昨今中途採用を検討する中で、企業の採用担当者から求職者へ直接アプローチする「スカウトメール」を取り入れる企業が増えています。しかし、文章作成に時間がかかったり、返信率の低さに悩んでいたりする採用担当者も少なくありません。書き方のポイントに加えて、スカウトメールが有効なケースなどについて、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏にお伺いしました。職種別のスカウトメールの例文もご紹介します。 

スカウトメールとは

「スカウトメール」とは、企業が求職者に対して自社への入社を検討してもらうために送るメールやメッセージのことを言います。

スカウトメールにはさまざまな種類があり、スカウトサービスなどの求人媒体の人材データベースの中から自社の採用要件に合った求職者に送るメールのほか、ビジネスSNSなどでメッセージを送ったり、求職者のメールアドレス宛に直接メールを送ったりする方法もあります。

売り手市場と言われる昨今、求人を掲載して応募を待つのではなく、企業から直接求職者にアプローチをするスカウトメールは「攻めの採用手法」と言われています。

今回の記事では、求人媒体を使って送る「スカウトメール」を中心にご紹介します。

スカウトメールの種類

求人媒体を使ってスカウトメールを送る場合、「個別送信型」と「グループ送信型」の2種類に大きくわかれます。それぞれの特徴についてご紹介します。

個別送信型 

個別送信型のスカウトメールの主な特徴は、求職者ごとに内容をカスタマイズして送ることです。

求人媒体のデータベースを使って、自社の採用要件に合った人材を検索し、リストアップします。求職者一人ひとりの経歴やスキルを細かく見て対象者を決めるため手間がかかりますが、より採用方針にマッチした求職者にアプローチできるという利点があります。

さらに個別送信型のメールは、対象者を絞って送るので、特別感を持たせた文面の作成が可能です。専門性の高い職種や募集人数に制限があるポジションの採用に適しています。

グループ送信型 

グループ送信型のスカウトメールは個別送信型とは異なり、複数の求職者に向けて送ります。求人媒体に登録しているすべての求職者に送ることもできますし、年代や職歴、資格などの一定の条件に当てはまる求職者に絞って送ることもできます。

グループ送信型は一度に複数の求職者に対してメールを送ることができるため、募集人数が多い場合や企業認知度を高めたい場合などに活用できるでしょう。

ただし、どうしても複数人に送ることを前提としてメールを作成するため、受信者にとっては個別送信型よりも特別感が薄れる傾向にあります。求職者が機械的に送られたと感じられないように、メールのタイトルや文面は気を付けなくてはいけません。

スカウトメールが有効な3つのケース

スカウトメールは、どのような場合に有効なのでしょうか。3つのケースについて解説します。 

1.専門性が高い職種の採用の場合

まずは、専門性が高く対象者が限られる場合です。 

専門性が高い職種は、求人を掲載して待っているだけではなかなか応募が来ない可能性があります。なぜなら対象者が少ないことに加えて、他の企業からもアプローチを受けていることが多いためです。そこで、より求職者の興味をひくようなスカウトメールを送ることで、応募につながる可能性を高められます。 

2.知名度が低い企業や職種の場合 

続いては、求職者にあまり知られていない企業や職種での採用を考えている場合です。

求職者が求人に応募する際、まずは知っている企業や職種に申し込む可能性が高く、自身の知らない企業や職種は応募が集まりにくい傾向にあります。

また近年の職種の多様化によって、求職者が今まで耳にしたことがない新しい職種の募集も増えています。しかし求職者にとっては、このような職種への応募もなかなかハードルも高いため、応募が少なくなることが考えられます。

このような企業や職種の募集をする場合も、スカウトメールは有効です。対象者に向けて自社や職種の魅力を伝えられるので、興味を持ってもらえる機会が増えるでしょう。

3.採用までの期間を短縮したい場合

そして最後は、採用までの期間を短縮したい場合です。 

退職者が出たり事業を拡大したりなど、急な人材確保を必要とするケースは少なくありません。このようなとき、求人を掲載して待つだけでは採用に時間がかかってしまいますが、スカウトメールを使って自社から求職者へのアプローチも加えることで、応募数増加の可能性が高まるとともに、採用までの期間も短縮できるでしょう。 

さらに、スカウトメールは採用方針にマッチした求職者の応募が見込めることも、期間を短縮できる要因の一つです。例えば、自社サイトで募集をかける場合、必ずしも自社の条件に当てはまる人材が応募してくれるとは限りません。その点スカウトメールであれば、自社で採用したい人材に対してだけアプローチできるので、採用への動き出しが早くなるでしょう。 

スカウトメールを作成する際の6つのポイント 

スカウトメールを作成する際はどのようなことに気を付けるといいのでしょうか。6つのポイントを紹介します。 

1.採用要件を明確にする 

まずは、自社の採用要件を明確に定めましょう。スカウトメールを送る際は、求人媒体のデータベース上で送信ターゲットの条件を細かく設定できるため、事前に採用要件を決めておく必要があります。 

