかかるスカウトサービスのような媒体に登録して、転職の機会を伺っているケースが少なくありません。このような理由からも、転職顕在層(今すぐの転職を考えている人)だけでなく、転職潜在層にもアプローチができるスカウトサービスに関心が集まっています。

(※2)財務省資料「日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか」

スカウトサービスを利用する場合のメリット

スカウトサービスを利用する場合のメリットを3つ紹介します。

気になる人材にオリジナルのアプローチが可能

企業が求職者と直接コンタクトが取れるスカウトサービスでは、自分たちの言葉で自社の強みや魅力を伝えることが可能です。社員しか知り得ない“生の情報”を、求職者に直接届けることができます。

さらに、求職者一人一人に合わせて伝える情報やアプローチ方法を変えることができることも強みの一つです。例えば、特定の領域に興味を持ってもらえそうな求職者の場合は、関連する情報をメールに入れてみたり、通常の採用よりも転職のハードルが高くなりがちな経営層の採用の場合は、まずは話を聞いてもらうようなカジュアル面談を提案してみたりなど、求職者に寄り添った提案が可能です。

転職顕在層だけでなく、転職潜在層もターゲットにできる

前述の通り、スカウトサービスは今すぐの転職を考えていない「転職潜在層」にもアプローチができるため、採用ターゲットの幅が広がります。

特に経営幹部や専門スキルを持つ人材は、現職に満足していて転職を考えていなかったり、転職活動を始めてもすぐに転職先が決まったりと、なかなか転職市場に出てきません。しかしその一方で、このような人材は「自身の市場価値を知るため」や「更に条件の良い企業に出会うため」などの目的のもと、自身で積極的に動かずに企業から声をかけてくれる、スカウトサービスに登録しているケースが見受けられます。そのため、スカウトサービスを導入することで、他のサービスでは出会えないような人材に出会える可能性が高まります。

他社との差別化を図れる

求職者へのアプローチに関して、他社と差別化を図れるのもスカウトサービスのメリットです。

転職活動を行っている求職者は、複数の企業の選考を同時に進めているケースが高いです。そのため特に採用したいと感じた求職者に対しては、スカウトメールで他社と比べた自社ならではの魅力を伝えたり、他社の待遇などを調べてからオファーを出したりするなど、差別化を図るといいでしょう。

スカウトサービスを利用する場合のデメリット

スカウトサービスを利用する際の注意点を2つお伝えします。

採用業務が増える

スカウトサービスを利用する際、以下のような業務を社内で対応することになります。

  • データベース上で人材を検索、絞り込み
  • スカウトメールの作成
  • 面接や面談などの選考の日程調整
  • 選考結果の連絡
  • 内定前後のフォロー など

複数人の選考を同時に進めている場合は、これらの業務が並行して進めることになりますので、業務工数が増えることに比べてタスクの管理も必要になります。

さらにスカウトサービスを始めて利用する場合は、どのように条件検索すればよいのか分からなかったり、スカウトメールの作成に時間がかかったりするケースも考えられます。少しでも採用業務の負担を減らすためには、導入フォローをしてくれるサービスを利用するようにする、スカウトメールのテンプレートを用意するなど、効率よく進められるように意識するといいでしょう。

求職者に合わせたアプローチが必要

「オリジナルのアプローチができる」というスカウトサービスの強みを活かすために、時間や工数は掛かりますが、求職者一人一人に合わせたアプローチ方法を考えることも重要です。

「転職することで求職者が叶えたいことは何か?」「自社のどのような魅力を伝えたら興味を持ってもらえるのか?」「自社に入社した場合に活躍してもらうにはどうしたらいいのか?」などを熟考したうえで、どのように求職者にアプローチすると良いか検討するといいでしょう。

そのためには、入社先の現場担当者が求めるものを把握することはもちろん、スカウトメールの文面作成に協力してもらうなど、現場との密な連携が重要になります。適切なアプローチを考えることはノウハウが溜まるまでは負担となるかもしれませんが、今後に活かすことで効率アップにつながるでしょう。

スカウトサービス活用のコツ

スカウトサービスを使って採用を成功させるためのコツを紹介します。

採用業務の洗い出しと情報の一元化を行う

前述の通り、スカウトサービスを利用する場合は社内での対応が増えるので、業務の洗い出しと情報の一元化を行うことをお勧めします。

スカウトサービスを利用して採用活動を行う際、自社の担当者の業務は多岐に渡ります。データベースでの人材の検索をはじめとして、スカウトメールの作成、面談・面接の対応、内定前後のフォローなど、複数の業務を並行して行うことになるでしょう。

そのため、入社後の現場に協力してもらえそうな業務は事前に洗い出しておくとともに、スカウトメールの送信状況や返信の有無、アプローチしている求職者のステータスを一目でわかるようにするなど、採用活動の情報を一元化しておくと便利でしょう。

採用候補を絞り過ぎない

自社でデータベースを使って採用候補の検索ができるからといって、条件を絞り過ぎないことも意識しなくてはいけません。

「長期的に見て、細かい条件に合う人材がいれば採用したい」という方針ならば問題ありませんが、数カ月以内に採用したいなどの場合に候補を絞り過ぎてしまうと、マッチする人材が見つからない可能性があります。
登録情報にないスキルを持っているケースもあるため、細かい条件には合致しないけれど、まずはカジュアル面談の形で話してみることや、該当者があまりに少ない場合は条件を見直して検索することも念頭に入れておきましょう。

自社の魅力は端的に伝える

熱意をもって魅力を伝える場合、どうしてもスカウトメール内に内容を盛り込みがちですが、求職者の忙しさやスマートフォンで読む可能性も考えると、簡潔に伝えるように心がけてください。

また、ホームページを見れば分かるような基本情報だけではなく、現在自社で力を入れていることや将来のビジョンなど、直接のアプローチだからこそ伝えられるような貴重な情報もメールに記載するといいでしょう。
求職者に向けた自社の魅力が伝わるような資料や動画を作成しておくことも一案です。自社の良さをアピールできるとともに、採用担当者間の認識のズレや採用活動にかかる業務負担を減らせる効果も期待できます。

スカウトサービスで希望する人材にアプローチ

少子高齢化によって採用難が考えられるなか、企業側からアプローチできるスカウトサービスは有効な採用手段です。自社内の業務は増えてしまいますが、求める人材に出会える可能性が高まります。少しずつノウハウを溜めたり、サポートの手厚いサービスを活用したりして、攻めの採用を成功させましょう。

この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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