採用 意味

企業における「採用」とはどのような意味を持つのでしょうか。採用の目的課題、各種採用手法の特徴について、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に解説いただきました。 

企業における採用とは? 

企業の「4大経営資源」は「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われますが、特に「ヒト」を重要な資源と捉える傾向が強くなってきました。近年、「人的資本経営」という言葉が注目されるようになっています。これまでの企業価値の判断指標といえば「財務」「事業戦略」などでしたが、「人材」が企業価値の判断材料とされるようになっているのです。 

既存社員の能力開発も重要ですが、次世代の企業運営を担う人材、これまで自社にいなかった人材を獲得するために「採用」が行われます。人材採用の種類は大きく「新卒採用」と「中途採用」に分かれます。

新卒採用  

「新卒採用」は「学生」を対象とする採用を指します。卒業してすぐに入社することを想定し、卒業予定の学生(一部就職浪人生も含む)を対象に募集を行い、企業説明会や選考を進め、卒業してすぐに入社するのが一般的です。将来、企業を運営する「コア人材」を若手のうちから育成する目的で行われます。 

中途採用  

「中途採用」は、他社で就業経験がある人材を対象とする採用を指します。場合によっては就業経験がない人材を採用することもあります。中途採用は、企業の規模・成長段階・組織課題などによって採用手法や目的が異なります。主な目的としては、退職や異動によって人員が足りなくなったときの「欠員補充」、事業拡大に際しての「増員」のほか、新規事業立ち上げや組織変革などに伴う「自社にないスキル・ノウハウの導入」があります。 

中途採用を行う企業が抱える悩み 

厚生労働省が発表している調査データ(※1)によると、企業が転職者を採用する際の問題点は、全ての企業規模において「必要な職種に応募してくる人が少ない」こと(3割超が回答)。また、「応募者の能力評価に関する客観的な基準がない」「採用時の賃金水準や処遇の決め方」と答えた企業の割合も高くなっています。 
特に規模が小さい事業所では「採用時の賃金水準や処遇の決め方」について課題を抱えることが多いようです。 

(※1)令和4年版 労働経済の分析「第2-(4)-21図 転職者を採用する際の問題点(企業規模別)」 

企業が行う採用活動の手法 

採用活動には、さまざまな手法があります。メリット・デメリットを理解し、自社の採用方針や求める人材像に応じて適切な手法を選ぶことが大切です。 

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、国が運営する雇用サービス機関。大きなメリットは、無料で求人を公開できる点にあります。各都道府県に設置されており、全国での採用が可能。ただし、求人情報の作成・入力は全て自社で行う必要があります。 

自社ホームページ/SNS 

自社ホームページ内に「採用ページ」を設け、求人を公開します。求人メディアなどは、掲載できるボリュームや内容に制限があるのに対し、自社ホームページなら自由に情報を発信できるメリットがあります。求人メディアのような出稿コストもかかりません。ただし、知名度が低い企業の場合、転職希望者に「見つけてもらう」ことが難しく、応募者が集まらない可能性があります。 

なお、近年は自社の採用ページとSNSを連動させ、アクセスを増やす仕掛けをして成功している企業も見られます。 

求人誌 

求人誌に自社の求人を掲載して採用活動を行う方法です。近年、紙媒体の求人メディアは地域限定のものが中心。地元の人材を採用しやすいというメリットがありますが、インターネットでの求人検索が一般的になっているため、求職者の目に留まりにくい可能性があります。 

転職サイト 

 転職サイトとは、求人を掲載できる無料・有料のインターネットサービスです。幅広い業種・職種の求人を掲載する「総合型転職サイト」と、「医療」「IT」「外資系」など、特定の業界や領域に特化した求人を取り扱う「特化型転職サイト」があります。 

転職を検討している多くの人の目に触れるため、応募者の「母集団形成」がしやすいメリットがあります。複数人~大量採用を行う場合は1人あたりの採用コストが抑えることができますが、1~2名を採用する場合はコストが高くなります。 

人材紹介(転職エージェント) 

厚生労働大臣の認可をうけて職業紹介を行っている人材紹介会社に、自社が求める人材要件を伝え、マッチする人材を紹介してもらう方法です。「転職エージェント」とも呼ばれています。 

