内定通知書

採用選考の結果、採用を決定した応募者に対しては速やかに通知を行う必要があります。応募者に送る「内定通知書」とはどのようなものなのか、法的効力、送付のタイミングと方法、「採用通知書」「労働条件通知書」との違い、記載項目、作成・送付時の注意点などについて、社会保険労務士の岡佳伸氏の監修のもと、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。内定通知書の例文もご紹介します。

内定通知書とは?

「内定通知書」とは、企業が採用選考を行った結果、応募者に採用を内定した旨を通知する書類を指します。「当社に入社してほしい」という意思を伝える目的で発行されます。

法的効力はある?

「内定」とは、法律で明確に定義されているわけではありませんが、一般的には「始期付解約権留保付労働契約」と解釈されることが多いです。これは、労働契約の開始時期(始期)は決まっているものの、特定の事由があれば企業は労働契約を解約する権利を持っている(解約権留保)状態です。

企業が求職者からの応募に対して内定の通知を行うことで、雇用(労働)契約が成立すると判断される可能性もあり、正当な理由がないかぎり内定の取り消しは認められません。

つまり、内定通知書は法的効力を有する可能性を持つ書類ですが、法的に発行を義務付けられているわけではありません。発行するかどうかは企業の判断に委ねられます。

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内定通知書の送付タイミング

内定の決定から内定通知書を送付するまでの期間は、1週間前後以内が目安となります。とはいえ、内定の旨はなるべく早く内定者に伝えるのが望ましいでしょう。応募者は複数企業の選考を併行して受けている可能性が高く、先に内定が出た他社に入社を決めてしまうかもしれません。

内定通知書の送付時期の目安は、最終面接の段階で求職者や転職エージェントに伝えておくことをお勧めします。予定より遅れそうな場合は、事前に求職者・転職エージェントに伝えましょう。段取りをしっかりと行うことが、入社意欲の醸成につながる可能性があります。

内定通知書の送付方法

中途採用において、内定通知書の送付はメールなどに添付するのが一般的です。この場合、内定通知書をPDFファイルに変換して送付します。メールより時間がかかりますが、郵送する方法もあります。郵送の場合、先にメールや電話で内定を通知しておくといいでしょう。

また、オファー面談などで来社してもらう場合には、その場で内定通知書を手渡しするケースもあります。

採用通知書、労働条件通知書との違い

応募者を採用する過程で発行する書類には、「内定通知書」のほか、「採用通知書」「労働条件通知書」などがあります。これらとの違いは以下のとおりです。

採用通知書との違い

「採用通知書」とは、正式に採用を決定したことを知らせる書類です。「採用の意志を伝える」という目的においては、内定通知書と大きな違いはありません。ただし「内定」という言葉を使用していない点で、企業によっては「内々定」の意味合いで使い、別途本人の入社承諾を持って正式に「内定」とする企業もあります。
企業によって、採用通知書を発行するかどうかの対応は異なります。「採用内定通知書」という形で、採用通知と内定通知を一つの書類で発行するケースもあります。

労働条件通知書との違い

労働契約を結ぶ際には、労働条件を明示することが法律で義務付けられています。労働条件を記載した文書が「労働条件通知書(または雇用契約書)」であり、内定通知書と同時に送付するケースが多く見られます。
前述のとおり、内定通知書を送付するかどうかは企業の任意ですが、労働契約締結時に労働条件を書面で通知することが法的に義務付けられています。

