中途採用 難しい

中途採用活動を行ってもなかなか採用に至らず、「中途採用は難しい」と感じている人事担当者は少なくないようです。実際、さまざまな外部要因・内部要因から中途採用の難易度は高まっている傾向が見られます。中途採用が難しい理由、中途採用を成功させるためのポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中途採用が難しくなっている外部要因

近年、中途採用が難しくなっている背景には、さまざまな外部要因があります。業界・職種によっても事情は異なりますが、全体的には下記の要因が影響していると考えられます。

有効求人倍率が上昇している

有効求人倍率が上昇すると、売り手市場になるため求職者にとっては応募先企業の選択肢が増えます。企業側は普段にも増して待遇・働き方・キャリアパスなどで自社の魅力を打ち出さなければ、応募者を集めることが難しくなります。
厚生労働省が発表した「令和5年版 労働経済の分析」によると、リーマンショック後の2009年以降、新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率は長期的に上昇傾向が続いていました。コロナ禍の一時期は落ち込んだものの、2021年以降、経済活動の再活発化に伴って再び上昇傾向に転じています。2022年平均の新規求人倍率は前年差0.24ポイント上昇の2.26倍、有効求人倍率は同0.15ポイント上昇の1.28倍となりました。

求人倍率と完全失業率の推移

出典:厚生労働省ホームページ「令和5年版 労働経済の分析 -持続的な賃上げに向けて-」P15(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/23/23-1.html

さらに、2024年1月に厚生労働省が発表した2023年平均の有効求人倍率は1.31倍と、前年から0.03ポイントの上昇となっています。

出典:厚生労働省ホームページ「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37525.html

採用手段が複雑化している

以前の中途採用と言えば、「ハローワークに求人登録」「転職サイトに求人広告を出稿」「転職エージェントに依頼」など、手段が限られていました。しかし現在は、企業から直接求職者にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」も活発化し、SNSやスカウトサービスの活用、リファラル採用、アルムナイ採用など、手法が多様化しています。また、転職エージェントも専門化チーム・細分化を進めている会社も出てきています。

採用手段が複雑化しているため、ターゲット人材に適した手法を見極め、運用していくことが難しくなっていると言えるでしょう。

働き方の多様化

近年、求職者の「働き方」に対する価値観や志向が多様化しています。例えば、「リモートワーク」「フレックスタイム制」「時短」「週休3日制」「副業・兼業」「業務委託」「職務限定」「勤務地限定」といった働き方を望む求職者も増えています。求める人材に自社を選んでもらうために、柔軟な働き方ができる制度・環境を整え、その情報を発信していく必要があります。制度の整備や発信などやるべきことが増えており、実施のハードルが高くなっています。

中途採用が難しくなっている内部要因

内部要因によっても、中途採用の難易度は高まっています。次のような課題を抱える企業が増えています。

採用担当者の工数が増加している

採用担当者が行わなければならない仕事が、以前より増えています。
外部要因にも挙げたとおり、採用手段が多様化。自社にマッチする採用手法を検討し、費用対効果も考えながら複数手法を組み合わせ、同時に運用していかなければなりません。

求職者に自社を選んでもらうためには情報発信も必要。採用ピッチ資料や採用向け動画の作成、SNSへの投稿、採用イベントへの参加などにも手間と時間を要します。配属先の現場関係者への面接トレーニングも重要になっているほか、採用管理システムを使用するための研修・トレーニングが必要なケースも生じています。

選考での見極めが難しい

即戦力採用の難易度が増すなか、多くの企業が業界・職種未経験者にも対象を広げ、ポータブルスキルやポテンシャルなどを重視して選考を行っています。こうした採用では、応募者が本当に自社にフィットして活躍できるかどうかの見極めが難しくなります。
適切に評価し、入社後のミスマッチを防ぐためには、面接の質問や評価基準の設定を工夫する必要があり、選考準備の面でも難易度が高まっています。

中途採用を行ってもうまくいかない理由

中途採用を行っても、「応募者が集まらない」「選考を途中辞退される」「内定を辞退される」といったこともあります。うまくいかない理由として考えられることをお伝えします。

制度や待遇などが見劣りしている

同業他社などと比較して、制度面や待遇が整備されておらず、見劣りしているのかもしれません。近年、人材獲得や離職防止のため、働きやすい制度を設けたり給与水準を上げたりする企業も多数見られます。求人市場を広く見渡し、他社と自社を比較してみることも大切です。

自社の情報を伝えきれていない

応募者に対し、自社の情報発信・情報提供が不足している可能性があります。応募者としては、企業理解を深められず、魅力のポイントもつかめないと、応募意欲や入社意欲が高まらないでしょう。

ターゲットに適した採用活動ができていない

先述のとおり、近年は採用手段が多様化しています。逆に言えば、求職者が求人情報を入手する手段も多様化しています。採用手段の選択が適切でないことにより、自社が採用ターゲットとする人材に求人情報が届いていない可能性があります。

仮に応募してもらえて選考に進んだとしても「面接担当者が応募者を適切に評価できない」「複数の面接担当者の間で評価基準が統一されていない」「面接回数が多すぎて途中辞退される」など、選考フローに問題があり、辞退されてしまうケースもあります。

