採用 計画

中途採用を成功させるためには、経営戦略に基づく人材戦略を採用計画にしっかりと落とし込むこと、経営層や採用現場と連携しながら計画を実行していくことが重要です。採用計画の立て方、採用計画をスムーズに進めるためのポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用計画とは

採用計画とは、経営戦略を踏まえた人材戦略をベースに、必要な人員を確保するために必要な採用活動の方針と目標を明確にすることです。主に、以下を策定します。

  • 採用部署:新たに外部から人材を採用する必要がある部署・組織
  • 人材要件:能力・スキル・経験など、採用者に求める要件
  • 人数:目標とする採用人数
  • 時期:採用者を受け入れる時期
  • 募集方法:求職者を募る方法
  • 選考方法:面接の回数や選考基準など

採用計画が必要な理由

採用活動を効率的に進めるため、そして採用目標達成の確率を高めるために、採用計画を立てる必要があります。適切な計画を立てておけば、時間とコストをムダに費やしてしまうことも防げます。後々の振り返りや改善の検討もしやすくなるでしょう。

また、採用活動とは、人事部門と配属部門が連携して行うものです。両者の間で採用の目的やゴールに対する認識がずれていると、うまく運ばなかったり採用機会を逃してしまったりする可能性があります。それを防ぐためにも、採用計画を立てて共有し、共通認識のもとで進めることが重要です。

一般的な採用計画の立て方

採用計画を立てる際、一般的には次の手順で進めるとスムーズです。

(1)採用戦略を立てる

経営陣や事業責任者などと協議を行い、経営戦略・事業戦略を遂行するためにどのような人材が必要なのかを確認し、採用の方向性を明確化します。このとき、中途採用市場の動向や相場などを把握しておくことも重要です。

(2)人材要件を明らかにする

自社が求める人材とはどのような経験・スキル・素養を持つ人なのかを検討し、要件を明確化します。人材要件があいまいなまま採用活動を開始すると、「求める人から応募がこない」「選考で注目するポイントが複数の担当者間で異なってしまう」「ミスマッチによる選考・内定辞退や入社後の早期離職が起きる」といった事態につながることがあります。

なお、人材要件の設定の際には、「経験・スキル」だけでなく「自社の風土・カルチャーにフィットするか」という観点でも、具体的に設定しておきましょう。

(3)採用計画を立てる

採用戦略を、具体的な採用計画に落とし込みます。次の項目それぞれについて目標を設定しましょう。このとき、具体的かつ現実的な数字を定めることが重要です。

  • どの部署で
  • どのような職種・ポジションを
  • どのくらいの人数を
  • いつまでに
  • どのくらいのコストで
  • どのような手法で

(4)担当者を決めスケジュールを作成する

選考に関わる担当者を決め、選考スケジュールを作成します。選考方法、面接回数などを設定し、入社してほしい期日から逆算して募集をスタートする時期、面接設定の期間などを検討しましょう。

スケジュールを組むにあたって、配属部署とコミュニケーションを図って繁忙期などを把握し、「応募が来ているのに面接日程を組めない」といった事態が起こらないように調整します。

(5)実行・振り返り

採用計画に基づいて実行しますが、計画は一度決めたらそのとおりに進めていけばいいというものではありません。計画通りに進んでいるか、目標達成を見込めそうか、外部環境や自社内の方針に変化はないか――など、都度見直しを行うことが重要です。

また、計画段階で実行途中のチェックポイントを必ず設けておきましょう。計画どおりに進まないことも考えられるため、例えば「募集開始から2週間後にチェックを行い、追加施策や方針変更の検討をする」「1カ月経過後の成果を検証し、戦略の見直しを行う」など、計画を再検討する時期をあらかじめ決めておくといいでしょう。

もし求める人材の採用に至っていない場合は、どのフェーズに課題があるかを検証します。場合によっては採用目標や人材要件、採用手法から変える必要があるかもしれません。

採用計画をスムーズに進めるためのポイント

採用計画をスムーズに進めるために、次のポイントを意識しておきましょう。

経営層・現場と連携する

ビジネス環境の変化のスピードが速い昨今、経営戦略も現場の人材ニーズも日々変わっていくものです。採用担当者の独断で進めず、経営層や現場責任者とコミュニケーションをとりながら進めていきましょう。

