求人 キャッチコピー

求める人材に的確にアプローチするために、転職サイトや自社の採用ページなどに「求人」を載せて、求職者からの応募を集めることが一般的です。求人を作る際に重要となるのが、自社の魅力や募集している仕事内容などを端的にまとめた「キャッチコピー」です。そこで、求人のキャッチコピーの作り方、注意するポイントなどについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に解説していただきました。

求人のキャッチコピーはなぜ必要?

販売戦略を考える際には、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の頭文字をとった「3C」の分析が重要だと言われます。それと同様に、求職者に対して自社を売り込む場合、「求職者(採用ターゲット)」「採用競合」「自社の特性」を整理して魅力を抽出する必要があります。

転職サイトなどに求人広告を出稿する場合、多数の求人情報が並ぶ中で、求職者の目に留まる必要があります。そこで、抽出した魅力を分かりやすく言語化したものが、「求人のキャッチコピー」です。キャッチコピーは、求職者の興味を引き、詳細な求人情報の閲覧へ誘導することを目的としています。そのため、自社独自の特性や魅力が伝わるフレーズを打ち出すことが重要です。

求人キャッチコピーの作り方

効果的なキャッチコピーを作るためには、どのような手順で進めるといいかをお伝えします。

1.ターゲットを設定する

まずは、採用の背景・目的を整理します。例えば、「欠員補充」「事業拡大に伴う増員」「マネジメント力強化のための幹部候補採用」「新規事業に向けての異業種人材の獲得」などが挙げられるでしょう。そして、自社が求めているターゲット人材の「ペルソナ」を明確にします。

経験・スキルだけでなく、「どのような志向・価値観を持っているか」「どのようなことにやりがいや喜びを感じるか」「どのようなスタンスで仕事や一緒に働く人に向き合っているか」など、人物像を具体的にイメージします。そうすることで、打ち出すメッセージの方向性が決まり、「このキャッチコピーはターゲット人材に響くかどうか」の判断がしやすくなるでしょう。

2.自社の制度や条件などを整理する

上記で設定したターゲット像に対して、訴求できる情報をピックアップし、整理します。
例えば、上昇志向が強いペルソナを設定した場合、「昇進スピード」「年収の上り幅・実例」「キャリアパスの多様性」「副業」などに関するワードの打ち出しが有効でしょう。また、ワークライフバランスを重視するペルソナであれば、「リモートワーク」「フレックスタイム制」「育児支援」「○○休暇取得実績あり(もしくは多数)」などの情報が有効です。

そのほかにも、アピール素材となり得る項目の一例を挙げておきます。

  • 会社や事業の成長率
  • 商品やサービスのシェア
  • 顧客ラインナップの魅力
  • 役員直下の裁量権
  • プロダクトの先進性
  • 一緒に働く上司や同僚の経歴
  • サテライトオフィス
  • ワーケーション
  • オフィス内の福利厚生(ランチ・ドリンク無料、マッサージルーム、昼寝ルームなど)
  • 部活動
  • 資格取得支援
  • PC周りのチョイスOK
  • 入社時の有給付与
  • 予防接種負担、各種手当

3.競合他社の求人を分析する

自社のアピール素材を抽出したら、事業競合・採用競合にあたる他社が出している求人と比較してみましょう。自社の強みと認識していたことが、他社と比べると弱く感じられることもあります。他社のアピール手法から、新たな気づきを得られるかもしれません。参考にしつつ、自社が打ち出すべきポイントを検討しましょう。

4.1~3の情報をもとに、キャッチコピーを作成する

出稿する転職サイトのフォーマットに従い、規定の文字数内に収まるよう、キャッチコピーを作成します。複数のパターンを作成してみて、社内のさまざまな人に見せ、感想・意見をもらうといいでしょう。
特に採用職種のメンバーに見てもらえば、その職種にとって魅力を感じるフレーズかどうかのアドバイスを受けられます。

ペルソナの設定に迷ったら?

