ミーティングの風景

人材を採用するときの方法は、大きく「中途採用」と「新卒採用」に分けられます。それぞれ採用までの期間や求職者の経験に大きな差があるため、企業が必要としているポジションに適した選択が必要です。そこで今回は、中途採用と新卒採用の違いや中途採用のメリット・デメリット、選考プロセスについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に伺いました。

中途採用とは

中途採用とは、就業経験のある人材を採用することです。大学卒業後1~3年程度の就業経験のある「第二新卒」から、キャリアを何十年も積んだエグゼクティブ層まで対象者が幅広いことが特徴です。

採用時期は決まっておらず、人員が不足したときや事業拡大などで人員を増やしたいときなど、企業が必要だと感じたときに募集をかけます。

新卒採用との違い

中途採用と新卒採用との違いを次の表に合わせてご紹介します。

中途採用新卒採用
目的人員補充
人員増強
新たなノウハウを取り入れる
将来の管理職候補の育成
組織の継続的な活性化
採用対象者社会人
(就業経験者)
卒業予定の学生
(卒業後5年以内の既卒者を含むこともある)
採用基準即戦力将来性
ポテンシャル
時期通年、不定期年1~2回、定期

目的

企業が中途採用を行う目的は、まず人員補充があげられます。社員が離職・退職するときなどに合わせて、ふさわしい人材を採用します。また事業や業績の拡大によって、人員を増強する目的で中途採用を行うこともあります。さらに、自社にないノウハウや知識を採り入れるために、新しい人材を採用することもあります。

一方、新卒採用の目的は将来の幹部候補生の育成、新たな人材や価値観・アイデアを採り入れることによる組織の活性化などがあげられます。

採用対象者

中途採用と新卒採用の対象者の大きな違いは、就業経験の有無です。

新卒採用の対象者は、基本的には卒業予定(見込み含む)の学生に限られます。企業によっては、卒業後数年以内の既卒者を対象にしているケースもあります。既卒の定義は明確に定まっておらず、3年以内を対象にする企業もあれば、5年以内を対象にする企業もありさまざまです。

一方、中途採用の対象者は、就業経験がある人材です。就業経験が少しでもある求職者は、若手でも中途採用として応募するのが通常です。

採用基準

中途採用は、基本的に「即戦力採用」として行われます。空いたポジションを補ってくれる人材や、企業が求める知見や経験、スキルを持つ人材などが対象になります。そのため「これまでどのような経験を積み、成果を残してきたか」という点が、選考では重視されます。

就業経験のない学生を対象とした新卒採用の場合は、人柄や将来性などのポテンシャルが採用のポイントになります。就業経験1~3年程度の人材を採用する「第二新卒」は中途採用として行われますが、実際は新卒採用同様にポテンシャルが重視されます。予算やスケジュールなどの面から、新卒採用を行うのが難しい企業が第二新卒を採り入れることがあります。

時期

中途採用は、ポジションが空いたり追加されたりしたときに募集するため、基本的に不定期での採用です。ただし、企業によっては通年で募集を出していることもあります。

一方で新卒採用は4月入社が基本となり、定期的な募集です。企業の広報活動開始日や選考開始日、内定日などが揃えられているため、どの企業も同じようなスケジュールで進んでいきます。

中途採用のメリット

続いて、中途採用を行うメリットを3つご紹介します。

短期間で人材を採用できる

中途採用は一般的に募集をかけてから2~3カ月で採用に至ります。
利用する求人媒体やターゲット像にもよりますが、数カ月で完了するケースがほとんどなため、早急に人材を確保できることは大きなメリットです。

また、新卒採用と違って不定期で採用を行っているため、人員が不足したらすぐに募集をかけることが可能です。

研修や教育に要する時間・コストを削減できる

新卒採用の場合は、入社後にビジネスマナーや業界・職種に関する知識をゼロから教えなくてはなりません。企業によっては、現場に配属する前に数カ月の研修期間を設けることもあり、実務に取り掛かるまでに時間やコストが発生するケースもあります。

