絶対評価 相対評価

人事評価の手法として、多くの企業が取り入れているのが「絶対評価」と「相対評価」という評価方法です。今回は、絶対評価、相対評価とはそもそもどんな評価方法なのか、それぞれのメリット・デメリットや取り入れる際の注意点などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

絶対評価、相対評価、それぞれの違いと特徴

絶対評価とは、各企業があらかじめ設定した職種や部署ごとの評価基準を基に、従業員の能力や成果を評価する評価方法。例えば、「営業目標を120%達成したらS評価、100%以上であればA評価…」などと設定し、その基準のもとで個人の評価を決定します。

相対評価とは、所属する組織内で順位を決める評価方法。組織ごとに、あらかじめ「S評価は全体の〇%(もしくは〇人)、A評価は〇%、B評価は…」などとランクによって割合もしくは人数を決めておき、能力や成果が高い順に割り振って評価します。

つまり、絶対評価は「評価基準と比べて個人を評価する」もので、相対評価は「他の従業員と比べて個人を評価する」ものになります。

絶対評価、相対評価には、いい点も悪い点もあります。自社に合った評価制度を導入するためにも、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

絶対評価のメリット・デメリット

まずは絶対評価のメリット・デメリットについてご説明します。

メリット

評価がわかりやすく、目標設定しやすい点が挙げられます。
例えば、営業職であれば「目標に対して120%以上達成したらS評価」などと評価基準が明確に定められているので、メンバー一人ひとりとの目標設定ミーティングの際に「自分はどのレベルを目指すのか」が数値で決めやすく、その目標を達成するために必要な課題も洗い出しやすくなります。
目標達成できた場合も、できなかった場合も、評価基準が明確なので、従業員の納得感が得られやすい点もメリットです。「どうしてこのような評価になったのか」という理由もフィードバックしやすいでしょう。

評価する側の上司も、設定した目標に対する進捗を見ながら指導やアドバイス、フォローがしやすいため、従業員育成の観点から見てもメリットがあると言えます。

デメリット

デメリットしては、まず評価基準を定めるのが難しい点が挙げられます。
部署ごと、業務ごとに異なる評価基準を設ける必要がありますし、基準の設定が甘いと皆が高い評価に、設定が厳しいと皆が低評価を取ってしまう可能性もあります。したがって、過去の評価データや個人の能力レベルなどを見ながら、適切な評価基準を定めなければなりません。

また、仕事のプロセスが評価に反映しづらいという側面もあります。個人の成果は、業界や企業を取り巻く環境によって大きく左右されます。したがって「努力や工夫を重ねたにもかかわらず、あと一歩のところで成果につながらなかった」というケースもあり得ますが、その努力や工夫などプロセス部分が全く評価されず、従業員のモチベーションが下がってしまった…という例もあります。

さらには、絶対評価には人件費高騰のリスクもあります。皆が成果を上げ、高い評価を得た場合、それに見合った賞与やインセンティブを支給しなければならず、人件費が予想以上にかさむ可能性も考えられます。

相対評価のメリット・デメリット

次に、相対評価のメリット・デメリットについてご説明します。

メリット

組織内で順位付けして「上位〇%はS評価」などと割り振っていくため、細かい評価基準や目標設定などが必要なく、例えば新任マネジャーなど評価に不慣れな人であっても正当な評価がしやすいというメリットがあります。

「この社員が挙げた成果は、他の人に比べて上か下か」で判断すればいいので、評価者の主観が入りにくく、人事も現場での評価者も運用がしやすいでしょう。評価ランクごとの人数がほぼ決まっているので、人件費のコントロールもしやすいという側面もあります。

デメリット

所属する組織やチームの業績によって、従業員から「不公平」との声が挙がる可能性があります。
例えば、目標に対して120%達成していても、周りの人も高い成果を上げていれば相対評価は下がります。一方、別の部署では達成率が低く、100%達成という人が最高評価を得る場合もあり得ます。たとえ業務内容が異なっていても、「隣の部署では100%達成でS評価を受けている人がいるのに、なぜ自分は120%でB評価なのか」などと不満を募らせる人も出てくるかもしれません。

また、組織内での相対評価になるため、個人の頑張りに焦点を当てづらく、個人の課題解決や成長などにコミットしづらいという側面もあります。経験豊富なベテラン層が上位になり、経験の浅い若手はどうしても下位になりがちという傾向もあり、モチベーション管理に影響が出る可能性もあります。

絶対評価、相対評価を取り入れる際のポイントと注意点

前述のように、絶対評価、相対評価にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、取り入れる際にはポイントや注意点があります。

絶対評価を取り入れる場合

絶対評価を評価基準として新たに取り入れる際は、全社的に納得感が得られる基準を作ることが重要です。
全従業員の能力が考慮されているか、誰にとっても最適な基準になっているかどうか、部署や社会人歴、習熟度などのバランスが取れているかなど、各部門の責任者同士で十分に議論し、設計しましょう。

評価は「上司が部下を査定する」ものではなく、あくまで従業員の育成のために行うものです。評価基準を設計する際には、数値で示せない努力や工夫などの「プロセス」も評価項目に盛り込むことも必要です。

相対評価を取り入れる場合

相対評価の場合は、「S評価が〇%(〇人)…」などと評価ランクごとに明確に割合や人数が決まっているので、それを全社員にオープンにすることが重要です。
「目標を達成したのになぜS評価ではないのか」などの不満を生まないためにも、すべての部署ごとの基準を明らかにして、評価の透明性を担保しましょう。

また、相対評価はどうしても、経験豊富なベテラン層が優位になりやすいので、絶対評価と同様に数値で示せない努力や工夫などの「プロセス」も評価項目に盛り込み、社歴の浅い社員のモチベーションに配慮することも大切です。

絶対評価と相対評価を組み合わせる方法も

絶対評価と相対評価、それぞれのメリットを活かして組み合わせる方法もあります。
例えば、「個人の評価のうちの7割を絶対評価にして、残り3割は行動やスタンスなどを相対的に評価する」や、「成果が数字で示しやすい営業職は絶対評価の比率を上げ、評価基準の設定が難しいバックオフィス部門などは相対評価の比率を上げる」などの方法が考えられます。

評価を階層的に行い、絶対評価と相対評価の両方を取り入れるというのも、双方のメリットを活かしデメリットを軽減する方法です。例えば、現場のマネジャーによる一次評価は、設定した基準を基に絶対評価で行い、さらに上の役職者による二次評価は相対評価で見て、最終的に両方を考慮しながら総合評価を行う、などのやり方が考えられます。

ここまで紹介してきたように、絶対評価と相対評価はそれぞれ特徴があり、職種や業務内容、企業の態勢などによって向き・不向きがあります。それぞれの特徴をつかみ、必要に応じてカスタマイズしながら、自社に合った評価方法を導入する姿勢が大切です。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。