採用KPI

営業やマーケティングをはじめ、さまざまなビジネスシーンで設定される「KPI(Key Performance Indicator)」=「重要業績評価目標」「重要達成度指標」は、組織の目標達成に向けた行動を評価する指標です。採用活動においても、KPIを設定することで採用目標を達成しやすくなる効果が期待できます。
採用におけるKPI・KGI・CSFの活用法、採用KPIが注目されている背景、設定方法、効果的に運用するためのポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用KPIとは

採用KPIとはどのようなものを指すのか、まずは基本を理解しておきましょう。

KPI・KGI・CSFの意味

「KPI」とは「Key Performance Indicator」の略語で、「重要業績評価目標」「重要達成度指標」と訳されます。例えば、営業活動においてのKPIには、売上目標達成に向けて設定する「商談件数」「新規受注件数」などの目標があります。つまり、最終目標を目指す過程で達成すべき中間目標といえます。

KPIに近しいワードとして、「KGI」があります。KGIとは「Key Goal Indicator=重要目標達成指標」の略語で、「最終目標」を指します。まずはKGIを設定し、その達成に向けてKPIを設定することになります。

KGI・KPIに関連するワードに、「CSF」=「Critical Success Factor=重要成功要因」もあります。こちらは、目標達成に重要な影響を及ぼす要因を指します。CSFを洗い出したうえで、そこに資源を投じる必要があると考えられています。

採用における使い方

採用においては、一般的に「どのような人材を・いつまでに・何名採用する」という「KGI」を設定します。達成に向けて、「応募数」「書類選考通過数」「面接数」といったKPIを設け、進捗状況を管理します。CSFとしては、例えば「求職者へのアプローチの量を増やす」といったものが考えられるでしょう。
以下にKGI・KPI・CSFを用いた採用戦略策定の一例を挙げます。

<KGI>6月までに営業マネジャー3名を採用
<CSF>アプローチ量の拡大
<KPI>スカウトメール送信数・スカウト返信率・カジュアル面談実施数・面談からの応募率・1次面接実施数…など

採用KPIが注目されている背景

なぜ、採用KPIが注目され、取り入れられているのでしょうか。その背景・理由として以下が挙げられます。

目標達成までのプロセスを明らかにする

KPIを設定することで目標達成までのプロセスが明確になり、それぞれのプロセスで何をすべきか、どのような手法を選択すべきかを検討しやすくなります。

採用活動のPDCAを回しやすくなる

最終目標を設定し、結果を確認するだけでは原因特定が難しくなります。最終目標の達成に至らなかった場合、「どこに問題があったのか」「何が影響したのか」を明らかにできない可能性があります。

KPIでは中間地点での数値目標を設定するため、「書類選考通過率」「面接辞退率」などのデータを検証することで、課題の抽出と改善策の検討がしやすくなるでしょう。それにより、採用活動のPDCAを回しやすくなります。

関係者の目線を揃え成果を出せる

採用活動は、経営陣・人事採用部門・配属部署が連携して行いますが、それぞれの立場によって重視するポイントが異なっていることがあります。例えば、人事は母集団数を重視、配属部署は面談数を重視、経営陣は最終面接の人数を重視する、というケースです。選考に携わる関係者の目線を揃えておかなければ、良かった点・悪かった点を検証しづらく、次の採用計画に活かすことができないでしょう。適切な連携によって成果を出すためにも、KPIという指標を持つことは有効といえます。

採用KPIの設定方法

採用KPIの設定方法について、手順の一例をご紹介します。

KGIを決める

前述のとおり、KPIはKGIの達成に向けて設定する中間指標ですので、まずはKGIを決定します。「どの部署で」「どのような職種・ポジションを」「いつまでに」「何名採用する」という最終目標を明確にします。

達成のための計画を立てる

採用したい人材について、「求める経験・スキル」「募集方法」「選考方法」「選考スケジュール」「予算」などを検討し、採用計画に落とし込みます。

KPIを決める

選考の各プロセスにおいて、KPIを設定します。最終目標から逆算し、「○名に内定を出すなら、最低○名は最終面接を実施する」→「最終面接を○名実施するために、書類選考通過者は○名を目標とする」→「最低でも○名の応募者を獲得したい」のように、数値目標を設定します。

過去の採用活動における「歩留まり率」を算出しておくと、KPIとして適切な数値を判断しやすくなるでしょう。採用の歩留まり率とは、応募→書類選考→1次面接~最終面接→内定→入社というプロセスのなかで、次のフェーズに進んだ人の割合を指します。

例えば、過去の採用活動で20名の応募があり、1名に内定を出せば、応募からの歩留まり率は5%です。今回2名を採用する計画であれば、「前回の歩留まり率を踏まえると40名の応募者獲得が必要。しかし以前より採用環境が厳しくなっていることを加味し、45名の応募者獲得を目安に目標設定する」といった考え方ができます。

KPI運用のポイント

KPIを運用するにあたっては、以下のポイントを意識するといいでしょう。

高すぎず低すぎず、シンプルに

KPIの数値は、高すぎると達成が困難になり、採用チームメンバーのモチベーションに影響する可能性があります。かといって低すぎる設定では真摯に取り組む意欲がそがれてしまいかねません。
「少しがんばれば到達する」と考えられる目標を設定することが望ましいといえます。

また、指標が多すぎて複雑化すると、いずれも中途半端な取り組みで終わってしまう可能性があるため、シンプル化することも重要です。

定期的な振り返りと改善を行う

KPIの達成率や進捗状況を定期的に振り返ってチェックし、課題を分析して改善策を検討しましょう。定例会議などを設け、目線合わせと進捗確認を行います。

KPIを設定しておくと、「目標達成のために適切な手法を選択できていない」という課題に気づけるかもしれません。応募者数が目標に達していなければ募集手段を追加し応募要件を緩和する、面接へ進む数が少なければ選考基準を見直すなど、計画をアップデートしていきましょう。

数字にこだわりすぎない

KPIの数字にこだわりすぎると、「面談実施数のKPIを達成するために、採用ターゲットから外れた人とも面談する」というように、本来の採用目的を見失ってしまうことも起こります。結果的に採用担当者が余計な時間と手間をかけてしまい、採用活動の効率低下につながりかねません。目標達成の「手段」であるはずのKPIが「目的」になってしまわないようにしましょう。

KPI設定に迷ったら

KPIを設定する際に迷いが生じたら、次の方法を試してみるのも一案です。

「KPIツリー」を作成して要素を整理する

KGIとKPIの関係性を樹形図(ロジックツリー)で可視化したものを「KPIツリー」と呼びます。KPIツリーテンプレートを活用し、作成することができます。

KPIツリーを作成する過程で、目標達成に対して必要な要素を階層ごとに分解していくため、構成要素を整理しやすくなります。複数ある指標の関わりを一目で理解でき、抜け漏れをチェックしやすくなるでしょう。

社外の専門サービスに相談する

転職エージェント・採用コンサルタント・RPO(採用代行)といった社外の専門サービスに相談し、KGI・KPI設定への支援やアドバイスを得るのも一つの手です。豊富な採用支援実績に基づくアドバイスは、社内に知見がない場合に特に有効です。また、人事・採用担当者のコミュニティなどで、勉強会に参加したり詳しい人に聞いてみたりしてもいいでしょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。