採用選考において、自社にマッチしているか、活躍できそうかを見極めるためには、面接でどのような質問を投げかけるかが重要です。面接で確認するポイント、面接担当者の役割、質問例、面接で聞いてはいけない質問などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
採用面接で確認したいこと
面接の設計を行うにあたっては、面接を通じて応募者のどのようなポイントを確認したいのかを明確にしておきましょう。このとき、評価の基準や重視する要素を決めておくことが重要です。例えば、一次面接は人事、二次面接は現場責任者、最終面接は役員が面接を担当するなど、募集する職種や役職によって面接担当者は異なります。そのため、判断基準がバラバラの状態では、応募者を適切に評価することができません。評価基準や重視する要素を設定し、面接担当者と共有しておきましょう。
面接では、主に次のポイントに注目して確認を行います。
人物像
自己紹介や自己PRなどから、求める人物像にマッチし入社後の活躍が期待できそうか確認します。志向や価値観、仕事に向き合うスタンスやマインドに注目しましょう。
スキルフィット
職務経歴書をベースに質問し、採用する職種・ポジションの業務を遂行するために必要な経験・スキルを持っているかどうかを確認します。経験・スキルの有無だけでなく、経験内容の深さやスキルの習熟度などをチェックしましょう。
カルチャーフィット
自己PR・志望動機・キャリア観などの質問を通じ、自社の風土やカルチャーとの相性を確認します。即戦力の確保を目的とする採用では、確認ポイントが「スキルフィット」に偏りがちですが、カルチャーフィットにも注目しなければ、入社後に「スキルは十分だが、職場の仲間となじめない」といったミスマッチが生じる恐れがあります。
面接担当者の役割
面接担当者の役割は、対話を通じて応募書類だけではわからない詳細な経験・スキル、志向や人柄などを引き出し、自社にマッチする人物であるかどうかを見極めることです。応募者がリラックスして本音を話しやすいような場づくりをすることが大切です。
それだけにとどまらず、自社の情報(経営方針・事業内容・組織体制・期待すること・強み弱み・魅力・課題など)を応募者に伝え、応募者が理解を深め懸念点を払しょくできるようにして、入社意欲や選考継続意欲を醸成します。応募者が自身と応募企業がマッチするかを判断するための材料を提供するという側面もあります。
【目的別】採用面接の質問30例
目的別に面接での質問例をご紹介します。
自己理解
- 自己紹介をしてください
- 自己PRをしてください
- ご自身の「強み(長所)」と認識していることをお聞かせください
- ご自身の「弱み(短所)」と認識していることをお聞かせください
- 周囲の人からは、どのような人だと思われていますか
志望動機と入社意欲
- 当社を志望した理由を教えてください
- 当社のどのような点に興味を持ってくださった(魅力を感じてくださった)のですか
- 当社に対してどのような印象をお持ちですか
- ご自身の強みを、当社でどのように活かせるとお考えですか
- 当社でどのようなキャリアを積みたいとお考えですか
- (面接の最後に)何か質問はありますか
人物像・キャリア観
- 仕事において、やりがいや面白みを感じるのはどのような場面ですか
- 仕事のどのような場面でモチベーションが高まりますか
- 仕事をするうえで大切にしてきたことは何ですか
- 今後、どのようなキャリアを築いていきたいですか
- ○年後、どのような仕事をしていたい(ポジションに就いていたい)と思いますか
- 企業を選ぶ際にどのようなポイントを重視しますか
実務能力・スキルレベル
- 現職(前職)での具体的な仕事内容を教えてください
- ○○の経験はどれくらいありますか(規模・数量・経験年数)
- どのような規模・構成の組織で、どのような役割を担ってきましたか
- 業務を行ううえで、どのような工夫してきましたか
- これまでの成功体験と、その成功をどのように実現させたのかをお聞かせください
- これまでの失敗体験と、それをどう乗り越えたかをお聞かせください
- 困難にぶつかったとき、どのように対応してきましたか
- これまでの経験を通じて、どのようなことを学んできましたか
退職理由・転職理由
- 退職(転職)を考えるきっかけとなったことは何ですか
- 退職(転職)を決断した理由を教えてください
- 今回の転職で叶えたいことはありますか
条件面のすり合わせ
- 給与額はいくらくらいを希望していますか
- いつ頃、入社していただけそうですか
面接で応募者を見極めるポイント
応募者が自社にマッチする人物かどうか、活躍できそうかを見極めるためには、以下のポイントに注目しましょう。
前向きに意欲的に話をしているか
「現在の職場や仕事から逃げたい」「現状の不満を解消できればいい」といったネガティブな理由で転職活動をしている応募者は、今後の目標や将来目指す姿を描けておらず、入社後に活躍・貢献したいという気持ちが弱いかもしれません。また、自社への入社意欲がそこまで高くないので、意欲的に話ができていない可能性も考えられます。
質問に対して的確に回答しているか
面接担当者の質問の意図を汲めているかどうかを確認することで、コミュニケーションスキルの判断材料となります。
論理的に話しているか
「転職理由」と「志望動機」の整合性が取れているかどうかに注目してください。転職に至ったストーリーに矛盾点があったり、感情的に話したりする応募者は、自身の経験・スキル・志向の分析が不足しており、今後の目標が明確になっていない可能性があります。
納得度の高い回答か
表面的な受け答えではなく、誠実に、本心を話していれば納得感を持てるでしょう。また、現職に対する不満や自身の経験・スキルなど、主観的ではなく客観的に捉えられているかどうも重要なポイントです。
面接で聞いてはいけないこと
厚生労働省は、公平な採用選考を行うために「採用選考時に配慮すべき事項(※)」として、以下のような項目について応募書類での記載を求めたり、面接で尋ねたりすることは避けるように事業主に対して呼びかけています。
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
出典(※):厚生労働省『公正な採用選考の基本』 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
面接担当者での目線合わせが重要
面接の質問例を複数挙げましたが、限られた時間内ですべての質問をすることはできません。自社が選考において何を重視するか、面接担当者同士ですり合わせを行い、どの質問を優先するかを判断してください。
また、同じ質問をして同じ回答を得ても、面接担当者にとって捉え方が異なるものです。評価の基準についても、一次・二次~最終面接の担当者で目線合わせをしておくことが重要です。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。