RJPとは

採用活動において、早期離職を防ぎ採用した人材が長く活躍するために、「入社後のミスマッチ」を防ぐことが大きな課題となっています。ミスマッチの防止に効果があるとして注目されているのが「RJP」の理論です。そこで、RJPの特徴、効果、導入ポイント、マッチする採用手法などについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します 

RJPとは?

RJPとは「Realistic Job Preview」の略であり、直訳は「現実的な仕事情報の事前開示」。アメリカの産業心理学者、ジョン・ワナウスが提唱した採用理論です。これは、求職者に対して仕事や組織に関するポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報もありのままに開示し、納得して応募した人を選考・採用するという考え方です。入社後のミスマッチ防止、定着率の向上の効果があるとされています。 

離職理由のトップは「仕事内容が合わない」が5割

株式会社リクルートが調査・発表した「就職白書2022(※1)」では、直近3年以内に離職した新卒入社者の離職理由を取り上げています。離職理由は「仕事とのミスマッチ」「組織とのミスマッチ」に大別されますが、「仕事とのミスマッチ」の区分では「仕事が合わない」が約5割(48.4%)を占めていることが明らかになりました。 

■直近3年以内に離職した新卒入社者の離職理由(P.11)

 直近3年以内に離職した新卒入社者の離職理由のグラフ

出典(※1):『就職白書2022

なお、新卒入社だけでなく、20~65歳の就業者を対象に行った株式会社リクルートの「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022(※2)」でも、退職理由の上位に「仕事内容への不満(29.7%)」が挙げられています。これらの調査から、事前の情報開示が不十分であるがゆえに、入社後にミスマッチが生じている可能性が考えられます。 

■退職理由の上位10項目(P.9)

(転職前・現在「正社員・正職員」の20~50代転職経験者/複数回答)
全体を降順にソートし、上位10項目を表示

退職理由の上位10項目のグラフ
退職理由の上位10項目のグラフ

出典(※2):『就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022

RJPの4つの効果

RJP理論を採用に導入した場合、期待される効果として以下の4つが挙げられています。 

セルフスクリーニング効果 

求職者は企業から事前にリアルな情報開示を受けることで、自身がその企業にマッチしているかを判断し、応募するかどうかの意思決定ができます。「自身で判断して選んだ」という意識を持てるため、入社後も納得して働くことができ、定着につながります。 

ワクチン効果 

求職者はネガティブな情報も含めたリアルな情報を事前に知っておくと、過剰な理想や期待を抱きません。結果、入社後に「理想」と「現実」のギャップを感じにくく、ネガティブな現実に直面したときのショックを軽減できます。 

コミットメント効果 

企業側がありのままの情報を開示してくれると、求職者は「誠実に向き合ってくれる会社」と、好印象を抱きます。企業に帰属意識や愛着が生まれれば「この会社で頑張っていこう」という意識が高まります。 

入社後の役割自覚効果 

企業側が求職者に「入社後に期待する役割」を明確に伝えることで、「その期待に応えたい」という意欲が高まり、入社後に活躍できる可能性が高まります。 

RJP導入の際に意識したいポイント 

RJPを実際に導入するにあたり、意識したいポイントをお伝えします。 

ターゲットを明らかにする 

「ターゲット=求める人材像」を明確に定義することが重要です。なぜなら、企業に対して魅力を感じるポイント、ネガティブな印象を抱くポイントは、人によって大きく異なるからです。ターゲットを明確化することで、それに合わせて積極的に開示すべき情報を選ぶことができます。 

情報のバランスを考慮する 

開示する情報が「プラス」に偏ると、入社後にギャップを感じやすくなります。一方、「マイナス」ばかりに偏っても、警戒されて応募に至らず、母集団形成が十分にできなくなります。適度なバランスを保って情報開示するようにしましょう。 

開示する情報を言語化し、共通認識にする 

ターゲット像と、その人たちに向けた情報開示の方針を整理・言語化したら、採用に関わるすべての人に共有できるようにしましょう。人事のみでなく、経営層や採用部門の現場の社員にまで浸透させることが重要です。 

RJPに向いている中途採用手法 

RJP理論に基づく中途採用の手法、および企業の実情を理解したうえで、入社を希望してもらえる可能性があるものの中で、代表的な例をご紹介します。 

リファラル採用 

リファラル採用とは、自社社員を介して、その友人・知人に自社への応募を促す手法です。社員から自社のリアルな情報を伝えることにより、企業への理解を深めたうえで応募してもらえるため、入社後にミスマッチが起こりにくいといえます。 

紹介予定派遣 

紹介予定派遣とは、人材派遣会社が「派遣期間の満了後、派遣先企業に直接雇用される」ことを前提としてスタッフを派遣する仕組みです。企業側・派遣スタッフ側の双方が、派遣就業期間中に「仕事・環境にマッチするかどうか」を見極められるメリットがあります。 

社会人インターンシップ/体験入社 

採用を前提とした社会人インターンシップ、あるいは選考途中での体験入社の実施も有効です。求職者と企業がお互いに理解を深め、適性を判断できます。プログラムには「カジュアル面談」や「自社が抱える課題へのディスカッション・提案」などを組み込んでもいいでしょう。 

副業・兼業人材の受け入れ 

求職者をまずは「副業」「兼業」の形態で受け入れ、自社のプラス面もマイナス面も理解してもらったうえで社員として迎える方法があります。社会人インターンシップや体験入社同様に、求職者と企業がお互いに理解を深め、適性を判断することができるでしょう。 

RJPを導入する際の注意点 

入社後ミスマッチの防止、入社意欲の向上など、RJPは採用に効果的な手法です。しかし、進め方を誤るとマイナスの印象が強くなりすぎて逆効果となる可能性もあるため、上記で紹介した「実現のためのポイント」をしっかり押さえておきましょう。マイナス面の情報を開示する場合は、求職者を委縮させてしまわないよう、フォローの施策や改善策も準備し、併せて伝えるようにしたいものです。 

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。