ミーティングの風景

インターネットやSNSの普及などもあり、中途の採用手法も多様化が進んでいます。必要な人材を採用するには、採用手法のトレンドを把握した上で、自社にマッチした手法を選択する必要があります。本記事では、中途採用で用いられている主要な12種類の採用手法を粟野友樹氏が解説します。

主要な採用手法12種類のメリット・デメリット

中途採用を効果的に進めるために、採用の現場ではさまざまな手法が活用されています。ここでは、主な12種類の採用手法について、それぞれの特徴やメリットとデメリットを解説します。

人材紹介

自社が求める人物像やスキルを人材紹介会社に共有することで、求職者の中から適した人材を紹介してもらうという採用手法です。費用は採用実現時に採用したい人材の年収によって支払いが決まる成功報酬型の支払いが主流となっています。

求める要件に合う人材を紹介してもらえるのでミスマッチが減る、成功報酬型で採用実現まで費用が発生せず、コストを省ける、選考中に候補者の意向を把握しやすい、などのメリットが考えられます。一方で、採用者の年収によっては採用単価が高くなる可能性はあります。

ヘッドハンティング

ヘッドハンティング会社のネットワークやノウハウを活用し、特定の職種やスキルを持った人材をスカウトするという採用手法です。豊富な経験を持つ経営層や専門家といったハイクラスの人材を採用したい場合に使われるケースが多く見られます。

転職市場では希少な、高いスキルを持った人材をピンポイントで採用できる、転職潜在層からハイスキルな人材を探し出せるというメリットがあります。その一方で、成功報酬以外に着手金が発生する可能性がある点、要件に合う人材を探し出すのに時間がかかる可能性がある点は考慮しておく必要があるでしょう。

紹介予定派遣

直接雇用を前提に、人材派遣会社に登録している人材を自社へ派遣してもらう手法です。派遣期間(最長6カ月)満了時に派遣社員と企業の双方が合意すれば直接契約を結ぶことができます。雇用が最終目的のため、書類選考や面接も実施して選ぶことができる点も特徴です。
メリットは、即戦力となり得る人材を迅速に確保できる点です。また、業務や環境、社風とマッチするかどうかを派遣期間中に判断できることもメリットと言えるでしょう。
一方で、採用単価が高くなる可能性があるほか、派遣期間終了後に派遣社員から直接雇用を断られるケースも考えられます。

転職サイト

求人メディアに求人票を掲載し、人材を広く募集する採用手法です。主に幅広い業種・職種を掲載する「総合型」と、特定の職種や地域などにフォーカスした「特化型」があります。
料金形態は、掲載開始時に費用が発生する「掲載課金型」や求人がクリックされた時に費用が発生する「クリック課金型」と、応募や採用決定後に費用が発生する「成功報酬型」に分けられます。

短期間の準備で採用活動が始められることが多いため、欠員募集などの場合に即対応できる点が魅力と言えます。また、多くの求職者に求人情報を見てもらえる可能性もあるでしょう。
一方、知名度の高い企業に注目が集まり自社の求人票が埋もれてしまう可能性も考えられます。また、応募者とのやり取りを自社で行う必要があるため、採用担当者の工数が増えることも考慮する必要があります。

求人検索エンジン

求人情報専門の検索エンジンに求人票を掲載し、人材を募集する手法です。求人票はクローリング(WEBサイトを巡回し情報収集するプログラム)によって自動的に表示されますが、すぐに公開したい場合は直接投稿することも可能です。無料掲載できますが、有料プランを選択し検索画面の上位に求人票を表示させる方法もあります。

求人検索エンジンのメリットはまず、予算をコントロールしやすい点が挙げられるでしょう。詳細な条件設定をすれば、ミスマッチの低減も期待できます。
半面、転職サイトと同様、知名度の高い企業に注目が集まり自社の求人票が埋もれてしまうケースは考えられます。表示回数を増やすためには、定期的な更新作業など管理が必要であり、ある程度人手を割く必要もあります。

スカウトサービス

サービスの人材データベースに登録されているリストの中から、求めるスキルや経験を持つ人材を検索し、直接アプローチする採用手法です。
詳細な条件を設定することでミスマッチを低減しやすくなる点、求職者と直接コンタクトが取れるため、自社情報や採用に関する熱意を伝えやすい点がメリットとして挙げられます。