転職エージェントを活用するメリットは、自社の求める要件にマッチしているかどうかを、転職エージェントサイドである程度見極めてもらえる点。一次スクリーニングの手間を大きく省けます。また、競合他社などに自社の動きを知られたくない場合、「非公開求人」として募集を行うことができます。 

多くの転職エージェントは「成功報酬型」をとっており、採用が決まるまでサービス利用料はかかりません。ただし、採用に至った場合は紹介した人材の年収の一定割合が成功報酬となるため、コストが高くなる傾向にあります。 

スカウトサービス 

企業自らが、ほしい人材に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」の手法の一つです。 

スカウトサービスに登録されている人材のデータベースの中から、企業が自社に合う人材を探してアプローチします。 

サービスの運営元から、求める人材の条件設定や求人の作成などのサポートを受けられることもあり、採用活動のノウハウを蓄積できます。 

ただし、スカウトサービスの場合は自社からのアプローチに対し、登録者が興味を持ってくれるとは限りません。そのため、興味を持たれるようなメール文面を作成するなど、応募を喚起するための工夫が必要です。 

ヘッドハンティング 

「ヘッドハンター」に自社が求める人材像を伝え、マッチする人材にアプローチしてもらう手法です。経営幹部や高度な専門人材など、主にハイクラス層向けの採用で使われます。 
ヘッドハンターは独自の情報ルートを持っており、人材を発見する力に長けていますが、人材サーチや対象者との交渉に時間がかかることもあります。成功報酬に加えて「着手金」が必要となり、コストがかさむケースもあります。 

ソーシャルリクルーティング 

SNSで自社の魅力を発信して応募者を集める手法。ダイレクトリクルーティングの一つに分類されます。幅広い人材にアプローチでき、自社とマッチ度の高い人材をターゲットとした情報発信ができるというメリットがあります。低コストで優良人材の採用を実現できる可能性もあります。 
一方、SNSを使っていない人材へのアプローチが難しく、情報発信力はもちろん継続的な投稿が必要です。 

説明会 

会社説明会を開催したり、合同説明会や転職フェアなどのイベントに出展したりして、来場者にプレゼンテーションを行います。参加者への直接アプローチが可能ですが、イベントの準備や当日の対応など、自社の担当者の負担が大きくなるという一面もあります。 

リファラル採用 

 ダイレクトリクルーティングの一つ。自社社員に自身の友人・知人に声をかけてもらい、自社への応募を促す手法です。社員が「自社にマッチしている」と思う人を選ぶこと、対象者が友人から会社の話を聞いて理解して応募することから、入社後にミスマッチが生じにくいといえます。 
ただし、大量採用は難しく、自社に興味を持ってもらうためのアプローチが必要になるため、採用に時間がかかることが多いでしょう。 

ミートアップ

 自社に中途入社希望者を招待し、社内見学や職場の社員との交流を通して転職意欲を高めてもらう採用手法です。 
自社を見学してもらうことで、興味を持ってもらいやすいのがメリットですが、イベントとしての意味合いが強く、必ずしも応募につながるとは限りません。 

アルムナイ採用 

自社から「卒業した人(アルムナイ)」を再度雇用する方法です。過去に自社で働いていた経験があるため、「即戦力」となることが期待できます。ただし、退職理由によっては再雇用することがそもそも難しいことに加え、アルムナイと継続的な関係性を構築しておくことや退職した社員が好条件で再雇用されることで在籍社員のモチベーションに影響をしかねないため、制度の周知や在籍社員のフォローなど、さまざまな手間がかかるというデメリットもあります。 

中途採用に困ったら、パートナー企業のサポートを受けるのも1つの方法 

中途採用を始めたばかりの企業の場合、まだまだノウハウが少なく、自社単独で採用目標を達成することが難しいかもしれません。近年は採用支援サービスが多様化しています。転職エージェントをはじめ、採用コンサルティング企業、採用代行(RPO)企業、ATS(Applicant Tracking System/採用管理システム)を提供する企業などが挙げられます。自社の採用課題を分析し、適切な手法をアドバイスしてくれる企業をパートナーに選ぶといいでしょう。 

なお、リクルートダイレクトスカウトは「ダイレクトリクルーティング」を支援するサービスです。ハイクラス層の人材採用にも適しているので、活用してみてはいかがでしょうか。 

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。
この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。