内定通知書テンプレート見本【ダウンロード可】

下記に内定通知書のテンプレート見本をご紹介します。ダウンロードして活用いただくことが可能です。

画像_内定通知書テンプレート例

内定通知書に記載する項目

内定通知書の作成にあたり、書式や記載項目などは特に定められていません。
しかしながら、以下の項目については盛り込むことが望ましいでしょう。

日付

右上に、内定通知書を作成した年月日を記します。

応募者の氏名

内定を通知する応募者の名前はフルネームで記載します。

企業名、代表取締役名

企業名はもちろん、代表者の役職・氏名を記載します。「代表取締役」以外に、人事部長などの氏名を記載するケースもあります。

自社に応募してくれたことへのお礼

自社を選んで応募してくれたことに対する感謝の気持ちを伝えるため、お礼の言葉を添えるといいでしょう。

採用内定の通知文章

内定が決まった旨を簡潔かつ明確な文章で伝えます。加えて「歓迎」「期待」のメッセージを添えることで、入社に対して前向きな気持ちになってもらえるかもしれません。

入社日

自社が入社してほしいと想定している年月日を明記します。

送付書類について

内定通知書のほかに添付(郵送・手渡しの場合、同封)している書類があれば、その内容を箇条書きで記載します。

返送書類について

入社手続きのために返送してもらう書類がある場合、書類の内容を箇条書きで記載し、返送の期限を明記します。郵送・手渡しの場合は、返信用封筒を同封しておき、「返信用封筒にてご返送ください」といった旨を記載します。

担当者名・連絡先

疑問点が生じた場合の問い合わせ先として、担当者名と連絡先を記載します。

内定通知書と一緒に送付する書類

内定通知書と同時に送る書類としては、一般的に以下のようなものがあります。自社の規定に基づいて作成し、メールの場合はファイルを添付、郵送・手渡しの場合は同封しましょう。

内定承諾書

応募者が内定を承諾して入社意思を決定した場合、「内定承諾書」に署名・捺印して返送することになります。そのため、内定通知書を送付する際に内定承諾書も同時に添付(同封)し、内定通知書内に返送期限を明記しておくといいでしょう。

労働条件通知書

労働契約の期間・始業及び終業の時刻・賃金など、明示を義務付けられている労働条件の項目を記載し、送付します。応募者は労働条件を確認した上で、入社するかどうかの最終判断を下すことになります。

前述の通り、労働条件を書面で通知することは法律で義務付けられているので、内定を出す際は必ず応募者に渡すようにしましょう。 2024年4月より労働条件通知書などによる労働条件明示のルールが変わり、「就業場所・業務の変更の範囲の明示」、及び「有期労働契約を更新する場合の基準」が新しく付け加えられました。詳しくは厚生労働省の公式サイトを確認するようにしましょう。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html)
参考:厚生労働省のホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html)

【郵送の場合】送付状(添え状)

内定通知書を郵送する場合は、送付状(添え状)を同封するのが一般的です。

【郵送の場合】返信用封筒

内定承諾書を同封して郵送し、署名・捺印して郵送での返送を求める場合は、返信用封筒に宛先を記入して切手を貼った上で同封しておくことも一案です。内定者が負荷を感じず、返送しやすくなると考えられます。

内定通知書を作成・送付する際の注意点

内定通知書を作成・送付する際、注意しておきたいポイントをお伝えします。

会社印を押印するケースもある

内定通知書を作成したら、企業が発行する正式な書類であることを証明するため、会社印を押印するケースも見られます。

受け取りを確認できる手段で送る方法も

内定通知書の送付後、応募者からなかなか返信がないと、届いているのかどうか不安になるものです。しばらく待った後に内定辞退となれば、採用活動をやり直さなければならず、時間のロスが生じます。

応募者が確実に内定通知書を受け取ったかどうかを確認できるよう、「簡易書留」「レターパック」など、配達状況を確認できる手段で送るのも一つの手です。 ただし、転職活動をしていることを家族に伝えていない応募者も少なくありません。「転職意思を固めるまで、家族に知られたくない」といった事情を抱えている人もいます。そうした事情に配慮し、本人しか開封できないよう、封筒に「親展」と記載しておくといいでしょう。

メールやチャットの場合、送付先の誤りに注意

内定通知書をメールやチャットで送付する場合、郵送に比べて手軽な一方で、送り先の間違いが発生する可能性もあります。もし、内定者本人以外に誤って送付した場合、個人情報の漏洩となります。内定通知書と同時に労働条件通知書を送付していると、内定者の年収・役職などまで外部に漏れることになってしまいます。

また、まだ選考中の他の応募者が受け取った場合、混乱を招くだけでなく、情報管理・リスク管理体制に不信感を抱かれかねません。採用ブランディングの面でも大きなマイナスとなるので、くれぐれも注意しましょう。

トラブルを防ぐためにも正確な記載を

内定通知書および同封する労働条件通知書などの書類は、法的効力を持つ可能性があり、法的に義務付けられたものであるだけに、記載内容に不備があれば後のトラブルにつながることもあります。正確に記載し、作成後には入念にチェックした上で送付しましょう。

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この記事の監修者

岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。