一方、求職者にとってスカウトメッセージが一般的になりつつある現在では、対象者の選定や文面の作成などに工夫が必要となっており、スカウト対応の工数がかかる傾向にあります。

自社サイト

自社のウェブサイト上に求人票を掲載し、人材を募集するという採用手法で、「オウンドメディアリクルーティング」とも呼ばれます。初期構築の際は作業や認知に時間がかかりますが、スタッフインタビューや今後の事業展開など求人以外の情報も自由に発信できる点が魅力です。社内で制作できる場合は、費用も抑えられるでしょう。

ただ、サイトの立ち上げや運用を自社で行う必要があるため、ある程度人員を割いて対応する必要があるでしょう。また、サイトの更新が滞ると「採用に積極的ではないのだろうか」などとマイナスイメージを与えることもあります。

ソーシャルリクルーティング

自社のSNSアカウントを活用して、応募者を募るという採用手法です。求めるターゲットが利用している可能性が高いSNSを選定し、投稿内容や更新頻度といった運用ルールを定めて情報を発信します。

SNSを通して幅広い人材にアプローチできるため比較的低コストであり、自社とマッチ度の高い人材をターゲットに情報発信ができるというメリットがあります。求職者に直接アプローチすることも可能で、双方の理解が深められる可能性があるでしょう。
一方で、社内で更新作業やDM対応を行う必要があるため、専門の人材を配置することが望ましいでしょう。また、自社のファン作りに時間がかかるため、短期間での採用には不向きかもしれません。

リファラル採用

自社で働いている社員やスタッフに、友人や知人などを紹介してもらうという採用手法です。企業理念や事業内容、職場の風土などをよく知る人間を介するため、ミスマッチの低減が期待できます。なお、協力してくれた社員やスタッフには一定のインセンティブを支給するケースが多いようです。

採用コストを抑えやすい点や、マッチング率が高い人材を採用しやすい点がメリットですが、紹介者と求職者との関係にフォローが必要になる場合があります。また、採用人数の予測が難しいため、短期間での採用や大量採用にはあまり向いていないかもしれません。

アルムナイ採用

一度離職・退職した元社員とコンタクトを取り、再雇用する採用手法です。退職後の社員と継続的な関係性を維持しておく必要があるほか、採用時には在籍時の勤務状況や退職の理由などを確認し、慎重に検討する必要があります。

採用・育成コストを抑えやすい点や、即戦力人材を確保できる点がアルムナイ採用の魅力。一度自社で活躍していた人材だけに、組織風土へもすぐになじめるでしょう。
半面、既存社員の安易な退職を促す可能性があることを考慮する必要はあるでしょう。また、自社の退職者に対して長期的にアプローチする手法であるため、短期間での採用には向いているとは言いにくいでしょう。

ミートアップ

社内見学イベントや、自社で働く社員と交流するイベントを開催し、求職者に自社への興味や入社意欲を持ってもらうという採用手法です。最近では対面のほかオンラインでの実施も増えてきています。

会社説明会よりもカジュアルな雰囲気で行われるため、求職者にとって参加のハードルが低いことが特徴です。自社開催のためコストを抑えやすい点や、潜在的な人材にアプローチしやすい点もメリットと言えるでしょう。
ただ、イベントの企画や事前準備には、相応の工数がかかるでしょう。また、自社に興味を持ってもらう段階からスタートするため、応募や採用決定に至るまで比較的時間がかかる傾向にあります。

転職イベント

合同説明会や転職フェア、会社説明会などのイベントを通して、求職者にアプローチする採用手法です。会場に各企業の採用担当者や社員が集まり、割り当てられたブース内で会社説明や面談などを行うケースが多いようです。
イベントの参加者に、対面で直接アピールできる点や、潜在的な人材に接触できる可能性がある点は大きなメリットと言えるでしょう。ただ、イベントの準備や当日の対応など、自社の担当者の負担が大きくなるという一面もあります。他社との差別化や、注目してもらうための工夫も必要になるでしょう。

中途採用手法におけるトレンド

人材獲得競争が続く中、どのような中途採用手法がトレンドになっているのか、詳しく紹介します。

複数の採用手法の併用

採用手法の多様化を受けて、ビジネスパーソンの転職方法も多様化しています。前述のように、どの採用手法にも一長一短があり、向いている採用ターゲットも異なることから、一つの採用手法だけに固執すると採用がなかなかうまく進まないケースも考えられます。
そのため、より多くの人材にリーチすべく、複数の採用手法を併用して母集団形成を目指す企業が多いようです。

