採用条件

自社で活躍してくれる人材を採用するには、「採用条件」を明確に決めておくことが重要です。この記事では、採用条件を設定するメリット、採用条件の決め方や注意点、そして求人広告などでの具体的な記載例などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用条件とは?

採用条件とは、企業が人材を採用する際に、独自の判断基準を定めたもの。例えば経歴、スキル、資格の有無、人間性や仕事における価値観などといった判断基準が挙げられます。

採用条件のほか「採用要件」や「人材要件」と呼ばれることもあります。また、求人票に記載する場合は「求めている人材」や「必要な経験・能力等」などと表現されることもあります。

採用条件を設定するメリット

採用条件を設定するメリットについて具体的にご説明します。

メリット1:採用効率化

採用条件が設定されていないと、ターゲットが定まらず、応募してほしい人の目に留まりにくくなる可能性があります。求人票などで採用条件を明確に提示することで、求める人材が集まりやすくなり母集団が形成しやすくなるというメリットがあります。

メリット2:合否基準の統一化

採用条件が定まっていないと、面接担当者ごとに評価の基準にバラつきが出てしまいます。「面接が盛り上がったから」「いい人そうだと感じたから」など、場合によっては面接担当者の主観で合否を決めてしまう可能性もあります。
採用条件を明確にすることで、主観ではなく公平な判断のもと合否が決められるようになります。

メリット3:ミスマッチの防止

募集時に明確な採用条件を提示することで、その条件を備えた人材が集まりやすくなり、かつその基準をもとに採用選考を行うことで、ミスマッチの防止につながります。応募者が入社後にギャップを感じ、早期離職してしまうリスクも減らすことができるでしょう。

メリット4:社内の人材採用や組織作りに関する言語化が進む

採用条件を決める際には、人事だけでなく経営陣、現場責任者などとともに社内で十分に協議する必要があります。その過程で、例えば「当社にはベンチャースピリットが強い人材が向いている」「周囲に気を配り、サポートし合える人材が合っている」など、自社が求める人材像の言語化・共有化が進むことで、採用活動のみならず社内への発信など、組織運営にも活用できるでしょう。

採用条件はどうやって決める?Stepごとに紹介

採用条件を設定する基本的な方法について、ステップに分けてご紹介します。

Step1:社内の各部署にヒアリング

経営陣や配属予定部署の責任者・マネジャーなどは、各々が求める人材像や期待することなどを明確に持っています。まずはそれぞれに今回の採用で求めている人材要件を詳しくヒアリングしましょう。
また、配属予定部署で活躍している人材へのヒアリングも、採用条件を設定するうえで重要です。部署の責任者などに、その部署で高い成果を出している優秀な社員や、今回採用したいと思う人材に近しい社員を挙げてもらい、その人にヒアリングを行い、どのような経歴、スキルを持っているのか、どのような業務を担当しどのようなマインドを持って働いているのかなどを確認するといいでしょう。

Step2:収集した情報を整理してペルソナを設定する

ヒアリングを通して情報を収集したら、それをもとにペルソナを設定します。
集めた情報を(1)スキル・能力・経験面、(2)仕事に対する価値観やキャリア志向などの人物面、(3)給与や手当、勤務時間や休日などの条件面に分けて整理し、それぞれにおいて「必須条件」「あると望ましい条件」「今回は重視しなくても良い条件」などに分けて優先順位をつけます。そして優先順位の高い要素をもとに、できるだけ具体的にペルソナを作り上げましょう。

複数のペルソナが想定される場合は、無理に1つに絞らず、募集媒体によって使い分けたり、採用活動を進めながら絞っていったりするといいでしょう。

なお、ペルソナ作りは採用条件を設定するうえで重要な工程ではありますが、転職市場の動向などに合わせて微調整を行う必要もあるため、設定したペルソナに縛られすぎないことも重要です。