特に採用活動が計画どおりに進まない場合、協力をあおぐ必要があります。経営層に中途採用市場の厳しさなどを伝えて採用予算を増やしてもらうのもひとつの方法です。現場責任者とは要件緩和について相談し、例えば「募集要件としている○○スキルについては、他のメンバーがフォローできるので必須要件から外す」などの対応をすることで、前に進みやすくなる可能性があるでしょう。

入社承諾してほしい人が迷っている場合は、経営層や現場メンバーにカジュアル面談を行ってもらい、手厚くフォローするのも有効な手段のひとつといえます。

他社の採用活動を確認する

求める人材の採用に至らない場合、求職者が他社に魅力を感じ、自社が選ばれていないことも考えられます。そこで、他社がどのような採用活動を行っているかを知ることも大切です。

同業種・同規模の企業、同じ職種の募集を行っている企業の採用ページや転職サービスに載せている求人を見て、募集要件・勤務条件・待遇のほか、どのようなアピールをしているかを確認してみましょう。転職エージェントに採用に成功している企業がどのような工夫をしているのかを聞いてみたり、自社の改善点についてアドバイスを受けたりするのもひとつの手です。

過去の採用実績にとらわれず、現在の市況を把握する

過去の採用実績に基づいて計画を立てる際には、注意が必要です。1人あたりの採用にかかるコストなどは、売り手市場が加速している場合は過去よりも多めに見積もる必要があるかもしれません。また、求職者の情報収集ルートが多様化している現在では、以前と同じ転職サービスの利用だけでは、応募数が集められなくなることも考えられます。例えばスカウトサービスやSNSなど、これまで着手していなかった採用手法を併用することを検討してみてもいいかもしれません。なお、複数の採用手法を使うなら、採用担当部署の人員が足りているかどうかも検討が必要です。過去の採用活動や実績にとらわれず、現在の市況に合わせて計画を立てましょう。

IT導入やパートナー企業も検討する

近年は、HRテック(HR Tech)が進化し、さまざまな採用支援ツールが登場しています。採用計画に合うITツールを導入することで、採用活動の効率化や採用業務に携わる人員削減につながる可能性があります。データをもとに、採用計画の振り返り・分析がしやすくなるでしょう。

また、転職エージェントや採用コンサルタント、採用代行サービス(RPO)を活用する方法もあります。転職エージェントからは、求職者の動向や同業界・職種の状況などの情報も得られるため、採用時にアピールすべき自社の強みや特徴、ポイントをみつける参考になるかもしれません。

採用コンサルタントに上流の採用戦略策定から伴走してもらう、採用代行サービス(RPO)に実務の一部を任せることも可能です。外部サービスを活用して自社で不足するリソースを補うことも検討してみましょう。

採用計画の成功を実現するために

採用計画の成功を実現するために、次のポイントも心がけてみてください。

現実的なペルソナを設定する

求める人材要件をひととおり挙げた結果、中途採用市場に存在しない人物像ができあがっているケースがあります。理想的な人物をターゲットに採用活動を続けても、該当する人物に巡り会えないまま、採用活動の長期化、コスト増につながってしまうかもしれません。
要件を緩和し、対象層を広げ、応募者が集まるような現実的なペルソナを設定しましょう。

進捗に合わせて計画を調整する

採用活動の進捗状況に合わせ、計画を見直して調整しましょう。例えば、応募者が集まらない場合、求人を掲載している転職サービスがターゲット人材像に合っているかどうかを検討し、募集方法を変えるという方法があります。

また、応募があっても入社に至らない場合、応募者への対応や選考プロセスの見直しが必要かもしれません。採用ピッチ資料や動画コンテンツを充実させて情報提供を増やす、面接回数を減らし選考期間を短縮するなど、活動計画の見直しを図りましょう。

フォローを徹底し辞退を減らす

求める人材から応募があったとしても、他社にも応募して比較検討している可能性があるため、選考辞退や内定辞退を防ぐ対策も必要です。

応募者の不安を解消し、入社意欲を高めるために、「選考のための面接」とは別に、「カジュアル面談」を設けるのも有効です。一緒に働くメンバー、あるいはその応募者に近いバックグラウンドを持つ中途入社者との面談を設定するなど、フォローを強化するといいでしょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。