一方中途採用の場合は、就業経験者が対象のため、ビジネスマナーの研修は必要がありません。また、即戦力として採用する場合は業界・職種の知識を身に付けていることが多いため、新卒採用ほど入社後の研修に時間とコストをかけなくても実務に取り掛かることが可能です。

自社にない新しいノウハウやスキルを持つ人材が採用できる

企業が新しい部署や事業を立ち上げたり、新しい制度を導入したりするときに、専門的な知識や経験を持った人材が社内にいないことがあります。このような際に中途採用を行うことで、求めるノウハウやスキルを持った人材を迎え入れることも可能です。

例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む昨今、専門スキルを持つ人材を求める企業が増えています。社内で育成するには時間がかかり、時代の流れに乗り遅れてしまうことが考えられるため、社外から優秀な人材を中途採用で確保しようとする動きが活発化しています。

中途採用のデメリット

中途採用にはメリットがある一方で、気をつけておきたい点もあります。

自社キャリアを積んだ後、転職する恐れがある

中途入社者が自社に入社した理由が「キャリアアップ」だった場合、自社でキャリアを積んだ後、再度転職してしまう可能性があります。入社前の選考段階で「自社で長く働いてくれそうか」といった点も確認しておくことが必要です。

また、入社後に定期的な面談を実施することも効果的です。「転職してきて不安なことはないか」「今後どのようなキャリアパスを自社で歩んでいきたいか」などを確認しつつ、コミュニケーションを取っていくようにしましょう。

慣れるまでに時間がかかる

中途入社者によっては、業務の進め方や社風などで前職とのギャップを感じてしまう可能性もあります。なかなか自社に馴染めず、成果を出すまで時間がかかってしまうこともあるでしょう。

選考段階である程度の相互理解はできますが、実際に入社してみないとわからないことも多々あります。そのため、入社後すぐに成果を求めるのではなく、長期的な目線で受け入れる意識を持つと良いでしょう。

また入社後のギャップを減らすために、面接担当に採用予定部署の担当者をアサインしたり、入社前にカジュアル面談の場を設けたりなど、中途入社者の不安を事前にできるだけ解消しておくことも一案です。

求人媒体を選定する必要がある

中途採用の場合、20代前半の若手人材から経験豊富なエグゼクティブ層まで、採用ターゲットの対象が幅広いため、募集をかける採用要件に合わせて、利用する求人媒体も選定しなくてはなりません。

新卒採用では、ある程度求人媒体の選択肢が限られており、自社サイトや就職サイトなどを利用するケースが大半ですが、中途採用の場合は選択肢が多岐に渡ります。求人媒体それぞれに特徴があるので、中途採用で採用したい人材像が決まったら、ターゲットに合う媒体を検討しましょう。

中途採用の選考プロセス

中途採用は基本的に次のような手順を踏んで進めていきます。

中途採用の選考プロセス

  1. 採用担当者を決める
  2. 採用計画を立てる
  3. 採用方法を決める
  4. 選考を実施する
  5. 合否判定を出す
  6. 入社手続きを行う

それぞれについて、詳しく説明いたします。

1.採用担当者を決める

まずは社内で採用担当者を決めましょう。業務内容を洗い出すとともに、採用に関する権限や責任の範囲の明確化、上司がサポートできる環境などを整えておくと採用活動が進めやすくなります。

2.採用計画を立てる

採用担当者が決まったら、社内で採用計画を立てていきます。主に決めておくとよい項目は次のとおりです。

・採用目標
・採用要件
・採用基準
・選考フロー
・求人媒体

採用目標

まずは、中途採用の目標を設定します。
目標設定の際は、「いつまでに」「どのような人材を」「どの部署に」「どのくらいの人数を」「どのくらいのコストで採用するのか」を明確にしておくといいでしょう。