個別対応の重要性アップ

現在の売り手市場を受け、企業と求職者の関係性が変化しつつあります。企業が一方的に求職者を選ぶのではなく、企業も選ばれる立場になっているため、求職者が求める情報を提供するなど、一人ひとりに合わせて対応するケースが増えているようです。

なお、株式会社リクルート(現・株式会社インディードリクルートパートナーズ)の「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」(※)によると、従業員エンゲージメント情報(48.0%)、育成方針の情報(45.3%)、給与に関する具体的な情報(69.3%)、従業員の会社評価情報(48.8%)などの開示により、約5~7割の求職者が、選考参加優先度が上がると回答しています。
したがって、求職者が求めるさまざまな人的資本情報を開示することが、採用活動に好影響を与えると考えられます。

※出典: 「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾 / 株式会社リクルート(現・株式会社インディードリクルートパートナーズ)(2024年)https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240910_work_02.pdf

カジュアル面談の増加

人材獲得競争の激化に伴い、少しでも多くの求職者と接点を持つため、従来とは異なる方法で求職者にアプローチしようとする企業が増えつつあります。
その中、応募前に気軽に自社を知ってもらう手段の一つとして、選考を伴わないカジュアル面談を実施する企業が増加傾向にあるようです。

カジュアル面談の増加は、スカウトサービスの広がりも影響しているとみられます。自社を認知していない求職者にもアプローチすることになるため、まずは自社理解を深めてもらうために、選考前にカジュアル面談を挟むケースがあるようです。

採用手法を選ぶ際の判断基準

中途採用の手法にはそれぞれに特徴があります。採用手法を選ぶ際の、4つの判断基準を紹介します。

自社の採用要件とのマッチ度

最も重要な判断基準は、自社の採用要件に合うか否かです。
選択した採用手法によって、必要な人材が採用できなければ意味がありません。まずは、必要な経験やスキルを持った人材にアプローチできる採用手法を選ぶことが大切です。

コスト

コストについては、主にサービス利用にかかる費用が着目点になります。
人材紹介やヘッドハンティングなどは、成功報酬が高コストになりやすい傾向にあります。一方、自社のリソースを活用するリファラル採用や、自社ホームページなどは、比較的コストを抑えやすいでしょう。

工数

工数については、自社の採用担当者にかかる負担に着目する必要があります。
求人サイトやソーシャルリクルーティングは、求人票や発信情報の作成を自社で行うため工数がかかるでしょう。一方、人材紹介やヘッドハンティングなどは、人材選定や選考の調整などを外部委託できるので、工数を削減しやすい傾向にあります。

時間

時間については、スケジュール通りに採用活動が終了できるかを考慮する必要があります。
外部の既存サービスを利用すれば時間を短縮できますが、自社サイトやソーシャルリクルーティング、リファラル採用などは、アプローチに時間がかかるだけでなく、転職潜在層の場合は選考に進むまでの時間が長くなる傾向にあります。

中途採用の採用手法を選定するときに気をつけたいこと

中途採用を行う際には、手法の選定だけではなく事前準備なども大切です。ここでは、実施する際に気を付けたほうが良いポイントを紹介します。

採用課題の把握を行う

自社の採用課題について、これまでの採用活動を踏まえて振り返ることが大切です。
採用活動の課題は、状況に応じてさまざまなものがあります。採用課題によって選ぶべき採用手法はもちろん選考試験の内容も変わるため、事前把握が欠かせません。例えば以下のような方法で、自社の課題を洗い出し、採用担当者同士で認識を合わせておくと良いでしょう。

<求人募集時の課題>
・そもそも求人に対しての応募者数が少ない
・自社が求める経験やスキルを備えた人材の応募が少ない
<選考の課題>
・選考でマッチ度の高い人材を見極められない
・内定を出しても自社に入社する人が少ない

複数の採用手法を並行して取り入れる

採用手法を複数取り入れ、並行して採用活動することも大切です。一つの採用手法だけ取り入れていると期待したほど応募者が集まらず、採用活動が長期化する恐れがあるためです。

