採用 歩留まり

採用活動では、「歩留まり」を算出することによって課題の把握や解決策の検討を行うことがあります。歩留まりのデータの見方・活用法、歩留まり率が低下する要因、歩留まり率を改善するポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用の歩留まりとは

「歩留まり」とは一般的に、生産活動において「原料投入量から期待される生産数に対し、実際に得られた生産数の割合」を意味します。

採用活動における「歩留まり」とは、応募→書類選考→1次面接~最終面接→内定→入社という選考プロセスのなかで、次のフェーズに進んだ人の数を指します。不採用者・選考辞退者が少ないほど「歩留まり率」が高く、採用活動の効率が良いといえます。選考プロセスの歩留まり率を各フェーズで算出することによって、課題を発見しやすくなり改善策の検討へつなげられるでしょう。

歩留まり率の見方・活用法の一例

歩留まり率を算出し、その数字をどのように判断・活用するかについて、一例をご紹介します。

【A社の採用活動の歩留まり率】

応募書類選考合格1次面接実施1次面接合格2次面接実施2次面接合格最終面接実施最終面接合格内定内定承諾入社
人数20141288664422
歩留まり率70%86%67%100%75%100%67%100%50%100%

この歩留まり率からは、次回採用に向けて「応募総数のうち1割は採用に至る」「1人採用したい場合は、10人の応募者を集めればよい」といった目安をつけられるでしょう。また、「内定承諾率が半分なので、内定を出す前後のフォローを手厚くして内定承諾率を上げていこう」など、次回への対策を考えることができます。

【B社の採用活動の歩留まり率】

応募書類選考合格1次面接実施1次面接合格2次面接実施2次面接合格最終面接実施最終面接合格内定内定承諾入社
人数72222221100
歩留まり率29%100%100%100%100%100%50%100%0%0%

書類選考の通過率が3割以下と低く、1次面接~最終面接からの歩留まり率が100%となっています。「応募数が少なく、書類選考の基準から外れる応募者が多かった」という事実から、「限られた候補者の中で採用したいという意識がはたらき、最低限のチェックで最終選考まで進めてしまったのではないか」という推測ができます。「フォローが足りず入社への疑問や不安を解消できなかった」「他社と比較して入社意欲が高まらなかった」などの理由から、内定辞退となった可能性があります。この結果からは、次に向けて「母集団形成を強化する」「内定辞退を防ぐ」などの目標設定につながるでしょう。

課題となる選考プロセスを明らかにする

採用目標が達成できない場合、採用活動の各プロセスでの歩留まり率から、どのプロセスに課題があるのかを見極めます。すべてのプロセスを改善することは難しいですが、どの段階で不採用や選考辞退が発生しやすいのかを明らかにすると、優先して打ち手を考えるべきポイントを判断しやすくなるでしょう。

採用の歩留まりが低下する大きな要因

採用の歩留まりが低下する要因として、よく見られるものをご紹介します。

選考スピードが遅い

求職者は多くの場合、複数企業に応募しており、選考が同時期に進んでいます。「最初に内定が出た会社に入社を決めた」という声も少なくありません。「面接がだいぶ先の日程である」「選考結果の通知がなかなか来ない」など、選考スピードが遅い場合、他社を優先し、選考を辞退されてしまうことがあります。

事前情報とのギャップ

求人などから事前に得ていた情報と、面接中あるいは内定時に伝えられた情報にギャップがある場合、応募者が不信感や不満を抱いて選考辞退につながるケースもあります。募集時に発信する情報と面接で伝える話、労働条件通知書に記載する条件などに食い違いが起きないように注意する必要があります。

面接や職場見学の印象が悪かった

「面接で会った社員が魅力的で、この人と一緒に働きたいと感じた」という理由から、入社意欲が高まることは多いものです。一方、面接で圧迫的な態度をとられたり、採用への熱意が感じられなかったりすると、ネガティブな印象を抱いて入社意欲が低下してしまうでしょう。カジュアル面談などで現場のメンバーと対話した場合も、コミュニケーションがうまくとれないと「社風が合わない」と判断される可能性があります。

応募者へのフォロー不足

応募者は、選考が進む途中でも不安や疑問を抱いているかもしれません。例えば「自分の経験・スキルが本当に活かせるのだろうか」「社風になじめるだろうか」「この先、希望どおりのキャリアを歩んでいけるのだろうか」などが挙げられます。応募者の気持ちの揺れに気づかずフォローしないままでいると、不安や疑問を払しょくできず、選考辞退や内定辞退につながる可能性があります。

歩留まりを改善するためのポイント

歩留まりの改善を図るためには、次のような方法を試してみてください。

自社の強み・特徴を明らかにする

求職者は、転職先候補として複数企業を比較検討しています。そこで、ターゲット人材が企業選びの際にどのようなポイントに注目するかを考え、自社の強み・特徴を明確化して伝えましょう。
以下は、自社の強みや特徴を表す項目の一例です。

  • 成長率
  • シェア
  • 顧客ラインナップ
  • プロダクトの先進性
  • 裁量権
  • 昇進スピード
  • 経営陣や同僚の経歴
  • 年収アップ
  • 副業
  • 教育研修プログラム
  • 資格取得支援
  • リモートワーク
  • フルフレックス
  • ワーケーション
  • オフィス環境
  • 福利厚生
  • 部活動 など

なお、自社の強み・特徴だと思っていることが、実は他社も備えている可能性もあります。その場合、アピール材料として効果を発揮しにくくなります。他社の求人情報なども調査・分析したうえで自社の独自性を打ち出し、採用情報ページや面接などで発信するといいでしょう。

面接担当者の研修を行う

1次面接~最終面接のフェーズで歩留まり率が低い場合、面接担当者が自社の魅力を十分に伝えられていなかったり、不適切な態度・発言をしていたりする可能性があります。面接担当者に対し、「採用の目的をしっかりと認識してもらう」「応募者に伝えてほしい情報を準備して共有する」「NG発言・態度について注意を促す」など、研修を行うことを検討しましょう。

また、面接担当者によって、質問内容や評価のポイントにばらつきが生じることもあります。選考で何を重視するかの目線を合わせ、評価基準を統一しておくことも重要です。

選考スピードを上げる

転職活動では、複数の企業に応募するのが一般的です。応募者は他社にも応募している可能性が高く、先に内定が出た企業に入社を決めてしまうかもしれません。なるべく早いタイミングで面接を設定する、次の面接の案内を早く出す、内定が決定したら速やかに通知する、など、選考をスピードアップしましょう。

企業からのレスポンスが早ければ、応募者は「採用活動に熱心な企業である、自分に対しても積極的に対応してくれている」というポジティブな印象を抱くことにつながります。ひいては入社意欲が高まることもあるでしょう。

応募者へのフォローを行う

応募者が気にかかっていること、不安に感じていることはないかを意識し、選考中は都度確認するとよいでしょう。応募者の疑問や不安に応じて情報提供を行う、あるいは選考とは切り離して「面談」を設けるなどすれば、不安の払しょくにつながりやすいでしょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。