Step3:評価項目を設定

ぺルソナを設定することで採否を判断する基準が明確になるため、それを具体的な評価項目に落とし込んでいきます。
例えばですが、以下のように項目を立てていきましょう。

  • スキル面:業務に必要な資格、コミュニケーション力、論理的思考力
  • 経験面:マネジメント経験、業務経験年数○年以上
  • 人物面:協調性、向上心、リーダーシップ

これらをもとに面接用の評価シートを作成しますが、あまり項目が多すぎると一つひとつを確認するのに時間がかかり、評価の精度が落ちてしまう可能性があるので注意が必要です。特に優先度の高いものに絞り込みましょう。

Step4:市場の動向を調べて調整する

評価項目の数が多すぎないか、採用基準のレベル感は高すぎないかなどは、自社だけでは判断し切れないもの。同業他社が公開している求人情報と比較したり、転職エージェントなどから他社情報を収集したりしながら調整するといいでしょう。
募集を開始した後に、応募数の集まり具合や他社状況、面接の内容などを踏まえ、採用条件を随時調整していくことも必要です。

中途採用で採用条件を決める際に重視すべきポイント

即戦力となり得る中途採用を行う際、採用条件を決めるにあたって重視したほうが良いのは「能力・経験」です。応募者のこれまでの経験や実績、スキルなどにより、入社後の活躍可能性が大きく変わるため、重視すべきポイントのひとつです。

自社が求める経験、職務レベルを備えている人材か、どのような業務に適性を持ち、どのように貢献してくれそうなのかを十分に見極めるため、能力・経験に関する具体的な評価項目を設けるとともに、面接時に具体的な実績やエピソードなどを引き出しながら深掘りし、把握しましょう。

そのうえで、カルチャーフィットを確認することも重要です。例えば、企業理念やビジョン、ミッション、バリュー、クレドやパーパスなどとして掲げている要素のうち、特に重要視したい項目を採用基準に加えるといいでしょう。これらの項目と、応募者の人間性や仕事に対する価値観の合致度合いが高ければ、入社後に活躍できる可能性が高まり定着にもつながります。

なお、新卒採用の場合は、社会人経験がない学生が対象であるため、能力・経験ではなくカルチャーフィットの部分を重視するといいでしょう。また、向上心が高い、協調性がある、行動力があるなど、応募者の強み・持ち味からも、将来性や入社後の活躍ぶりをある程度測ることができます。

パート・アルバイト採用の場合は、能力の有無やカルチャーフィットも大切ではありますが、給与、勤務時間、休日、福利厚生などといった「労働条件」が重要な要素になります。これらの条件が応募者の希望や期待と一致しているかどうかで、入社後の活躍やモチベーション、定着率が変わるため、求人票などで適切な労働条件を打ち出すことが大切です。

採用条件を決める際に注意したいこと

採用条件を決める際には、いくつかの注意点があります。

経営層だけでなく現場の意見も取り入れる

企業規模の小さい中小・ベンチャーや、経営層の影響力が強い企業の場合、経営層が求める人材像をもとに採用条件を決めるケースが見受けられますが、現場が求める人材像と乖離していることが少なくありません。
例えば、現場では人手不足が深刻で、一刻も早く経験豊富な即戦力人材を採用してほしいのに、経営陣の一存で「ポテンシャルのある未経験者採用」に振り切ってしまい、現場の不満が溜まってしまった、などというケースも耳にします。
採用後のミスマッチを減らし、早期離職を防止するためにも、経営陣だけでなく配属予定部署など現場の意見も取り入れ採用条件を設定することが大切です。

差別につながる項目は含めない

採用条件の中に、差別につながる項目を加えることはできません。
厚生労働省では、本籍や出生地、家族のことなど「本人に責任のない事項」、宗教や支持政党、人生観や生活信条など「本来自由であるべき事項」、そして身元調査などの実施や本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用などといった「採用選考の方法」において、就職差別につながるおそれがある14項目を定めています。これらは採用条件から排除しましょう。