自社の採用スケジュールと許容コストを見極めることに加えて、それぞれの採用手法のメリット・デメリットを理解した上で、複数組み合わせることも考慮しましょう。

定期的な振り返り・見直しを行う

採用手法を選んで実行したら、定期的に振り返り、採用活動を見直していきましょう。

採用手法はもちろん、採用活動を行うタイミングなど、さまざまな要因で応募者数に違いが出ることもあります。スケジュールに沿って採用活動を行いながらも、定期的に応募状況や選考試験の状況を振り返り、改善点があれば採用活動へ臨機応変に反映していきましょう。

【採用課題別】採用手法の選び方

抱えている採用課題別に、採用手法の選び方を紹介します。

母数が集まらない

なかなか応募が集まらず母集団が形成できないという場合は、転職顕在層を中心に広くアプローチできる採用手法を選びましょう。例えば求人広告、転職イベント、求人検索エンジンなどの手法が当てはまります。
知名度が低くライバル企業に競り負けてしまうという場合は、上記の手法に加えて、スカウトサービス、リファラル採用、ミートアップ、人材紹介など、自社が求める人材に確実にアプローチする手法も組み合わせると良いでしょう。

採用したい人材から応募が来ない

この場合は、採用したい人材に絞り適切にアプローチができているか、採用手法の見直しをメインに考えると良いでしょう。例えば、人材紹介、スカウトサービス、ヘッドハンティングなどは、人材要件を備えたターゲットにアプローチしやすい手法と言えるでしょう。
自社社員の紹介であるリファラル採用、退職した元社員にアプローチするアルムナイ採用も、採用したい人材にマッチしている可能性が高いでしょう。

すぐに採用したい

人手不足が深刻であり、一刻も早く採用したいという場合は、人材紹介や紹介予定派遣など、自社にマッチした人材を紹介してもらうことで早期採用につなげる方法が考えられます。スカウトサービスも、自社が求める人材に直接アピールできるので、自社の魅力が伝われば場合によっては早く採用できる可能性があります。もしくは、転職顕在層に広く、数多くアプローチが可能な転職イベントや転職サイトなども検討できるでしょう。

途中辞退や内定辞退を減らしたい

選考の途中や内定後に辞退されてしまうといった課題を抱えている場合は、選考前や選考過程で、自社の情報を十分に伝えることができる採用手法を選ぶと良いでしょう。例えば、人材紹介、リファラル採用、ヘッドハンティングは、人材紹介会社や自社社員などを通じて、あらかじめ自社の魅力や強みなどを伝えることができるでしょう。
ソーシャルリクルーティングやアルムナイ採用、自社サイトによっても、積極的な情報発信を行うなど自ら主体的に取り組めるため、発信内容に魅力を感じた入社意欲の高い応募者が集まる可能性がありそうです。

できるだけ多くの人員を採用したい

営業人員を大量採用したいなど、一度の採用活動で多くの人員を確保したいという場合は、転職顕在層をターゲットに、広くアプローチできる手法が効果的でしょう。
転職イベント、転職サイト、求人検索エンジンなどの採用手法を組み合わせれば、多くの人材と出会える可能性が高いでしょう。

コストをあまりかけられない

採用予算をあまり確保できないという場合は、比較的低コストで採用活動できる手法を選ぶと良いでしょう。例えば求人検索エンジン、ソーシャルリクルーティング、自社サイトのほか、社員の人脈を活用するリファラル採用、元社員のネットワークを活用するアルムナイ採用などの手法が挙げられます。
これまでの採用活動で成果が出せなかったため、初期費用を抑えたいというニーズがある場合は、初期費用がかからない人材紹介を活用するのも一案でしょう。

経営幹部やスペシャリストなどのハイクラス人材を採用したいが、採用予算に限度があるという場合は、ハイクラス人材にアプローチ可能なスカウトサービスを選んで、コストを抑えるという方法が考えられます。

コストや工数を抑えられるスカウトサービスも有効

中途採用にはさまざまな手法があり、それぞれにメリットとデメリットがありますが、自社が求める経験・スキルを持っているマッチ度の高そうな人材にアプローチすることが大切です。
スカウトサービスであれば、登録している求職者の職務経歴などをもとに、自社が必要とする人材に直接アプローチできるというメリットがあります。また、求人作成のサポートなども受けられるため、担当者の負担軽減も期待できるでしょう。

中途採用活動のノウハウを蓄積しながら効率的な中途採用活動を行うならば、スカウトサービスの「リクルートダイレクトスカウト」の利用をご検討ください。

この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。