さらに、スカウトメールの送付対象者の条件は、採用予定部門の担当者にも確認してもらうとより良いでしょう。採用担当者が想定しているメールの対象者が、採用予定部門で求めている人材と合っているかを事前に確認ができていると、その後の工程も齟齬なく進めることができます。 

2.効果的なタイトルをつける 

求職者にスカウトメールを読んでもらうためには、「本文を見たくなるようなタイトル」をつけることが大切です。転職活動中は毎日多くのメールが送られてくるため、当たり障りのないタイトルでは埋もれてしまう可能性があります。 

スカウトメールにタイトルをつける際は、他社とどのように差別化するか、求職者の興味をひくワードをどのように入れるかなど、メールの送信ターゲットごとに考える必要があります。 
例えば、働き方を訴求する場合は「副業可」「リモート可」などをタイトルに入れるのも一案です。また「IPO」「上場企業」など企業のステータスに関わるアピール、「年収」「役職」などの条件で伝える方法も考えられます。 

個別送信型の場合は、データベースに登録されている送付先それぞれの経験やスキルなどを読み込み、興味を持ってもらえるようなワードを見つけます。 

グループ送信型の場合は、送信ターゲットグループの共通点を明確にし、タイトルに盛り込むといいでしょう。 

3.熱意が伝わる文面を考える 

前項でタイトルについてお伝えしましたが、魅力的なタイトルをつけても内容が機械的では、求職者が「自分を欲してくれている訳ではない」と感じ、応募につながる可能性が低くなります。「あなただからこそ、スカウトメールを送りました」という気持ちが伝わる内容になるように心がけてください。 

具体的には、次のような内容を盛り込むとよいでしょう。 

  • 職歴や経験を見て、任せたいプロジェクトを提示する 
  • 実際の仕事内容を提示する 
  • 自社で現在取り込んでいることや将来的な計画などの「直接のアプローチだからこそ知れること」 

最近では、スカウトメールに採用資料を添付したり、採用動画を作成してメール内に入れたりする企業も増えています。文面だけでなく、視覚的にもオリジナリティを出すことで、より求職者の印象に残りやすくなるでしょう。 

またスカウトメールの内容も、採用予定部門の担当者にも確認してもらうことをお勧めします。募集ポジションの具体的な業務内容や労働環境などに齟齬がないかを見てもらうことはもちろん、専門用語の使い方などについてもアドバイスをもらうことができるでしょう。 

4. メールを読んだ後に、とって欲しい行動を明確に示す

メールの文面の最後には、求職者に「次にとって欲しい行動」を明確に示すことが大切です。 

せっかく求職者に興味を持ってもらっても、「次にどうしたらいいのか」がわからなければ、応募につながりません。メールに返信してほしいのか、電話をかけてほしいのかなど、スカウトメールの中に明記します。また、自社の定休日や応答できる時間に決まりがあるのであれば、それらも示しましょう。 

経営幹部などのハイクラス層の場合、転職そもそものハードルが一般社員よりも高いことが少なくありません。そのため、すぐに応募につながるような面接などのアクションを提示するのではなく、「まずは面談で話だけでも聞いていただけないでしょうか?」などと、求職者が気軽に受け入れられる訴求を入れるのも一案です。このとき、対面の面談では時間を作るのが難しい求職者もいるので、オンラインと対面と求職者の希望で選べるようにしておくと、更に次の行動へのハードルが下がるでしょう。 

5.伝えたいことは端的に伝える 

スカウトメールの文面は端的に伝えるように心がけてください。 

自社のアピールポイントをメールの中で伝えようとする場合、どうしても長文になってしまいがちです。しかし忙しい求職者に、長文のメールを読んでもらうのはなかなか難しいものです。特に近年では、求職者はスマートフォンでメールを読む機会が増えたので、スマートフォンでの可読性を考慮して分量を考える必要もあります。 

6.検証と振り返りを定期的に行う 

今後の採用活動に活かすために、スカウトメールについてのノウハウを溜めるのも重要です。 

例えば、同じ条件のターゲットに送るスカウトメールをタイトルや内容を変えて複数パターン用意し、一定期間のそれぞれの返信率を比較検討します。すると、「このワードを入れると返信率が高かった」「次のアクションを〇〇に設定すると返信率が下がった」など、傾向が見えてくるでしょう。そうすることで効率よく採用を進められるだけでなく、今後の採用計画にも役立てられはずです。 

また、求人媒体に登録したばかりの人、情報を更新したばかりの人、他の企業に応募中の人など、誰にスカウトメールを送ると返信率が高いかという検証も考えられます。 

さまざまな検証を行って、今後の採用活動が効率的に進められるよう意識しましょう。 

ターゲット別のスカウトメール例文 

ターゲット別のスカウトメールの例文を3パターン紹介します。 

1.管理職 

<タイトル>
【○○様】新規事業を担っていただく部長職を募集しております

〇〇様

はじめまして。株式会社〇〇で採用を担当している〇〇と申します。

〇〇様が50人規模の部署を管理されている経歴を拝見して、ご連絡いたしました。

弊社は〇〇領域ではまだ規模は小さいですが、ここ〇年は毎年成長率〇%を記録しており、右肩上がりに拡大を続けております。

弊社は現在、事業拡大によりIPOに向けた準備を進めております。
IPOにともない、社内でも核となる部署の部長職を募集中です。
ぜひ、部署内の予算や組織づくりなど、全体の裁量権を持ってお任せしたいと考えております。