※参考:厚生労働省ホームページ「公正な採用選考の基本」内、「採用選考時に配慮すべき事項」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

なお、差別とは異なりますが、労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)により、募集時に年齢の制限を設けることは原則禁止されています。また、男女雇用機会均等法により、性別を制限することも認められていません。

※参考:労働施策総合推進法「募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=341AC0000000132
男女雇用機会均等法「性別を理由とする差別の禁止」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000113

採用条件には優先順位をつける

採用条件が多すぎると、母集団が形成しにくくなるだけでなく、面接担当者によって重視する項目が変動したり必要な条件の確認が漏れたりすることで合否基準に一貫性がなくなり、ミスマッチが起こる可能性が高まります。
その結果、不採用者が増えたり辞退が続いたりしてしまい、採用活動にかかる時間や労力、お金が必要以上にかさんでしまう恐れもあります。採用条件を見直して優先順位をつけ、どうしても譲れないマスト条件を中心に絞り込むことが大切です。

定期的な見直しが必要

自社を取り巻く経営環境や、経営戦略や中期計画の状況などによって、必要な人材像は変化します。また、転職市場の変化によって採用環境が変わり、同じ条件を設けているのに採用しやすくなったりしにくくなったりすることもあります。そのため、採用条件は定期的に見直し、現状に合わせていくことが必要です。
また、例えば「営業マネジャーの募集」であっても、自社を取り巻く事業環境や組織の状況の変化によって求めるレベルや備えていてほしい経験・スキルも変わってくるはず。採用ミスマッチを軽減するためにも、適宜見直しを行いましょう。

採用条件の具体的な記載例

自社で決めた採用条件を、求人情報などに明記する場合の記載例を紹介します。

営業マネジャー職の場合

【応募条件】
以下の経験をお持ちの方
・法人営業としての実務経験(経験年数5年以上、有形・無形問わず)
・営業部門でのマネジメント経験

【歓迎するスキル】
・エンタープライズ営業の経験
・新規開拓営業の経験

【求める人物像】
・チームワークを大切にできる方
・周りをフォローし、困った時には助け合える方
・ポジティブ思考で、率先垂範できる方

ソフトウェアエンジニアの場合

【応募条件】
ソフトウェアエンジニア経験5年以上で、かつ以下の経験をお持ちの方
・Java、TypeScriptいずれかによる開発経験をお持ちの方
・クラウドサービスでWebアプリケーション開発経験をお持ちの方
・要件定義から基本設計、実装まで携わったことのある方
・実務を通してAWSを活用した経験をお持ちの方

【歓迎するスキル】
・SaaS構築運用の経験
・AIに関する経験と知識

【求める人物像】
・最先端の技術を追求し続ける姿勢のある方
・チームワークを重視しながら大きな目標に向かって突き進める方
・ナレッジの創出と共有に価値を感じている方

人事職の場合

【応募条件】
・新卒・中途採用経験が3年以上の方
・採用企画から集客、選考プロセスの構築に関わった経験のある方
・経営陣や現場と交渉しながら、採用ポジションの条件設定を行った経験のある方

【歓迎するスキル】
・採用部門でのマネジメント経験
・エンジニア採用に関する知見
・採用後のオンボーディングに関わった経験

【求める人物像】
・当社のバリューに共感し、体現できる方
・採用者の気持ちに立ち、感情に寄り添える方
・組織成長の視点で常に人材課題に向き合う姿勢を持った方

スカウトサービスを使って採用条件に合う人材を見つける方法も

採用条件を求人票などに反映し、ターゲットとなる求職者に広くアピールする方法もありますが、スカウトサービスを活用すれば、採用条件に合致した求職者に直接アプローチすることができます。
その際、スカウト文面に採用条件を反映しておくことで、マッチング精度をさらに高めることも可能。効率的でミスマッチの少ない採用を実現するためにも、スカウトサービスの活用をぜひ検討してみてください。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。
この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。