採用戦略が中途半端になっている

求人市場動向のリサーチ、採用目標の設定、人材要件の設定などが十分になされないまま、何となく募集を開始してしまっている企業も見られます。これらが曖昧だと、採用プロセスを振り返って検証することもできず、改善できないまま採用活動が長引くこともあります。

経営陣や現場との連携ができていない

人事担当者だけで採用活動を進めても、うまくいかないことが多いものです。
まず、経営戦略に沿った採用戦略になっているかどうかを経営陣とすり合わせておかなければ、ミスマッチを起こしやすくなります。また、配属先の現場関係者との連携が不十分では、求める人材要件を明確化できず、適切な採用手法の選択や情報発信もできません。

十分なフォローができていない

選考中・内定前後・入社直後と、それぞれの段階で応募者が不安を抱いている点を解消するためのフォローが十分に行われていないと、辞退や早期離職につながる確率が高まります。

中途採用を成功させるためのポイント

難易度が高い中途採用も、進め方の工夫によって成功に導ける可能性が高まります。意識しておきたいポイントをご紹介します。

経営陣や現場部門と連携する

採用目標を立てるには、中長期的に企業が目指す方向性・ビジョンを理解しておく必要があります。経営陣と共に、経営戦略の実現のために必要なのはどのような人材なのかを協議しましょう。

また、採用目標・求める人材要件・採用フローなどは、配属先の現場席に者と対話を重ねながら決めましょう。ビジネス環境の変化のスピードが速い昨今、現場の人材ニーズも日々変わっていくものです。継続的にコミュニケーションを図りましょう。面接での評価基準についても、関係者全員が目線を合わせておくことが重要です。

株式会社リクルートが行った「企業人事の採用に関する調査」においても、人材を求めている部門の「責任者」または「担当者」が採用戦略に関わっている方が「採用が上手くいっている」と回答した割合が高いという結果が表れています。人事だけで採用を進めようとせず、経営陣や現場部門とのきめ細かな連携を意識しましょう。

出典:株式会社リクルート「企業人事の採用に関する調査 第 2 弾 中途採用成功のカギは、人材を求めている部門の当事者が『採用戦略の検討』『選考』に関わること」2023 年 9 月 27 日

戦略を立てる

目先の人材不足を補うために何となく募集を始めるのではなく、まずはしっかりと「戦略を立てる」ことが重要です。人材採用の目標を明確化して、達成するための具体的な方針を定め、中長期の採用計画まで落とし込みましょう。戦略を立てることで、目標・計画に対する達成状況から課題を発見しやすくなり、改善を図ることで採用力を高めていくことができるでしょう。

制度や待遇、評価基準を見直す

制度や待遇において、「世間の相場」をつかんでおくことが大切です。他社の求人情報などを見て、どのような制度・待遇を用意しているのかをリサーチしましょう。自社に不足しているものがあれば、可能な範囲で整備することで応募数アップにつながる可能性があります。

また、選考プロセスでは、選考者の「主観」が評価に影響することがあります。書類選考や面接での判断にばらつきが生じないように、経営陣・人事担当者・採用部門責任者など、関係者全員が目線を合わせる必要があります。評価基準を言語化し、共有しておきましょう。

ターゲットを明確にする

採用部署の責任者とも話し合い、採用ターゲットとなる人材像をなるべく明確にしておきましょう。このとき、任せたい業務・ポジションに必要な経験・スキルだけでなく、仕事に向き合う姿勢や仕事に対する価値観、企業のカルチャーにフィットしそうか、などの要件も設定しておくことが大切です。人物像を明らかにすると、関係者の間で共通認識ができるため、認識の相違が発生しにくくなるでしょう。

ターゲットにマッチした採用活動を行う

ターゲットや採用目標にマッチする採用手法を選びます。例えば、「未経験者OKの大量採用では、登録者数が多い転職サイトを利用」「専門職・管理職など採用難易度が高い人材を求めるならスカウトサービスを利用」など。状況によって、複数の手法を組み合わせて採用活動を進めましょう。

ターゲット人材が興味を持ち、魅力を感じるような自社の情報を、継続的に発信・提供することが重要です。

フォロー計画を立てる

優秀な人材ほど転職先の選択肢が多いため、他社と比較して辞退されることもあります。入社意欲を高めてもらうため、「1次面接から逆質問などの時間を設ける」「役員クラス、あるいは一緒に働くメンバーとのカジュアル面談の場を設ける」など、応募者が懸念や不安を解消できるようなフォローを用意しておきましょう。

採用業務の効率化も重要

採用手法の多様化・複雑化により、採用活動の工数が増加し、進捗管理の手間が増えています。そこで、採用管理システムなどを活用し、効率化を図るのも一つの方法です。募集受付・応募者情報・選考状況などを一元管理することができれば、少人数でも採用活動を進めやすくなるほか、データを分析して課題をつかむことも可能になります。また、業務の一部をアウトソーシングするという方法もあります。採用において「難しい」「手間がかかる」と感じる部分を、ITツールや社外の専門サービスの活用で補うことを検討してみましょう。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。
この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。