採用要件

ターゲットとなる人材像をさらに具体的に考えます。「スキルフィット」と「カルチャーフィット」の両面で考えておくと、ミスマッチが起こりづらくなるのでおすすめです。

スキルフィットとは、求める経験やスキル、資格などの条件を指します。採用予定部署でどのような条件が必要なのか洗い出しておきましょう。このとき、必須条件と歓迎条件を明確にしておくこともポイントです。必須条件が多すぎると、応募がなかなか集まらなかったり、本当は自社の力になってくれる人材なのに書類選考で落ちてしまったりすることがあります。必要最低限のみを必須条件とし、そのほかは歓迎条件にするといいでしょう。

カルチャーフィットは、自社の文化、社風との適合性を指します。定着率や人材育成、他部署との連携などに関わる非常に大切な要素ですが、スキルフィットと比べると言語化が難しく、採用要件に落とし込みづらい点でもあります。また、面接担当者の主観に左右される部分でもあるので、面接を担当する社員全員で認識を揃えておく必要があります。

採用基準

採用基準は、面接の担当者によって選考に差が出ないようにすることを目的に設定します。
経験やスキル、資格、成果などの定量的な基準に加えて、上記のカルチャーフィットのような定性的な基準も明文化し、面接担当者全員が同じ基準で判断ができるように整えます。

選考フロー

書類選考や面接の回数・形式、筆記試験・適性検査の有無などを確認・設定します。
選考フローは採用基準とセットで考えることが重要です。選考で採用基準を確認するためには「どのような選考が必要か」「どのくらいの回数が必要か」「誰が担当するのが適切か」など、検討するといいでしょう。

3.ターゲットに合う採用手法を選択する

採用計画が定まったら、使用する求人媒体を選びます。
自社サイトだけで求人を募集するのか、外部の求人媒体を利用するのかなど、さまざまな手法の中から、採用計画で決めた予算や期間、採用要件などを含めて多角的な視点で検討します。

例えば、新しい部署の立ち上げのために営業経験者を大量に採用したい場合は、登録者数が多く、費用も比較的抑えられる転職サイトを利用すると効率的です。また、専門スキルとマネジメント経験の両方を兼ね備えたハイクラス人材を採用したい場合は、費用と時間は多少かかりますが、スカウトサービスを利用するのがおすすめです。複数の求人媒体を使い分け、同時に使用することも視野に入れて検討するといいでしょう。

4.選考を実施する

利用する求人媒体が決まったら、選考を開始します。
実際に選考を進めていく際は、丁寧に対応することも大切ですが、スピード感も意識しましょう。求職者の多くは他の企業の選考も受けています。先に他の企業から内定をもらうと、自社の選考を辞退されてしまう可能性もあります。そのため、選考通過判定が出たらすぐに次の選考の調整を行ったり、面接担当者の日程を事前に確保しておいたりなど、工夫をすることも大切です。

また、求職者の内定承諾前の場合は「質問にいつでも答えられるようにする」「面談の場を設けて希望条件のヒアリングを行う」「オフィス見学に来てもらう」など、求職者が懸念に思っていることを事前に解消できると、内定承諾だけでなく、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

6.入社手続きを行う

求職者の内定承諾後は、入社手続きへと進みます。
入社に必要な手続き、書類を用意することに加えて、ここでも求職者が不安なく入社まで進められるように、定期的にコミュニケーションを取るようにしましょう。特に管理職の場合は、引き継ぎや退職交渉に時間がかかるケースも多いです。必要があればサポートできるようにしておくといいでしょう。

ハイクラス人材の中途採用を考えている場合はスカウトサービスの利用も一案

スカウトサービスは、経営幹部や管理職、専門職人材などのハイクラス人材の採用に長けています。自社だけではなかなか採用に至るが難しいような人材も、スカウトサービスを利用することで入社の可能性が広がるケースも少なくありません。スカウトサービスを利用し、効率よく人材確保につなげてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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