
近年、採用手法が多様化し、さまざまな求人媒体や採用支援サービスとの相乗効果を高めるために、自社で採用ホームページ・採用サイトを設ける重要性が高まっています。採用ホームページ・採用サイトを設置するメリット、作る手順、コンテンツ例、効果的な活用法などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
採用ホームページ・採用サイトとは
採用ホームページ・採用サイトとは、人材採用を目的とし、求職者に向けて情報を提供する自社ホームページ・サイトです。企業の公式サイトとは別に作成・運営する企業も多く存在します。構築方法としては以下のような方法が挙げられます。
- HTML(Webプログラミング言語)で制作する
- CMS(コンテンツマネジメントシステム)を使って構築する
- ATS(採用管理システム)で制作する
- 採用サイト専用ツールを使用する
最近では、ATS(採用管理システム)を活用すると比較的容易に採用ページを作成できるため、人員やノウハウなどのリソースが不足している企業が活用するケースが多く見られます。
採用ホームページ・採用サイトのメリット
採用ホームページ・採用サイトを運用するメリットとして考えられる一例をご紹介します。
採用コストを削減できる
採用ホームページ・採用サイトに直接応募があり、採用に至った場合、求人媒体への広告出稿料や転職エージェントに支払う成功報酬などがかかりません。採用ホームページ・サイトを立ち上げる際の初期費用やランニングコストは発生するものの、長期的には採用コストを削減できる可能性があります。
自由な構成・デザインで作ることができる
求人媒体などに出稿する場合、その媒体が定める掲載項目・レイアウト・文字量などのルールに従って情報を発信することになります。その点、自社の採用ホームページ・採用サイトであれば自由な構成やボリューム、デザインで作成することができるため、情報を豊富に届けられ、自社の魅力がより伝わりやすくなるといえます。
例えば、社員インタビューを掲載したり、画像や動画で職場の雰囲気を伝えたりすることで、求職者は職場で働くイメージを描きやすくなるでしょう。
より多くの人にリーチできる
採用ホームページ・採用サイトのコンテンツを充実させると、検索エンジンで自社ホームページ・サイトが上位に表示される可能性が高まります。それにより、転職活動や求人検索を行っていない人々の目にも採用情報が認知される機会が生まれ、「転職潜在層」へもリーチできることがあります。
ミスマッチを減らすことができる
採用ホームページ・採用サイトでは、より豊富で具体的な情報を伝えられます。それを見て自社への理解を深めた上で応募した人であれば、入社後にミスマッチが起こりにくく、離職率の低下につながることが期待できます。
採用ホームページ・採用サイトの作り方
採用ホームページ・採用サイトを作る場合の、手順の一例をご紹介します。
1.前提条件を確認する
まずは、採用活動の全体像を整理しましょう。採用を行う背景・目的、採用ターゲット、採用に投じられる予算、採用活動のスケジュールなどについて、社内で協議し、前提となる条件を確認します。
2.ペルソナとコンセプトを明らかにする
採用ホームページ・採用サイトでは多様な情報を発信することが可能ですが、採用ターゲットによって、魅力を感じる情報は異なります。採用ターゲットが求める情報を重点的に発信することで、応募喚起につながりやすくなるでしょう。
そこで、採用ターゲットについては「求める人物像=ペルソナ」を明確化します。社会人経験やスキルだけでなく、「仕事に対する価値観」「働く上で大切にしていること」など、細かなパーソナリティまで設定すると良いでしょう。設定したペルソナに対して、自社のどのような特徴や魅力を訴求するか「コンセプト」を定めます。
3. 全体概要を決め概算見積を出す
「コンテンツの決定」→「サイトマップ(全体構成)」→「ワイヤーフレーム(コンテンツの配置図)」→「サイトデザイン」といった流れでサイトの全体概要を決め、かかる費用について概算見積を出します。自社内での対応が難しいと判断した場合は、制作会社に依頼して見積を出してもらいましょう。
4. 必要な素材を集める
採用ホームページ・採用サイト制作に必要な素材を収集、作成します。企業情報や採用情報を紹介する文章のほか、写真、動画、イラストなど「自社らしさ」を表現できる素材を揃えましょう。
なお、採用ポジションの職種や役職に就いている既存社員、あるいは採用ターゲットに近いバックグラウンドを持つキャリア入社社員などのインタビュー記事も、求職者の興味を引きやすいコンテンツの一つと考えられます。
5. 自社内、または制作会社に依頼する
自社内でWeb制作のスキル・ノウハウを持つ組織、あるいは制作会社に作成を依頼します。内製と外注を組み合わせて行う方法も考えられるため、どの部分を自社で行い、どの部分を外部に依頼するかを明確にしておきましょう。
一般的な採用ホームページ・採用サイトのコンテンツ
採用ホームページ・採用サイトで効果を得るためには、採用ターゲットに魅力を感じてもらえるコンテンツを充実させることが大切です。
リクルートが実施した「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」によると、企業側が充実した人的資本情報を開示することにより、「選考参加優先度が向上する」と回答した求職者は44.5%に上っています。なお、「エンゲージメント」や「育成方針」に関する情報提供をしている企業群は、そうでない企業群に比べ、採用がうまくいく傾向が表れています。