ターゲットの興味を引くキャッチコピーを作成するには、やはり「ペルソナの設定」が重要です。しかし、このフェーズで悩み、立ち止まってしまうことも多いものです。迷ったときは、次の方法を試してみてください。

理想の人材像を追い求めすぎない

求める要件が多くなりすぎると、ペルソナのつかみどころがわからなくなり、どのようなキャッチコピーが響くのかを特定しづらくなります。そもそも理想が高すぎると、求人市場にほとんど存在せず、応募が来ないことも考えられます。要件は、「Must(必須)」と「Want(あれば尚可)」の2つに分けて整理しましょう。

これまでの応募者の共通点を探る

これまで応募してきた人の性格・志向タイプ、あるいは面接で語った「志望動機」などを振り返ってみてください。自社に魅力を感じるのはどのような人物なのか、共通するポイントが見えてくると思います。

活躍している人材をお手本にする

「このような人材に来てほしい」「こんなふうに活躍してほしい」など、モデルとなる人材が社内にいる場合、その人にヒアリングを行うのも一つの手です。その人が自社のどのポイントに魅力を感じているのか、どのようなことでモチベーションが上がるのかを探ってみてください。

求人キャッチコピー作成の注意点

ターゲット人材に刺さるキャッチコピーに仕上げるには、次のようなポイントに注意しましょう。

情報を詰め込みすぎない

アピールしたいポイントが複数ある場合、それをすべて盛り込んでしまうと一つひとつがぼやけてしまい、読み手にインパクトを与えられなくなってしまいます。あれもこれも詰め込まず、ポイントを絞って訴求することをお勧めします。

ターゲットに寄り添う

経営陣や現場の採用責任者などから、「ぜひ、このフレーズを打ち出してほしい」と強く要望されるのはよくあることです。例えば「ダイバーシティを推進」「IPOを目指す」「国内初の○○」など。
しかし、それがターゲット人材の興味の対象から外れていたのでは、効果を発揮しません。自社内のニーズももちろん大切ですが、ターゲット人材のニーズに応えられないと応募につながらないかもしれません。「なぜこのキャッチコピーを使うのか」を、ペルソナをもとに経営陣や現場の採用担当者に説明できるようにしておくといいでしょう。

数字などを使って具体的に表現する

抽象的な表現は、目に留まりにくいものです。目を引くには、数字を使うなど、具体的な表現を心がけてください。数字を見せる一例を挙げると、「平均年収○万円」「○年で○万円の昇給実績あり」「副業率○%」「育休からの復職率○%」「従業員満足度○%」などが挙げられます。

「○月に立ち上げた新規部署で、○人の営業メンバーを束ねるリーダー候補」といったように、具体性を持たせることで、働くイメージが湧きやすくなります。

分かりやすい言葉を選ぶ

トレンドワードであるとしても、ターゲット人材に伝わらない言葉を使うのは控えましょう。特に未経験者も対象とする場合、業界用語や専門用語は使わないようにしてください。
ただし、経験者をターゲットとする場合、あえて業界用語を使うことで業務内容をすぐに理解できるケースもあります。要は、ターゲット層が見てピンとくる言葉を選ぶことが大切です。

職種別・キャッチコピーの例文

「営業」「エンジニア」「管理職」を採用したい場合の、キャッチコピーの例文をご紹介します。

コンサルティング営業を募集する場合

<想定するペルソナ>

成長志向が強い。大手ITコンサルティングファームやSIerなどで働いており、自社プロダクトを扱ってみたいと考えている。スタートアップにも興味はあるが、経験がないので不安も感じている。

<キャッチコピー例>

【CSO直下のソリューションセールス】売上成長率○%の○○Techスタートアップ/大手○社以上に導入の自社プロダクト『○○』/IPO準備中(累計○億円調達済み)

エンジニアを募集する場合

<想定するペルソナ>

上流工程を担当したい。キャリア構築とワークライフバランスを両立したい。現在は2次請け3次請け企業に所属。

<キャッチコピー例>

【PL候補】プライム案件比率○%で残業○時間(業界平均○時間)/○○市場上場企業/コンサル・上流工程~全行程を担当可能でキャリアアップできる/離職率○%、従業員満足度○%(20XX年)

管理職(人事部門)を募集する場合

<想定するペルソナ>

上場企業に勤務中。より上位の管理職としての経験スキルを得て、市場価値を高めたいと考えている。

<キャッチコピー例>

【CHRO候補募集】経営戦略×人事戦略をグループ企業全体に実装/変革期の戦略人事を推進する経営補佐ポジション/人的資本経営(ISO30131認証取得に向け準備中)

採用のPDCAを回していこう

最初からベストなキャッチコピーを作り、効果を出すのは難しいものです。複数のキャッチコピーを作る→複数の媒体に載せてみる→求職者の反応を検証する→別のキャッチコピーを試す、というようにPDCAを回して精度を高めていきましょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。