〇〇様は50名規模の部署の管理をされていることに加え、
現職での事業立ち上げの経験をお持ちであるため、弊社の拡大に大きくお力となっていただけると感じました。

少しでもご興味を持っていただけましたら、オンラインでも可能ですのでカジュアル面談という形でお話をさせていただけないでしょうか。

ご返信、心よりお待ちしております。

どうぞ、ご検討の程よろしくお願いいたします。

=========
株式会社〇〇
人事部採用担当 〇〇
電話番号:XXX-XXXX-XXXX
メールアドレス:XXXX@xxx.xxx
※ご連絡は弊社の営業時間である平日9時~18時の間で対応させていただきます。
=========

<ポイント>

管理職の採用を考えている際は、「どのような部署なのか」「どのような業務を任せたいのか」などを具体的に伝えられるいいでしょう。また、求職者の経験やスキルを見て、「あなたを自社に迎え入れたいのです」という気持ちが伝わるような文面であることも大切です。

2.医療業界・研究職 

<タイトル>
【○○の研究職オファー】最新設備の環境で〇〇様のご経験を活かしてご活躍いただけませんか

〇〇様

はじめまして。株式会社〇〇で採用を担当している〇〇と申します。

〇〇のご経験をお持ちの〇〇様にぜひ弊社の研究職としてご活躍頂きたく、ご連絡いたしました。

弊社は業界でも最新の研究施設が整っており、
〇〇の分野において多数の特許を取得しております。
現場の意見を大切にする社風のため、必要な設備などの導入は積極的に行っております。

〇〇様が行っている〇〇に関する研究や知識は、
弊社が現在取り組んでいる〇〇という技術に活かしていただけるのではないかと考えております。

弊社はこの技術によって、医療業界に新たな道を切りひらく計画を立てています。

ぜひご興味がございましたら、このメールにご返信いただけますと幸いです。

○○様のご返信、心よりお待ちしております。

どうぞ、ご検討の程よろしくお願いいたします。

=========
株式会社〇〇
人事部採用担当 〇〇
電話番号:XXX-XXXX-XXXX
メールアドレス:XXXX@xxx.xxx
※ご連絡は弊社の営業時間である平日9時~18時の間で対応させていただきます。
=========

<ポイント>

研究職の場合、自社がどのような研究を行っているのか、研究施設はどの程度整っているのか、求職者の経験が自社のどのようなところに活かせるのか、といったことを伝えるといいでしょう。また、入社した場合に部署内にどのような技術を持つ上司やメンバーがいるかを伝えることも有効です。

3.海外向け営業職

<タイトル>
【○○様への特別オファー】〇〇業界で海外向け営業職募集/面談・面接の機会をいただけないでしょうか

〇〇様

はじめまして。株式会社〇〇で採用を担当している〇〇と申します。

〇〇のご経験をお持ちの〇〇様に、ぜひ弊社の海外向けの営業職としてご活躍いただきたく、ご連絡いたしました。

弊社は国内の競合と比べて多くの海外国と取引をしており、売上も○年で〇%と右肩上がりの業績を記録しています。

弊社は来年、海外事業拡大のために取引国を増やすプロジェクトを進行しています。〇〇様の実績とご経験を活かして、取引予定国に向けた営業をお任せできればと考えています。将来的には現地駐在の予定もあり、弊社の事業拡大に大きく貢献していただくポジションです。

採用予定部署の社員インタビュー動画のURLを添付させていただきます。

同部署で海外駐在を経験した社員のインタビューもございますので、よろしければ、ご覧ください。

URL:~~~~~~~~~~~

もし今回のご提案に少しでもご興味を持っていただけました、

お話だけでもさせていただけないでしょうか。

○○様のご返信、心よりお待ちしております。

どうぞ、ご検討の程よろしくお願いいたします。

=========
株式会社〇〇
人事部採用担当 〇〇
電話番号:XXX-XXXX-XXXX
メールアドレス:XXXX@xxx.xxx
※ご連絡は弊社の営業時間である平日9時~18時の間で対応させていただきます。
=========

<ポイント> 

求職者にとって、入社後のイメージが明確になることはとても大切です。任せたいプロジェクトだけでなく、今後のキャリアや一緒に働くことになる上司やメンバーのことを伝えるなど、求職者が自社に入社したらどのような働き方をするのかを具体的に示せるといいでしょう。 

スカウトメールを効果的に活用して求める人材の獲得が可能に 

スカウトメールは、慣れるまでは文面の作成に手間もかかりますが、企業から理想の人材にアプローチできる非常に有効な手法です。スカウトメールを求める人材獲得につなげましょう。 

この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏 

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。