そこで、採用ホームページ・採用サイトに掲載するコンテンツとして、一般的なものをご紹介します。
出典:「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾(株式会社リクルート)
企業メッセージ
「経営理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」「パーパス」など、経営者が自らの言葉でメッセージを送ります。求職者がそれに共感し、企業と自身の価値観が一致していると感じれば、応募喚起につながる可能性があります。
企業概要
従業員数や拠点数など基本情報のほかに、事業内容、製品・サービスの特性や競合他社と比較しての優位性、組織体制などを紹介します。社歴が浅いスタートアップなどであれば、取引実績なども伝えると安心感を持たれやすいでしょう。
新規事業計画など、今後のビジョンも伝えると、チャレンジ意欲が高い求職者の興味を引きつけられるかもしれません。
求める人物像
「求める人物像」は、採用ポジションの業務遂行に必要な経験・知識・スキルだけでなく、採用背景を踏まえて「なぜその人材が必要なのか」「どのような役割や活躍を期待しているのか」も伝えるといいでしょう。
求める人物像と一致している既存社員のインタビュー記事を掲載し、活躍ぶりを紹介することで「求める人物像」が伝わる可能性もあります。
仕事紹介
採用職種・ポジションの仕事内容を具体的に紹介することで、読者は自身の活躍のイメージを描きやすくなります。これまでのプロジェクトの実績や、1日の仕事の流れなどを見せる方法もあります。
社員紹介
採用ターゲットと同じ職種・ポジションで活躍している社員へのインタビュー記事などを掲載します。インタビューを通じて伝える項目としては、次のようなものが挙げられます。
- 入社動機、入社決意の決め手となったもの
- 入社後に感じたこと
- 日々の業務内容、1日の流れ
- 仕事のやりがい、面白み、楽しさ
- 仕事を通じての成長
- 今後の目標、将来ビジョン など
職場環境
社員が快適に働ける工夫を凝らしたオフィス環境・福利厚生サービス・制度などがあれば、求職者の興味を引きやすくなります。
なお、昨今はリモートワークやフレックスタイム制など、多様な働き方が実施されています。これらの制度があれば、利用条件のほか、社員が制度を活用してどのような働き方をしているかを伝えるのも有効といえるでしょう。
また、社員同士のコミュニケーションの頻度や手段、ツールなども興味を持たれるポイントです。
募集要項
募集要項としては、「業務内容」「就業場所」「試用期間」「応募要件」「就業時間」「休日」「時間外労働」「賃金」「加入保険」「雇用形態」などの項目を明記します。
採用ホームページ・採用サイトの効果的な活用法
採用ホームページ・採用サイトを立ち上げたら、その効果を高めるために、次のように活用することをお勧めします。
アクセス解析を行い、ニーズを探る
採用ホームページ・採用サイトへのアクセス状況を分析しましょう。訪問者の遷移(サイト内でのページからページへの移動)やクリックなどの行動から、どのような情報が興味を持たれ、応募喚起につながっているかをつかめることもあります。
また、どのように自社サイトに辿り着いたか(検索・求人サイト・SNSなど)、流入元を分析すれば、さらに流入を増やす施策の検討材料となります。自社での解析が難しい場合は、制作会社などに依頼するといいでしょう。
スカウトやSNSなどと組み合わせる
採用ホームページ・採用サイトは、他の採用媒体と組み合わせて活用しましょう。スカウトサービスを利用してスカウトメールを送信する場合、自社採用ホームページ・採用サイトのURLも掲載し、より詳しい情報に誘導することで理解を深めてもらえます。
また、採用ホームページ・採用サイトの更新情報をSNSで随時発信し、求職者との接点を増やす方法もあります。
社外への説明資料として利用する
転職エージェントや採用代行サービス会社など、外部パートナーに採用活動の支援を受ける場合、自社を理解してもらうための資料としても採用ホームページ・採用サイトが役立ちます。
採用ホームページ・採用サイトの注意点
採用ホームページ・採用サイトを立ち上げる際、多様なコンテンツを一度に、新規で用意しようとすると大きな負荷がかかります。要件定義を行う際には、優先順位を決め、準備できる範囲からスタートしましょう。求職者の反応を見ながら、徐々に追加していくと良いでしょう。
また、「更新」を意識した運用体制を整えることも大切です。固定して掲載を続けるコンテンツ、メンテナンスや更新が必要なコンテンツを明確化して管理しましょう。
採用にはリクルートダイレクトスカウトの利用も有効
採用活動の手段の一つとして、「スカウトサービス」の活用も有効です。自社の採用ホームページ・採用サイト、あるいは求人媒体への広告出稿、転職エージェントへの依頼などは、いずれも応募者を「待つ」スタイルです。一方、スカウトサービスであれば、自社が求める人材に直接アプローチするという「攻め」の採用活動が可能となります。
リクルートダイレクトスカウトでは、システムマッチングにより採用要件にマッチする可能性の高い候補者をレコメンドするため、人材サーチの手間と時間を削減し、入社時の課金が発生するまで、無料での利用が可能です。
リクルートダイレクトスカウトを自社採用ホームページ・採用サイトと併用することで、求める人材の採用可能性が高まるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。